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寄稿物:竜人が家畜扱いされてる世界②

 彼は激怒していた。縛られ虜囚とされることも、伸び切っておらず若さの残る鬣を掴まれ、汚らしい床の上を引き摺られることも、初めての経験である。  猿ぐつわを噛みしめる牙にぎりりと力が籠もり、喉の奥から獣じみた唸り声が漏れた。目元を覆う布の下では、金色の瞳が見開かれ、不安げに揺れている。  無駄と分かりながら身体を捩り、抵抗を続けた。たとえほんの少しであっても、自分が下衆な獣たちに屈服したと思われたくはない。王である自分が、こんな低俗な者共に頭を垂れるなど、あってはならないのだから。 「ぐっ……ッ」  身体がふわりと宙へ投げ出される。どさりと硬い床に投げ出され、彼は低く呻いた。仰向けに横たわる引き締まった身体の表面は、若々しい艶を帯びた鱗に包まれている。この国の竜人とは違う、特徴的な形の角と雄々しい鬣を備えた『龍』人の姿は、衣服の一切を奪われ生まれたままの姿を晒していてもなお、常人には持ち得ぬ風格を帯びていた。 「ったく、暴れるから苦労したじゃねぇか。……なぁ、王様さんよお?」  湧き上がる嘲笑を隠しもせぬ半笑いの声が、直ぐ側で囁かれる。耳元へと感じる生温かい息遣いが堪らなく不快だ。猿ぐつわをされたままでは気の利いた返事をすることもできず唸るしかない彼の反応に、相手は満足したようだった。溢れ出そうになる笑いを押し殺しきれぬ様子で、龍人の目元を覆う布をするすると解いた。  薄汚い猪の面が目の前に見える。黄ばんだ牙が二本、ニタニタといやらしく笑う口から突き出ていた。ああも無礼に自分を引き摺っていたのだから、どんな低俗な輩かと思っていたが、納得の面構えだ。本来ならば、自分の前に立つことすら許されない相手だと言うのに――。 「随分生意気な目つきしてっけど、今のうちに媚びとかねぇと、後で後悔すんぞ?」  猪がそう話しかけながら、龍人の一糸まとわぬ身体を無遠慮に弄った。ゴワゴワの毛皮が身体を這う感触に寒気が走り、一秒たりともそれが続くことを耐えられない。未だ猿ぐつわを噛まされたままの口から、精一杯の怒気を含んだ唸り声を放つ。一向に恭順の意思を見せぬ龍人の応対に、猪が小さく舌打ちをした。 「あっそ。……んじゃぁ、望み通り身体で分からせてやるしかねぇな」  猪はなおもいやらしい手つきで龍人の肢体を弄り続ける。両腕を拘束され抵抗できぬのをいいことに、綺麗に割れた腹筋を指先でなぞり、下腹部の生殖器が収納されたスリットをふにふにと弄る。指先でその割れ目を拡げると、サーモンピンクの美しい粘膜が姿を見せた。豚鼻からふごふごと荒い息を放ちながら、そこを凝視する。ニタァっと気色の悪い笑みを浮かべたままの口に溜まってゆく涎をごくりと飲み込む。  屈辱に耐えかねて暴れようとする龍人を見下ろしながら、猪は太い指先をその割れ目へとねじ込んだ。 「んぐっ、んんん……ッ!」  龍人が苦しげに呻く。股ぐらの奥で毛むくじゃらの太い指が暴れていた。柔らかな粘膜を剛毛が擦り上げ、擦り傷を刻み込んでゆく。無垢な肉穴が強引に拡げられる痛みと微かな痒みに、龍人が低く呻いた。見ようによっては感じているようにも見える。実際、猪はそう思ったようだった。 「おっ、おっ? なんだよお前、おま●こ弄られて感じてんのか? 王様だってんのに飛んだ淫乱じゃねぇか」  手応えに気を良くした様子で、熱のこもった吐息を放ちながら猪が話す。下品な嘲笑とともに、口の端から漏れた唾液が、龍人の胸元へぼたぼた落ちていた。  反論したくとも応えることはできず、龍人はただ呻きながら身体を震わせた。