完落ち雄妊娠ボテ腹状態で尽くしてくれるナサスくん終
Added 2023-12-31 23:22:18 +0000 UTC前回 https://moke.fanbox.cc/posts/6916409 前〃回 https://moke.fanbox.cc/posts/6343646 前〃〃回 https://moke.fanbox.cc/posts/6273261 それ以前 https://www.pixiv.net/novel/series/10659827 明確に、その場の空気が切り替わる。煌びやかな財を蓄える金庫の中で、最後の儀式がついに始まろうとしていると、なんの説明もなくその実感が胸に生じていた。 ナサスは夫の所作を制止しようと試みることも、媚びへつらいの言葉を並べて平伏することもなく、その右腕にはめられた腕輪を魅入られたかのように見つめ、押し黙る。 赤紫の宝石から発せられる妖しい光と、その明滅の奥に揺らぎ垣間見える血走った瞳。人の心を失った超越者の成れの果てたるそれが、ナサスを見つめ返していた。 「お、おお……っ」 脈打つように光が揺らぎ、夫が苦しげな吐息を呻くように漏らしていた。見開いた眼孔の内で、縦に割れた獅子の瞳が震えいている。その矮躯に貸し与えられ、常にめぐり続けていたていたものが、本来の持ち主の元へと還っているのだと分かった。 贅沢によって肥え太り膨れ上がった腕には、まるで植物の根を思わせる隆起が無数に浮かび上がっていた。二の腕に収まる腕輪が、鼓動を打つかのように蠢きながら、夫の体に巡るものを吸い上げてゆく。 豊満な肉を揺らしてふらつく体に滝のような冷や汗が滲んでいた。窪んだ目元には深い隈が浮かび上がり、色褪せた獣毛は一層に萎び、この数秒で十年もの月日が流れたかと思うほど老け込んだようにさえ見える。 妻たればこそ、その光景は耐え難いほどに痛ましく感じられるものであったが、しかし悠久の時を経た悲願の達成を目前に控えた期待と喜びばかりが旨を満たして、得も言われぬ感動をナサスにもたらしていた。 明滅する光と同期するように、絶え間なく喜びが体を貫く。耳の先から足の指まで、体の全てが喜びに打ち震えている。 ……その極端な感情の動きの不自然さを自覚しながら、ナサスは抗うことなくうっとりと目を細め、口端を吊り上げた。 己の感情をも他者の望みよって支配され歪められることに、今更なんの抵抗も感じはしない。心も体も、今や己の全ては夫が所有している。 そう感じろと、夫が望んでいるのだ。そこに抗う理由など何ひとつもない。 (――しかし、これは……) だが、今回はこれまで経験したものとは違った。幸福感に蕩けた頭でも無視できぬ齟齬があった。 ナサスはだらしなく弛緩した呆け面を表情を僅かばかりに顰めながら、その違和感の源を辿る。 ……宝石に浮かぶ瞳へと釘付けになった視界の端に、夫が刻一刻とやつれ、よろめき、ついには膝をつく姿が見えた。 疲労と消耗に息を荒げながら、それでも夫は黄色い牙を剥き、狂気じみた笑みを浮かべていた。 それが愛する夫の見せる表情とは思えない。自制を忘れ欲望に狂い貪るばかりの獣と化した下衆な男が、そうも喜々として与えられたものを手放すはずがない。 愛する夫を想い、そのことだけを考え尽くし続ける妻としての思考。魂をも縛るその枷が、ナサスに忘我を許さなかった。 (――そうか) 今すぐ駆け寄りその肩を支えることが妻たる己の役目であるというのに、縫い留められたかのように体が動かない。 ……最愛の相手が苦しみ衰えゆく姿を目前で見せつけられながら、苦悩にも勝る高揚が胸に溢れて止まらない。 夫の願いによって形作られた在り方とすら乖離した想いが、絶え間なく押し寄せる波のように全身を駆け巡っている。 ――はは、は……っ 酷く不気味な、笑い声が聞こえた。複数の声が寸分の誤差もなく重なり合い、金庫の中に響く。 縫い留められたかのように動かぬ体を震わせながら、ナサスは瞳のみをせわしなく動かしてその声の主を探した。 ――ははは、はは……ッ 笑い声は一層に力強く響く。自らの内から湧き出るように近く、頭上から響くように遠く。 消耗に耐えかねて床へと膝を突きながらも変わらぬ笑みを浮かべ続ける夫の口から。脱力しきったまま吊り下げられたレネクトンの、だらしなく開いた顎から。そして貼り付けられたように笑みを浮かべ続ける自身の喉奥から。 (……そういうことか) 腕輪がまるで生き物であるかのように夫の腕の上を這い進み、手のひらへと移動する。 もはやその心と体の隅々までをも侵し尽くされた三匹の下僕の前で、それはついに本来の姿を表そうとしていた。 傷つき、衰え、かつて振るった力の多くを失い、朽ち果てるのを待つのみであった成れの果てが、ついに新たな器を得ようとする喜び。それがダーキンの魔力に染め上げられた身を通して出力されていた。 もはやナサスの意思がそこに入り込む余地などなかった。身を貫く喜びに喉が枯れるほどの笑い声を上げながら、見守ることしかできない。 