寄稿物:竜人が家畜扱いされてる世界①
Added 2018-06-20 12:10:04 +0000 UTCそれは生まれて初めて手に入れた自由なのかもしれない。 傷だらけの身体を路地裏のゴミ溜めに横たえ、雨に打たれながら、ふとそう考える。だが、少年時代あんなにも焦がれた自由を前にしても、彼は少しも晴れやかな気持ちなど抱けなかった。 一糸まとわぬ逞しい身体を包む黒い鱗は、しかしその所々が剥がれ落ち、腫れ上がった下地を不様に晒している。雨粒がその体に降り注ぎ、容赦なく体温を奪ってゆくが、物陰へと這いずってゆく気力も湧かない。 濁った金色の目を曇天に向け、不本意ではあったとしても満たされていた頃の記憶を思い返す。 自分を親兄弟と引き離し、牧場から引き取った最初の主人。その主人に飽きられ、売り渡された次の主人。幾度目かの主人には、身体に一生消えぬ傷をつけられ、一人で立つこともできぬよう脚も壊された。所詮中古品だ。払い下げを繰り返されるたび、彼は家畜以下の消耗品として扱われるようなっていった。 そして流れ着いた場所が、ここである。緩慢に首を動かしてゴミ溜めの様子を観察すると、彼と同じ竜人のものと思われる頭骨も転がっていた。過去にも自分と同じ扱いを受けた者がいるらしい。 「……くそ」 そう、誰に向けるでもない悪態を吐く。酷く寒い。思えばこの所はろくな食事すらも与えられていなかった。もう若くもないのだ。どんなひどい扱いにも耐え続けてきた強靭な生命力も、その限界が近づいている。 今にも発狂し叫んでしまいそうだった。金色の瞳を見開き、雨の中に慟哭を放ちたい。しかしそれと同時に、この終わりを自然なものとして受け入れている自分がいた。 生まれてこの方、望み通りになったことなど一つもない。いつしか何も期待しないのが当たり前になっていた。ただ一つ、楽しみを感じられた事と言えば…… 「ん、はぁ……っ」 何本か欠けた太い指を股間へと伸ばす。赤黒く腫れ上がり、今やスリットに収まりきらず不格好な姿を晒す印肉を、爪の失われた指先で弄った。 冷え切っていた筈の身体だが、その芯に薄っすらと熱がこみ上げてくる。何人もの主人からの調教で淫らな淫売と化した身体だが、少なくとも目先の運命から考えを逸し、快楽に耽る助けにはなる。 太い指が秘肉をかき分け、その奥からにゅるりと肉棒が姿を現す。長年雌としての役割を押し付けられるうち、いつしか勃起することすら忘れてしまった不要の長物であるが、感度は良い。スリットを乱雑に掻き回すたび、先端からは透明の液体が溢れ、痺れるような快感が背筋を伝う。 クリトリスを扱うように、萎えたままのそれを指先で弄りながら、もう片方の手で淫肉をかき分け奥へと潜り込ませた指をくねくねと動かした。今や雄を受け入れるための外性器同然の雄膣が、物欲しげにヒクつきながら粘液を溢れさせる。 頭の奥がジンジンと痺れてくる。寒さなど忘れ、突き上げるような快感が体の芯を満たしていた。性奴の役目を完全に受け入れ堕落しきった身体が、近づく絶頂への歓喜に震え、喉奥から嬌声が溢れそうになる。 牙など残っていないが、硬く口を閉じてその声を噛み殺す。そうやって耐える方が快感が増すと知っていた。背筋がビクンと跳ねる。太い尻尾がピィンと立てられた。その時が近づいている。その時だった。 ――パシッ 何かを踏み潰すような音が路地裏に響く。快楽で覆い隠していた不安と怯えが、再び顔を出し、竜人は目を見開きながら音の方へと視線を向けた。 「……へぇ、今日は大物が捨てられてんじゃねぇか」 ゴミ溜めに捨てられた何者の物かも分からぬ骨を踏みしめながら、一人の男が立っていた。薄汚れた衣服を身にまとい、手入れのされていない不潔な毛皮を纏った灰色の犬獣人だ。 男は竜人の姿を見つけると満足げに含み笑いを浮かべ、日が傾くと同時にご見た目へと足を踏み入れた数人の男たちへと手を振る。