前回
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「んっ、ふぅ、んん、……ッ」
ゆるく開いたままの顎から、悩ましげな悶え声が漏れ出る。
柔らかく、熱く、湿った肉の塊が、口腔の中を蛇のように這い周り、どれほど賢明に逃れようとしても抗えぬ執拗さで、舌を絡め取られる。
貪り尽くすほどの丹念さで、真っ当な生き物では決して真似できぬほどの執拗さで、他の相手では決して味わえぬ情熱的な口付けに、今や形ばかりとなった抵抗を解きほぐされてゆく。
薄く目を開けると、あの巨大な一つ目が瞬き一つもせずにこちらを見つめている。物を言わず、表情を見せず、ただただ情熱的な視線を注がれ続ける。
壁から伸びる何本もの触手に口腔を舐り尽くされながら、その青黒い表面にとろりとした乳白色の液体が滲み出して、絡め取られた舌の上に心地の良い甘さが広がった。
「んんっ、はぁ……ッ」
もはや、眉間にシワを寄せて見せることもできなかった。レオは恍惚に蕩けながら目を細め、口腔に溢れ出す唾液とともにその液体を嚥下する。
――ごくん。
幾度も、幾度も、心地よい温かさが喉を通過してゆく。
「はぁ、ぁ……」
やがて、するすると口腔から去ってゆく触手を追うように、別れを名残惜しむように舌先を伸ばしながら、レオはとびきりに甘く切なげな吐息を漏らしていた。
――ちゅ。
同じ気持ちだとばかりに、小さな口付けの音が頭の奥に響く。気づけば、だらしなく開いたままの顎に笑みが浮かんでいた。
物言わぬ一つ目の異形と、まるで想いが通じ合っているように錯覚してしまう。
(――いや、これは錯覚なのではなく……)
閉じられた肉のゆりかごの中で、幾度も頭に浮かんでは否定してきた考えが、蕩け切った頭に再び浮かび上がる。
そんなことを考えるようになってしまった己の変化に恐れを感じたことすらも、今となれば遠い過去に感じられた。
虜囚となり、使命を果たせぬまま時間ばかりが過ぎてゆく焦燥も、気づけば失われていた。
……ここには、快のみしかない。拒もうとも、望もうとも、喉へと注がれる甘い液体はレオの命を繋ぎ止め、肉体の衰えすらも許さない。
肉床から伸びる触手に排泄すらも管理されることへの恥辱も、忘れ去って久しかった。
大蛇の腹の中でゆっくりと蕩け果ててゆくように、漫然と、己を形作っていたものを手放してゆく。
「はぁ、んん……ッ」
局部をいやらしく覆う肉の膜が、脈打つように震える。青黒い肉の膜に隙間なく包まれた男根が、むくりと屹立してゆくのを感じながら、レオは女のように上ずった喘ぎ声を、恥ずかしげもなく肉のゆりかごに響かせた。
肛門を期待に満ちてヒクヒクと収縮させながら、狂おしい疼きに耐えかねるように腰をくねらせる。
皺の一筋にまでぴたりと張り付く肉の膜が震えるたびに、そこを指先でなぞられたかのような感覚が走る。
レオは甘い刺激に悶えながら、きゅうとそこを締め上げては弛緩させる。
焦らすような浅い動きに混じって、ときおり肉厚な舌で舐め上げられるような、熱を伴った柔らかな圧迫感が加えられ、浮かせた腰をヘコヘコと揺すってしまう。
「あぁんっ」
大きく反らせた背筋を震わせながら、レオは高鳴る胸に悦びが湧き上がるのを感じる。
その穴が果たすべき、排泄以外の役目のことを思いながら、揺れる獅子の瞳を肉壁に座する一つ目へと向ける。
物言わぬそれが、レオに孤独を感じさせたことは一度とてなかった。
虜囚として過ごした時間、常にこの情熱的な視線で見守られ、熱烈な口づけと丹念な愛撫に慰められてきたのだ。
……繰り返されるそれが、ゆっくりと己の深い場所へと迫る様に、レオははじめに、恐怖を覚えた。
自由を失い、使命を失い、胸のうちに空洞が増えるほどに、その想いが隙間を埋めてゆく。