「はっ、はぁ、はぁ……ッ」 重なり合う笑い声に不協和音が交じる。老い衰えた夫の喉から苦しげな咳が漏れ、それでもなお変わらぬ笑みを浮かべたまま掲げるようにその右手を突き上げる。 手のひらの上ではいつしか、宝石に浮かぶ血走った瞳を中心にみすぼらしい刃が作り上げられていた。 赤く発光する血管の如き筋を走らせる金属とも肉ともつかぬ鈍い色の刃。砕けたかのような断面を残して刀身の多くは失われ、今にも崩れ落ちそうなほどに脆く衰えている。 失われてゆく力への焦燥、強靭な器を手に入れるためとはいえ、下卑た小男の醜悪な欲望を満たすための取引に応じざる得なかった屈辱。喜びの奥底に沈殿したそれさえもが、己の感情であるかの如くナサスへと伝わってくる。 「はっ、はっ……っ」 掠れた笑みを絶やすこともできぬまま、夫がその肥え衰えた体へと鞭を打つように立ち上がる。 吊るされたレネクトンの体へとしがみつくようによりかかり、右手に握られた脆く頼りない刃を鱗に包まれた屈強な胸元へと押し当てた。 「あ゛あ゛ぁ……っ」 レネクトンの顎から、鼻を啜るように濁った蕩け声が漏れ出る。 かつてナサスが手ずから刻んだ紋がレネクトンの全身に再び浮かび上がり、焦げ付くほどの熱ともに赤く輝いていた。 そのさなか、鈍い刃は血の一滴すらも漏らさぬまま、沼へと沈み込んでゆくかの如くレネクトンの胸板へと吸い込まれてゆく。 玩具のようにこね回され幾度も作り変えられてきたレネクトンの意識は、その肉体を真に支配する主の訪れによって、ついに瓦解していた。 吊るされた体が弓のように撓りながら弧を描き、硬直する。目から、口から、鼻から、そして醜く爛れた股の割れ目から、体の痙攣に合わせて体液が溢れ出す。 超越者たる肉体に漲る力、その全てへとダーキンの支配が広がりつつあった。なんの抵抗もなく、乾いた布へと水が染み込んでゆくかのように、レネクトンの全てが呑み込まれてゆく。 やがて、硬直した体が少しずつ弛緩しはじめる。それに合わせて尻尾の先端、足先と、強靭な鱗から脆くくすむのが見えた。 突き上げた胸板だけが大きく揺れながら力強く痙攣している。その瞳に燃え盛る赤い魔力の発光が薄れ、意識すら消え失せた虚ろな瞳が宙を向く。 レネクトンの内を巡る力の全てが、胸の奥のただ一点へと向けて吸い上げられ、鼓動している。 そして、その鼓動ナサスを呼んでいた。 「……っ」 縫い留められたかのように動きを止めていた足が、一人でに動き出す。気づけば床に尻餅をつく夫の前を横切り、引き寄せられるようにレネクトンへと向けて歩んでいた。 レネクトンが捧げるように突き出した胸板の奥、そこから発せられる命令は一欠片の抵抗すらも許さずナサスを動かしていた。 「はぁ……ッ、ぁ……っ」 開いたままの顎から湿った吐息が漏れる。口腔に唾液が滲み出し、下顎を伝って床へと滴り落ちてゆく。 自らの体が何を命じられ何をするのか、もはやそれを決める権利すら残されてはいなかった。 他者の意思によって肉体を操られているとは思えぬほどの滑さで、両手はレネクトンの胸板へと向けて伸びてゆく。 そこへと手のひらを押し当てると、超越者として、かつてのナサスをも超える強靭さを誇った力強い筋肉の向こうに、今やその肉体を支配する者の鼓動を感じた。 そしてそれがこちらを招いていることを、理解する。 「……!」 よく研がれた刃物押し当てるかのように、レネクトンの胸板へと縦の切れ込みが音もなく浮かび上がる。 刃物すらも通さぬはずの強靭な鱗は裂け、分厚い胸筋がブチブチと音を立てながら断裂し、さしたる出血もないまま大口を開ける裂け目から、赤紫の光が淡く漏れ出していた。 夫との情事を邪魔せぬよう爪を丸くした指が、そこへと吸い寄せられる。裂け目に両手を引っ掛け僅かばかりの力を込めるだけで、鱗も肉も悲鳴を上げ、肋骨は枯れ枝のようにへし折れた。 孕み腹に力の大半を吸いつくされた今のナサスにとってすら容易いほどに脆く、レネクトンの肉体は新たな主の望むまま作り変えられている。 「――ッ、――ッ」 限界まで開かれた鰐の大顎から吐息とも悲鳴ともとれぬ音が響く。血と唾液と鼻水の混ざる生暖かい液体の飛沫がナサスの頭上へと降り掛かっていた。 むせ返るほどの血の匂いを吸い込みながら、しかし肉体は一切の反応を示すこともなく命じられた通りに動き続ける。 押し拡げられた裂け目からレネクトンの胸中を覗き込み、それを見つけた。 どくん、どくん、と力強く鼓動を続ける心臓。朽ちかけたダーキンの本体たる刃は消え失せ、宝石の奥に揺らいでいた血走った瞳はが無数の隆起を根のように伸ばしながら心臓と一体化していた。 腫瘍のごとく膨れ上がった不格好な管が、心臓を中心にしてレネクトンの内部に根を張り脈打っている。 超越者たる肉体に宿る全ての魔力と生命力を吸い上げられ、衰弱し萎縮した臓器に囲まれて、その心臓だけが力強く鼓動を続けていた。 (……そういうことか) 獲物の腹に頭を突っ込む狼のように、ジャッカルの顎がそこへと引き寄せられてゆく。