『ん?どしたん?☆』
『い、いえ…なんでも…』
先輩からはまだ千夏の姿が見えていないらしい。
俺の視線を追って千夏の方に振り向いた先輩に俺は、咄嗟に傘を傾けて千夏の姿を見せないようにブロックした。
なぜそうしたかは俺にもわからない。
ただ咄嗟の行動だった…
『わたしんちこの近くなんだけどさ…来る?』
『えっ…!!?』
キスと千夏と…頭の情報処理能力が追い付かないところにまたドデカいワードが飛び込んできた…
先輩の…家!?
『え…あ…そんな御迷惑じゃ…』
『いいじゃんいいじゃん☆こんな強い雨じゃ大変だよ?ちょっと雨宿りがてらさ〜!きなよ♪』
先輩に気付かれない様に傘を傾けて、さっき千夏が立っていた所を盗み見るとそこにはもう誰もいなかった。
ーーーーーーーー
先輩の勢いに流される様に先輩の家に上がり込んでしまった俺。
『ほーい、タオル♪』
『あ、すみません。…あの…家の人は…』
『ん?ちなわたし片親なんだ〜お母さんは夜まで仕事〜☆』
『そ、そうなんですか…』
なぬっ!?そ、それは…今現在この家には俺と先輩のふたりしかいないということでふたりっきりということでは…??
『ひゃ〜足下びしょ濡れだ〜』
濡れたルーズソックスと紺ソを脱ぎ、素足になる先輩。
脱いでる途中でスカートの裾からチラチラと見え隠れする物を、必死で見ないフリをした俺。
『水吸ったルーズソックス重過ぎ!おかげで足ラクラクだよぉ♪』
先輩の部屋のベッドの横で正座している俺のすぐ隣にベッドに腰掛ける様に先輩が座ってきた。
そして剥き出しのその長くて綺麗な脚をパタパタと振ってくる。
真横にいる俺の視界に嫌でもそのおみ足が入ってくる。
『そんな床になんて座ってないでベッドの上に座りなよ♪』
『え…でも俺も下の方、濡れてますし…』
『じゃあ脱いじゃう!?な〜んつって〜アハハ☆』
おどけてそう言う先輩。
じょ、冗談だよな?
『どれくらい濡れてるの〜?』
そう言いながら足の親指と人差し指の爪先で、正座している俺の太ももをつつ〜〜…っとなぞる様にして触ってくる。
ゾクゾクッ〜と全神経が自分の太ももに集中する。
先輩のおみ足は太ももから正座している膝の方へ行き、また太ももへ戻ってきて、ズボンのポケットがある腰の横まで上がってくる。
あわ…あわわ…!
俺の核心のすぐ真横まで先輩のおみ足が…!!
こ、こんなの…童貞には刺激が強すぎますッ…!!
『このくらいなら全然平気じゃん☆』
全身ガチガチになって緊張して己の太ももを見下ろすことだけをしていた俺の左斜め後ろから先輩の声が聞こえてくる。
そしてグッと先輩の体が動く気配を感じると
『ねぇ…隣に来て?』
すぐ耳元でそう囁かれる。
横を振り向くと頬を赤らめ微笑みながら顔を近づけてくる先輩。
真っ直ぐ俺を見つめる眼差しに俺は照れて戸惑いつつもその言葉に素直に従わざるをえない圧を感じて先輩のベッドの上に腰を掛けた。
それを合図に隣に座っていた先輩は俺の肩に寄たれかかってくる。
…こ、これって…そういうことだよな…?
『…もう一回…する?』
『えっ?』
先輩の方に首を向けた瞬間にチュッとまた唇を奪われた。
ビックリした俺はそのまま横へ倒れ込み、先輩もそのまま体を傾ける。
ベッドの上で先輩に押し倒される様な形になる。
いつの間にブラウスのボタンは外され、前がはだけて先輩の下着を着けたおっぱいが…
…!!いやフロントホックというやつか!?
そのフロント部分も外れて先輩のたわわなおっぱいがあらわになる。
あわわ…あわわわ…!!!
下着が外れそうなの先輩のおっぱいもすごいが、また不意打ちでキスをされた…!
セカンドキス…
そういえばさっきのはファーストキスだったのか…?
ちっちゃいまだ子供の頃、千夏とした記憶はあるけど…それはカウントするべきか…?
