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格闘家見習いの虎弟子の早朝一番搾り

先に「格闘家見習いの虎弟子が変態鼠師匠にセクハラされる話」を読んでおくとより楽しめるかもしれません。 ----  初春の夜明けの藍空に、暁の気配が僅かに滲み始める頃合いのこと。  まだ密やかな眠りより醒めぬ街の中、軽手流師範の老鼠――社鼠が持つ古屋敷の敷地内だけは、既に一つの影が忙しなく動いていた。  暁光が雲間より僅かに沁みだし、屋敷の裏庭に佇むその影を明るみに晒す。光の輪郭に象られた影の正体は黄金色の毛並みと凛々しい黒縞の虎獣人であり、惜しげもなく鍛え上げられた壮健な筋肉を外気のもとに晒している。その肉体の成熟度合とは裏腹に、顔立ちは思春期の青々しさを色濃く残す、うら若き青年であった。  青年の名を竹虎といい、軽手流の師範代である老鼠の社鼠に師事を仰ぐ武芸者の見習いである。昨年の秋末に門戸を叩き、古屋敷にて住み込みの生活を始めてから間もなく半年を迎えようとしていた。  三代は住まえるかという広さの古屋敷には、しかし社鼠と竹虎のほかに住まうものはおらず、生活のために必要なことは竹虎と社鼠が分担してこなす取り決めがされている。とはいえ、弟子たる竹虎の役目が多くを占め、社鼠がこなすのは米炊き以外の食事の拵えと茶淹れ、竹虎一人では持て余す裏の畑の手入れくらいのものであるのだが。  竹虎は早朝の務めである水汲みと庭の掃き掃除、米砥ぎまでを終え、薪割りの作業へと取り掛かろうと裏庭へ足を運んでいた。その足取りは早く、どこか焦りを帯びているようでもあった。 (急がないと、もう、まずいぞ……)  なぜ焦っているのかと言えば、竹虎の、逞しい両の手が股座をぎゅっと握り締めるその仕草が答えである。竹虎は寝起き一番の小便をまだ済ませておらず、ぱんぱんに膨らみ切った膀胱が緩まりそうになるのを必死に堪えているのだ。 だがしかし、小便より先に済ませなければならない最後の仕事として薪割りが残されていた。ゆえに用足しの機会はもう少し先までお預けとなっているのだ。 材木置き場に積まれた玉切り後の杉の幹を両手いっぱいに抱え出し、薪割り台まで運ぶ。大の大人でも両手いっぱいに抱えれば圧し潰されそうになる重さの薪である。苛酷な鍛錬によって鍛えられた竹虎にとってはほどよい負荷と言えるが、ずっしりとした重みが背にのしかかる瞬間に、膀胱の括約筋が緩みそうになって息が止まる。 「っ……ふうっ……ぐううっ……はーっ……」  うめき声を漏らしつつ、間一髪、漏れ出そうになるのを寸でで耐える。修練によって培われた精神力の賜物であるだろう。 歯を食いしばり、上気した頬より汗を滴らせ、むき出しの筋肉を隆起させながら足を踏み出し、一歩一歩進んでいく。薪割り台に木を転がし、身を蝕む重量からの解放に竹虎は荒く息を吐きつける。師範の言いつけにより粗末な赤の六尺褌一丁で生活をしている竹虎のむき出しの裸身はしっとりと汗ばみ、暁の陽を受けて金色の毛並みはいっそう滑らかな輝きを纏う。その姿を垣間見る者がいれば、漂う雄々しさと神々しさ、そして色気とに、垂涎を促されることは間違いがない。 (早く、急がないと、ほんとうに、漏れる……)  一刻、刻一刻と、膀胱の限界は迫っていた。荒い息と震える心臓を整える暇もなく、竹虎は薪割り台の傍の斧を手に取り、薪へ向かって真っすぐに振り下ろし始める。ぱこん、と軽く乾いた木の割れる音が早朝の街並みに木霊する。音は断続的に、規則的な拍動を刻みながら空気の中へと溶けていく。  竹虎は焦っていた。尿意の強まりがいつもより早いこともそうだが、庭の掃き掃除に手間取ったせいで、社鼠が起きてくるまでにもう時間がないのだ。彼が目を覚ましたときに竹虎が薪を割り終えていなければ、竹虎の頭上に雷が落ち、またその失態を理由に口に出すのも恥ずかしいような制裁――褌一丁で昼の街を十週だとか、今日の稽古中ずっと素っ裸でいるだとか――を受けるのだ。肉体的な苦痛ではなく、精神的な苦痛を受けることが多く、竹虎の心に幾度となく羞恥の傷を負わせた。 (だめだ、焦るな……焦ってもいいことはない……)  しかし、憔悴が斧を握る手に伝わることはなかった。下手に焦って乱暴に薪を割れば、却って時間がかかることは様々な経験より学んでいた。ゆえに、竹虎は深く息を吐き、落ち着きを保ったまま全身に力を滾らせる。