ヴォイド堕ちナサスくんにぶち犯されるアジール
Added 2021-01-17 11:15:33 +0000 UTC『……はぁっ!』 砂漠の地に眠る遺跡の中、異質にしゃがれた声とともに轟音が響く。 かつて繁栄を誇った都市の残骸である風化した遺跡の内部に舞う砂埃を、崩れ落ちた天井から差し込む星明りが照らし出した。 「ゆけッ!」 遺跡内に反響する力強い声。そこにいるのは、超越の力を得て蘇ったシュリーマの王、アジール。そしてその号令を受けて砂埃を引き裂くように突撃するのは、超越者たるアジールがその魔力を媒介する砂によって形作られた兵士だった。 兵士の携えた槍の切っ先は、砂煙に包まれた大柄な影へと向けられている。その矛先が突き立てられようという間際、影が揺らめいた。 「ぬぅっ……!?」 再び響き渡る轟音。兵士は脳天へと振り落とされた一撃によって目標へと触れる前に叩き潰され、床一面にはひび割れが広がった。 夜の砂漠を吹き抜ける冷たく乾いた風が兵士の残骸である砂塵を舞い散らし、凹みひび割れた石床からは、紫色の光を発するコアを埋め込まれた異形の武器が持ち上げられてゆく。 アジールは手にした黄金の杖を強く握りしめながら、焦燥の声を漏らす。星明りに照らされた兜の奥で猛禽の形質を得た瞳が、その目に映る忌まわしい光景を前に見開かれていた。 「有り得ぬ……っ」 異形の生き物がそこに立っていた。 狂気に満ちた邪悪な魔力を秘めた瞳から禍々しい光を発し、細長い凶悪な乱ぐい牙を携えたジャッカルの顔。 逞しい筋肉を纏う胴体を有しながら、その後頭部から肩、そして四肢は、まるで甲虫を思わせる外骨格を肉体と地続きの鎧として纏い、異なる生物同士が歪に混ざりあった悍ましい姿を晒している。 それはあまりにも醜く、痛々しく、変わり果てていた。アジールは狼狽に肩を震わせ、その光景を否定するかのように力なく首を左右に振る。 「……ナサス――」 脳裏に浮かぶのは、幼き日の記憶にも残る在りし日の姿。嘴からこぼれ落ちるように英雄の名が漏れる。それを引き金に、堕ちたる英雄の巨躯が跳ねた。 『――っ』 「がっ、はぁ……ッ!?」 鎧に包まれた首筋を鷲掴みにされ、背中を壁へと叩きつけられる。苦悶の声を上げるアジールの眼前へと、憤怒の形相を浮かべた異形のジャッカルの面が迫り、荒々しく剥かれた乱ぐい牙の隙間から漏れる湿った吐息が黄金の兜を曇らせた。 壁に体を押し付けられ身動きも取れぬまま、兜に隠された猛禽の瞳を射抜くように、紫色に光る双眼にぎょろりと睨みつけられる。捕食者じみた凶暴な顔つきはかつての英雄の面影を残しながら、しかし言い訳のしようも無いほどにその変容を物語っていた。 『……かつての穢れた名はとうに捨てた。今や我が身はただの狗。我が魂が還るべき深淵――ヴォイドに仕えし走狗よ』 「ナサス、そちは……――っ、……ッ、ぐあ……ッ!?」 その智慧によってシュリーマを支え続けた英雄の口から、聞くに耐えぬ悍ましい言葉が紡がれる様を見せつけられ、アジールの背筋にぞくりとした寒気が走った。 自らを狗と卑下しこの世ならざる邪悪な異界への郷愁を述べるその声は、本人が例える通り主人へと尾を振る犬のそれと同種の高揚を孕んでいる。 ……英雄は堕ちた。英雄は侵された。変わり果てた異形の姿以上に、その口ぶりこそが有無を言わさぬ説得力を持ってそれを伝えていた。 その身に宿した邪悪なる力を誇るように、堕ちし英雄の右腕に万力の如き力が籠もる。アジールの首を守る鎧がその膂力を前にして変形し、ピシピシと亀裂が走り、そして砕けた。 硬質な外骨格に包まれた右手が、美しい羽毛に包まれた首筋を支点にほっそりとした体を持ち上げる。