(ああ、やはり……)
焦燥が諦観へと変わってゆくにつれて恐怖も薄れ、そしていつしか、新たな疑問が生まれていた。
……本当に己は囚われ、閉じ込められているのだろうかと。
王たる責務、背負う使命、殉じた者たちから託されたもの。己を縛り続けていたあまりにも多くの柵から、開放してもらったのではないだろうかと。
――そうだ。そうだとも。
応えようとした。抗おうとした。旅を阻む異形の怪物を相手に、全力で戦った。しかし消耗の中で冷静さを欠き、囚えられてしまった。
虜囚となっても、諦めはしなかった。必死に案を巡らせ、脱出を試みた。成功はせずとも、できる限りのことはした。及ばぬ能力の限りを尽くしたはずだ。
そして、蕩け果てるような恍惚の中で絶頂を繰り返し、この世のものとは思えぬ快楽を味わいながら、悔い続けていたのだ。無為に過ぎてゆく時間に焦燥し、物言わぬ一つ目に己の身の上と背負う使命を語り聞かせ、幾度となく慈悲を乞い、平伏し、どのような対価も支払うと懇願した。
「はは、は……」
過去と今が、ついに拮抗するほどに鬩ぎ合うのを感じながら、レオは得心が行った様子で小さく笑いをこぼした。
揺りかごの中で奪われたものなど何もない。ただ与えられ、守られてきた。
己を苦しめ続けてきたのは、棘のように心に食い込み忘れ去ることの出来なかった、過去の柵だ。
――ちゅ。
そんな考えを肯定するように、優しい口付けの音が耳の奥に響く。
レオは、喘ぎ声混じりの小さな笑い声を漏らしながら、すべてを投げ出してしまうための言い訳じみた思考を加速させた。
もはや、どれだけの時間をここで過ごしたのかも分からない。外に出たところで、もう手遅れに決まっている。
過ぎたことを悔やみ、至らぬ己を責め続けたところで、どれほどの意味があろうか。
決して諦めぬ強い信念は美徳ではあるが、取り返しのつかぬ敗北から目を背けありもせぬ希望を抱き続けるなど、ただ愚かなだけだ。
(そう。そうだとも……)
きゅうと、四肢を、股ぐらを、胸元を包む肉の膜が、強く締め付けてくるのが感じられた。
日焼けが消えた分いくらか色白になりつつも、血色の良い張りのある肌を、痕が残るほどに強く締め付けられる。
レオにはそれが、とびきりに情熱的な包容に感じられてならなかった。
とくん、と胸が鳴る。ただの錯覚ではないかという不安と同時に、深く求められているのだという思いが込み上げた。
……愛されている。殉じた者たちの想いに応えることも出来ず、国を守ることも出来ず、果たすべき使命すら半ばで諦める事となった、哀れで無能な、今や空っぽとなった男を、それでも良いと愛してくれている。
それを思うだけで、背筋にゾクゾクと痺れる感覚が駆け昇って、得も言われぬ多幸感が胸を満たす。
何も成せずとも、期待に応えられずとも、どれほどに堕落し果てようとも、ただそこに在るだけで愛してもらえる。これほどの幸福は無いと思えた。
(ならば、我は……)
であればこそ、この情けない男に出来る限りの手段で、その恩に報いるべきだろう。
決定的に傾いてしまった心の天秤を、さらに押すように淫靡な口付けの音が耳に響く。緩急をつけた心地よい愛撫に体が弛緩する。
「嗚呼、わ、我が、愛を――」
――そなたに。
物言わぬ一つ目を見つめながら紡ごうとした言葉を、レオは途中で飲み込むように途切れさせた。
違う。そうではない。色恋の味に酔い痴れた胸の奥に、そんな違和感を感じて、レオは視線を伏せながら押し黙った。
青黒い肉の膜に包まれた両手、今も雄々しく勃起する自身の魔羅、太ももまでを包まれ、かかとにはハイヒールを思わせる突起まで用意された、両脚。乳首を目立たせるように、隆起した肉片に包まれた両胸。
レオはその淫らかつ屈強な大男には不釣り合いな滑稽さを、囚われてもなお王として振る舞おうとする厚顔な男に、恥辱を味わわせるための衣装と考えていた。