他の者達も同様の薄汚れた身なりだ。ゴミを漁って生活の足しにする浮浪者たちであろうことは、すぐに分かった。 犬の男は、ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべたまま竜人へと歩み寄ってくる。 ある意味箱入り育ちと行っても過言ではない竜人からすれば会ったことのない人種だ。微かな緊張が体を強張らせる。 「どうした? 続けろよ」 犬が高圧的な口調で竜人へとそう話しかけた。他種族からの命令に抗えるだけの反骨心は、性奴としての生活の中で完全に失われていた。彼は緩慢に頷き、ぎこちなく指を動かし始める。 犬の手招きに寄って路地裏の隅からこちらへと近づいて来た男たちも、竜人の痴態の鑑賞会へと参加する。両手で黒ずんだ秘肉をかき分け、スリットの奥までも彼らへと見せつけるようにする。蠢く淫肉に男たちの視線が集中するのを感じ、どこか満たされた気分を覚えてしまう。 ゴミ溜めに打ち捨てられた自分であるが、まだ男たちの視線を引きつけるだけの魅力を持っていると思うと、惨めさがいくらか慰められた気がした。 「散々使い古された中古みてぇだが、こりゃまだ使えるんじゃねぇの?」 男たちの一人が、興奮に掠れた声でそう話しながら身を乗り出す。その言葉が意味する行為を思うと、胸の内で期待が膨れ上がった。男たちの視線に応えるように、扇情的なポーズを取りながら、スリットを弄りつつ、縦に割れた尻の穴に尻尾を入れくちゅくちゅと音を鳴らしてみせる。 竜人はそれ以外の生き方を知らなかった。生きるためには男を満足させ、その庇護を受けるしかない。 「お、俺を、ご主人様たちのオナホにしてください……、この雌穴で目一杯ご奉仕します……っ」 男らしい低いハスキーボイスで、そうおねだりの言葉を口にする。両脚を大きく開き、自慰行為で濡れそぼり雄を受け入れる準備の整った淫穴を見せつける。 一番若い虎の男が、その誘いに真っ先に乗った。 「俺もう我慢できねぇ……っ」 そう若々しい性衝動を滾らせた声で呻くように叫び、上半身裸の逞しい体が、竜人へと覆いかぶさる。ボロ布のようなズボンをすぐさま脱ぎ捨て、痛いほどに勃起したそれを、準備万端の雌穴へと押し付けた。 赤黒い膣肉が、初々しい色合いの肉棒を包み込み、締め上げる。捨てられるほど主人に飽きられていたこともあり、相手のいる性行為は竜人からしても久々であった。熱く滾る剛直が肉をかき分け、体の奥へと打ち込まれる快感に、身を震わせる。 「あっ、あぁあ……っ!」 黄色い毛皮に包まれた逞しい背中に腕を絡め、女のように嬌声を上げる。虎はガツガツと荒い腰使いで竜人の体を貪る。ただ性欲に突き動かされるだけの暴力も同然のピストンを受け止めながら、しかし彼は快楽に身悶えるばかりであった。 開いた口から、牙の一本も残らない歯茎が除く。爪は除かれ、角は削られ、竜人の体から男への奉仕に邪魔になる部位は全て取り払われている。その体を存分に使ってくれとばかりに、虎のピストンに喘ぎながらも、その様子を眺める男たちに視線を向けた。 家畜も同然に飼育されているとは言え、竜人の性奴など、個人が所有するには値が張るものだ。浮浪者に身をやつす男たちも、打ち捨てられたジャンク品と言えどその魅力には抗いがたい。 一人、また一人と、男たちが竜人のそばへと近寄る。雨に打たれるのも気にせず、痛々しい程に勃起した肉棒を竜人の目前へと晒し、奉仕を要求していた。 「ご、ご主人様、たち……っ、そんな、いっぱいっ、一度にぃ……っ」 虎からの突き上げに言葉をつっかえながらも、竜人が歓喜の表情を浮かべる。体を洗う機会などほとんどなく、熟成された恥垢が異臭を放つ肉棒にむしゃぶりつき、舌先で丹念に掃除をする。幾度目かの主人によって躾けられた巧妙な舌使いによって、口の中の肉棒がビクビクと跳ね、先走りの味が舌の上に広がってゆく。