SamuKata
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熊獣人の格闘家少年が幼馴染の狐魔法使いに手が出ない話

「ね、痛い?」 「痛くはねーけど……」 杖の先で手の甲をつつかれる。こつこつ、と体を叩いたとは思えないような固い音が耳に届いて、おれの両肘から先が完全に石になってしまったことを思い知らされる。 「珍しいのは分かるけど、あんま叩くなよな。割れたら大変なことになるぞ」  あんまりにしつこくおれの腕をつっつくものだから、今にもひびが入るんじゃないかって気が気じゃない。おれが口をとがらせると、くっつけるのお金かかるもんねえ、なんてすっげえのんきな言葉がマイナの口から帰ってきた。お金よりおれの心配をしてほしいんだけどなあ、とため息を吐いても、その気持ちはまるで伝わりそうにない。 「低級の呪いだし、ちゃんと処置もしたし、寝て起きたころには治ってるって。ダンジョンも無事抜けられたし、へーきへーき」 「他人事だと思ってさあ……」  仮にマイナの身体が一部分でも石になったら、おれは多分ものすごく心配して落ち着かなくなると思うのだけど、マイナはそうでもないようだった。野営地で囲む焚火の明かりに浮かぶ狐獣人の幼馴染の顔は、気楽というかウキウキというか、初めて目の当たりにする「石化」っていう状態異常を前に、楽しんでそうな気さえある。 「さ、そろそろ寝よっか。ウルのぶんもお皿濯いでくるね」 「おう、ありがと」  普段は飯を食い終わった後の皿洗いはおれの役目なんだけど、両手が使えない今はマイナに任せるしかない。野営中の飯――と言っても塩を溶かした水に固形の携帯食料を入れて煮込んだ、苦くて不味いスープなんだけど――を作るのはいつもマイナの役目で、テントの設営とか、食事後の後片付けとかはおれの役目、というのがいつもの了解だったから、全部やってもらうってのは申し訳ないしちょっと居心地が悪い。  おれの前に置かれた匙とスープ皿を拾い上げて、マイナは川の方へ歩いて行った。身をひるがえした時にふさふさの尻尾がおれの鼻先を掠めて、鼻ん中にふわふわの花畑みたいな匂いが広がってなんだかぽわぽわする。一日中じめっとした洞窟ダンジョンの中にいたはずなのに、おれと違ってマイナは全然臭くないし、むしろいい匂いすらするのはなんでだろう。魔法でなんかズルいことしてるのかな。それとも女の子だから? (う、なんか背中カユくなってきた……)  体臭といえば、手が使えないからダンジョンを出た後の水浴びなんかも出来てなくて、体毛が蒸れてちょっとむず痒くなってきている。古城のダンジョンみたいにからっと乾いた空気のところならともかく、湿気でじめじめしている洞窟ダンジョンから出てそのままの状態で平然としていられるのはリザードマンの冒険者くらいのものだ。長い間いたら毛にカビが生えちゃいそうで、正直あんまり行きたい場所じゃない。でも、みんなそう思っているからか、洞窟ダンジョンの仕事は魔物の手ごわさや内容のわりに、多くお金を貰えるのだ。 (手が使えないって不便だなあ)  おれの腕が石にされたのが、討伐対象のレッサーバジリスク――ぎょろ目のでっかいトカゲみたいな化け物で、ぬめぬめしていて気持ち悪いヤツ――の最後っ屁の呪詛のせいだったから良かったけれど、もしもダンジョンの途中とかでそうなってたらと思うとぞっとする。格闘家のおれ……っていうか、マイナみたいに魔法を使って戦う職業じゃなければ、腕が石になった時点で武器も握れないしパンチも打てないし防御も出来ないし、まあほとんど戦えなくなるのと同じになる。攻撃の巻き添えを食らって腕が粉々になったら、高いお金をギルドから借りて教会で『復元』してもらわないといけないし……考えるだけで、足りない頭が痛くなってくる。  だから、そういう最悪の場合を考えれば、今のおれの状態はだいぶマシだと思う。マシなんだけど、やっぱり手を使ったことが何にも出来ないのは結構しんどい。なにせ自分で匙の一本も握れないんだから。 (でも、マイナに飯食わせてもらったのは……ちょっとよかったかも。そういう関係っぽかったし)  分かりやすく言うと、「あーん」ってやつだ。あれはとてもよかった。ダンジョン近くの共有野営地に、今日はおれたちのほかに冒険者がいなかったのもうれしい。周りの冒険者に見られながら「あーん」なんて恥ずかしくてやってられないだろうし。  ふうふう、と湯気の立つスープを少し冷ましてから、おれの開かれた口の中へと匙を入れる。