だが、それはおかしい。『彼』はただ与え、愛してくれているのだから。
……レオは、呆けたようにぽかんと口を開いたまま、動きを止めて考え込む。
今や耳の奥にへばりつき一体化した肉片も、肉の膜で形作られた衣装も、今だけは邪魔をしてこなかった。
「……承知、いたしましたとも」
やがてレオは、かしずくように垂れていた頭を上げ、その顔に娼夫の如き雌の表情を浮かべながら、一つ目へと視線を向ける。
レオは、未だに己が王であると、男であると、勘違いしていたことに気づいた。
己の力を誇示し、尊大な態度を示し、守るべき妻へと誓うような、雄としての愛情など『彼』は求めていない。
貪欲に、まだ足りぬと、もっともっとと、男から注がれる愛を貪り、その全てを受け止める雌であれと、そう望まれている。
「……どうかこの私めを、貴方の愛で、染めてくださいまし」
レオはとびきりの猫撫で声で、媚びるように囁く。
あれほどに強く縛られていた過去も、捨ててしまえたのだ。男であることを捨てる程度、いまさら大した抵抗もなかった。
汗の滴る胸板に手を伸ばし、硬く張るそこを揉みしだく。今も硬く熱り勃ち、男であることを主張し続ける肉棒を無視して、きゅんと疼く肛門へと指の腹を押し付けて、くちゅくちゅと音を立てて見せる。
「わた、くしめは、もう……」
男を誘うために腰をくねらせ、少しでも魅力的であろうと媚びた笑みを浮かべ、喉を震わせながら言葉を絞り出すたびに、生まれ変わってゆくような高揚感があった。
さっきまで、意識すらせぬほどに当たり前のものだった自らの在り方というものが形を失い、組み替えられてゆく。
「あなたの、虜にございます……っ」
呼吸が上気し、声が震える。獅子の面をした大男が、未通女(おぼこ)のように恥じらいながら告白するする姿など、見るに耐えぬ醜態ではなかろうかという不安が、じわりと胸に浮かんだ。
レオは羞恥に肩を震わせながら、どうすることもできずに一つ目を見つめ続ける。
そして、永遠とも思えるほどに長い数秒の間を置いて、物言わぬ一つ目は、ゆっくりとその瞼を細めた。
「あぁ……」
どれほどに語りかけても反応を示さなかったそれが見せる表情に、レオは言葉もなく恍惚の表情を浮かべていた。
間違っていなかった。己は愛されている。その確信に胸が打ち震え、目頭が熱くなる。
獅子の縦に割れた瞳を潤ませる涙が、ついにその端からこぼれ落ちるのと同時に、一つ目の座する肉壁が大きく蠢いた。
ゆっくりと、脈打つ肉を蠢かせながら、一つ目を中心にして肉壁が盛り上がってゆく。
やがてその隆起は人型へと変形し、青黒く変色してゆきながら、ぶちぶちと音を立てて肉壁から分離しようとしていた。
……レオの獅子頭を模しつつも、形を真似るのみで眼窩も口も鼻もない、無貌。
レオを二周りは上回る、逞しい巨躯。その胸にはあの一つ目が収まり、じっとこちらを見つめ続けていた。
完全に壁から分離したそれは、ただレオを見つめながら仁王立ちし、見せつけるようにゆっくりと、雄々しい肉棒を屹立させてゆく。
「なんと、勇ましい……」
レオはその逸物をうっとりと眺めながら、感嘆を込めて囁いた。
形作られた獅子頭の肉人形は、その体躯こそ違えどほとんどはレオの姿を模したものであったが、そこだけは特別な意匠が施されていた。
女性の腕ほどの大きさもある剛直は雄々しく反り返り、凶悪なカリ首には粘膜を掻き毟るべく肉棘が並んでいる。
ずしりとした玉袋が脈打つのを見るだけで、その中に満ち満ちる子種を注がれる瞬間を夢見て、下腹部に熱が宿ってゆく。
……欲しい。鈴口から滴る先走りさえも、無駄にしたくなかった。
「は……っ」
四つん這いとなって剛直へと跪きながら、大きく口を開き、糸を引きながら滴る先走りを平たい舌で受け止める。