アジールは自らの首の骨が軋む音を聞きながら宙に浮いた体を震わせ、やがて力の抜けた右手からするりと滑り落ちた杖が足元でカランと音を立てた。 穢れを帯びた異界の魔力が、その走狗へと堕した英雄の体より立ち昇る。その硬い外皮に包まれた右腕をアジールの震える指先が引っ掻き回すが、膂力を本懐とする超越者に非ぬ彼では、そこに傷一つつけることもできなかった。 「……ッ、……!」 締め上げられた喉からはか細い吐息すら漏れず、アジールはただ悶えながら釣り上げられた体を揺らすことしかできない。その無防備な胸元へと、凶悪な鉤爪を備えた左手が伸びてゆく。 穢れた魔力を纏う爪が黄金の鎧へと突き立てられ、耳障りな音を立てながら亀裂を残し、留め金を引き千切り、アジールが身に纏う守りを剥ぎ取ってゆく。 今や体と一体化した凶悪な鎧を纏う怪物と化したナサスの前に、比べるべくもなく華奢で柔らかな肢体が顕になる。 『……殺しはせん。逆賊の手に掛かり一度は死した貴様が、その穢らわしい力を帯びた体で蘇ったその意味。我が教えてやろうとも』 鋭い鉤爪が、アジールの柔らかな羽毛に包まれた下腹部をなぞり、その股ぐらへと辿り着く。羽毛の下へと潜り込んだ指先は隠された秘所、彼が天から地上を見下ろす猛禽としての姿で復活したときに形作られた器官へと触れた。 生娘のように淡い色をした割れ目。その場所を見つけると、乱ぐい牙の並ぶ口元へニタリと邪悪な笑みが浮かんだ。紫色に変色し蛇のようにうねる太く長い舌がその口から姿を表し、アジールの額を黄金の兜の上からひと舐めした。 触手のように蠢く紫色の舌から、異常なほどの粘度をもった唾液が滴る。額に、首筋に、胸元に、腹に、アジールは垂れ落ちる液体が発する不快さに身震いした。 「――ッ、がっ、かは……ッ!?」 ゴツゴツとした指先がするりと喉元から離れてゆくと、アジールは顕になった胸を大きく上下させながら咳き込んだ。ナサスはその腰元を両腕で抱え込み、身震いする体を逆さに吊り下げる。 これから何が行われるのか考える暇すら与えぬまま、弾力ある太ももの間に頭をねじ込み、太くうねる舌先で股ぐらに隠された秘所を舐め上げた。 「なに、を……ッ!?」 ぬめりと這う分厚い舌の弾力とともに、ピリピリと刺激物を塗りたくられたような痛みが発せられるのを感じながら、アジールは戸惑いを隠せぬ声で問う。 返事はない。異形の舌は異物を受け入れた経験などあるはずもない総排泄孔を押し広げ、その内部へと侵入を果たした。 「……ッ、はっ、あぁ……っ!?」 まるで一匹の生物かの如く、触手のように変質した舌がアジールの内側で暴れていた。無垢なる粘膜の隅々にまで唾液を擦り込んでゆく。 淡い色合いをした粘膜はみるみるうちに赤みを帯びて腫れ上がり、アジールの胎内へと狂おしいほどのむず痒さを発生させながら、雄を咥えこんだ女性器のように、紫色の舌を締め上げた。 誰にも、自身の手ですら触ったことのない肉体の最奥を無遠慮に蹂躙されながら、アジールは靭やかな体を弓なりに反らし腰を震わせる。 赤く腫れた割れ目は切なげに痙攣し、塗りたくられた毒液を洗い流すべく分泌された粘液で潤滑を帯びてゆく。 ヒリつく疼痛に悶える粘膜の上をを力強くうねる舌が這うたび、ぬちゅぬちゅと水気を帯びた音が響き、臓腑が蕩け果てるかと思うほどの熱が内側へと拡がってゆく。 嘴の間から漏れる呻きと息遣いは次第に甘い熱を帯び、赤く腫れ上がった秘肉を擦り上げられながら、ついには鳥の囀りにも似たか細い喘ぎ声がこぼれ落ちた。 「――っ」 ぐりゅん、と内側で蛇がのたうつ。