おれは口を閉じて泥みたいなスープの苦みを味わいつつ、ついでにおれに身体をくっつけてくるマイナの柔らかな毛並みを堪能する。ふわふわの毛並みの内側に、女の子の柔らかい身体の感触があって、おれの心臓はばくばくどきどきと飛び跳ねる。そんな感じ。 (マイナ、絶対わざとやってるよな……)  前の古城のダンジョンがえりの「まちがい」以来、マイナは妙に強気っていうか、おれに対して積極的にグイグイくるようになった。宿をとるときも当たり前のように相部屋にしようとしてくるし、野宿のときもおれの目の前で着替えようとしてくるし、おれの身体の筋肉をやたらぺたぺた触ってくるし、胸とかお尻とかやたらと揉もうとしてくるし、水浴びの時とか、しょんべんしにいくときとか、隙あらば魔法で姿を隠しながら覗こうとしてくるし……普通、こういうのって男のおれがマイナにやるのが自然なんじゃなかろうか。いや、そもそもそんな悪さをすること自体が自然じゃないんだけど。そういう悪ガキみたいな行いは、おれはもうずいぶん前に卒業したんだから。  おれはマイナのことが好きだし、たぶんマイナもおれのことが好きだ。だからそういうことをされるのは別に全然かまわない。人前でそういうことをし始めたら、流石にちょっと話し合わなきゃなって思うけど、今んとこはきちんとわきまえてくれているし。  ただ一個だけ困るのは、おれもまあトシゴロの男だから、そんなふうに積極的に誘惑されるとすぐにチンコがガッチガチに硬くなってしまうことだ。たぶんマイナはそれを見越してやってるんだろうけど、これは正直困る。なにせおれは格闘士というジョブで、常日頃から勝負衣装――という名の真っ白なふんどし一丁――でいる訳なので、チンコが固くなって膨れ上がると一発で勃ってることがバレちゃう。それが正直恥ずかしいし、ていうかムラムラしてどうしようもなくなる。野宿とかだと抜くひまもないから、おれは悶々とした気持ちを抱えたまましばらく過ごすハメになる。そんで時折、抑えきれなくなりそうにもなる。 でも最近はちょっと慣れてきて、ちょっとムラムラしてもすぐに平常心に戻ることが出来るようになってきた。この状況、ある意味では精神の筋トレをしているようなものなのかもしれないと思えてきた。 「ウル、ただいま」 「ん、おかえり」  マイナは身体の傍に洗った皿をふわふわと浮かせて――たぶん、簡単な「浮遊」の魔法だ――、空いた両手には水のたっぷり入った木桶を抱えている。非力なマイナにはちょっと持て余す重さらしく、小柄な体がよたよたとよろめいていた。 「どうしたんだよ、その水」 「ウル、水浴びできてないでしょ。わたしが拭いてあげよっかなって思って」  どすん、と重たい水桶を地面に置いて、マイナは花がほころぶように、柔らかく、澄ましてほほ笑んだ。今までの経験からしてマイナがこういう澄んだ笑顔を見せるときは、たいていの場合良からぬことを考えているのだ。おれは首を振った。 「いいよ、明日出発前に水浴びするし」 「だーめ。汗臭いし、バジリスクのぬるぬるってちゃんと洗い落とさないと毛に絡んで大変って聞いたよ。それに、身体が痒いんじゃない?」 「……う、そうだけど」  そしてこうなると、おれはもう絶対に逃げることが出来ない。口喧嘩ではマイナに勝てたためしがないし、おれが勝ちそうになると「沈黙」の魔法という禁じ手でうやむやにしてくるからどうしようもない。 「ほら、じっとしてて。頭から順に拭いてくよ」  マイナは水桶に浸した布切れを絞り、地面に座り込むおれの背後に回った。冷たくて、じとっとした濡れ布の感触が頭に張り付いたかと思えば、思いのほか乱暴なゴシゴシ加減で頭の毛並みやら丸耳の裏やらをこすられる。 「痛くない? 痛かったら言ってね、「鎮痛」の魔法とか掛けるから」  魔法より力加減を抑える努力をしてくれよ、とちょっと思ったけど、別に痛くはないのでおれは何も言わなかった。むしろこう、普段人に触られることがない頭のてっぺんとか耳の裏側とか、そういうところを撫でられるのはけっこう気持ちがいいかもしれない。おれとマイナが結婚したあかつきには、毎日やってもらいたいぐらいだ。 「じゃ、顔と顎のあたりを拭いてくね」 「おう」  少し首を上に傾けて、おれは目を瞑った。布をすすぐ音がして、それからマイナの気配が目の前までやってくる。衣擦れの音と、鼻先に掠めるマイナの毛並みの香りからして、結構間近までおれの顔に体を寄せているみたいだ。 「いくよ」  おでこに冷たい布の感触が当てられ、そのまま額、鼻周り、ほっぺから顎で一息に拭き上げられる。べとべとしていた頬周りがさっぱりと涼しくなっていく。けれども、おれはそれよりもっと重要なことを考えていた。 (いま、目開けたら、どんな感じなんだろ……)  音と匂いからして、たぶんマイナの身体が目の前にある。おそらく、胸のあたりが。ほとんどないけどちょっとだけある、おっぱいのあたり。 (見たい……すげー気になる……) マイナの格好はふんどし一丁のおれとは真逆で、しっかりと体を包む魔法使い用のローブを着ていた気がする。だから生の毛並みは見えないはずだ。だから別にいいんじゃないかちょっとぐらい見ても。だいたいマイナはいっつもおれのむき出しの尻も腹も胸も、全身を隅から隅まで見てるんだし、おれだけ何も見れないのはフコウヘイというやつだ。きっとそうだ。 「じゃ、首の裏側拭いてくね。真っすぐ向いて」  言われるがまま、さらに頭を傾ける。首元をなぞり上げる布の感触を覚えつつ、おれは薄く目を開いた。 (ち、近っ!)  もう鼻先に触れるくらいの近くに、マイナの身体があった。身体を前に屈め、腕を伸ばして抱き寄せるような恰好でおれの首の裏側を拭いている。  そしておれは、ひとつ思い違いをしていた。夕食をとる前に水浴びを済ませていたマイナは、いつもダンジョンに行くときに着用するような分厚い魔法使い用のローブじゃなくて、就寝用の生地の薄いローブに着替えていたのだ。身体を圧迫しないように襟元から裾までゆったりと作られたその服は胸元も緩くて、前のめりになっているせいでローブの内側の空間にあるもの――つまり、マイナの体そのもの――が見えそうになる。 (……)  おれは無意識のうちに、喉元から下へと視線をずらしていった。べつにおれがとりわけ変態とかそういうのではない。オトコならだれだって、見たくなるものだ。  知らない洞窟を奥へ奥へと進むみたいに、おれはマイナの身体に視線を走らせる。つるりとした喉元、クリーム色のもふりとした毛並みの厚い胸元、そして……ほとんど平らに近いおっぱいのふくらみ。  見てしまった。マイナの胸を。……しかし、なんというか、その割には、うーん。 (やっぱ……全然おっぱいねえな、こいつ)  なんか盛り上がんないと思ったら、もしかしておれの胸筋より起伏がないんじゃないか。いや、たぶん、ない。そういえば「まちがい」を起こしたあの日も、ぜんぜん揉みがいがなくてちょっと悲しい気持ちになったくらいだったのを思い出した。格闘士ギルドの中で貸し借りされている『種族別筋肉図鑑』というすげーエッチな……もとい、超重要な訓練教本の中に出てくる狐獣人のお姉さんは、張り詰めたばいんばいんのおっぱいをサラシで巻いて抑え込んでるくらいだっていうのに。 「よし、おっけ。じゃ次は胴体の方を拭いてくよ。ウル、立って」 「お、おう」  なんだか残念な気持ちと、妙な気疲れと、それから見てしまったという罪悪感だけを抱えて、おれのちょっとした冒険は終わった。切なさを噛みしめながら立ち上がって、胸のあたりを拭いてもらう。 「ウル、またちょっと体デッカくなった?」  胸の、乳首のあたりを妙に念入りに拭きながら、マイナはおれを見上げた。おれがちょっと顔を落とせば唇があたるぐらいの距離だったので、心臓がちょっと跳ねる。 「そ、そうか? 確かに、最近ちょっと筋トレの量増やしてるけど」 「どんどんゴツゴツになってくなあ。昔はあんなに小さくて丸っこかったのに……」  やや無念そうな感じで、マイナはおれの腹回りを拭き始めた。たしかに、ほんの一年かそこらぐらい前までは、おれよりもマイナの方が背が高かった気がする。 「お、腹筋あるじゃん。あーあ、あんなにぷにぷにだったのに」 「本当にチビの頃の話だろ、それ……」 今向かい合って立つとわかるのは、もうおれの方が頭一つ分ぐらい背が高くなっているってことで、腕や足、胴の太さなんかも全然違っていた。筋肉もついてきて、毛並みの内側の身体もごつごつと角ばってくるおれと比べて、マイナの身体はほっそりと丸みを帯びて柔らかそうだし、腕や足なんかもか細くて、ちょっと心配になるくらいだ。 「オトコはごつごつになってくんだよ。マイナの父ちゃんだってそうだろ?」 「そうだけど、熊獣人ほどがっちりとはしないと思うよ。ウルのお父様とか、すごいよね」 「まあ、おれのおやじは半分岩みたいなもんだしな」  故郷のおやじのことを思い出す。今のおれの倍ぐらいの背丈と、大岩を軽々担ぐぐらいの筋力。どれほど逆立ちしたって今のおれでは敵いっこない、とんでもないおやじだ。そういえばここしばらく会ってないけど、あったってどうせ手合わせという名目でぼこぼこにされるだけなので、まあいいや。どうせ元気だろ。 「よし、じゃあ後ろ向いて。