僅かな生臭さをともなう塩辛い雄の味が鼻腔に広がって、度数の高い酒を飲み干したかのように頭が痺れた。
脈打つ玉袋、血管の浮く竿、そして絶えず先走りを溢れさせる亀頭へ。じっくりと味わうように舌を這わせ、喉を鳴らして先走りを嚥下する。
口を離すと、亀頭と舌先との間に先走りが糸を引き、レオはそれさえも貪欲に啜り上げ、熱の籠もった瞳を上に向ける。
「……ちゅ」
じっと、愛情を込めて見つめ合いながら、青黒い亀頭へと口付けを落とす。この耳の奥に、いつも響かせてくれた優しい口付けの音を真似て。
先走りを啜り上げる下品な音を交えながら、幾度も、幾度も、これまで注いでくれた愛情に報いろうと、口付けを繰り返した。
「ちゅる、ん、じゅ、じゅぽ……ッ」
繰り返すたびに、口付けは濃厚なものとなってゆく。鈴口に吸い付いて水音を鳴らし、亀頭を咥えこんで舌を巻き付け、ついには獅子の大顎の全てを使って剛直を咥え込み、力強く脈打つ雄を喉奥で感じる。
カリ首に並ぶ肉棘に内側を掻き毟られ、吐き気が込み上げるのと同時に、甘い痺れに脳髄が蕩けてゆく。
その雄々しさ、逞しさを、体の内側で直に感じる悦びは得も言われぬ多幸感を伴い、レオを塗り潰そうとしていた。
「ん゛ッ、ふっ、じゅるっ、じゅぼおお゛ォ……っ」
どれほど懸命に呑み込もうとしても、太竿の中ほどまでを口腔に納めるだけで精一杯だった。
唾液と先走りの混ざり合う液体をこぼしながら、頭を前後に動かして剛直へと奉仕する。
決して牙を立てぬよう気を付けながら、口に収まりきらぬ根元の方へと下を伸ばし、浅ましいほどの貪欲さで雄を貪る。
時も忘れ、ただただ夢中で首を動かし続ける内に、やがて大きな手のひらがレオの頭へと乗せられた。
青黒い表皮に滲む粘液を塗りたくるように鬣を撫でられながら、先走りを啜る下品な水音に交えて、悦びに上ずった声を漏らしてしまう。
頭頂部から後頭部へと、力強い手のひらでさらに鬣を撫で下ろされ、息もできぬほどに深く剛直を呑み込んだまま頭の位置を固定される。
「ん゛――ッ!?」
ぐぷぷ、と湿った音が内側から伝わってきた。強く腰を押し付けられ、幼子の拳ほどもある亀頭で喉を抉じ開けられる。
限界と思っていた場所を超えて、剛直が喉奥深くへとねじ込まれてゆく。
息ができない。涙が込み上げるほどの嘔吐感に苛まれながら、しかし喉をぴったりと塞ぐ肉棒に阻まれて、吐瀉物すら堰き止められる。
レオの喉元が肉棒の形に膨れ、変形してゆく。呼吸すらも阻まれ、声を上げることもできぬままに体を震わせ必死にもがくが、圧倒的な膂力で抑え込まれ、びくともしない。
「――ッ、――っ!」
ごきりと嫌な音が響いて、顎が外れる。両腕を目の前の青黒い巨躯へと叩きつけようとも、逞しく割れた腹筋に腕を突っ張り、逃れようと力を込めても、拘束から抜け出すことはできず、剛直の放つ熱と硬さはついに胸の内にまでも達していた。
涙と鼻水がとめどなく溢れ出し、濡れる鼻が逞しく張った鼠径部へと押し当てられ、沈んでゆく。
喉から胸を串刺しにする剛直が、びくんと脈打つように震えるたびに、それが全身へと伝わって身悶えしてしまう。
呼吸ができない。意識が薄らぎ、何も考えられなくなってゆく。
あれほど硬く勃起していた肉棒が情けなく萎み上がって、股ぐらに張り付く青黒い肉の膜の内側に、じょわあと暖かな液体が広がってゆくのを感じた。
見開いた目の中心で、縦に割れた瞳が苦悶に揺れる。焦点が定まらなくなって、まっすぐこちらを見下ろす一つ目が、複数に分裂して見えた。
視界が黄色く染まってゆく。輪郭がぼやけて、薄れて、何もわからない。ふわりと、体が浮き上がるような感覚に包まれ、意識も途切れようという間際、胸の内でそれが爆ぜる。
――ごぽおおおおおおっ!
