熊獣人の格闘家少年の朝一おしっこを見せてもらう話
Added 2023-10-24 14:18:38 +0000 UTC「精神操作の魔法……ですか」 魔法書の装丁に刻まれた文字を辿りながら、わたしは苦々しく呟いた。 言葉が濁ってしまうのには理由がある。一介の魔法使いとして、一応魔法ギルドに属する身としては、この手のうちにある一冊の本を今すぐに禁書庫へと投げ込まなくてはならないのだ。 精神操作。つまり、魔法をかけた相手の心情やら行動やらを一時的に術者の制御下に置くという、シンプルにして凶悪な魔法のひとつ。術者の能力次第ではあるけど、犬に逆立ちで歩かせるところから始まって、国民全員に死ぬまで躍らせ一国を崩壊させる――なんてことまで容易く行えてしまう魔法といえば、非魔法使いにもその危険性は伝わるはずだ。そんなヤバい代物について書かれたウルトラスーパー禁書モノが、はすっぱの魔法使いであるわたしの手元にあるというところで、どうか心境を察してほしい。 「あの、流石にこれは……」 「まあ、マイナのお嬢ちゃんの言いたいことはわかるさね」 古茶けたカウンター越し、気だるげに壁に寄りかかる狐人の店主――マホガニー魔法具店の女店主、リサ・マホガニーは、渋るわたしの言葉を遮って紫煙を吐き出し、それから魔性の色気を湛える切れ長の瞳をこちらに向ける。 「けどまあ、魔法書は読まれてこそだ。というわけでどうだい、お安くしとくよ」 「み、身に余りますよ、流石に……」 同族のよしみ、という理由をつけて、リサさんはわたしにたいへん良くしてくれる。だがわたしは、彼女がわたしに向ける気持ちが言葉のそれだけでないことに流石に勘づいていた。彼女の在り方は魔法使いというより魔女のそれであり、つまり、わたしという清純で無欲で善良な子羊に堕落のための術を与え、どんどん世欲に染まっていく姿を観察したい、などという気持ちが裏に秘められていることに。 「おやまあ、随分と食いつきが悪いねぇ。『種くだし』に『誘惑』に『鋭敏化』に『巨乳化』はあんなに食いついてきたのにねぇ」 「いや、だってそれは……禁書指定はされてないモノですし……」 以前の透明化のスクロールの一件を話して以来、わたしとウルのいびつな関係性についていたくお気に召したのか、リサさんはウルとの「あれそれ」に役立ちそうな魔法をよく勧めてくるようになった。そして清純で無欲で善良な子羊たるわたし――自分で言っててちょっとかなしくなってきたけど――は、まんまとチラつかされたキャロットに食いつき、なけなしのお金をこの店に落としまくっているのである。 まあ、おかげさまで高い避妊魔法具を買わなくてよくなったし、色んな方面での関係性も良好だし、鋭敏化のせいで歩くたびにふんどしにおちんちんが擦れて悶絶おもらしするウルという眼福極まりない光景を網膜に焼き付けることもできたし、なぜか巨乳化の魔法はわたしに効かなかったけど、リサさんの魔性のお誘いは私の個人用お財布が軽くなることを除けばいいことしかなかった、のだけど。 「もし使ってることがバレたら、わたしギルドから破門ですよ。そうなったらこの店にもガサ入れが入ります」 「ほう」 「ていうか、わたしだって魔法使いとしてのプライドはあります。そういう邪な気持ちで魔法使いを志したわけでもありませんし」 「へえ」 「っていうか、精神操作が出来たからってなんですか。確かに魔物とかに掛けられたらいいでしょうけど、ああいう魔法ってある程度の知性があって、かつわたしの魔法力より魔法に対する抵抗力が低くないと効かないじゃないですか」 「でもウル坊なら効くだろうよ」 「だとしても!」 「無抵抗でエッチなことできるよ」 「買いまァす!」 「はい、毎度あり」 かくして、わたしという善良で無垢な子羊は、眼前で含み笑いを隠さない悪い狐の大魔女様にたぶらかされ、どんどんと倫理のでこぼこ道を転げ落ちていくのでした。 ◇ 「もうわたしほんと最悪バカまぬけ……」 店を出、新鮮な朝の空気と共に正気を取り戻す。自戒を込めた呪詛が口からあふれ出てやまない。 昨晩の雨の影響か、ところどころに雨の溜まった石畳を睨みつけながら、わたしはいますぐにこれを魔術ギルドの禁書庫に持っていくべきだという善の心とウルにあんなことやこんなことを強制してみたいという悪の心とで戦っていた。 葛藤、葛藤、また葛藤。