千夏………
幼い頃からずっと隣にいた。
女の子として意識したこともあるし、思春期に入りたての頃はなんとなくウザく感じて遠ざかりたかった時期もある。
友達のような、兄妹のような、でも女として憎からず思っている部分もあるわけで…
普段は元気で明るく笑顔が多い千夏。
それがあの時、雨の中に佇んでいたあいつの顔は…
千夏のあんな顔…
千夏の顔を思い浮かべてみるとなんだかこのまま流れに流されているままなのはいけないような気がして…
気付けば俺は先輩の肩を優しく掴んで上体を起こしながら押し返していた。
『つ、付き合ってもいないのにこ、こんなこと…!』
『え〜ダメぇ?よく性格の不一致で別れる理由とか言うけどそれって体の相性とかもあるじゃん?だから最初に知っときたいだけなんだけど…☆』
『そ、それは…お互いもっと深くわかり合ってから…』
『だからソレも込みで知りたいからじゃん☆誤解しないで欲しいんだけど誰とでもこーゆーことしてる女じゃないからね?冬也っちのコト、もっとよく知りたいって思うから…』
『は…初めてなんす…』
『全然OKだよ☆わたしがリードするから♪』
『でも…なんか………
………
す………すみません………』
『………!!………わかった……
…やっぱ、わたし達、なんか価値観とか合わなかったみたいだね…えへへ…なんかごめんね〜?ソッチがまず合わなかったか〜なんてね☆』
『………』
『やっぱダメだったか〜』
先輩は横へ向き直り部屋の天井を見上げながら呟く。
『………』
『あ、ごめん…お茶も出さずに…ちょっと待っててね〜なんかあったかな〜?最悪ちょっとコンビニまで…』
はだけた前を戻しながら立ち上がろうとする先輩。
『すみません…俺、帰ります…』
そう言って席を立ち玄関へと歩きだす俺。
『えっでもまだ雨あがってないよ?』
『傘あるんで平気です。お邪魔しました…』
そう言って先輩の顔をまともに見れずに先輩の家を発った。
先輩優しいな…最後まで俺なんかに気を使って…そりゃあひとりになりたいだろうに雨の中に俺を追い出す訳にもいかずに…
それに比べてなんだ俺は…!!
なんなんだあの間は…!!すぐ出ていけよ!
空気読めない気が利かない子だねぇ!
それになんだ!あの去り方…もっとちゃんとやれよ!
女の人からの誘いを断るなんて恥かかせて傷付けておいて逆に気を使わせたあげくに逃げるように去るなんて…
そもそも家に呼ばれた時点でもしかしたら何かあるのでは!?という期待をしておいて、いざそういう場面になったらなったでチキるとか。
だっせぇぇぇッッ…!!!
後から後から自分のダメさ加減が熱せられたヤカンの様に噴き出してくる。
激しく自己嫌悪に陥る俺。
…はぁ…
失礼すぎる…
童貞とか以前に人としてどうなんだと思えるレベル…
初めての場面だったとか咄嗟の場面だったとしても、そういう肝心な場面での対応こそその人の人間力というものが試される。
俺は自分ではもうちょっとうまくやれる人間だと思い込んでいた。
それがあんな体たらく…
自分の不器用さで人を傷付けてしまったという事実…
こんな俺なんかと、元々釣り合える人なんかじゃなかったんだ…
いや、フッた側がそんなこということ自体失礼だろ!
と自分への怒りで身体中が熱くなる。
…もうひとり、傷付けてしまった人…
…千夏にもちゃんと説明しないと…
時折強い風が吹く度に横凪に変わる雨で傘を差してもあまり意味をなさなかったが怒りで熱くなった今の状態ではそんなこともうどうでもよかった。
そんな俺を叱咤するかの様に雨は強まる一方だった。
家路に着く時、ふと隣の千夏の家を見上げる。
共働きの千夏んちからは人の気配がない。おそらくまだ千夏も帰って来ていないんだろう。
自分ちに帰ってシャワーを浴びながら考える。
明日はまず先輩に謝って千夏にも何もなかったと伝えないと…
今度こそちゃんとやらないと。
明日はちゃんと…!!
色々考えすぎてなんか少し…頭痛がするがそんなことも言ってられない。
ちゃんとするんだぞ、と自分に言い聞かせる。
その次の日から俺は風邪を引いて熱で数日学校を休んだ。
ゲンキ@あんよ&ノクタ書き
2025-04-05 17:11:25 +0000 UTC