ゴクリと喉を鳴らしてそれを飲み下し、もっと欲しいとばかりに吸い上げる。指の欠けた両手に肉棒を握り締め、溢れ出す先走りを絡めながら扱き上げる。 これほどまでに求められたのはいつぶりであろうか。もはや自分に興味を失った主人の下で腐り続けるよりも、捨てられて良かったかもしれない。そんな考えが頭に浮かぶほどだ。 「ああくそっ、たまんね……ッ!」 竜人に覆いかぶさる虎の男が唸る。限界が近づいていた。腫れ上がった淫肉は雄を喜ばせるための器官としての役割を遺憾なく果たし、虎の肉棒を責め立てる。まさに雄膣というべき仕上がりだった。 虎がぐるると牙を剥き、その荒々しいピストンをより一層強める。肉棒が体の奥を突き上げ、粘膜を擦り上げる感覚に、竜人は抑えることのできぬ嬌声を漏らして身悶えつつ、スリットをビクビクと痙攣させて虎を責め立てた。 「ご主人様、な、中に、いっぱい……ッ、いっ、ああああああ……!」 言葉も半ばに竜人が背筋を弓なりにそらす。虎の肉棒がどくどくと脈打ち、張り詰めた玉袋に溜まった大量の精液を竜人の胎内へ流し込む。到底スリットでは収まりきらぬ白濁液が結合部から溢れ出して股下に白い水溜まりを作っていた。 虎のピストンに翻弄されるばかりだった、スリットから垂れ下がる竜人自身のそれからも、とろとろと精液が溢れ出している。その流れもようやく止まりかけた頃、虎が再び腰を動かし始めた。 「あっ、ひぎっ、出した、ばっかなの、に……ッ、ん、んぐううっ」 射精を終え敏感になった体へと再び加えられる刺激に竜人が嘶いた。普通では手など届かない高級なオナホを前に、ただ一度の射精では到底収まり切らぬ様子であった。 ずちゅ、ずちゅ、とピストンの度に結合部から粘液を散らしつつ、その激しい腰使いを再開する。しかし竜人が嬌声を上げる暇もなく、喉奥へと肉棒が突き入れられていた。喉の奥を亀頭で塞がれ、息をすることもできない程に圧迫される。 かと思えば、今度は他の男が竜人の肩を掴み、口を開く。 「おい若造、お前が覆いかぶさってちゃケツ使えねぇよ」 初老に差し掛かるだろう、少ししゃがれた声だ。虎の男は言われるがまま、体位を変える。地面に寝そべり、竜人の両脚を掴んで騎乗位の体勢を取って下側から雄膣を突き上げる。背後からは、虎の突き上げのたびにヒクヒク痙攣し、物欲しそうに収縮を繰り返す尻の穴が丸見えだった。 背後に体温を感じる。熱く滾る肉棒が肛門へと押し当てられる。振り返ってキスのひとつでもしたかったが、頭を押さえつけられ喉奥へと激しいピストンを行われているせいでそれは無理だった。 「んっ、んんんっ、ふっ、んじゅっ、ぐぅ……ッ」 胎内の内壁を隔てて二本のペニスが肉壁を擦り上げている。久しく味わうことのできなかった快感だった。頭がおかしくなりそうだ。スリット同様赤黒くなるまで酷使された肛門は、肉棒にきつく吸い付き、背後からのピストン運動に合わせてめくれ上がり、肉棒によって再び胎内へと押し込まれる。前の穴も後ろの穴も、本来の役目など遠に忘れ去っていた。主人である雄へと奉仕し、悦ばせる。常に求められてきたその役目をこなすためだけの雌穴である。 (ああ、そうだ、俺は、自由なんかより……) 桃色に染まった頭の中で思い浮かべる。そうだ。これが欲しかったのだ。もう自分はそのための存在になってしまったのだから。 「んっ、んっ、じゅっ、じゅるぅ……んん」 喉奥へと深く打ち込まれた肉棒の先端から、熱い液体が爆ぜる。一滴もこぼすまいと、喉を鳴らしてそれを飲み干してゆく。喉に絡みつく粘液質な感触、口の中に広がる青臭い味、今や彼はその虜になっていた。 主人が戯れに与えてくれた高級な食事より、腹を満たすために与えられた家畜用の飼料より、その味わいだけが彼を満足させてくれる。 「んっ、ぷはっ、う、美味い、です、ご主人様……、も、もっといっぱいください……ッ」 二方向からのピストンに翻弄されながら、精液を与えてくれた男へとそう述べる。