滴る唾液をレネクトンの胸腔に落としながら、鋭く並ぶ牙をぎらつかせ、ナサスはそこへと食らいついていた。 感じたこともないほど強い鼓動が伝わってくる。滴る血の味が舌の上に広がる。レネクトンの胸板に突っ張った両腕に力を込め、獣のごとく唸り声を上げながら、レネクトンの持つ全てを吸い上げ、破裂しそうなほどの力を宿したそれを引きはがす。 ぶちぶちと肉の引きちぎれる音が顎に伝わるたび、もはや意識さえも失った弟の肉体が生理的な痙攣を起こし、その巨体を吊るす鎖を軋ませる。 引きちぎられた血管から溢れる鮮血に勢いはなく、ただ胸腔の底に溜まって湯気を上げるのみだった。 「ぐるっ、うっ、るうぅぅ……ッ」 ナサスの顎は唸り声とともに牙を食いしばる。一柱の超越者が持つ命と魔力の全てを内包した心臓は、鋭い牙を持ってしても傷の一つすらもつかず、その鼓動が止まることもなかった。 そこから伸びる強靭な管は、引き絞られ悲鳴を上げながらもレネクトンの胸腔と繋がり続け、もはや痙攣すらしなくなった抜け殻の如き肉体を揺らしていた。 「――ッ」 口腔に収めた心臓は、まるでそれこそが主であるかの如く、ナサスの肉体へと命令を下す。 引き伸ばされた管をつかみ、丸められた爪を立て、残された膂力の限りを尽くすよう強いり続け、そしてついに目的を果たした。 「んッ、ぐ――ッ」 ぶつん、と音を立てながら最後の管が引きちぎれると同時に、心臓は生き物のように蠢きナサスの喉奥を目指した。 拳ほどもあるそれに喉を押し拡げられる感覚に込み上げる吐き気は、しかし肉体の動きに反映されない。 水底で空気を求めるように天を仰ぎ鼻面を仰け反らせながら、鼓動を続ける心臓の丸みがナサスの喉に浮かび上がっていた。 どくん、どくん、と。己の鼓動よりも強く響くそれが喉から胸へと下降してゆく様を、呼吸も許されぬまま感じながら、見開いた瞳を苦悶に揺らす。 「――ッ、が、は……ッ!」 ついにその鼓動が胸の内に降りると同時に、ナサスは喉に残る鮮血を吐き零すように悶え崩れ落ちた。 全身を支配していた命令が前触れもなく弱まり、糸が切れたかのように体が脱力する。胸の内で耐え難い熱が膨れ上がり、何もかもが蕩け果て混ざり合っているかのようだった。 「あ゛ッ、あ゛ぁあああッ、あ゛ァ……ッ!?」 強く脈打ち続ける熱い塊が膨れ上がる孕み腹へと向けて動いている。経験したこともない感覚に全身の筋肉が弛緩と硬直を繰り返し、喉の奥から金切り声が溢れて止まらない。 レネクトンの持つ力の全てを奪い取ったダーキンがその魔力とともに放出するあらゆる感情が、ナサスの思考を上書きするように幾度も脳髄へと叩きつけられる。頭蓋の奥で稲妻が迸るような痛み、その苦悶すらもが狂気じみた喜びやさらなる力への期待といった感情に切り刻まれ、掻き混ぜられている。 自身に与えられた唯一の役目、夫を想うことさえも忘れ、ナサスは膨れ上がった腹を揺らして悶え続ける。 「――ッ、――ッ」 孕み腹の奥に形作られた器へとついにその主が辿り着いたときには、声さえ枯れ果て掠れた吐息を漏らすことしかできなくなっていた。 あらゆる体液に塗れた顔を引き攣らせ天井を仰ぎながら、か細い呼吸を繰り返す。意識さえ失いそうなほどの消耗に震えながら、しかしナサスの役目はまだ終わっていなかった。 ――どくん。 ナサスの胎へと収まったそれが、ひときわ大きく脈打つ。羊水に浮かぶ肉塊がついに意思とともにその身を震わせ、へその緒を通じてナサスに残ったものさえをも吸い尽くそうとしていた。 「ぁ……ッ」 身に残る一握りの魔力さえもが吸い上げられてゆく。超越者へと生まれ変わってより絶えず感じていた力の流れが消え失せ、半神たる肉体がただの人へと堕ちようとしていた。 しかし、それでもなお足りぬと、胎に宿った邪悪な意志がナサスへと命令する。抗うことなどできない。消耗しきった体を緩慢に動かしながら、ナサスは床を這い進み、今や静まり返った抜け殻とかした、弟の躯を見上げた。 力なく垂れ下がる尻尾と脚へしがみつくようにしながら体を起こし、胸から胴へと続く裂け目を目指す。 腹の奥からただ一つの命令がナサスへと叩きつけられていた。その命令を後押しするかのように、耐え難い飢えと渇きが身を苛む。 湯気を上げる血の匂いが鼻腔へと流れ込むたび、唾液が溢れて止まらない。 「はっ、ん、むぅ……っ」 ナサスは命じられるがままに、未だ温もりの消えぬ柔らかな肉へと食らいついていた。噛みちぎった内蔵を咀嚼もせず嚥下し、すぐにまた食らいつく。 弟の亡骸さえをも喰らいつくし、胎に宿したそれへと糧を与え続けること。その命令が体を突き動かす。 閉じることも許さぬ目から溢れた涙が血に塗れたジャッカルの顔を伝い、胸腔に溜まる血の中へと滴り落ちる。 今やナサスに残された唯一の願い、夫だけを想い尽くし続ける妻としての愛情さえ、絶えず叩き付けられる命令の前には無力だった。 貸し与えられていた力を奪われ打ち捨てられた哀れな夫へと背を向け、労いの言葉を囁くことすら許されない。その苦悩に涙が溢れ続ける。 