あまりの恥辱に身が張り裂けそうだ。ここから解き放たれれば、すぐさまこの下衆の首を刎ねてやる。そうしなければ気が済まない。絶対に――。 「んんん――ッ!?」  そう決意を固める龍人であったが、不意に下腹部に走った衝撃に、思考を中断される。猪の指が深くへと突き入れられると同時に、彼の背筋が弓なりに反り、喉奥から上ずった声が漏れた。 「おおっと、おま●この奥になぁんかあんなぁ。なんだ、こいつ弄られるのがいいのか? なぁ? 聞いてんのか? ……おい!」 「んっ、んぎっ、ッ……ッ!」  猪が探り当てたモノは、割れ目の奥に収納された龍人の生殖器であった。未だに血液は流れ込んでおらず、萎縮したまま体内に残るそれであるが、普段から内部に隠されているだけあって、刺激には敏感のようだ。  猪が割れ目を両手で拡げて穴の中を覗き込むと、粘膜と同様に無垢な色をした肉棒がその最奥に見える。なんとかそれを身体の外に引っ張り出そうと、突き挿れた指を絡め弄くり回してやると、龍人の体が面白いようにビクビクと震え、さっきまで強張っていた身体から力が抜けていくのが分かった。  萎えたままの生殖器を体外へ引きずり出そうと悪戦苦闘する指の動きに合わせて龍人が声を漏らし、剛毛に擦られて赤くなった粘膜を透明の粘液が覆ってゆく。猪の手から逃れるように滑る肉棒を追いかけようと指先を動かすたび、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が響き、緩んだ割れ目から粘液が溢れた。 「お、もうちょいもうちょい。今度は掴めそ。……っと、お? いけたかな。このコリコリしてんの、王様のちんこかな? なぁ、どうなんだよ」 「ん゛ッ、ん゛ー!」 「おっ、割りとそれっぽいな。んじゃ、引きずり出しちまうか」  太い指で掴んだそれを、割れ目の外へと軽く引っ張ると、龍人が絶叫しながら身体を痙攣させると同時に、十分な潤滑もあってさしたる抵抗もなく体外へ引きずり出された。  半勃ち、といった様子の柔らかなそれが、充血した粘膜の間からぽろりと垂れ下がっている。大きく胸を動かしつ、息苦しげに熱の籠もった息を漏らす龍人の口元へと粘液に塗れた太い手が伸ばされ、猿ぐつわと解き、唾液の染み込んだ布を投げ捨てる。 「ッ、はっ、ぁ……っ、お、王たる余への、このような狼藉……ッ、貴様……っ、命はないものと、思え……っ」  荒い呼吸を繰り返し言葉に詰まりながらも、その口からはすぐさま怒りの言葉が飛び出た。猪がやれやれと肩をすくめる。 「一体どういう神経してんだか。まあ次はこれを使って分からせてやるか。てめぇも指だけじゃ満足できねぇよなぁ? 俺が満足させてやるよ」  猪が話しながら、ズボンの金具を外し、自らの下半身を露出させる。龍人のそれとは違い、蒸れて饐えた臭いを放つ玉袋が垂れ下がり、硬く勃起した赤黒い肉棒のそそり立つ股ぐらが露わになる。  白く乾いた恥垢の浮かぶ亀頭が、充血した淫肉を見せつける割れ目にあてがわれ、溢れ出す粘液を絡め取るように擦りつけられた。 「ぐっ、無礼な豚が……、その汚物をどけろ……ッ!」 「あぁ? じゃあ王様のキレーなマ●コでお掃除してもらわねぇとなぁ。俺のはふてぇから、すぐにガバガバの便所穴にしてやるよ」 「んっ、ぐぅ……ッ」  猪は龍人の両脚を抱え込み、その体に覆いかぶさると、宣言通りに行為を開始する。異臭を放つ肉棒が、充血した淫穴へズブズブと飲み込まれ、指とは比べ物にならぬ大きさの熱と異物感が龍人の下腹部を満たしてゆく。  指で十分な拡張を受けたように見えた割れ目も、使い込まれた巨根を受け入れるにはまだ足りなかった。押し拡げられたスリットがミチミチと悲鳴を上げる。