石畳を一歩踏み出すたびに、私の心は善悪の彼岸で揺れる。 確かにウルになんでも言うことを聞かせられるというのはとっても魅力的だ。恥ずかしくて絶対に言ってくれないような愛のささやきをさせてみたいし、絶対にしてもらえないような恥ずかしいポーズだってやらせてみたいし、あと久々におしっこしてるところをばっちり覗いてみたい。 でも、だからといってそんな他人の尊厳をこねくり回すような真似はぜったいによくない。というか、最悪関係性がこじれにこじれて崩壊する可能性だってある。精神操作とはすなわち、どんなに善良な命令を下したとしても相手の尊厳を踏みにじる行為であることには変わりないのだから。 「うー……倫理……人の心……でもエッチなこと……エッチなことぉ……!」 まだ日が昇って間もない街中を、一冊の本を大事そうに抱え、ぶつくさと不明瞭な言葉をつぶやきながら据わった目で歩く姿は客観的に見てかなりヤバい。まだ朝方ということで巡回の衛兵さんにかち合わなかったのは幸運だった。いやむしろ、かち合ってくれたほうが結果的には良かったのかもしれないけど、そうはならなかったのだ。 (ごめん、ウル……! ウルがおちんちん丸出しで筋トレしてるとことか見たい……!) 善と悪、どちらの心が勝利を遂げたかというのは、わたしがたどり着いたのがギルドの禁書庫ではなくわたしとウルが拠点としている宿屋であるというところからお察しいただきたい。そこに着くころにはもうすっかりと振り切れていたし、なんなら宿の階段を上がる足取りはとても軽快なものになっていた。まるで新しいおもちゃを手にして帰ってきた子供のようである。 「ウル、起きてるかなあ」 例の一件以来、男の大部屋と女の大部屋にそれぞれ寝床を取っていたのを取りやめて、私たちは二人で一つの部屋を借りることにしていた。お外で裸でまぐわっちゃったんだからプライバシーもへったくれも今さらないよね、という私のごり押し主張による合意――ウルは最後まで渋っていたけど――のもとである。別に、同じパーティなんだし、野宿の時だって寝る距離は近いんだし、平時に一緒に寝てたって不純ではない。決して。 「おうい、ウル? ……なんだ、まだ寝てるの」 部屋に入ると、二人用の大ベッドに大の字で横たわっている茶毛の熊獣人の少年の姿が目に入る。しなびた布団を見事に蹴り除け、があがあと遠慮のない大いびきを掻くさまは、さながらベッドの上という縄張りを誇示するお山の大将といったところだろうか。まる出しの茶色いお腹はいびきのたびにふくふくと膨らみ、萎んでを繰り返している。 相変わらず、ウルの格好は無防備極まりないものだ。外気から力を取り入れる“拳闘士”というジョブのしきたりとして、おちんちんをぎりぎり隠せるくらいの布面積のふんどし以外は基本的に身に着けてはいけないらしく、それは寝ているときも同じだった。つまり、耳の先からつま先まで、布地が覆うおちんちんと紐の通るお尻の割れ目以外は基本的にまる出しなのだ。 ここ最近のウルは随分と体が逞しくなって、背も若竹のようにぐんぐんと伸びてきた。ここ数か月のうちにわたしの身長なんてすっかり追い越されてしまっていて、昔は見えていたはずの彼の頭のてっぺんは屈んでもらわないと見えないようになっている。その代わり、向かい合えば、わたしの目の高さには彼の鍛え上げられた胸周りと、男なので晒してもよい二つの桃色の突起が存在感を放つようになっており、胸周りの豊満さで完全に敗北してしまっているという事実を常々噛みしめさせられるのだ。閑話休題。 とにかく、ウルはまるっこい少年期を少しずつ脱し、「男」への変遷の最中にあった。ごわごわとした毛並みの上からでも分かるほどにごつごつとした筋肉がついてきて、声も変声の時期を迎えたのか、野太さと以前までのような舌足らずの柔かい音階とが入り混じって奇妙な声音になっている。 当然いちばん大切なあそこの部分もちょっとずつ育ち始めていて、だというのにふんどしのサイズは以前のままなので、ビジュアル面を筆頭にいろいろな意味で非常に危なっかしい。ちょっとでも戦いが激しかったりすると、戦いの後には大抵前袋の脇から突起やら玉やらがこんにちはしているのだ。 (今日もはみ出してる) それは日常でも同じことだ。