剛直が激しく脈打って、熱く濃厚な精液が胃袋へと直接流し込まれてゆく。
その圧迫感と熱量に束の間目覚めかかった意識も、次の瞬間にはぷつりと途切れていた。
「ごッ、え゛ぇえっ、げっ、オ゛ぉお゛――ッ」
レオは意識を取り戻すと同時に、限界を超えて注ぎ込まれた精液を、口と鼻から逆流させ、痰が絡まったように水気を帯びた帯びた悶え声を上げていた。
白目を剥いて痙攣しながら咳き込むたびに、喉の奥から精液が込み上げて呼吸を妨げる。
外れかけていた顎がびりびりと痛み、喉奥から溢れる濃厚な精液が呼気と混ざって泡立っていた。
止め処なく込み上げる精液に呼吸を妨げられ、それでも酸素を求めて息を吸うと、泡立った精が喉でごぼごぼと音を立てて、激しく咳き込んでしまう。
頭に霞がかかったように意識は朦朧としたままで、レオは仰向けのまま腰を浮かせ悶絶し続ける。
「ごっ、ゔぇえぇえっ、え゛……っ」
泡立つ精液を鼻から噴出させつつ目を見開くと、巨大な一つ目が間近に迫り、こちらを見下ろしているのが見えた。
あの青黒い巨躯で、包み隠されるように押し倒されていることに気づく。
あの巨大な手で両の腕を鷲掴みにされ、肉床に押し付けられている。
大きく開かされた両足の間に、逞しい胴体が収まっていた。
あれほどに激しい射精を終えてなお、はち切れんばかりの硬さを保った剛直に縮み上がった玉袋を持ち上げられ、精液に塗れた亀頭が肛門へ押し当てられるのを感じた。
……行為は終わっていない。まだ雌としての役割を果たし終えていない。
酸欠に朦朧とし蕩けた頭に、そんな思いが本能じみて浮かび上がる。
「……っ」
剛直で蹂躙された喉に精液が絡みついて、言葉を放つこともできない。
掠れ、水気に塗れた呻き声とともに、へっ、へっ、と獣じみた息遣いを吐きこぼしながら、逞しい腰へと両脚を絡め、己の想いを示した。
――愛しの殿方よ、望むままに。
朦朧とした頭の片隅にそんな文句を浮かべながら、レオはうっとりと目を細め、一つ目を見つめる。
自らよりも遥かに力強く屈強な肉体に押さえつけられ、蹂躙されようという運命を肌で感じながら、自らの新しい在り方というものをこれ以上無くはっきりと感じられた。
「か――ッ、は……っ」
一度とて異物を受け入れたことのない肛門は、まるでこの瞬間を待ちわびていたかのように歓喜に震え、大口を開けながら青黒い亀頭を呑み込んでゆく。
熱く脈打つ巨大な質量に丹田を内側から押し潰され、情けなく縮み上がった肉棒から、温かい液体が出がらしのようにちょろちょろと漏れ出した。
ぬぷり、ぐぷりと、湿った音を立てながら熱い塊が奥へと進んでくる。カリ首の肉棘に腸壁を掻き毟られる狂おしいむず痒さに腰が痙攣する。
シワもなくなるほどに拡げられた肛門は、じんと痺れるような熱に包まれて、太竿と擦れ合う甘い刺激に震えている。
ああ、これがこの穴の本当の使い道だったのかと、深い実感があった。
「ン゛ン――ッ!?」
剛直の三分の一ほどを呑み込んだところで、鈍い衝撃が体に走り、レオは精液を吐きこぼしながらかん高く呻いた。
雄の猛りによって押し広げられた直腸の奥、未だ誰にも触れられたことのないS字のくねりが、最後の抵抗とでも言うように、それ以上の蹂躙を拒んでいる。
「――っ、……っっ!?」