ようやく赤黒い肉杭の半分ほどを飲み込むが、猪はその巨根の全てを龍人の胎内に収めなくては満足などしない。肥えた身体を震わせ、溢れ出す汗を龍人の引き締まった身体へ飛び散らせながら、猪がピストンを開始する。 「お、いいぞ……ッ、狭くて締まりやがるし、てめぇもおちんぽ様に雌にしてもらえて嬉しいだろ? なぁ!」 「ひぐ――ッ!?」  声を押し殺すことに精一杯で返事すらできぬ龍人を問いただすように、強く肉穴を突き上げると、こらえ切れずに食いしばった牙の間から悲鳴が漏れた。今まで自分でさえも触れた事のない臓腑の最奥が、薄汚い醜男によっていいように蹂躙されている。屈辱に気が狂いそうだが、それ以上に、身体の芯に蓄積してゆく熱に思考をかき乱される。  スリットの端から垂れ下がる龍人自身の肉棒は、猪の巨根と自らの太ももとの間に挟まれ擦り上げられ、徐々に熱を帯び始めていた。一心不乱に腰を動かし続ける猪も、時折腹に当たるその感触に気づき、龍人が勃起していることを察する。その口元が、再びニタァっと下卑た笑みを作った。 「なんだ、おま●こ犯されるのそんなに気持ちよかったのか。いいじゃねぇか、一緒に気持ちよくなろうぜ」 「ち、ちがっ、う……! 下郎め、触るな――ッ、がっ!」  はち切れんばかりに滾ったそれを、猪の手が包み込む。腰の動きに合わせて扱きあげられると、龍人は言葉を放つことすらできず、そのしなやかな身体を震わせた。今まで受けたこともない粗野な行為であるが、それが背筋を駆け抜け思考をズタズタにする。  ゴワゴワの獣毛が肉棒を擦り上げるたびに頭が真っ白になり、充血した先端から透明の液体が溢れ出す。快感と呼ぶにはあまりにも暴力的な刺激から逃れようと、首を振り拒絶の意志を示すが、虜囚の身に堕ちた今、彼の願いを聞き入れてくれる相手などいなかった。 「ちんぽビクビクしてんなぁ。出ちまいそうなのか? 雌穴ぐちょぐちょに犯されて、イっちまいそうなのか? あぁ?」 「ふ……ッ、ふぅ……ッ、あ――ッ」  猪の指摘に返答できるほどの余力もなかった。未知の感覚に腰の力が抜け、肛門がきゅうっと閉まる。下腹部が熱い。臓腑が蕩けているかのようだ。絶頂が近づいている。自分の知るモノとは比べ物にならない、途方もなく大きな絶頂が。  強烈なピストンを受け止める度に、喉の奥から「ひっ」と声が漏れる。結合部からぱちゅんと淫液が跳ね、身体に飛び散る。猪の手で握りしめられた肉棒が痙攣を繰り返し、下腹部に蓄積した熱が出口を求めて張り詰めている。 「あっ、あぁぁぁ……ッ」  もはや何も考えられない。ケダモノ同然に開け放たれた口から涎を撒き散らしつつ首を振る。イきたくない。こんな下種に弄ばれて痴態を晒したくなどない。それなのに身体はもう止まらない。もはや声すらも上げられなかった。龍人の喉から、ただ掠れた息だけが漏れ出る。 「~~~ッッ!」 ――びゅるうっ  猪の手の中で熱い液体が爆ぜる。溢れ出した精液が太い指に絡みつき、なおも激しく肉棒を扱き上げる動きによって泡立てられた。絶頂に合わせて痙攣する雄膣がひくひくと猪の巨根を締め上げ、先走りの液体を搾り取っていた。 「物欲しそうにしてんなぁ、そんなに俺のザーメン欲しいか? ……って聞こえてねぇか」  絶頂後も精液に塗れた手のひらで肉棒を弄ばれ続け、胎内を蹂躙する肉棒の感触と相まって、龍人は背筋を弓なりに反らせたまま、ガクガクと身体を痙攣させる。途方もない量の刺激が頭を埋め尽くし、悲鳴を上げることしかできない。  猪はあのお高く止まった龍人を自らの肉棒で屈服させたという満足感に、口元を吊り上げる。そうなると次は仕上げをしなくてはならない。