欲望と執着によって魂へと焼きつけられた呪いの如き想い、それさえをも踏みにじられながら、英雄は弟の亡骸を貪り食う獣へと堕ちた姿を晒していた。 ☓☓☓ 「ただの一夜で、随分と育つものだな……」 冷たい床の上に体を横たえるナサスへと、絶えず思い続けた愛しい夫の声が届く。 それは決して労いや気遣いを含む言葉ではなかったが、それでもナサスは陣痛に耐え固く閉じていたまぶたを開き、魔力の光を完全に失った瞳で凛々しい顔を見上げ、乾いた血のこびり着く疲れ切った顔に弱々しい笑みを浮かべた。 その声は少しばかり張りを失い、その見た目にも確実な衰えが現れてはいたが、少なくとも未だ年相応以上の活力は保っているように見えた。 「しかしまあ、お前なら耐えられようさ」 「……ッ、は、い……っ、かならず、や……っ」 一晩の間でさらに二周り以上も膨れ上がった孕み腹、そのへその辺りに浮かぶぽこりとした隆起を夫の指先でなぞりあげられる。その甘いこそばゆさは、いよいよ強烈に途切れなく湧き上がる陣痛すら忘れるほどに心地よかった。 消耗する夫の顔を見ることすらできぬまま、一晩に渡り弟の躯を喰らい続けた苦しみさえも、夫と言葉を交わす喜びの中に溶けてゆく。 「はは、本当に健気な妻だ……」 やはり少なからぬ疲労が残っているのだろう。夫は身を屈めて手を伸ばす代わりに、立ったままその右足をナサスの頬へと寄せる。 「あぁ……っ」 ナサスは夫の示す愛情と、その体温の優しさに甘く鳴きながら頬ずりをする。命じられるまでもなく、夫の差し伸べた足先にどう応えれば良いかを理解できた。そして心からの恭順とともに、その行動を選んでいた。 妊婦としてすら異常な大きさへと膨れ上がった腹の重みに圧され、立ち上がることもできぬ無様な姿を晒しながら、頬に寄せられた足先へと音を立てて口づけをし、いくつものピアスに彩られた剛直を熱り立たせる。 使い込まれた肛門が愛しい夫を求めて一人でに収縮し、それに合わせるように跳ね上がり揺れる肉棒が、膨れ上がった腹をノックするように繰り返し叩きながら透明の雫を散らす。 「ふむ……」 そして、その痴態を見下ろす夫が小さく舌舐めずりする様を、ナサスは見逃さなかった。途絶えることのない陣痛も、身を苛む疲労も忘れて、期待に鼓動が高鳴ってゆく。 窪み、色の薄れた獅子の瞳が、それでもなお変わらぬ欲の色に染まってこちらを見下ろしていた。膨れ上がった腹を揺らして期待に打ち震える雌犬の姿を、舐るように見つめられる。 尻の奥に熱が込み上げる。そそり立つ肉棒から溢れる先走りが玉袋を濡らす。鉛のように重い体をそれでもなお懸命に動かし、ヒクヒクと震える縦に割れた肛門を見せつけるように股を開く。 「……妻の初産だ。手伝ってやるのが夫の役目というものだな」 出産を控えた妻を前にして身を屈め額を撫でてやることさえしなかった怠惰な男は、しかし己の欲望のためにその背を丸める。 膨れ張り詰めた腹へと覆いかぶさるように身を寄せながら、その指先がナサスの股ぐらへと伸びた。 肉棒を彩るピアスを爪の先で弾かれ、滴る先走りに濡れた玉袋に浮かぶ睾丸を弄ばれ、期待に満ちて収縮を続ける肛門へと触れられる。 「お゛ッ、ほおっ、お……っ」 潤滑に満ちた腸内から溢れ出す愛液が縦に割れた淫肉の間から滲み出していた。指の腹で優しくそこを撫でられるたび、粘液を纏って震える卑しい穴が、ちゅ、くちゅ、と湿った音を立てる。 愛する相手を感じるための場所を、その待ちわびた相手に触れられる。それだけで狂おしいほどの熱が込み上げて、尻の奥がたまらなく疼いた。 「これから子を産むのだからな。しっかりと解してやろう……」 「は、ぃ……ッ」 濡れそぼった雌穴へ挿し込まれる指先を歓迎するように、淫肉を震わせてきゅうきゅうと締め付けながら、見え透いた欲望を隠しもせぬ見せかけだけの労りの言葉、その甘く蕩けるような響きを噛みしめる。 心地よかった。愛する相手に求められ、それに応える。こうして夫と触れ合うたびに、色褪せぬ幸福感がナサスを満たした。 「あ゛ッ、はっ、ああっ、……ッ」 夫の指を包む獣毛に肛門を擦り上げられる狂おしい刺激、男を喜ばせるための器官とかした柔らかな腸壁をこね回される快感、なんど味わおうとも変わらずナサスを魅了し続けるその感覚に、ぶら下げたピアスを揺らして肉棒が跳ね上がり、ぷしゅうと潮を噴いて透明の液体を散らす。 夫の指使いに合わせて腰をくねらせ、雌穴を締め上げては緩めてと繰り返しながら、挿し込まれた指先の体温と愛おしい形を体の最も敏感な場所で貪るように味わっていた。 二本、三本と挿し込まれる指の数が増えるたび、分厚く育った雌穴が大きく口を開けてそれを呑み込み、さらに深くへと導くように夫の手に吸い付いていた。 その卑しいほどの手応えに、指の動きが激しさを増してゆく。膨れ張り詰めた腹に阻まれ夫の顔を見ることもできなかったが、黄色い牙を剥いていやらしく笑う凛々しい表情が目に浮かぶようだった。 「……こんなものではまだ足りんか」 「――ッ、ひっ、あぁ……!」 一人呟くような囁きとともに、ずちゅん、と音を立てて夫の指がひときわ深い場所を押しつぶした。 