お尻、拭いてくよ」 「お、おう」  促されるままに後ろを向いて、背中を拭いてもらいにいく。  いよいよ下半身に差し掛かって、おれの思考は謎の緊張感に包まれていた。とはいえ尻はまだいいと思う。いつもふんどし一丁のおれはいっつも尻を剥き出しにしているから、もう恥ずかしさなんてものはとっくになくなっているし。問題は前――つまり、ふんどしの内側の部分、というかチンコ――なんだけど、これは流石に拭いてもらう訳にはいかないので、そこは止めてもらうつもりだ。 「あのさ、ウルのお尻ってかわいいよね」 「な、なに言い出すんだよ……」  マイナはなんだか不穏なつぶやきをしながら、おれの尻たぶを念入りに拭き始めた。さっきまで地面に座り込んでいたから汚れているのかもしれないけど、なんというかこう、手で舐めまわすようなっていうか……とにかく、ちょっと手つきが変だ。 「ずんぐりしてて、かわいいよ。叩きがいがありそう」 「よせって」 「お、結構もちもちしてる。ずっと揉んでみたかったんだよねえ、お尻」 「や、やめろ、揉むなよ。ん、なんか手つき、やらしいって……」  マイナの手つきはもはや拭くっていうより、おれの尻を揉みしだく方向にシフトし始めていた。なぜかおれの背中にぴっとりと身体を寄せて、尻の平やら腰の付け根やらをねっとりとさすってくる。マイナの冷たい指先がおれの下半身をくすぐるたびに、そこからじんじんと痺れるような熱が伝わってきて、チンコの上のあたりがきゅうきゅうと疼き始める。  これは危ない。おれのオスとしての本能がそう告げていた。これ以上身体を触られてると、おれは多分物凄く恥ずかしいことになってしまう。というか、既にもうおれのチンコはだいぶ硬さを帯びてきていて、ふんどしの前袋がちょっとずつ突っ張りつつあった。 「も、もういいだろ! 拭いてくれてありがとな!」  お尻に這う手を振り払うように、おれはマイナから距離をとった。マイナの方へ振りかえろうとしたけど、膨らみ始めたふんどしのことを思って背を向けたままでいることにした。ちょっとでもムラってしてることがバレたら、やっぱり恥ずかしいワケで。 「えー、前は? おちんちんの辺りは拭かなくていいの?」 「いい、いいよ。明日腕が直ってから洗うし。もう寝ようぜ、な」 「……ねえ、なんでこっち向かないの?」 「なんでって……」  勃ちはじめてるから、なんて言える訳もないし、うまくごまかそうにも手が石になってしまってるから、むりやり手のひらでふんどしを覆って隠すこともできない。今のおれは見られるがまま、されるがままなのだ。  気付かれないよう息を吸って、なんとかチンコのかちかちが収まってくれないかって祈ってみるけど、残念なことにおれの腹の中で火はくすぶり続けている。思い返せば、しばらく野宿が続いたこともあって、ここ数日は全然処理もできてないんだった。そんなときに焚きつけられたら、そりゃこうなりもするだろう。  ともかく、まるで収まりそうにないし、理由を話さないことにはマイナの気もおさまりそうにない。おれは観念して、おずおずと口を開く。 「わ、分かんだろ。ちょっと……なんつーか、元気になってんだよ。おまえが変におしり揉むから……」 「おちんちんが?」 「まあ……そう、だけど」  そうストレートに言われると、かえってこっちが恥ずかしい。おれが濁し気味に肯定すると、マイナはすました顔で信じられないようなことを言った。 「見してよ、おちんちん」 「はあ!?」 「見してよ。いいでしょ、ウルだってさっきわたしのおっぱい覗いてたくせに」 「なっ、やっ、はあっ!? のっ、覗いてねえし!」  思わず声が上ずる。やっべえ、完全にバレてたみたいだ。 「ウソだ、鼻息当たってたよ。自分だけ恥ずかしいとこ見といて、ちょっとずっこいんじゃない?」 「う……いや、目、瞑ってたし……」  まずい、非常にまずい。なにがって見てたのは事実ってことだ。自分で言うのも変だけど、おれはウソをついたり言い逃れをしたりってのがびっくりするほどヘタクソだし、このまま追及されるとたぶんそのうちボロが出る。 「だいいち、マイナのおっぱいなんか見たってしょうがないだろ! ぜんぜんねえじゃん!」  ぴきっ――と、空気が張り詰める音がする。途端に野営地が静かになる。  開き直って叫んだおれの一言は、冷静に考えてみるとサイアクの一手だった。マイナが自身のおっぱいが薄いことを気にしているのは知っていた。図星で、事実だからこそ、おれの一言はゲキリンに触れてしまうかもしれない。 「あ、いや、今のは――」  背中を向けていた理由も忘れて、おれは思わず振り返った。