龍人を犯し続ける剛直の根本では、精液のたっぷりと詰まった玉袋が張り詰め、開放の時を待ちわびている。  再び龍人の足を両脇に抱え込み、最も奥深くまで挿入できるよう体位を調整しながら、勢い良く腰を叩きつける。熟れきった淫肉が余すところなく肉棒を包み込み、龍人の身体の痙攣に合わせてヒクヒクと締め上げてくる。 「おら、しっかり受け止めろよ! 出すぞおい……ッ」  力強く打ち付けた腰を密着させ、龍人の身体を抱え込む。猪が豚鼻から大きく息を吹き出し、その鈴口から迸る大量の精液を肉壁へと叩きつけた。 ――びゅくっ、ごぽおおっ  それこそ鉄砲水が如き勢いで吹き出す熱い液体の感触が、龍人にも伝わっていた。雌として扱われ、雄の威厳を踏み躙られた証であるその液体が、腫れ上がった淫肉に擦り込まれてゆく。  生殖器を収めておく以上の役割を持たぬその穴では到底収まりきらぬ量の精液が結合部から溢れ出し、龍人の股を伝って床に水溜まりを作っていた。  猪が「ふぅっ」と大きく息を吐きながら肩の力を抜く。大きく口を開けたまま息も絶え絶えの姿を見せる龍人を見下ろしつつ、緩慢な動作で重たい腰を上げた。少しやわらかくなった肉棒を龍人の割れ目から引き抜くと、精液塗れの膣肉がめくれ上がり、雄の欲を満たすためのものとしか思えぬ淫らな穴が、龍人の股ぐらに出来上がる。 「ふぅー、とりあえず自分の立場ってのが分かったんじゃねぇの? んじゃ次は、ちゃんとその印をつけてやんねぇとな」 「しる……し……?」  身体を起こすことすらもできぬほど消耗した龍人が、弱々しく猪の言葉を繰り返した。しかしそれへの返事などなく、ここに連れてこられた時と同じように乱暴な手つきで鬣を捕まれ、壁際へと引きずられる。後ろ手に拘束された両腕を、今度は壁に繋げられた鎖と手枷を用いて万歳するような形で拘束され、彼は座したまま猪を見上げる。 「自分とこじゃどうだかしらねぇが、ここじゃ竜人は家畜なんだよ。だったら、ちゃんとそれらしい見た目にしてやんなきゃなんねぇじゃねぇか」  壁際の棚に乗せられた器具を手に取りながら、猪が楽しげに言った。その手には大ぶりなピアッサーと、ちょうど猪の手の中に収まるサイズの金属の輪が握られていた。 「手元が狂うから暴れんなよ?」  猪が龍人の下顎を掴み、顔を壁に押し付ける。これでは口を開くことすらできなかった。もごもごと口を動かし言葉にならぬ声を上げていると、その鼻先へとピアッサーが押し当てられる。 「ここいらの竜人とは結構顔立ち違ってやり難いな。……まあ行けんだろ」 「んっ、むぐ……ッ」  鋭い針が鼻の穴に差し込まれる。逃れようとするが、まだ身体に力が入らなかった。力なく龍人の身体が揺れ、鎖がじゃらりと音を立てる。  鋭い痛みが走る。温かな血がどろりと鼻の粘膜を伝っていた。根本に近づくほど太くなってゆく針が、今しがた開けた穴を拡げていく。  鼻から溢れ出した血液が上顎を伝い、口の中に流れ込んでくる。ほのかな鉄の味が口腔を満たした。猪がピアッサーを投げ捨て、手の中に握り込んでいた鼻輪を押し当ててくる。鼻の粘膜を貫通する風穴が更に拡げられ、家畜のそれを連想させる輪っかが龍人の鼻の穴に取り付けられていた。 「っ、ふっ、ぶふ……ッ、結構似合ってんぞ、見てて笑えてきやがる」  猪がまるまると太った腹を抱えて吹き出す。脱力した身体が耐え難い恥辱によって再び強張った。うるさいほどの鼓動が頭蓋の中に響き、鼻からの出血がひどくなる。  喉がカラカラに乾いてうまく声は出ない。下腹部に鈍痛が残り、腰の力が抜けて立ち上がることもできなかった。それでも、龍人は血走った目で猪を睨みつけ、その怒りを示していた。 「まあそう怒んなよ。最後の仕上げをしたら今日はもうお終いだからよ。