その快感に息を呑み腰を震わせるナサスをさらに追い詰めようとするかのように、悲鳴をあげる雌穴へと押し当てられた手に力が籠もる。 五本の指を束ね窄めるような形を作りながら、弟の剛直以上に太いものなど受け入れた経験などないそこを、丸々と肥えた拳そのもので拡げられてゆく。 「ぎ、あ……ッ、あぁ……!」 夫の丹念で繊細な行為からは一度とて感じたことのない痛みに、大きく開いた顎から悲鳴を上げる。 孕み腹の重みに縫い留められた体では逃げることもできず、シワの一つすらもなくなるほど拡がり張り詰めた秘肉がヒリヒリと焼け付くように感じられた。 「はぁ、ぁ……ッ」 だが、貪欲に雄を求め続ける雌穴は、夫の手に食らいつき決して拒もうとすらしなかった。 押し拡げられ楕円に歪んだ淫肉と指の隙間から愛液を滴らせ、おっとはそれを絡め取るようにしながら優しく手首を撚る。 張り詰めた穴の縁を余さずなで上げられる快感に甲高い嬌声を漏らしながら、経験したこともない質量に雄膣を征服される期待が膨らんでゆく。 愛液に塗れた手がぐりぐりと動きながら、ナサスの内へと挿し込まれてゆく。 柔らかな肉に覆われた手の甲、握られた拳に浮かぶゴツゴツとした関節の隆起。今まで内側から感じたことのない形が、柔らかな腸壁にくっきりと刻み込まれていた。 「あぁ……!」 丸めた拳がついにその手首まで雄膣へと収められた瞬間、ナサスはその圧倒的な質量に感嘆の声を漏らす。 柔らかく肉の付いた手首をきゅうと締め上げながら、快感に震える腸壁で愛する相手の拳を舐り尽くす。 もはや痛みはなく、弟だけがあの醜く爛れた穴で味わってきた快楽を、ついに自分も知ることができたという充足感に破顔する。 「――お゛ッ、ひぃ……ッ」 丸めた拳が押す膣の中で拡げられる。手のひらの飢えで固くカサついた肉球、拡げた五本の指、敏感な腸壁をそれらでこね回される快感は、今まで与えられたどんな愛撫よりも強烈にナサスを責め立てた。 思うままに動き回る指で腸壁を掻きむしられ、抓りあげられたかと思えば、再び丸めた拳で前立腺を押し潰すように圧迫される。 ナサスは天を仰ぎながら獣のように吠え、暴れまわる肉棒は壊れたように潮を吹き続ける。 だが、それでもなお、行為は未だ終わらない。 「――オゴッ!?」 豊満な肉を揺らしながら、夫がその腕を前後に動かす。今まで受け入れた何よりも太く硬い質量を雄膣の奥へと幾度も叩きつけらる衝撃に貫かれて、脳髄が揺さぶれるかのような心地だった。 じゅぽん、じゅぽん、と聞いたこともないほど下品な水音が尻から響く。押し拡げられた肛門の隙間から流れ込む空気が、拳を突き入れられる衝撃によってぷすぷすと音を立てて排出される。 その激しさに意識さえ途絶えそうになりながら、もっと、もっと味わいたいという渇望ばかりが胸を支配していた。 「お゛ォッ、ひっ、いいぃいいいい゛……ッ」 その無遠慮なノックへの不快感を示すように、膨れ上がった孕み腹が引きつるような感覚が走った。 絶え間なくナサスを襲っていた陣痛はさらにその激しさを増し、ついに産まれ落ちる準備を終えたそれの胎動が、膨れ張り詰めた腹を揺らす。 ――プシュッ 夫の腕で掻き回され押し拡げられた肛門が震え、乳白色に濁った液体が湯気を立てながら溢れ出す。 「はは、ついにか……っ」 夫が期待に満ちて震える声で唸る。シュリーマに残った最後の二柱の超越者、その二人が持つ力の全てを吸い上げ作り上げられた器が、邪悪な意志を宿して産声をあげようとしていた。 「――ッ」 道を開けるように夫の腕が引き抜かれてゆく。浅ましくその手首に吸い付く雌穴が隆起する。下品な破裂音を伴いながら捲れ上がり、羊水を滴らせる粘膜を晒した。 だらしない楕円の形に口を開け肛門からは裏返った雄膣が露出し、ナサスがその身を震わせるたびに温かな羊水を吐き溢す。 ついに出口を開いた支給の内で、産まれてはならぬ魔がその身を捩り、そのゆりかごから抜け出そうとしていた。 「――っっっ!!」 ――びゅるうううっ! ナサスが息を呑みながら悶絶するさなか、しかしいきり立つ剛直は狂ったように震えながら白濁液を撒き散らす。 食いしばった牙がガチガチと音を鳴らし、痙攣する胸板を突き上げるように背を曲げながら白目を剥いた。 生物とも無機物とも分からぬ硬い表皮に覆われた何かが、雄膣をはち切れるほどにこじ開け、子宮から溢れ出す大量の羊水の流れとともに這い進む。 「おお、なんと力強きお姿だ……っ!」 緩みきった肛門へとさらなる負荷を与え拡げながら、ついに顔を出したそれへと向け、夫が媚びへつらうように叫ぶのが聞こえた。 粘液に塗れ、しかしざらついた表皮が、腫れ上がった粘膜を掻きむしる。痛みとも快楽とも分からぬその狂おしさに悶えながら強ばる両の脚を夫の手に押さえつけられ、広げられる。 「は……ッ、か、ひゅ……ッ!」 食いしばった牙の隙間から浅く早い呼吸が零れ落ちる。硬い手足が床を掻く耳障りな音とともに、ついにそれの産声がナサスの耳へと届いた。 