飛び込んできたのは怒りの形相を浮かべたマイナの顔で―― 「ふーん。ま、いいけど」  ――は、なかった。おれのデリカシーなさげな言葉に怒るでもなく拗ねるでもなく、マイナは無表情のまま、くるりと踵を返してテントの方へと歩いていく。 「わたし、先寝るね。おやすみ」  淡々とそう言い、マイナはテントの幕を下ろした。 「お、おう……おやすみ……?」  おれはその場に立ちすくむ。一切なにもなかったかのように、まったく何も言われないというのは、ガーッと怒られるよりもなんだかかえって気味がわるいものだ。 (まあ、怒られなかったし、いっか……)  しかし、このときのおれはまだ気づいていなかった。このあたりのやり取りの不可解さはすべてマイナの描いた筋書きの通りで、おれは文字通り手も足も出せない状況に追い込まれつつあったということに。 「……ん、うう……」  寝る前に必要な“あること”を済ませていないと気付いたのは、マイナにおやすみを告げてからほんのすぐあとのことだった。  手を石にされて、少なくとも夜通しはマイナの手を借りないと何もできないとわかった直後はしっかり覚えていたのに、頼むのが恥ずかしいせいで後回しにしすぎて、結局頼むのをすっかりと忘れてしまっていた、あることとは。 (……しっこ、いきてえ)  生きている以上、こればっかりはどうしても避けることができない。ひんやりとした夜の空気が毛皮にしみ込んで、おれはぶるりと身体を震わせる。腹の下のほうがぱんぱんに膨らんで、張り詰めているのを感じて、もじもじと身をよじって尿意をはぐらかす。  考えてみれば、石化の進行を緩めるための魔法薬を飲んだ。水分補給は大事だとマイナに勧められ、水もいっぱい飲んだ。夕食にスープだって飲んだ。これだけ水を摂取すれば、そりゃあ、しょんべんに行きたくなるのも当然のことだった。 「しまったなあ……」  ゆるゆるだと恥ずかしいから――とマイナによってきつく締められたふんどしは、手の使えない今、どうやったとしても解くことが出来そうにない。そしてふんどしがほどけなければ、チンコも出せないし、しょんべんはできない。まあ、できなくはないけど、最悪の気分になる。  ちらり、とマイナの眠っているテントの方を見る。いつもみたいに怒り心頭、というふうではなかったけれど、あの感じだと多分けっこう怒ってはいるだろう。そんな中、寝入ってすぐなのにしょんべんがしたいからと起こしたりなんかしたら、まあ絶対に喧嘩になる。  マイナの見立てによれば、腕の石化は朝にはとけるという話だ。だからつまり、朝までどうにか尿意を我慢しきることができたなら、おれは何の気兼ねもなくしょんべんを済ませることが出来るようになるわけだ。  そして、朝まで尿意を自覚せずに済む方法は一つだけだ。  我慢できなくなるまえの今のうちに、さっさと眠ってしまうことだけ。 (……できるかなあ)  不安はある。いや不安しかない。なぜならすでにおれの腹の下腹部はかなり張り詰めていて、しょんべんを出し切りたいという気持ちはもうけっこう強くなっている。そんな気持ちに目を背けて、どうにか眠ってしまおうとするのは、正直けっこうどころでなく分の悪い賭けだし、無謀ともいうものだ。  しかし、マイナの機嫌をこれ以上損ねず、おれのプライドも保たれる方法はもうこれしかない。おれは祈るような気持ちで両目を固く瞑り、頭の中で必死に羊の数を数え始めるのだった。 ◇ 「ん、うう……んっ……!」  まあ、そんな無謀な目論見が上手くいくわけもないというのは、しょうじきわかりきったことだった。どれほど頑張って眠りに落ちようとしても、そのたびに膨れ上がる尿意が邪魔をして、むしろ目は冴え冴えとしているぐらいだ。  拭きあげられたばかりなのに、もう全身には嫌な汗が滲んでいた。あれからまだほんの少ししか時間が経っていないというのに、もう膀胱は破裂しそうにパンパンにはりつめていて、一刻も早くしょんべんを出したいという信号が頭の中に送られてくる。そわそわ、もじもじと身を揺らしてみてももうあんまり効果もない。いつもなら手で握り締めて我慢するところだけど、手が石になっていてはそれすらできない。 「うう……しっこ、いきたい゛……っ」  切実につぶやいて身をよじってみても、相も変わらず両腕は石になったままうんともすんとも言わないし、これでもかと固く締められたふんどしが緩む気配もない。このままだと、そう遠くないうちにしょんべんを漏らしてしまうかもしれない。 「はあ゛っ……ううっ……」  腰を浮かせて悶えてみても、悲鳴のようなうめき声を上げてみても、刻一刻と尿意の限界が迫っているということ以外に変わるものはない。