就寝前にしっかりと締め込んでいた白い――よく見ると結構黄ばんでいるけど――ふんどしは夜間の寝返りのせいか若干緩んでおり、ウルの身体の部位でいちばんかわいくて大切なモノはいつものように布地の脇からちょこんとはみ出している。 「もう、だらしないなあ」 そんなウルの、リラックス状態にあるやわやわおちんちんをつまんで、ちょっとだけ手の中で包んで温もりを確かめてから、ふんどしの中にしまい込んでやる。再び零れ落ちないように、ついでにふんどしも締め直しておく。それがいくらかの刺激になったのか、ウルはむずがるように小さく呻いて、それからごろりと寝返りを打った。ほとんどうつ伏せになったウルの、焼きたてのパンのように張り詰めたこげ茶色のお尻が目の前に現れる。狐の尻尾とはまるで違う、申し訳程度の大きさの丸尻尾がひょこひょこと震えている。 「……」 ふと、思い至る。 直接的な現象を引き起こすものではなく、肉体や精神に作用するタイプの魔法は、対象の意識が不鮮明な状態であるほど効きやすくなる傾向にあるということを。 そしていま、ウルはとても安らかに寝息を立てている。睡眠中とはもっとも意識が不鮮明な状態であり、ということはつまり。 ――ひとつ唾を飲み込んで、わたしは脇に抱えていた例の魔法書を開いた。 ◇ 「ん……んああ……っ……」 「おはよ、ウル。よく寝てたね」 「あ゛ー……おう……はよ……」 もそもそと布団の擦れる音がして視線をやれば、丁度ウルがむっくりと身体を起こしたところだった。ふとましい咆哮が木霊して、それから両の腕を突き上げるように伸ばし、大あくびを一つして、気だるそうにベッドから這い出てくる茶色の熊小僧。なんの比喩でもなくまさしく冬眠明けの熊のように、鈍重でのっそりとした足取りで床に降り立てば、踏みしめられた古い床板がぎしりと鳴る。 ウルは寝ぼけ眼を瞬かせ、ぼんやりと立ちすくんだ。まだ意識がもうろうとしているせいか、寝起きの男性特有の生理現象――曰く、朝勃ちというらしい――によって押し上げられたふんどしの前袋がものの見事に突っ張っており、心もとない布地が力いっぱいに押し上げられたせいで隙間が生じ、横からふにゃふにゃの玉袋がはみ出ていることにも気づいていないようだ。 「今日も元気そう」 「ん? ……うおっ」 わたしのからかいによって、ようやく自身の股間が元気いっぱいになっていることに気付いたらしい。ウルはさっと手で股間を覆い、口を尖らせた。 「……あんま見んなよ。朝はこうなっちゃうんだよ、オトコは」 「知ってる。元気でかわいいと思う」 「ヘンタイ」 「へへ」 わたしの気色の悪い発言に、ウルは毒づいて、それから僅かに顔を赤らめる。あまり気持ちの良い発言でないという自覚はあるけれど、そうやって嫌がって恥じらうウルの顔があまりに愛らしいものだから、こうしてついついやってしまうのだ。反省はしていません。 「……はらへった。マイナは飯食ったのか?」 「まだ。ウルが起きてきたら食堂に行こうかなって」 「なんだよ。起こしてくれてもよかったんだぜ」 「あんだけ気持ちよさそうに寝てたら起こすの躊躇っちゃうよ。昨日はお疲れ様だったね、船の荷下ろしだっけ?」 「おう。でっけえ荷物抱えさせられてよ、いい鍛錬にはなったけど、ありゃしんどいぜ……」 当たり前の話だが、冒険者だからって毎日毎日ダンジョンに出向いているわけではない。特にまだ低級の冒険者である私達は受けられる依頼も限られているので、空いた日は酒場に寄せられる日雇いの仕事――私なら図書館の文献整理や魔道具のテスター、初級ポーションの生産の手伝い、ウルは船の荷下ろしやら町周辺の草刈りやら酒場の注文取りなど――を手伝って生活費を賄っている。昨日は街に大型の貨物船がやってきたこともあり、ウルは朝から晩まで荷物の運搬に駆り出されていたようだ。 「今日の朝飯、なんだって?」 「オートミールとミルク。ちょっとお金出すとハムエッグもついてくるって」 「ハムエッグ食いてえなあ。足していい?」 「いいよ。あんたは身体が資本だし、いっぱい食べな」 他愛もない話をしながら部屋を出て、階段を下って食堂へと向かう。立ち込める麦粥の煮え香が絶妙に食欲をくすぐり、空っぽの胃の腑が小さく鳴る。 「おっ、空いてるじゃん」 仕事を探しに出かける冒険者はもうすでに出立していて、私たちのように休息を取ることを選んだ人らはまだ眠っているのだろう時間帯だからか、いつもは人でごった返すはずの宿の食堂は珍しく人影がまばらだった。