『――ッ、――ッ』 高く、低く、得体の知れぬ不協和音じみた産声が、身を貫くような凶兆を伴ってナサスを戦慄させた。 もはやナサスからは奪い去られ、知覚することさえもできぬ超越の魔力が、レネクトンから奪われたそれと邪な意思のもとで混ざり合い、束ねられ、強烈な存在感として迸っていた。 ただの人も同然に堕ちた身にすらも感じるほどに濃密な魔力。その圧倒的な力を漲らせて、それは翼もないまま歩くような自然さで宙へと浮き、横たわるナサスを見下ろした。 「……っ」 その歪な成り立ちを示す混沌とした獣の姿がそこにあった。ナサスとレネクトン、二柱の超越者たる兄弟から奪った力を取り込み、不均衡かつ非対称に接いだ異形の姿は、今もナサスと繋がったままのへその緒を揺らしながら宙に浮いている。 その双眼は悪意に満ちた赤紫色の光を湛え、その奥には薄っすらと獅子それと同じ縦に割れた瞳が揺らいでいた。 額には、宝石の奥に幾度も垣間見た黄色く血走った瞳が座し、奪い取った力を誇るように瞼を細めナサスを見下ろしていた。 「――っ、ぁ……ッ」 そしてそれは、かつてをも上回る力を手にしてもなお、蛇のような貪欲さでナサスを貪った。 何ひとつも残しはしない。かけらほども食い残しはしないと、その欲望を示すように、未だ繋がり続けるへその緒からナサスの身に残る魔力の残滓すらも吸い上げられてゆく。 食器に残る肉の脂を卑しく舐るように、それはナサスという皿にこびりついた魔力の残り香すらも奪い尽くし、平らげる。 「ぁ……」 ナサスに残されたのは、かつて超越者であったときの姿かたちを残すのみの、抜け殻の如き肉体のみだった。 役目を果たし終えたへその緒は音を立てながらちぎれ飛び、いくらか萎み張りを失いつつあるナサスの腹へと投げ出された。 「なら、ぬ……っ」 ナサスは弱々しく掠れた声を絞り出し、力の入らぬ手をそれへと伸ばす。 行かせてはならない。あれを放置してはならないと、消耗し滑りの悪くなった頭でもそれだけは分かっていた。 解き放たれたダーキンに対抗し得る超越者はもはやなく、欲望のままに振るわれる力はシュリーマの民を脅かし続ける。 もはや何ひとつの力すら残されぬ身でありながら、シュリーマ守護する超越者たる使命感に突き動かされ、ナサスは鉛のように重く消耗しきった体に鞭を打ち、湯気を立ち昇らせる羊水に塗れた床を這う。 静かに宙を漂うそれが、赤褐色の表皮を濡らす羊水を垂れ下がるへその緒から滴らせ、醜く肥えた裸体を晒しながら平伏する小男の頭上を通り過ぎ、金庫の出口へと向かう様を疲弊し霞んだ瞳で追う。 蝶番を軋ませながら、金庫の扉がひとりでに開いてゆくのが見えた。蝸牛の如き緩慢さで地を這い追いすがるナサスを、それは一瞥すらもせぬまま、夜闇の広がる扉の向こうへと消えてゆく。 「あ、あぁ……っ」 喉の奥から、消え入りそうなほどに弱々しい絶望の声が零れ落ちる。倒れ伏した体から力が抜け、それ以上進むこともできなかった。 床に薄く広がる羊水の溜まりに項垂れたジャッカルの顔を埋めながら、己の犯した過ちの重さに打ちひしがれ、押し黙る。 「……なに、子などまたすぐ仕込んでやろうとも」 その静寂を遮るように、もはや英雄とは呼べようもない頼りなく震える背中へと、耳に障る猫なで声が投げかけられる。 床に溜まる羊水を素足で掻き混ぜる足音がナサスの背後に迫っていた。 「邪魔者も去った今、これよりはなんの柵もなく夫婦の愛を育むのみの日々が始まるわけだ。……お前も嬉しかろう?」 「……っ」 欲望のままに貪り、搾取し、肥え太り続ける下衆な男が、思い描く妄想に酔いしれながら囁く愛の言葉。 その薄ら寒さに背筋がぞわりと震える感覚を覚えながら、ナサスは己の身に起こった変化に気づき、息を呑む。 絶えずナサスの思考を縛り、ただ一人の男を夫と呼び愛するを強いてきた枷、魂までをも侵す邪な魔力による呪いは、もはや消失していた。 ――いったい、いつから。 驚愕し浮つく頭に浮かぶ疑問のままにナサスは己の記憶を辿り――、そしてより一層に深い絶望に直面する。 「我は……っ、嗚呼……っ、嗚呼……!」 醜悪な欲望に身を焦がす下卑た男を夫と仰ぎ、その妻として愛し続けた記憶。 その薄汚い欲望を満たすために己の立場をも利用して謀り、裏切り、使い捨て、すべてを捧げ続けた記憶。 許されるはずもない罪のどれもが、心からの幸福感を伴って鮮明に蘇る。 「はっ、はッ……!」 自らの手でなにもかもを捨て去って置きながら、今頃になって湧き上がる焦燥に息を荒げながら、ナサスは狼狽し悲痛に歪んだ顔を上げ、金庫に積み上げられた財を見回す。 娼婦のように淫らな舞を演じ欲望に染まる視線を釘付けするべく、卑猥な衣装を彩るため盗み出した宝石の数々があった。落ち度もない使用人や文官へとその濡れ衣を着せて処断した。 土地や商売の利権を示すスクロールが籠に並んでいる。それを得るために所有者を罠に嵌め、失墜させ、その果てに身一つで砂漠へ放り出された者も、自ら命を断った者もいた。 繰り返す不正と暗躍に気づきかけた正義感溢れる者もいた。