ダメ押しとでも言うべきその責めにアジールは腰を震わせ、息を呑んだ。 股ぐらの奥でどくんと何かが脈打った。超越の肉体で感じる初めての絶頂が背筋を貫いて、充血した割れ目からとろりと白濁液が滲み出る。 『……っ』 荒い呼吸を伴いながら弛緩してゆく華奢な体。ナサスはその淫らな姿を蔑むように鼻を鳴らし、眉間にシワを寄せた。 ぬらぬらと粘液を纏った紫色の舌が淫らに色づいた穴からずりゅりと引き抜かれてゆく。 その刺激にすら官能的な身悶えで応える浅ましい体は、ナサスの逞しい腕による拘束をついに解かれ地面へと崩れ落ちる。 仰向けにぐったりと投げ出されたその肢体の中央で、潤滑と熱を帯びた総排泄孔が淫らに痙攣しながら白濁液を垂れ流している。 立ち上がろうと体をよじるだけで、腫れ上がった粘膜同士が内側で擦れ合い狂おしい快感に腰が抜けた。 下腹部に生じた熱は今や脳髄にまで伝播し、砂漠の熱病を患ったかの如く体が茹だってゆくのを感じながら、アジールは震える瞳をナサスへと向けた。 『……王を自称する愚かな獣よ、貴様は生まれ変わるのだ』 ヴォイドの狗と化した英雄の股ぐらより垂れ下がる肥大した陰嚢の中で、その歪み果てた遺伝子を宿す精虫が力強く泳いでいた。 アジールへと見せつけるように膨れ上がってゆく男根は、二度に渡り彼へと挿入され精を放ったそれと同じ、凶悪な形状へと変化している。 「……」 英雄の成れの果ては、妖しく光る血走った目をこちらへと向け、醜悪な男根を熱り立たせていた。 その光景を前に湧き上がるのは、邪悪なる力に屈した英雄への怒りでも、これから訪れるであろう自身の末路に対する憤りでもなく、胸に風穴が空いたかの如き喪失感だった。 些かも色褪せぬ鮮明さで、脳裏にいつか見た光景が浮かび上がる。……幼きあの日、初めて足を踏み入れる王宮の大書庫で目にした、書物に囲まれながら静かに佇み思案に耽る雄々しくも聡明な英雄の姿。超越の力を得て蘇り、何もかも変わり果て砂に埋もれたシュリーマの地で悲嘆と怨嗟に震えながらついに見つけた、かつてと変わらぬ姿でそこに立つ唯一不変なるもの。 ……しかし英雄は、敗れた。英雄は、堕ちた。 シュリーマの伝説たる半神。勇猛なる戦士であり並ぶ者なき智慧を備えた超越者。その末路に最も相応しからぬ惨憺たる姿が、目の前にあった。 「見るに、耐えぬ……」 アジールは弱々しくそう呟いて、瞳を閉じた。目前に迫った自身の終わりを感じながら、その胸を虚無が満たしている。 蘇りし王の携えていた野望、その原風景とも言うべき記憶は今や粉々に打ち砕かれ、踏み躙られ、潰えた。 抜け殻のごとく投げ出された体へと覆いかぶさる異形の巨躯。悪臭を漂わせる凶悪な顎からは、かつての面影を残した声で、かつてと変わらぬ聡明さで、蔑みの言葉が発せられる。 『醜悪な儀式によって力を得たところで、貴様の本質は何も変わらぬ。知恵もなく、勇猛さもなく、逃げるように我が書庫へと訪れ、憐憫を乞うように我を見ていた小童よ。ただ巡り合わせのみで王の座につき、その傲慢を振りかざす以外の能を持たぬ、愚か者よ』 「……ッ、……!」 開かされた股の間で花開く淫門へあてがわれる、異形の男根。すでに十分すぎるほどの潤滑を帯びたアジールのそこは、まるで自ら求めるかのように、堕ちたる英雄の一部、その先端を受け言っれていた。 『その浅ましさと傲慢さの果てに国さえも滅ぼした愚か者よ、我はその卑屈なる魂に何ひとつの期待も持たぬ。……しかし、その身に宿す穢れし力の使い道ならば示そう』 ずぷり、ぬちゅり。脈打つ異形の肉棒がアジールの股ぐらへと埋められてゆく。あの分厚い舌以上の熱と硬さで、腫れ上がった粘膜を擦り上げ、雄の形をその胎へと刻みつけた。 