このままなんの手も打たずにいれば、おれはそう時間も経たないうちに限界を迎えちゃうだろう。そうなれば、一張羅のおれのふんどしはしょんべんまみれのびちゃびちゃになって帰り道が恥ずかしいし、お漏らししたことがマイナに見られればこれでもかとからかわれて最悪だ。ていうか、おれはもう十一歳なんだから、そうでなくてもお漏らしなんかするわけにはいかない。 「うう……マイナ、起きてくれ……」  石になった両肘から先の感覚はない。ずっしりと石のように重い両手を抱えては、立ち上がることもできない。しょうがなく、芋虫のように身体だけで這いずって、ときおり波のように押し寄せてくる尿意にもだえながらも、おれはマイナの眠っているテントまでなんとか這いよった。耳をすませば、テントの中から軽い女の子の寝息が聞こえてくる。すっかり寝入ってしまっているようだった。 「マイナ、マイナ。あのさ、ごめん、起きてくれ……!」  足先でテントの布を揺すり、声を掛ける。眠っているとわかっている人に向けてデカい声を出すのは気が引けたけど、起きて貰わないとおれの尊厳がだめになってしまう。いまでも、チンコのさきっちょはぴくぴくと震えていて、ちょっとでも腹をへこませる力を抜けばチビってしまいそうになっているのだ。 「……なに、どしたの」  おれのおねがいの仕方がよかったのか、あのマイナにしてはすんなりと目を覚ましてくれた。ただし、寝起き特有のすこぶる不機嫌そうな低音と共に。その、大きな獣のうなりのような威圧感が籠ったマイナの声に、しょうじきちょっとチビりそうになる。 「マイナ……ごめん、しっこ、するの手伝って……ほしい」 「おしっこ? ……我慢できないの?」 「ん、えっと……」  マイナの返しに、自分がまるで赤ちゃんであるかのような気持ちになる。恥ずかしさがこみ上げてきて、言葉がなんとなく鈍ってしまう。 「なに、どっち。我慢できるなら我慢してよ、めんどくさいし」 「ん……我慢……できない、かも」 「かも?」  なんだか妙に言葉尻を捉えられる。そのゆったりとした応答の中でも、おれの尿意は加速度的に膨れ上がっていっていた。ゆいいつ自由な内腿をモジモジとすり合わせて、必死にごまかし、耐えようにも、前を抑えられないというだけでそうとうに辛い。 「が、我慢……できないっ……! たのむよマイナ、おれ、もう、もれちゃうよ……」  張り上げた声の言葉尻がどんどん萎んでいく。おれはもうほとんど泣きそうだった。 「ふうん。しょうがないなあ」  そんなおれの弱々しい様子に、ようやくマイナはその気になったらしい。ひょっこりとテントから顔を出して、地面に這いつくばるおれを見下ろし――にっこりとほほ笑む。 「いいよ。おしっこするの、手伝ってあげる」  到底寝起きとは思えない、活き活きと輝くような笑顔に、おれはこの後与えられるであろうとんでもない屈辱の数々を予感するのだった。 「立てる?」 「ん……肩かしてくれ」 「わかった。……う、重っ……」  おれの筋肉と、石となった両肘の重さは、か弱い魔法使いのマイナには少々堪えるものらしい。ただ肩を貸してもらって立ち上がるまでにも、結構な時間がかかってしまう。その間にも刻一刻と限界は近づいていて、しかも遠慮なくぐらぐらと身体を揺らされるたびに膀胱が悲鳴をあげる。おれは必死に歯を食いしばって漏らさないよう耐えるしかない。 「いしょ……っと。はあ、やっと立てた。で、どうするの」 「んっ……そ、そこの茂みんとこで、する……」  テントのすぐ近くにある茂みをあごでしゃくり、指し示す。本当のことを言えばいますぐにでもここでしょんべんをしてしまいたかったけど、流石にそれは憚られるというか、朝起きたときに地面にできたでっかい水たまりを見て死ぬほど恥ずかしくなるのが関の山なのでちょっと、というか。 「えー、テントのすぐ傍じゃん。あっちの木にしてよ」  もう漏れそうなおれの気持ちなどまったく知らないふうに、マイナは怪訝な顔である一本の木を指し示した。歩いて十数歩ぐらいの、ちょっとした距離。いつもならすぐにたどり着けるような場所だけど、今のおれにはそうとう荷が重い距離だ。 「……わかった」  しかし、マイナの機嫌を損ねたら一巻の終わりだということはよくわかっている。もし歯向かってテントに戻られでもしたら、その時点でおれのお漏らしは確定してしまうのだ。渋々、マイナに言われたとおりの場所に決める。 「うー……ふう゛……っ……」  一歩、一歩。踏み出すたびにパンパンの膀胱が震えて、今にも萎んで滲み出そうになるのを、気合だけで耐え抜く。