あるときは弁解の機会さえ得られぬよう画策して牢へ送り、あるときは命をも奪って黙らせた。 どんな命令であろうと、ナサスの言葉を信じ疑いもせず忠実に仕え続けてくれた者たちもいた。邪魔者を消すため、国庫から盗み出した財を足がつかぬよう洗浄するため、彼らの忠誠を嘲笑うように使い潰し、最後には命を奪い口を封じた。 「……ッ」 そしてきらびやかな財の数々から離れた金庫の隅には、真新しい躯が無惨に打ち捨てられていた。 獣に内蔵を食い荒らされ、鱗皮と骨を残してがらんどうになった胴体はひしゃげるように折りたたまれ、かつて内包していた魔力の光も消えた虚ろな瞳は、水気を失って眼光の奥へと窪みながら、それでも何かを訴えるようにこちらを向いている。 全幅の信頼を寄せる兄の言葉を信じ騙されたが故に、ただ性欲と所有欲を満たすための道具として捧げられ、誇りも、尊厳も、心さえも踏みにじられた。 畜生として扱われ、嘲りと被虐のみを与えられ、その末にダーキンを解き放つための生贄とされた挙げ句、獣と化した兄によってその躯さえも食い荒らされた。 「……」 この金庫に積み上げられた全てが、重ねた罪そのものであると同時に、ナサスを英雄たらしめていたものの残骸だった。己を縛り続けた枷からついに解き放たれた英雄は、しかし重ねた罪の重さに屈し、丸めた背を震わせながら目を伏せる。 (ああ、どうか……) 突きつけられた罪の前で、考えることすら許されぬはずの願いがナサスの胸に浮かんでいた。 伏せた顔を再び上げることもできず、物言わぬ躯となった弟の、そして植え付けられた作り物の愛に酔い痴れて犠牲にした者たちの視線が、震える背に注がれている気がしてならない。 己の罪と過ちを意識するほどにその重圧はナサスを苛み、決して望んではならぬ言葉を形作り、胸の内で悲鳴の如く吐き出された。 (今一度、あの甘き夢に堕ちてしまえれば……) あらゆる不義の葛藤から解き放たれ、胸を満たす愛の甘さのみを噛み締め生きる、夢の中。一度知ったその味が、英雄の魂を蝕んでいた。 もはや叶わぬそれを想い、蹲りながら震えるナサスへと、求めてやまぬ男の手が伸びる。 「ひ……ッ」 肥えたイモムシのごとく丸くなった指に浮かぶ固く乾いた肉球が、ナサスの腰を撫でる。 己を堕落へと誘ったそれへの耐え難い嫌悪と同時に、体に染み付いたゾクゾクと背筋を昇る快感に悶え、ナサスは込み上げる涙に震え、湧き上がる恐怖をも隠せぬ悲鳴を上げていた。 「はは、英雄といえど男の身で経験する出産には身が竦んだようだな。……そう震えずとも、愛する夫の包容で癒やしてやろうさ」 腰から尻へとを撫で上げられながら、小男が熱の籠もった声で囁くのを聞かされる。 その手で触れられ、その声で囁かれるたびに、かつて経験した蕩けるほどに甘い高揚と、今湧き上がる生理的な嫌悪が胸の内で混ざり合い、怯える生娘のように体が動かなくなった。 その手を今すぐにでも跳ね除けて逃げ出したい。もっと、何もかも忘れてしまうほど蕩けてしまうまで抱かれたい。枷から解き放たれた心に浮かぶ叫びと、体に染み付いた快楽の記憶がもたらす欲求がせめぎ合っている。 ジャッカルの顔は耐え難い不快感に滲む冷や汗に濡れながら、しかし幾度となく繰り返した甘い情交への期待に蕩け弛緩する。 丸めた背に、両手のひらを押し当てられ、ナサスが罪を重ねながら捧げ続けた富によって肥えた体の重みがのしかかった。 ごわごわとした獣毛に包まれる豊満な腹が尻を擦り上げ、どしりとその上に乗る。その体温と柔らかさを味わうほどに、妻として躾けられた体に熱が込み上げた。 「や、め――ッ、あぁ……ッ」 やっとのことで絞り出した声はか細く掠れ、熱く硬いモノが尻の割れ目へと押し当てられる甘さを前に途絶えてしまう。 出産の負荷に晒された肛門は、今なお緩みきり、捲れ上がった粘膜を脱腸させ、へその緒を垂れ下がらせている。 「オ゛ォッ、んんん……ッ」 そのまろび出た雄膣を弄ぶように、小男の黒ずんだ魔羅をこすりつけられ、こね回される。 狂おしい快感が雷のように背筋を伝い、幾度となく経験した多幸感が溢れ出し、蟠る葛藤を溶かしてゆく。 頑なに伏せたジャッカルの顔は、しかしその広角を吊り上げつつあった。 「だらしない雌穴に、夫が活を入れてやろう……ッ」 捲れ上がった肛門から垂れ下がる雄膣を撫で下ろす黒ずんだ亀頭が、ゆるく羊水を滴らせ続ける穴を目指して迫ってくる。 胸の底から湧き上がる期待は、もはや下衆な男への嫌悪に遥かに勝る物となっていた。 「あぁ……ッ」 うつむく顔に蕩けきった歓喜の笑みを浮かべながら、胸に空いた穴が快楽によって塞がれてゆくのを感じた。 ……抗うすべもなく胸に植え付けられた愛に酔い痴れ、全てを失った。そして、ただ一つ残った愛をも取り上げられた。だが、この背筋を染める快楽だけは、残っている。 突きつけられた救いに抗う力は、もうナサスのどこにもありはしなかった。 「オ゛――ッ!?」 脱腸し垂れ下がる雄膣が黒魔羅に掬い上げられ、緩みきった雌穴の内へと叩きつけるように押し戻される。 