より奥へと進む道を探して、青黒い巨体が円を描くように腰を揺らす。限界まで張り詰めた腸壁がぎちぎちと悲鳴を上げながら変形し、レオはその狂おしい感覚に息を呑み、腰を浮かせた。
ごりゅごりゅと臓腑を抉るような異物感。逞しく割れた腹筋が内側かあの圧力に隆起し、腰を引かれるに合わせて元の形に戻る。
前立腺を押し潰される未知の衝撃に、浮き上がった腰がビクビクと痙攣して、萎えたままの肉棒からびゅるりと白濁液が吐き出されて、そこを包む肉の膜から滲み出した。
太竿へとぴったり吸い付いた肛門が前後の動きに合わせて盛り上がっては凹み、探るような緩いピストンすらもが、レオの体を揺らすほどの衝撃を伴っていた。
ともすれば、ドアそのものを壊しかねないほどの力を込めて繰り返されるノックが、幾度となくS字のくねりへ叩きつけられる。
ぐちゅん、どちゅん。飛沫となった腸液を散らしながら執拗に繰り返される前後運動に耐えかねて、ついにレオの肉体は、己に与えられた新たな役割を受け入れた。
「オ゛ッ、ご、え゛ぇ、ぇ――ッ」
頑なに侵入を拒み続けたくねりが、ついに逞しく震える亀頭によって割り開かれる。
二度と拒むことなどできぬように、決して元の形になど戻らぬよう、剛直がその雄々しい形をレオの内に刻みつけながら、手つかずの最奥へと迫る。
形よく割れた腹筋が歪み、剛直の形を浮かび上がらせていた。臓腑を押し潰されるかと思う程の圧迫感に、胃袋に溜まった精液が盛大に逆流し、口と鼻からごぽりと溢れる。
「――」
そして、ついにレオは剛直の全てを受け入れていた。
どちゅん、と力強いピストンがレオの深部を射抜き、腰と腰とがぶつかり合う衝撃に体が揺れる。
かつての形など思い出せぬほどに、ただこの剛直を受け入れるためのみの形へと矯正された臓腑は、今や肉棒を包み込むための雄膣と変じていた。
「――ッ、っ、ぁ……」
朦朧とした意識の中で痛みすらも忘れながら、レオは白濁液に塗れた獅子の面に恍惚とした笑みを浮かべる。
あまりにも雄々しい、誰しも並びえぬ雄の猛りを根本まで咥え込みながら、その熱を、硬さを、甘美な震えを、自身の最も深い場所で感じる悦びが胸に満ちていた。
抵抗の余地すらもなく、自身では決して敵わぬ力で組み伏せられ貪られるその最中にこそ、己の中に根付いた雌をはっきりと感じられた。
……これでいい。これがいい。ただ求められ、尽きぬ欲望を叩きつけられる。
「――っ、――っっ」
じゅどん、ごりゅう。腹を満たす剛直が引き抜かれるたびに、空っぽになった胎の虚ろさに切なさが込み上げる。
ばちゅん、ずちゅう。腰が砕けるほどの腰使いで、深い場所を射抜かれるたびに、雷に打たれたかのような衝撃が走って、瞼の裏に火花が散る。
男であることへの未練など、もはや微塵もなかった。果たせなかった使命も、今や顔も思い出せぬ者たちからの期待も、今となってはどうでもいい。
もっと強く、尊く、何よりも鮮やかな感情が、胸を満たしていた。
「ほ――ッ♡」
ごうりゅうう。レオの臓腑へと、その形を刻み続けてきた剛直が、更に一際深く強く挿し込まれた。
体を大きく反らし、蕩け果てた呆け面を歪めながら、甘く染まった吐息を漏らす。
愛しい雄の象徴が、胎の内でびくびくと震え、膨らむ様が感じられた。
――ごぽっぉおおおおおおっ!