……えーっと、お前は何番になんだっけな。他の捕虜含めて随分大量に仕入れたから、あーっと……、まあこんなとこだろ」  猪は手に取った鉄製の器具を弄っている。取っ手付きの棒の先端に、煤で汚れ黒ずんだ鏡文字の数字パネルを嵌め込む様子で、それが何であるかは龍人もすぐに察することができた。  壁掛けのランプを一つ、猪が手に取る。蓋を開け、下部のツマミを捻って火の勢いを強めた。数字をはめ込んだ焼きごての先端を熱しながら、龍人の体へと視線を向け、引き締まった身体にねっとりと視線を這わせる。 「本当なら番号付きのタグを適当に引っ掛ける方が楽なんだけどよ、てめぇみたいな跳ねっ返りは、すぐ自分で引きちぎっちまうからな。……さて、どこに番号ふってやるか」 「……ッ、下衆が……」  王ではなく、家畜であることの印を身体のどこに刻みつけてやろうかと思案する猪を見据え、龍人が吐き捨てる。やがて猪は赤く発行する程に熱のこもった焼きごてを持ち上げ、その先端を龍人の胸元へと向けた。 「あっ、あぁぁ……ッ」  鱗の表面が焼けただれ燃える異臭が広がる。龍人は痛みと熱で目を見開き、強張った身体がわなわなと震えていた。  熱い。痛い。焼けた鉄によって、高貴な血統に生まれたに家畜の印が刻まれてゆく。  浅く小刻みな呼吸を繰り返しながらその痛みに耐え続けていた彼であるが、消耗しきった意識はやがてぷつんと途切れ、暗闇の中に飲み込まれていた。 ×××  骨を軋ませる不快な振動が頭蓋に響いていた。ざりざりと、がりがりと、心まで同時に削ってゆく不協和音が木霊する。耳をふさぐことさえもできない。  さっきまで身体の一部であったそれが、王の権威の証とさえ言えたそれが、今まさに彼の身体から失われようとしていた。  あの猪の太い腕が前後に動き、雄々しい角にあてがわれた糸鋸の刃がより深く食い込んでいく。床にはすでに切り離された右の角が転がり、やがて頭蓋に鳴り響く不協和音が去ってゆくのと同時に、からん、と小気味良い音が足元から響いた。 「おほっ、大分いい感じの顔になったじゃねぇか? ここいらで鏡でも見てみるか? ほら、持ってきてやったからさ、気が利くだろ俺」 「……外道め……」  角を失った龍人の顔をより不様に飾り立てる鼻輪へと、太い指が引っ掛けられる。猪の持ち寄った鏡を覗き込むように仕向けられ、変わり果てた自分の容姿を否が応でも見せつけられる。  金色の瞳は心身の消耗によって曇り充血し、根本から切断された角に、以前のような威厳は失われた。鼻輪に指を引っ掛けられて思う様に顔向きを誘導される様は、弄ばれる家畜そのものであった。苦しげに吐息を漏らす半開きの口内には、真っ赤に腫れ上がった歯茎が並び、そこに牙は一本も残っていない。彼を弄ぶ猪の手に食らいつく意味すら、もうなかった。 「んじゃあ、イメチェンも済んだとこで、……きょーうーはー、どっちの穴にすっかな~」  壁に押し付けられながら、股間の割れ目と肛門を交互に指先で撫でられる。片や酷使によって腫れ上がった膣肉が度重なる拡張で元の形を忘れた淫穴から溢れ出し、もはや閉じることはなく自分の生殖器を収納するという本来の役目を果たせなくなった雄膣。片や数え切れぬ程の交合の果てに猪の肉棒の形を覚え込まされ、もはや苦もなくその全てを飲み込み搾り取った子種で胎内を満たすための器官に成り果てた雌穴。どちらも太い指先が掠める度に、期待に満ちた様子でヒクヒクと収縮し、淫液を溢れさせる。  捕らえられた日からどれだけの時間が経ったのか、窓すらないこの部屋で過ごしてきた彼にはわからない。だが、心はともかくとして、その肉体が完全に堕落し切るには十分な時間が流れていた。 