幾度となくナサスに至福の瞬間をもたらしてきた肉棒で、狙いすましたかのごとく前立腺を突き上げられる快感に、ナサスは項垂れた頭を振り上げるようにしながら、快楽に濁った悲鳴を上げた。 「そうだ……ッ。ようやく緩みきった雌穴の締め方を思い出したようだな……ッ!」 赤子を産み落とし弛緩していた肛門は、番たる黒魔羅に射抜かれる悦びに打ち震えるかの如く締め付けを取り戻し、いやらしい音を立てて雄を締め付ける。 (嗚呼……ッ) ナサスは胸を高鳴らせながら、何にも勝る充足感を噛みしめる。まるで対となる錠前と鍵のように、自らの雌穴とこの男の肉棒が運命じみた相性で結びついていることを否定できなかった。 「あっ、ひぃっ、あぁ、あああ……ッ!」 甲高い、女のような喘ぎ声が喉の奥から溢れる。涙とよだれを撒き散らし、ずずと音を立てる鼻先から鼻水を垂らし、もはやあの下衆な男を夫と呼んでいた頃と何も変わらぬ痴態を晒していた。 背にのしかかる罪の重みも、取り返しのつかぬ過ちへの呵責も、この快楽に酔い痴れている限りは目を逸らし続けられる。 ……然らば、さらに。さらに深く、なにもかもを忘れてしまうほど深く。 「さあ、また次の子を仕込んでやろう……ッ! しかと受け止めろ……ッ!」 「はっ、はぁっ、あ、あぁっ、ひぃ――ッ!」 にわかに激しさを増すピストン運動と、腸壁を通して感じる魔羅の震え。子種を注がれる予感に、尻の奥がより一層に熱く疼いて、雌穴は肉棒へと強く締め上げる。 未だ滴り続ける羊水が愛液と混ざりながら泡立ち、ばちゅん、ぼちゅんと繰り返される破裂音とともに飛沫となって撒き散らされる。 二度、三度、と繰り返されるたびに激しさを増すピストンは、ついに振りかぶるような溜めを作り、肉棒へと絡みつく雌穴を捲れ上がるほどに引いた末に、ばちゅんと音を響かせて動きを止めた。 ――びゅるううううううっ! 「はあぁ……ッ」 温かな子種が深くへと注がれるのを感じながら、その充足感に熱い吐息を漏らす。雌の悦びを教え込まれた体に感極まるような震えが走り、腰から耳の先へと痺れるような快感とともに駆け上ってゆく。 ……これだけだ。己の内に残っているものは、もはやこの快楽唯一つ。これを手放すことなど、できなかった。 (すまぬ……、我はもはや……) 虚ろに窪んだ瞳をこちらへと向け続ける弟へと向けて、口に出すことも烏滸がましい謝罪の言葉を胸の内で呟いた。 緩み蕩けた顔が、悔いるように眉を潜め、そして追い立てられるように与えられる快楽に崩れる。 「おご――ッ!?」 どんよくに雄へと喰らいつく雌穴から、ぐぽんと音を立てて黒魔羅が引き抜かれる。その刺激に腑抜けるような声を上げながら、ナサスは大きく背筋を跳ね上げ、そして再び脱力する。 床に横たえた耳元へと、素足で床を踏みしめるひたひたという音が届いた。 ランプの薄明かりを遮り、ナサスの顔を影で多いながら、未だ種汁を滴らせる黒魔羅を突き出して、小男が囁く。 「……せっかくの新たな門出だ。愛しい妻が、この魔羅に愛を誓う様を、また見せてくれんか?」 「……」 ナサスの脳裏に、全てが狂い出したあの夜の記憶がよぎる。永き命の中で積み上げた全てを捨て去り、雌犬へと堕ち果てるきっかけとなる過ちを犯した夜。 ……あの夜、己が正しい選択をしていれば、こうはならなかったのだろうか。 そんな考えが頭に浮かんだ瞬間、快楽に溶け目を背けたはずの苦悩が、再び胸に重たく蟠るのを感じた。 呼吸が乱れる。体の芯が熱を失って、痺れてゆく。喉に何かがつかえて言葉が出てこず、小男の求めに応えることも拒否することもできない。 「ハッ、ハッ、ハッ……!」 行動で示さねばならなかった。掠れた吐息を繰り返し吐き出しながら、ナサスは形よく伸びた鼻面を小男の魔羅へと近づける。 鈴口から滴る子種の臭いを鼻腔に吸い込むだけで、口腔に唾液が溢れ出して止まらない。 物言わぬ躯となった弟が、その窪んだ瞳でナサスの決断を見つめている。 かつてならば、こうも辱められる前であれば、その重圧こそを支えにして立ち向かうことができたかもしれない。 しかし、もはや今の己は……。 「……ちゅ」 ナサスは白濁液の伝う裏筋へと窄めた口先を押し付け、可愛らしく音を立ててみせた。 両の目に溜まる涙が、その取り返しのつかぬ決断とともに溢れ出し、頬を伝う。 「永劫の、愛を、誓いましょう……」 ぎこちなく口にした言葉は、何一つとして以前のように胸に響くことはなかった。 しかし、疼いてたまらぬ尻の穴に、熱り立つ剛直に、さらなる快楽への期待が込み上げ、燻っている。 「我が、愛しき夫よ……」 その心を縛る枷も失われ解き放たれたはずの英雄は、しかし差し出された唯一の救いを前に屈し、醜悪な欲望に染まる小男の妻であることを選んだ。 終
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目が覚めてからの、自ら望んで再度の口づけ最高……
梅太郎
2024-01-01 11:58:02 +0000 UTC