なんとかしてチンコを握り締めたいのに、やっぱり手は動きそうにない。 「はあ゛ッ……うう……」  苦しみをうわごとのように呟いて、一歩一歩地面を踏みしめる。汗ばんだ身体はずっしりと重く、ひどく気だるい。ギルドの修行で、片手に抱えた水瓶の水を零さないように組手をする、というのがあったけど、あれよりも遥かに気を張るものだ。さいわい、根性とか気合とか、そういうのは得意分野だから、なんとか耐えられるけども。 「ほらほら、がんばれ。もうちょっと」  あんよがじょうず――とでも言うような感じで、マイナはおれの少し先を歩き、はやし立てる。人の気も知らないで――と思って、いやどっちかといえば、おれの苦しみを知っているからこそわざとやっているのだと思い至る。おそらく、表情にはおくびもでていないけど、マイナは思ったより怒っているようだ。  とはいえ、今のおれには頭を下げるような余裕もない。どうにか気合を振り絞って木の前に立つところまできたけれど、もう、本当にがまんできそうになくなっていた。 「で、わたしにどうしてほしいの?」  分かっているくせに、マイナはわざとらしく笑顔を浮かべて、ねっとりとした口調でおれに聞いてみせる。おれはひどい恥ずかしさと、それ以上のしっこがもれそうという衝動に苛まれておかしくなりそうだ。もうためらっているような余裕もなくて、しぶしぶ、観念して口を開く。 「おれの……ふんどし、ずらしてほしい」 「おちんちん見られたくないんじゃないの? ずらしたら見えちゃうよ」  くすくす、とマイナは笑い、そのたびにおれのプライドはひどく痛めつけられるようだ。排泄の手伝いをしてほしい、と頼んでいる今の状況ですら恥ずかしくてたまらないというのに、自分の口からつよく頼まなくてはいけないというのは、とても堪える。 「っ……チンコ、見て、いいから……てつだってくれよ……」  音にするたびに、顔がどんどん火照っていくようだ。そんな様すらマイナにはいいおやつのようで、とても愉快そうにふうん、とかそっかあ、とか呟いて、木の前に立ちすくむおれを眺めまわすように歩き回る。  明らかに焦らされていることに、少々の苛立ちを覚え始めたその時――ふと、尿道をほとばしる熱い感覚が訪れる。 「……っ! っ、あ、う……」  ――じわ、と滲む。  股を見れば、汗ばんでふくらんだふんどしの布地に、わずかに染みが広がっている。  堪えきれず、ちょっとチビってしまったようだ。思わず内股になってしまったおれを、マイナは見逃さない。 「あれ、おチビりしてる。ふんどし一丁だと目立つねえ」 「呑気な……こと、言ってないで……はやく……!」 「はいはい、しょうがないなあ」  やれやれ、とマイナは緩慢な仕草で首を振り、それからおれの下半身へと手を伸ばす。 「うわあ、パンパンじゃん」 「……っ、あっ、どこ、触ってんだよ……!」  マイナの指先が捉えたのは、尻尾の付け根にあるおれのふんどしの結び目でもなければ、ふんどしの前袋でもない――おれの張り詰めた下腹部だった。指先がつうと踊って、その細い刺激がはりつめたおれの膀胱を緩めようと働きかける。 「ね。ここ、押し込んだらどうなるの?」 「な、なにいって――っ、あううっ!」  わずかに下腹部を押し込まれて、思わず声を上げる。じわあ、とはずみでしっこが漏れ出て、ふんどしをますますじっとりと濡らした。 「あ、また漏れちゃったね」 「ま、マイナ……やめろよ……ほんとに、もれちゃうだろ……」  力の抜けていく足先を震わせて、おれは必死に頼み込む。しかし、マイナは聞き入れない。 おれはこのときになってようやく、マイナがきちんとしょんべんをさせる気がそもそもなかったということに気付いた。  指先に込められた力はどんどん強くなって、均等なタイミングでぐいぐいと押し込まれる。そのたびに、おれのチンコのさきっちょからじわ、じょわと滲み出て、しょんべんの濃くてむせ返るような匂いが薄く立ちはじめる。 「いーち、にーい、さーん」 「あっ、ああ、も、もれちゃ……あっ、あう、うう……」  カウントに合わせて、マイナはおれの下腹部を圧迫する。そのたびにおれは呻いて、ぐねぐねと身をよじる。よじってもふんどしは取れないし、どうしようもないけど、目の前に顔を出した“おもらし”という結末から、少しでも距離を取りたかったのだ。  漏らしたくない。よりによって、マイナの目の前で、マイナの手でなんて。 「えいっ」  しかし、おれの精いっぱいの懇願も抵抗も、マイナの指先一本ですぐに台無しになった。