「やめろ……、これ以上、余を貪るのは、やめてくれ……」  以前よりいくらか細くなった身体が、猪の巨体に押し倒される。龍人は震えながら懇願を繰り返す。どれだけ待っても、助けは来なかった。怒りによって心を奮い立てることも、もう限界が近い。  目の前で不潔な口がいやらしく開かれ、白く汚れイボだらけの舌が頬を撫でる。にちゃあ、と粘性の高い唾液が糸を引いていた。魚のようにのたうつ舌が、口の端を通り、その内部へと侵入を果たす。今や肉すら噛みちぎれぬその口は、食事よりも男を慰めるために使う回数の方が多くなっていた。  猪の舌が口腔を蹂躙してゆく。腫れ上がった歯茎に異臭を放つ唾液が擦り込まれ、舌先を絡め取られたと思うと、相手の口内へと連れ去られてしゃぶりつかれる。正直な所、男根によって臓腑を征服されるより、こちらの方が彼の心を苛んでいた。荒く粗野な舌使いによって貪られていると、それこそ捕食され食い潰されていく心地を味わうことになる。 「んっ、じゅっ、じゅる……ッ、んんっ」  雄の性を忘れたかのような女々しい喘ぎが、龍人の口から漏れる。確かな手応えに興奮を強めた猪の股ぐらが、熱く屹立し始めていた。内股に押し当てられるそれの感触を受けて、龍人の身体がびくんと震えた。  前と後ろの穴、どちらを使うかまだ決めあぐねている様子で、優柔不断な肉棒がそれぞれの『入口』を行ったり来たりする。その度に、二つの穴は自分を使ってくれとばかりにヒクつき、淫液を垂流す。 「ふっ、んんっ。……おい、どっちの穴を使って欲しいか言ってみろよ。どっちのおま●こ使って欲しいかさぁ」 「……ッ」  こらえきれぬ涙を瞳に溜め、蹂躙によって蕩けきった表情を浮かべる龍人へと、猪が問いかける。この体中を染め上げる肉欲に従い、言葉を放つ事ができるのなら、きっと苦しみなどなくなるのだろう。それでも龍人は、小さく頭を振って無言を貫いた。  心まで明け渡しせば、全てが終わってしまう。王ではなくなってしまう。絶対に、それだけはしたくなかった。この期に及んで生意気な反応を見せる龍人に舌打ちしたあと、意地の悪い笑みを浮かべ、腰を大きく揺すった。 「――っっ、あッ!?」  龍人が大口を開いて声を上げる。肛門に押し当てられた肉棒が、前戯もなしにその根本までを彼の腸内に突き入れられていた。身体の奥の、最も敏感な部分が急激に圧迫される。本来ならば一生知ることがなかったはずの、身体の芯に巣食う雌の悦びが、骨まで蕩けるような熱が、膨れ上がってゆく。  猪の肉棒をぴったりと包み込むよう繰り返しその形を刻みつけられた肉壁が奉仕すべき雄そのものを包み込み、ゆるゆると締め上げていた。つれない態度を取ってみせたとこで、その体はもうどうしようもないほどに堕ちきっている。  猪がピストンを開始すると、荒々しい腰使いから生み出される衝撃が背筋を伝って繰り返し脳天を射抜いていった。消耗しきった心を守ろうとする鎧が、雌肉へと打ち込まれる肉杭の一撃一撃によって剥がされてゆく。理性は快感の中に蕩け、誇りも矜持も霧散してゆく。 「はひっ、ひっ、いぎ……ッ」  嬌声を押さえ込むことを諦めてからどれだけ経ったろうか。行為が始まれば、誇り高い龍人の王はどこにもいなくなる。ただ一人の雌だけが残り、雄によって貪られ続ける限りその熱は冷めることを知らない。  再び口腔へと這い進む猪の舌へ積極的に応え、あれほど嫌悪した男の体液を啜り上げて飲み下す。丹田を突き上げられるたびに、塞ぐもののない前の穴からは潮吹きのような勢いで淫液が溢れ、互いの身体を汚す。  龍人の瞳から、ついに理性の光は完全に消え去っていた。狂気じみた雌の悦びだけがその目の中にあり、牙の残らぬ口は自然と笑みを作っている。  