「~~~~ッッッ♡」
胸に注がれたときと同じ、熱くどろりとした雄の子種が、腸内へと注ぎ込まれる。
あの剛直ですら届き得なかった、雄膣のさらに奥へ、雄の味を待ち侘びる臓腑の隅々まで、震えるほどに熱い生命の源が流れ込んでくる。
精液で満たされた腸壁が風船の如く張って、はち切れるかと思うほどだった。
腹筋がこぽりと歪み、孕んだかのように膨らんでゆく。
レオはいっぱいに開いた獅子の顎から声にもならぬ悲鳴を漏らしながら、再び気を失っていた。
☓☓☓
「――ッ、は……!」
肉床の上に広がる水たまりとなった精液の上で、レオは意識を取り戻した。
気絶と覚醒を繰り返しながら、体位を変えつつまぐわい続けた体は、かつてない疲労に包まれ、重しを背負っているかのように感じられる。
赤く腫れ上がりぽっかりと口を開けた肛門からは、黄ばんだ精液がどろりと垂れ流しとなり、白濁液のこびり着く腸壁までもが露わとなっている。
立ち上がることさえもできず、レオはゆっくりと首を動かして、愛しい相手の姿を探した。
「……ッ」
再び肉壁と一体化した一つ目が、変わらぬ眼差しでレオを見下ろしている。
だが、レオを驚かせたのは、その一つ目と自身の間に突き立てられた、一本の剣だった。
この揺りかごに囚われたあの日。柵の中でもがき苦しむ、哀れな男に救いが与えられた、あの日。敗北を喫したレオの手から取り上げられた、かつての愛刀。
今となっては、必要もないものだったが、こうして差し出されたからには意味があるのだろう。
レオは疲れ切った両腕に力を込め、ゆっくりと状態を起こしながら、思案する。
「……なる、ほど」
そして、理解する。男を捨て、雌として愛する相手の側に仕えると決めたのだ。
言葉だけではなく、禊をもってその想いを伝える必要があるだろう。
「愛しき貴方の、望むままに……」
目を細め、甘い猫撫で声で囁きながら、レオは震える左手を剣へと伸ばす。
どれほどの時が過ぎたかもわからぬが、刀身は蕩け果てた雌獅子の顔が映り込むほどの美しさを保っていた。
「ん……っ」
腰が砕け、立ち上がることができず、レオは艶めいた吐息を漏らしながら、刀身に体重をかけ床を這う。
疲れ切った体には、床から剣を引き抜く力も残っておらず、レオは左手で柄を握ったまま、その刃へと頬ずりするように顔を寄せた。
……はらりと、獅子の頭を包む赤い鬣が舞い散る。
鷲掴みにし張り詰めさせた鬣へと刃を傾け、雌獅子が持つべきではないそれを削ぎ落とす。
床へと降り積もる獣毛が、蠢く肉の中に飲み込まれ、消えてゆく。
鏡も取り回しのいい短刀もないまま、斑のように剃り残しの鬣を点在させながら、ゆっくりと、不器用に。
「この身も、心も、貴方のもの……」
粗雑に鬣を切り落としただけの、雌にもなりきれぬ無様で滑稽な獅子の面。
一つ目の巨大な瞳に写るそんな己の姿も見えぬ様子で、レオはうっとりと、笑みを浮かべていた。
終