ぐいっ、と強めに下腹部を押し込まれ、膀胱がいっとうはげしく軋み、そして。 「――っ、あっ、かっ……!」  びくん、と体が跳ねる。  無意識に絞り出すような声と、声ではない何かが絞り出される。 ――じょっ。  チンコの先が、いっそう熱く滲み。 ――じょろろっ。  張り詰めていた膀胱と、必死に引き締めていたチンコの先っちょが、観念したように脱力して。 ――ぷじゅっ、しょぉぉぉぉぉぉっ…………!  チンコのさきっちょから、しょんべんが堰を切ったように吹き出し始める。 「あっ……はあぁ……っ」  めまいがするようなきもちよさに、おれは泣きそうなこえを上げた。  おれの大切な部分を包み込むふんどしの白い布地がしっこの勢いにもわりと膨らんで、濃い染みが瞬く間に広がっていく。股座のあたりが瞬く間に濡れていって、おもらしを吸いきれなくなったふんどしからびちょびちょと滝のようにしょんべんが流れ落ちる。内腿を伝って、おれの足元にお漏らしの水たまりを勢いよく広げていく。  とてつもない脱力感に足腰ががくがくと震え、おれは腰を砕けさせないように必死に踏ん張ろうとするけどそれも叶わない。石になった両腕の重さにぐらりとつんのめって、おれは思わず尻もちをついてしまう。びちゃり、と水たまりが跳ねる。途端に尻に伝う、生ぬるく情けない感覚。  しょんべんは止まらない。おれの身体の中身がぜんぶしょんべんになったみたいに、チンコはどこまでもしょんべんをじょろじょろと吐き出し続ける。もわもわと立ち込めるひどい臭さと、生暖かいしょんべんが外の空気にさらされることで冷えていき、ひどく肌寒い。 「あーあ、お漏らししちゃったね」 「み、見んなよぉ……」  ぐしょ濡れになって張り付いたふんどしから、こんこんとしょんべんを垂れ流し続けるおれの情けない姿。それを見下ろすマイナの眼差しはとても愉快そうで、どことなく挑発的でもあり、そしてひどい興奮にぎらぎらと燃えていた。  おれはしっている。マイナがこういう顔をするとき、マイナは自身の心の内側の加虐心というものを、ひどく刺激されているのだ。そして、それを持て余して、これからおれに色んないじわるを仕掛けてくることを。  ついでに、もう一つしっている。マイナのこの、普段は見せないようなぎらついた眼差しに射すくめられるたびに、おれの心の内側はどうしてかひどく燃え上がるのだ。  おしっこをさせてもらえず、焦らされて、結果として好きな女の子のまえでお漏らしをしてしまった。情けない我慢の姿も、いまにも泣き出しそうな顔で漏らし続けているのを見下ろされているいまの状況も、全部をさらけ出してしまった。  おれのオトコとしてのプライドはもうぐちゃぐちゃで、ぐちゃぐちゃのはずなのに、おれの心臓はばくばくと波打ち始める。恥ずかしさと消えたさと、それ以上の興奮がこみ上げてきて、おれの頭はもうおかしくなりそうだった。 「おもらしして、それなのにコーフンしてるんだ」 「ん、ふうっ……」  マイナの杖の先っちょが、しょんべんを全部吐き出し終えて、それなのになぜかむしろ固く突っ張り始めているふんどしのふくらみをつんつんと突く。鋭敏になったチンコをいたずらに刺激されて、ますます下半身に血が通う。 「身体、また洗ってあげよっか。手、まだ使えないもんね。痒くなっちゃ、やだもんね」 「……いいのかよ」  平静を装った、興奮のるつぼたるマイナからのお誘いに、おれはふくれっ面を装いつつも期待に全身が湧き立つようだった。  どく、どくと心臓が波打つ。血が湧き立って、ふんどしの内側がぎりぎりと張って痛む。このほてりを収めてもらうには、きっと夜が明けるまでの時間が必要だ。 「……立てる?」 「……たてない。おれ、今手使えないから……なんにもできない、かも」  何もできないんだね、とマイナは噛みしめるように言った。そして、瞳の内側のぎらつくような炎をいっそう昂らせる。  そう、おれはいま手が使えないから、なにひとつ抵抗はできない。マイナがどんなにおれのことをいじめようとも、おれはされるがままになるしかない。  ――そう、されるがままになるしかないのだ。 「じゃあ、おちんちん洗ってもいいよね」 「……すきに、しろよ」  マイナはおれの肩を担いで、近くの川辺へと歩き始めた。 「じゃ、夜が明けるまで、いーっぱい洗ってあげる」  全部全部垂れ流して、残ったのは期待だけ。  このあとに起こり得るだろういろいろないたずらごとを思い描いて、おれは頬をほてらせ、ごくりとつばを飲み込んだ。 終


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