臀部に食い込んだ細いよじり布が埋もれるほどに引き締めて斧を振り下ろし、一心不乱に薪を割っていくのである。  平静を保った甲斐あってか、薪割りは半刻にも満たぬ間に終わった。地面に散らした細かな薪を拾い集めて所定の場所に置き、竹虎はそこでようやく一息つくことが出来る。寝起きから酷使し、功績を誇るようにどくどくと血の駆け巡る火照った肉体へと、新鮮な初春の空気を胸いっぱいに取り込む。肺のいっぱいに冷たさが満たされ、強張っていた肉体が緩む。  瞬間、押し寄せる強烈な尿意の波に、竹虎はぶるりとその大柄な肉体を震わせ、褌の前袋をぎゅうっと握り締め、もじもじと脚を擦り合わせた。 (し、師匠、まだ起きておられないよな……!)  竹虎はきょろきょろと周囲を見渡し、耳をそばだてて物音を捉えようとする。障子戸が開く音、或いは板張りの廊下を歩く軽い足音、もしくは厠の戸が開き、閉じる音。そのいずれかがあれば社鼠は目を覚ましているはずだが、今日は眠りが深いのか、そのどれもが今日は聞こえてこない。助かった、と竹虎は胸を撫で下ろし、急ぎ裏庭に生える雑草木の茂みへと駆けこむ。 「んん、はぁっ……うう、ああっ……!」  社鼠の言いつけで就寝前に取り込んだ桶数杯分の水分が体内に吸収され、竹虎の若い肉体の中で排出されようと渦巻いている。しかし目覚めてすぐに急ぎの仕事があり小便をしているような暇すらないこと、厠はなぜか外からも施錠できるようになっており、しかも外鍵は社鼠が管理していることから、朝一番の用足しの機会は厠ではない外で、かつ全ての仕事を終えた後にしかないのだった。  もじもじくねくねと身を揺らしながら、生い茂る草木の帯へと向き合い、今一度周囲を見渡したのち、竹虎は赤い褌の前袋を緩め、布地に押し込まれた己の一物を隙間より引っ張り出した。腹回りの乳白色の毛並みと同じ色の包皮を纏い、先端に薄らと薄桃の亀頭が覗く包茎であるが、その形や太さは目を見張るものがあった。とうてい齢十六のモノとは思えぬ、凛々しさを放つ逸品である。 「んっ、ふう゛……っ、ああっ!」  焦る指先の所作で包皮を乱暴に剥き上げ、砲身を茂みの半ばへと向けた瞬間、すぐにびんと竿先が震え、薄い黄色の小便が亀頭の先から吹き出した。小便はきれいな放物線を描いて茂みをしっとりと濡らしていく。 「は、あー……っ……」  ぶるり、と大柄な身を震わせ、竹虎は尿道を勢いよく駆け巡る放尿の快感に浸る。雲間に隠れていた太陽が今一度顔を出し、吹き出す小便の薄金色の放物線と飛沫とを輝かせる。そして小便を引っ掛けられ、さながら雨後のように葉先に雫を滴らせる葉群れにも、艶やかさに似た鈍い光を纏わせた。  竹虎はほう、と息を吐き、まだ青々しさの残る面立ちを緩ませた。  小便が茂みを掻き分け地面に叩きつけられる音――びじょろろろ……と弾ける音の、豪快な水のせせらぎ――に耳をそばだてる。稽古漬け、叱責漬けの苛酷な日々において、珍しく何の気兼ねもなく気を休めることのできる僅かな時間を、心の底から噛みしめていた。 「ま、間に合った……」  もしも社鼠が起きていたら、当然屋外での立小便など許されないことだ。次に小便をすることが出来るのは社鼠が朝一番の厠を済ませたあとになるのだが、竹虎が尿意を堪えているときに限って示し合わせたように厠の時間が長くなり、ひどい時には中でいびきすらかき始めることがあるのだからたまったものではない。ゆえに、なるべく急いでことを済ませ、小便の時間を捻出しなくてはならないのだ。  相当堪えていたこともあり、放尿が止むまでには三十秒ほど要した。次第に膀胱が軽くなり、吹き出す小便の勢いが落ち、やがて止む。竹虎はぶんぶんと何度も一物を振り、繰り返し皮をすぼませて小便を払い、それから慎重に褌の中に一物をしまい込んだ。 常に褌一丁、つまり股間を隔てる布一枚で生活しているため、用足し後の雫は丁寧に払わなければ染みとなって目立つのだ。そして、社鼠はそういった染みに対して異様に目ざとく、滅法からかわれて恥ずかしい気持ちにさせられるのだ。 (いけない、師匠が起きてきた)  すっかりと軽くなった身体を排泄の余韻に浸らせる暇もなく、竹虎の鋭敏な聴覚が社鼠の部屋の障子戸が開く音を捉える。竹虎はすぐに身を翻し、屋敷の中へと戻っていった。


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