何も考えられない。何も考えたくない。もう何もわからない。ただただ、キモチイイ――。  気がつけば彼の両腕は猪の背に回されていた。肥え太った醜い身体へとしがみつき、自ら腰を降って直腸を擦り上げられる快感を愉しむ。  臓腑が蕩けていた。胎内にありありと感じられる肉棒に突き上げられるたび、体中を快楽の波が駆け巡る。むず痒い脳の奥で、何かがチカチカと瞬く感覚。絶頂のときが近づいていた。猪と自分の腹に挟まれ擦り上げられる肉棒から、先走りが滝のように溢れ出す。 「あっ、あぁっ、いっ、く……ッ、イく……! いっ、ああああああああ!」 ――ごぽおおおっ  龍人が絶叫とともに身体を反らせるのと重なって、猪が咆哮を上げていた。幾度となく味わった鉄砲水の如き精液の奔流が、腸壁に叩きつけられている。肉棒ですら届くことのない、身体の奥のそのまた奥へと、精液が流れ込んでゆく。穢らわしい獣の遺伝情報が、神聖なる龍の腸を満たしている。  子供の握り拳程もある睾丸で作り上げた精液を最後の一滴まで龍人の胎内に注ぎ込み終えると、猪は深く息を吐きながらその腰を引く。 「あひっ、……あっ、あっ! ひゃめっ、ま●こ、ま●こ壊れっ、る……ッ」  龍人が悲鳴を上げながら身体を痙攣させる。肉竿に強く吸い付いた直腸が、猪が腰を引くのに合わせて緩みきった穴からはみ出していた。赤黒い粘膜がめくれ上がって体外へと露出し、ゆるゆると蠢いている。  きゅぽん、と音を立てて肉棒を完全に抜き放たれるが否や、大量の精液が脱肛した雄膣から溢れ出し、ひやりとした外気が粘膜を撫でる感触にすら反応して、後戻りできぬほどに堕ちきった身体が痙攣し続けていた。 ××× 「……」  龍人は虚ろな瞳を宙に向け、なすがままに薄汚れた通路を引き摺られていた。  どこに運ばれるのか、次は何をされるのかなど、知ったことではない。知ったところで、何もできない。抗う気力などとっくに昔に消え失せている。  王であったときの輝かしい記憶は、もはや遠い過去のもの。ネジの緩んだ頭では、共に捕まった部下の兵士たちの顔すらよく思い出せなかった。  希望などどこにもない。たとえ死が待っていたとしても、この苦しみから開放されるならば都合が良いと思えるくらいだった。 「っ、ぁ……」  龍人が微かに顔をしかめる。饐えた臭いが鼻を突いた。ああ、公務で赴いた牧場で、似たような匂いを嗅いだことがあるなと、おぼろげな記憶が脳裏に浮かんだ。  蕩けきった頭にしては、正常な判断であった。彼が運ばれている先は、事実そのような場所である。比べ物にならぬほど悪趣味なものではあったが。 「んぐ……、ちゅ。着いた着いた。……んむ。ほら、見てみろよ」  もはや聞き慣れた猪の声が、何かを食っているのか下品な咀嚼音を交えて頭上から聞こえる。薄汚れ、ストレスから大半が抜け落ちた鬣を捕まれ、顔を上げさせられた。  目の前に広がるのは、ほぼほぼ思い浮かべたとおりの場所だった。硬い床の上に藁が敷き詰めら鉄の柵で仕切られている。真っ先に牛舎や豚舎を連想させるが、そこで飼われているのは彼の知る家畜ではない。  ――いや、知っている。そこにいる誰もが、彼を信じその背を追いかけ、共に虜囚となった兵士たちだった。彼と同じく、この国で元々家畜として扱われていた竜人たちとは異なる外見をした龍人たち。  しかし今やその誰もが彼と同じように角を奪われ、狭い策の中で枷を嵌められている。この『龍』舎の管理をしているらしい獣人たちが、彼らの口へとホースをねじ込み、ペースト状の飼料をその喉に流し込んでいた。男たちは過度の接触によって醜く肥え太り、数少ない雌は例外なくその腹に子を宿している。 