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第一章 第三節

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▼前の記録 怪異調査クラブ  時刻は朝の七時。  目を覚ました私の鼻腔を、香ばしい匂いがくすぐる。  寝室から古びたダイニングキッチンに出ると、T-6407Jが朝食の準備をしてくれている最中だった。 「ご主人、おはようございます」  彼の頭部装甲から垂れている三本の平たい触腕は、電気信号によって自在に動かすこ...



遺失物503について


これより本人認証を行います


貴方が資格保持者でない場合はシステムに検知され、██により即時拘束、しかるべき処置が施されます


承諾しますか?


>はい

……

生体・神経活動走査システム起動

スキャン開始

……

完了

セキュリティクリアランス認証開始

……

Lv.4 承認

職員ID:E57231

パスワード:***********

……

承認

ようこそ 尼木慎一郎 (Shinichiro Amagi)上級管理官 様

遺失物収容レポートを1件受信しています

確認しますか?

>はい

承認



衛生科所属 白石怜による収容レポートを表示します











【遺失物番号:503】

種別:乙種


概要

:遺失物503は、内部に暗緑色の球体器官を多数保持する黒いゲル状の物体です。このゲル状部分は、合成洗濯のり・ホウ砂・黒さび・水で作るおもちゃのスライムと非常に近い成分であるにもかかわらず、球体器官の周囲では自己再生能力と炭化タングステンの██倍に及ぶ剛性を発揮します。暗緑色の球体器官がこの遺失物の核と思われますが、その組織構成は不明であり、またこれを取り除いたり破壊したりする方法も発見されていません。


主に人間や人間に近い形姿をした物に強く反応する性質があり、ゲル部位を自在に動かしてその内部に入り込もうとします。それが人間など生体であれば████、人形など非生物であれば同化して休眠期に入ります。休眠期の長さは定まっていません。

その後少しずつ活性化し、同化していた器を操って次の棲み処となる器を探します。このプロセスを繰り返しますが、目的は不明です。



保管

:新品の人形(頭部・胴体・2本の腕・2本の足を有するもの。材質は問わない)に入り込んだ遺失物503を、高さ・幅いずれも2メートル以上の密閉可能な空間に配置し、3日に一度内部の様子を監視カメラで確認します。

その際人形に破損があった場合は、生体以外の遠隔操作手段(ドローン等人型でないもの)を用いて新たな人形を一つ投入します。遺失物503が新品の人形に棲み替えたことを確認した後、破損した人形を同様の手段で回収します。

職員は決して生身の状態で収容室に近づいたり、遺失物503に接触したりしないでください。


殲滅

:いかなる物理的・化学的手段によっても不可


諦観

:不要




発見から収容までの経緯

:20██年4月██日、狛ヶ丘市立星昇高等学校の生徒3名が夜間の校舎へ向かったのを最後に消息不明となったことが発端でした。

捜索のため白石・名無の2名で深夜の星昇高校に潜入しました。


学校は異空間と化しており、内部で遺失物261【終わらない警備】(注1)の発生を確認。この時点で、生徒の行方不明に関連する遺失物が付近に存在することが確定しました。


調査を進めた結果、名無が美術室にて石膏像に棲みついていた遺失物503を発見。


交戦の末、用意していたぬいぐるみに収容しました。

この石膏像は、昨年亡くなった美術部顧問が3年ほど前に学校の備品として申請し購入したもので、どのタイミングで遺失物503の棲み処となったかについては現在調査中です。




行方不明となっていた生徒について

:いずれも3学年で、昨年起きた美術部顧問への誹謗中傷事件に関係している生徒でした。家族友人らの証言では、「美術室で石膏像が夜な夜な動く」という怪談を確かめるべく、校内への侵入を画策していたとのことです。

行方不明の生徒3名は発見されました。彼らは異空間に長く滞在したことから精神汚染状態にあり、自傷行為・重度のパニック症状を起こしていました。救護・記憶処理の結果いずれも命に別状はありませんでしたが、社会活動に復帰するためには年月を要するものと思われます。


他、狛ヶ丘市近隣で行方不明となっていた住民の痕跡を校内で確認できましたが、本人の発見にはいたりませんでした。






追記

【以下の音声データは、本任務完了後の白石との通話記録である】


白石:尼木さん。新しく来たあの名無とかいう職員、何者ですか?


白石:…すみません。職員同士といえど素性の詮索は控えるべきでした。しかし、正直あまり信用できません。


白石:いえ、私の直感…です。


白石:確かに遺失物への精神耐性は並外れているようですが…。底が知れない感じがするんです。まるでいくつもの人格を持っているかのような。


白石:彼女は一般生徒と共に、都市伝説調査などと称してクラブ活動をしています。絶対にいつか不幸な事故が起こる。それなのに…。


白石:…。


白石:尼木さんがそうしろというのであれば、これからも協力はします。それがこの地域をいずれ襲う災禍を防ぐ手立てになると、機構はそう判断しているんですよね?


白石:…今回の遺失物の収容、これで近隣の行方不明事件が無くなればよいのですが。



通話終了



(注1)遺失物261には他の遺失物を守る性質がある。これが発生している近辺には別の遺失物が存在する可能性が極めて高いとされる。



第一章 終


第二章へ続く


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