『……ヴォイドの深淵に全てを捧げよ。宿痾の如く過ちを積み重ねてきた貴様が正しきを為すための、それこそが唯一の手段だ』 穢れ、歪み、堕落しながら、それでもナサスはかつてと変わらぬ聡明さで言葉を紡ぐ。 その異形のペニスはついに根本までをアジールの胎へと挿入され、ナサスが本来持っていた肉体の形を残す腰は、羽毛に包まれた柔らかな臀部へと密着する。 「あっ、あぁっ、あ……ッ」 震える嘴から溢れ出す掠れた喘ぎ声。変わり果てた英雄の屈強なる体に組み伏せられ、胸の内を見透かすような言葉で心の奥底に隠す孤独な少年の姿を浮き彫りにされ、脈動する肉の杭をその肢体の最奥へと打ち込まれながら、アジールはただ与えられる快感に打ち震えるしかなかった。 肉体も、精神も、抗えぬ暴力を前に屈服を余儀なくされている。ナサスを染め上げた異界の穢れが、繋がりあった体を通じて自らへも流れ込もうとしているのを感じながら、それを拒む術も無い。今、シュリーマは真にその滅亡を迎えようとしているのだ。 乱ぐい牙を滴る唾液が兜を纏う額へと垂れ落ちてくる。ナサスは、淫らに熟れた雌穴を焦らすかのようにゆっくりと腰を引き、そして靭やかな体を力強く射抜いた。 すぱん、すぱん。遺跡の中に響く淫らな音。その一撃一撃が、超越者たる肉体を闇に染めるべく打ち込まれる楔であり、同時にそれは彼の背負うものを剥ぎ取ってゆく。 「あっ、ひあっ、あぁっ、は……ッ」 床に爪を立てカリカリと音を立てながら、アジールはその体を震わせ淫らな喘ぎ声を漏らす。 シュリーマは終わる。もはや皇帝という肩書は意味もなさぬ。アジールが産まれ落ちたその日から彼を縛り続けてきた王家の血は、その生の中で初めて無意味な事柄となった。 アジールは今、ただ一人の男、いや猛き英雄の豪腕に抱かれる一人の雌として、その荒々しい腰使いと異形の男根によってもたらされる快楽を受け止めていた。 ぞくりとした甘い刺激が背筋を伝い、熱く蕩けた臓腑の中で猛々しい雄の形だけがくっきりと感じ取れる。 開いた嘴からは嬌声とともに湿った吐息がこぼれる。男根を持たぬ猛禽の形質を宿した姿となったのも、こうして組み伏せられ荒々しいピストンをぶつけられるためだったのだろうか。 その激しさを増してゆくピストンに体が軋み、限界にまで広げられた総排泄孔に淡く血を滲ませながら、アジールはそれでもなお痛みを上回る快楽に震え、淫らに喘ぐ。 「……ッ、あッ、あぁああっ、ひッ、いあ、あ……ッ」 割れ目は悩ましげに収縮を繰り返し、脈動する肉の杭を締め付ける。アジールは腰を浮かせながら、脳髄を焦がすほどの快感に震え憚り無く声を上げ続けていた。 その華奢な両腕は僅かな葛藤の素振りを見せながらも英雄の逞しい背へと回され、繋がったまま離れることを拒むかのように抱きすくめる。 『……我が精を求めるか。ならば、くれてやろう……!』 言葉とともにナサスの腰使いが一段と激しさを増す。股ぐらから垂れ下がっていた肥大した陰嚢は今や縮み上がりながら脈打ち続け、その中に溜め込んだ悪性情報をアジールの体へ注ぎ込もうとしている。 ……終わる。性交の熱に浮かされた頭に、そんな予感がよぎった。 それを放たれたとき、シュリーマは終わる。己という存在が、終わる。この世界に仇をなす災厄の一部、この堕ちたる英雄と同じ異形の怪物へと成り果てる。 そう予感した瞬間、恐怖が快楽を上回った。ナサスの背を掻き毟り、腰をよじり、拘束から逃れようとがむしゃらにもがく。 しかし、全ては遅かった。 『……ッ、お、おぉおおおおオッ!』 ――ごぽおおおおおおおっ! 