「いやな、てめぇらなんざのためにこんな牧場整える必要あんのかって、最初は俺も疑ってたんだよ」  猪が何かを言っている。しかしそんな言葉など頭に入ってこなかった。捕らえられてから、彼はひたすら辱められ、貶められてきた。王という自負は粉々に砕け散り、淫売と成り果てた。……だが、貶められているのは彼個人ではなかった。彼の種族そのものが、奴隷以下の家畜として貶められている。 「まあでも、ホント見直したわ。お前らすげぇよ。ちーっと扱い難いが、いやさ、ひっさびさに衝撃走ったって感じだわ。ほら、お前も試してみろよ」  猪がそう話し、龍人の目の前にローストされた一欠片の肉片を投げてよこす。香辛料をまぶして程よく火を通した肉の香りが鼻孔を満たすが、今の彼では肉を噛み千切ることなどできはしない。猪もすぐそれに気づいたらしく、呆けた顔で「あ、そういやそうだった」と呟いた。  もったいね、と心にもない言葉を口にしながら、猪の足が肉片を踏み潰す。溢れ出す肉汁が、どこか懐かしい匂いを放っていた。食肉から感じ取ったことなど一度もないのに、ずっと前から知っているような匂いを。  龍人がわなわなと震えながら、柵の中に飼われた同胞たちを見つめる。まるまると肥えた彼らの中には、腕や足のいくつか、もしくは全てを失っている者が多くいる。捕虜となる前の戦いで失ったと言うには、あまりにも多く。  見開いた双眼の奥で、金色の瞳が揺れる。酷く狼狽した顔で見上げてくる龍人へと、猪は肉のカスが挟まった黄色い牙を見せつけながら笑みを浮かべてみせた。 「ああああ……、あ、あ、ああああああああああああああああああ!」  龍舎の中に金切り声が響く。龍人は声の限り叫んだ。疲弊し摩耗し、これ以上の絶望など味わうことなどないだろうと思っていた心が、今恐怖と絶望に軋んでいる。両目から止め処なく涙が溢れる。同胞たちの視線が絶叫する若き王へと向けられる。全てを奪われた地に堕ちた王の姿を見せつけられ、ある者は号泣し、ある者は諦めから来る乾いた笑みを浮かべ、またある者は何事もなかったかのように再び身体を横たえる。 「つーわけでさぁ、今国中の牧場がお前らが来るの待ちわびてんだよな。そのためにもさ、これから数を増やしてもらわねぇと困るんだよ。まあ、これから毎日頑張ってくれよ?」  猪が龍人の前にしゃがみ込み、爛れた股間から垂れ下がる、雌には不要の器官を掴んだ。  ……近いうちに、竜人牧場の品種目録に、新たな種類が書き加えられることとなる。 ××× 「はふっ、はふっ、ふ……ッ、が――ッ」  薄汚れた部屋の中、異形の龍人が蛇のようにのたうっていた。  より大量の精液を作り出すための投薬の結果、歪に肥大化した睾丸はその体内には収まりきらず、哺乳類で言う玉袋のように股間から垂れ下がっている。  赤黒く変色した肛門には腕ほどもある極太の電極つきバイブが捩じ込まれ、前立腺へと定期的に電気刺激が送られるたび、玉袋と同様に肥大化した肉棒から濃厚な精液が溢れ出していた。  囚われた龍人達の中でも特に優れた血統を持つ彼の仔らは国中の牧場から予約が殺到しており、搾精を休む暇などない。昼も夜もなく絶え間ない絶頂に晒され続ける日々の中で、龍人はかつての知性など失い、生まれついての白痴にしか見えぬ濁った目に歓喜の色を浮かべながら声を上げる。  言葉も忘れ獣の嘶きすら発せなくなった口から喘ぎ声を撒き散らしつつ、彼は今日も幸福の中に果てる。龍人たちを率いた誇り高い若王の姿はもはやどこにもなく、精液を生産するためだけに生かされた家畜だけが、そこに残っていた。 終


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