自分を求めてくれる相手は全て主人だった。そうやって誰かの所有物でなければ、自分は生きていけない。こうやって自分を求めてくれる彼らこそ、次の主人なのだ。 肉棒によって自らの体を征服されながら、竜人の心はこの浮浪者たちを次なる主人として受け入れる。ならば、満足してもらうために尽くさなければならない。 「あっ、ひあっ、すごっ、はらのなか、こすれ、あひ……ッ」 虎の腹の上で腰を揺すり、上ずった声で媚びるように喘いで見せる。その姿は彼を犯す男たちにしてみれば、確かな手応えとして映り、興奮を高めた。勢いを増すピストンに喘ぎ散らしながら、竜人は歓喜の声を上げる。両手で扱き上げる肉棒から精液が跳ね、蕩けた顔を彩った。口元へと滴ってくるそれを舌先で舐め取り、その味わいに一層興奮を強めながら、彼を犯す男たちと同様に竜人自身も再びの絶頂へと近づいていく。 熱く蕩けた腹の中を掻き回す肉竿に意識を集中すると、じんとした熱が背筋を昇ってくる。思考さえできなくなるほどの快楽の狂騒に、顔はだらしなく弛緩し、涙と鼻水を撒き散らしながら悲鳴を上げるのみの、一匹の獣と化してゆく。 その末に、男たちが呻く。ああ、そのときが来たのだと、痙攣が伝わってくる。 「あっあっ、ああああああああっ」 ――びゅるううっ! 二度目と思えぬ量の精液がスリットへと注ぎ込まれる。それと同時に、加齢を感じさせぬ大量の精液が腸内を満たしていた。熱い液体が腹の中を満たしていく感触に、まるで愛する相手の子を身ごもったような満ち足りた幸福感が湧き上がった。 竜人は背筋をピンと張り詰め、声を上げながらビクビクと痙攣した後、ついに脱力して虎の胸の上に倒れ込んだ。主人の愛を注がれ、その主人の胸の上に横たわる悦びが、胸を満たす。 だが、その全身を使って彼らを満足させた竜人に待っていたのは、期待通りとは言えない対応である。 「――ふぅ。……ちっ、重いんだよ家畜」 射精の余韻も過ぎ去り、虎が大きく息を吐く。そして、自らへともたれかかる竜人へとそう吐き捨て、その体を押しのけた。 何故そんな行動を取るのか。竜人は目を丸くして狼狽する。どの主人も、初めて身体を重ねたときは自分を強く求め、その腕で抱いてくれたのに。 「結構良かったけど、まあこんなもんか。あー、満足満足」 背後からそんな声が聞こえる。射精を終えた彼らは、なんとも淡白な対応を見せ、竜人への興味を失っている様子だった。心を満たしていた幸福感と安心感が霧散し、代わりに言い知れぬ不安が胸に広がってゆく。 今までの主人は誰もが、竜人に興味を持った上で金を払って彼を購入したのだが、今彼を取り囲む浮浪者たちはそうではない。何の愛着も持ってはいない。一人で歩くこともできぬ不具の竜人をわざわざ養う気もなかった。それどころか―― 「すっきり爽快な気分も味わえた上に、今夜は久々に肉にありつけそうだな。ま、牧場で育てられてるような上物には及ばねぇだろうけど」 一人がそんなことを口にする。その言葉を誰も否定はしない。背筋にぞわりと冷たい感触が走った。本能が命の危機を伝えている。地べたを這いずりその場から逃げようとするが、背中を踏みつけられ、移動を封じられる。 「ご、ご主人様、い、いっぱい、ご奉仕しますから、穴でも、口でも、満足させますから……ッ」 「壊れかけの使い古しがなにいってんだよ。……おい、縄もってこい縄」 悲痛な懇願は誰にも届かない。身体は押さえつけられ、男の一人が持ってきた縄で、右太ももをきつく縛られる。張り詰めた太ももに縄が食い込み、血流が止まる。爪先から足が痺れ始め、思うように動かない。 「許し、て、ください……ッ。いやっ、いやだっ」 家畜に対して同情をかける者など誰もいない。今日食いっぱぐれないことの方がよほど重要だ。竜人は震えながら顔を覆う。掠れる声で許しを請い、助けを求める。誰も応えはしない。 終