身の毛もよだつ凶兆を孕んだ唸り声とともに、深く打ち込まれた肉棒が痙攣し、ヴォイドの邪念を宿す精液をアジールへと流し込んだ。 「――っ、あぁ……っ」 胎の中で熱が拡がってゆく。ヴォイドの闇に染め上げられた超越者であるナサスの放つ精液は、その悪性情報を効率よく相手へと伝え、侵してゆく。 アジールは目を見開き、狂ったようにその体を痙攣させながら、心身を闇と狂気に蝕まれてゆく悍ましさに悲鳴を上げた。 頭の中に囁くような幻聴が響いていた。世界の裏側から発せられる、悪意に満ちた言葉。まだそれをはっきりと聞き取ることはできなくとも、もうそれはアジールの一部になろうとしていた。 強張った体から少しずつ力が抜けていくのを感じた。放たれた精は時間をかけてアジールの臓腑に溶け込み、その全身へと拡がってゆく。 ぐったりとした体の奥で、しかし突き挿れられた肉棒はその硬さを少しも失っていない。 『まだ終わりではない。さあ、貴様の全てを差し出せ。……全てをだ」 そう命じながら、ナサスは横たわるアジールを睨みつけ、ピストンを再開する。 その湿った音は、途切れること無く遺跡の中に響いていた。 「あ゛、あ゛ぁ、あ゛ー……」 あれからどれだけの時間が過ぎたのだろう。昼も夜もなく犯され続けたアジールは、今やナサスと同じく紫色に染まった喉の奥からしゃがれた呻き声を漏らし、ぐったりと投げ出された体はピストンの衝撃に揺られるのみだった。 休み無く腰を打ち付けられるうちに臀部の羽毛は抜け落ち、赤く腫れ上がった地肌を晒している。その胴体にも無数の爪痕が残り、未だ塞がらぬ生傷からは今や赤紫に変色した血液が滲んでいた。 ところどころ臀部と同じように羽毛が抜け落ちて炎症した地肌を晒すみすぼらしい体にはもう、威厳も高貴さも残されては居ない。 ひたすらに精液を注がれ続けた下腹部はぽっこりと膨らみ、その最奥には産まれるべきでない冒涜的な生命の脈動が生じ、限界に達したアジールの精神へとさらなる負荷を賭けていた。 『……準備は整った』 その満身創痍の姿を見下ろしながら、ナサスは低い声で言った。いくらか柔らかくなった肉棒を、痛々しく腫れ上がった赤紫の肉穴からずるりと引き抜くと、その右腕を飛び散った淫液に塗れ汚れたアジールの兜へとあてがう。 新月に差し掛かったそらからは僅かな星明りが差し込むのみであり、悪意に満ちた魔力に汚染されきったアジールがヴォイドの眷属へと生まれ変わるその日だった。 『我が同胞として生まれ変わるか、惨めに死ぬるか、貴様次第だ』 「――ッ」 どくん。 ナサスが話し終えると同時に、アジールの胸を衝撃が貫いた。超越者たる肉体の中で鬩ぎ合いながら危うい均衡を保ち続けていた何かが、ついにその一線を超えて崩壊してゆく。 全身の羽毛がざわめきながら逆立ち、内臓が体の中で跳ね回るような痛みに、アジールは身悶え悲鳴を上げた。 どくん。どくん。鼓動は激しさを増してゆく。頭蓋の中にその音が鳴り響いて、他の何も聞こえない。 全身の羽毛が抜け落ちて、代わりに硬質な黒い羽がその体を覆ってゆく。悶え、のたうち回り、暴れようとする体をナサスによって抑え込まれながら、アジールは目を見開き全身を苛む痛みに悲鳴を上げ続けた。 その変化を後押しするかのように、ナサスはその腕を通じてヴォイドの魔力が流れ込んでくる。 黄金の兜はピシピシと音を立てながら変形し、その下にあるアジールの顔と癒着しはじめていた。 今やアジールの一部として繋がったそれは、甲虫の外骨格を思わせる生体組織へと置換されてゆく。腕や脚に取り付けられた防具も、今や同様にその肉体と一体化し始めていた。 『……少しはそそる見た目になったな』 自らと同じく、ヴォイドの美しい生き物と本来の醜い姿を歪に混ざり合わせたその容姿を評して、ナサスは下卑た感想を口にした。 変化はその山場を超えて徐々に落ち着きを見せ始めており、相反する二つの力の鬩ぎ合いの中で朦朧としていたアジールの意識も、それに伴い鮮明なものとなってゆく。 ……しかし、取り戻した意識はもうかつてと同じではない。 『あぁ……』 外骨格に覆われたアジールの顔にもはや表情というものはない。それでも禍々しい紫の光を放つ瞳は、恍惚に酔いしれる彼の意識を物語っていた。 かつて無いほどに素晴らしい気分だった。かつてその胸の内に存在したちっぽけな悩みなど、もう何一つ残っては居ない。 深く息を吸いながら体を起こすと、ついにヴォイドの眷属として羽化を果たした母胎へと訴えかけるように、その膨らんだ下腹部で何かが脈打つのを感じた。 『ん……ッ』 疑問などなかった。アジールは床に膝を突き、紫の精液を滴らせる淫らな割れ目を広げた。びちゃりとそこから溢れ出した粘液が水たまりを作る。 官能的な喘ぎ声を漏らしながらなおも腰をくねらせると、総排泄孔は柔らかな粘膜を露出させながら捲れ上がり、その奥から瑞々しい球体を一つ産み落とす。 それは、卵だった。鳥類のそれを思わせるものではなく、半透明の薄皮が羊水を包み込む、魚類や虫の卵に近い形質が現れていた。 アジールはさらに二つ、三つと卵を産み落とす。産卵によってヴォイドの眷属をこの世界に産み落とす悦びは、何にも代えがたい多幸感を伴っていた。 羊水の中に浮く生物は、両親よりも寧ろヴォイドから送り込まれた異形の生物たちに近い姿を取っており、互いの体の美しい部分だけを受け継いで産まれ落ちたその姿は、親である二匹の眷属に得も言われぬ誇らしさを湧き上がらせる。 『そうか、これこそが余に与えられた使命……』 産卵に伴う快感の余韻に身震いをしながら、アジールは新たなる眷属として生まれ変わった自身の役目を理解する。 感動に揺れる瞳は、やがて傍らに立つナサスへと向けられ、この悦びを得るための手助けをしてくれた恩人へと、媚びるような上目遣いを向けた。 『さあ、この胎はそちの子種を待ちわびて餓えておる……』 膨れ上がった淫肉を震わせながら尻を突き出し、さらなる精を求める。その行動に何ひとつの疑問も湧きはしない。 一匹でも多くの眷属を産み、増やし、この地を喰らい尽くす。それこそが己の産まれた意味なのだと、本能が告げていた。 ……かつてシュリーマを率いた皇帝は今、世界へと仇をなす存在へと堕ち果てたのだ。 ✕✕✕ 砂塵の中から浮上を果たした古の都市は今、淀んだ異界の瘴気に包まれ腐り果てようとしていた。 かつて繁栄を誇った都市が蘇ったという知らせにすがり集まった人々は、ヴォイドの眷属と化したアジールが産み落とす異形の生物によって喰らい尽くされ、その食残しが転がるのみだった。 廃墟には世界の裏側の法則に基づいた生態系が作り上げられ、シュリーマの都市は今やこの世ならざる魔境と成り果てた。 そしてその現況たる二匹は今、かつて超越の儀を執り行った祭壇に立ち、この世を破滅へと導く儀式を執り行なおうとしていた。 かつて神聖なる魔力を宿していた祭壇は今や穢れ、魔都とかしたシュリーマに漂う瘴気が渦を巻いている。 二匹の異形はその瞳を狂気じみた喜びに染めながら天を仰ぐ。そこにヴォイドへと通じる大穴が開くまで、そう時間はかからない。 かつてシュリーマを滅ぼした邪悪なる魔術師も、かつてナサスであった異形を付け狙う狂気に支配された獣も、今となっては全てが些事。 ……そのときは近い。 ただただ暗い喜びだけが、二匹の胸を満たしていた。 終