普段は席に着くや否や外野から飛んでくる、ちんたらしてないではやく食って席開けろの視線が痛いものだが、今日はゆっくり過ごせるかもしれない。 「あー……わりい、マイナ。おれちょっと先にしょんべんしてくる」 これ幸いと配膳口近くのテーブルを陣取った矢先、ウルが若干申し訳なさそうにそう申し出た。もじもじと身体を揺らし、落ち着きなく目を泳がせているところを見るに、結構我慢の限界が近いのかもしれない。 「外?」 「おう。でもすぐ戻るから、先食ってていいぞ」 宿のトイレは使用料がかかるので、宿住まいの男たちはおしっこぐらいなら街の屋外で済ませるのが主流らしい。ウルもその例に漏れないようで、就寝前や起床後はさりげなく宿の外に繰り出して、またすぐに戻ってくる。流石にどこでしているかまでは教えてくれないけど、どうせその辺の路地裏とかだろう。 「我慢できないの?」 「うー……ちょっとキツい……」 しばらく我慢させてみてもいいが、食堂でお漏らし沙汰になったらウルの沽券に関わる。ウルが恥ずかしい思いをするのは大好物だが、悲しい目に逢わせたいわけではないのだ。 「わかった。でも、ついてっていいよね?」 「ん……おう、いいぞ」 そういう訳でウルの許諾を貰ったので、大手を振って席を立ち、ウルの所作のなかで一番かわいいとされるおしっこ中を観察することができる。もう我慢が厳しいのか、気持ち早足気味なウルに続いて、私は宿の外へと繰り出すのだった。 もうお気づきだろうが、ウルはいま、私の『精神操作』の魔法の影響下にある。魔導書にざっと目を通してすぐに行使したというのにここまで綺麗に効いてしまっているのは、私の魔術の才能のなせる業かもしれないし、或いはウルの魔法に対する耐性があんまりにも低いのかもしれない。たぶん後者であるだろう。 ちなみにやり口は単純で、『術師のお願いをなんでも実行し、お願いを疑問に思わない』という命令を最も優先するように刷り込ませただけだ。これによってウルは基本的に自立的な行動をしつつ、私のいかなる命令に対しても二つ返事で請け負ってくれるようになった。こんな単純なプロセスで一人の人物の尊厳を掌握することができるのだから、そりゃ禁術指定もやむなしである。 「普段はどこでおしっこしてるの? 教えてよ」 「ん……その辺の裏路地とか、夜は表の水路んとことか。ギルドで稽古するときはギルドの便所まで我慢するけど、遠いから結構もれそうになる」 「ふうん。じゃあ、ギルド行く前に呼び止めて話すの、もしかして困ってる?」 「超困る。ギルドまでもたなくて途中で立ちションすること、結構あるし……」 「そっかあ」 だからまあ、こういうセクハラすれすれアウトみたいな質問に対しても抵抗感を抱かれることなく、さもそれが自然なやりとりであるように続けることができるのだ。 と、それはそれとしていい情報を聴取しつつ、迷いのない足取りのウルに先導されて路地の奥の奥へと立ち入っていく。奥に進むにつれ道幅はどんどん狭くなり、連なる建物の外壁はどんどん薄汚くなってくる。昨晩の雨の痕跡が残ったまま、陽が射さないせいで湿ったままの地面の匂いに混じって、熟成された排泄物や吐しゃ物の臭気が混入しはじめ、まともに息をするとえづきそうになる。 人ひとりが通るのがやっとぐらいの道幅のところまできて、ウルはようやく足を止めた。 「この辺でする」 「こんな奥までこなくてもいいんじゃないの」 「あんまり表の道に近いと衛兵に見つかるんだよ。おれはまだないけど、おれの知ってるやつがしょんべん漏らすまで説教され続けたって」 「ははあ」 おしっこ一つに大変だなあ、と他人事な感想を抱いてしまう。もう少し収入が安定するようになったら、トイレの使用料を取らないような宿に鞍替えしてあげたほうがよさそうだ。問題は、それがいつになるかわかんないってことと、こうしてお外でのおしっこを見せてもらえる機会が減りそうってことだけど。 「じゃ、おれここでするから。あっち向いてろよ」 建物の外壁の石壁のまえに向き直り、ウルは私に背を向けるよう顎でしゃくった。しかし、今日の私はそれに従う必要がないのだ。私はむしろウルに詰め寄って、お芝居に齧り付く最前席の観客のように熱い視線をふんどしのふくらみへと投げかける。 「やだ。見してよ、おしっこするとこ」 「ん……おう、わかった」 命令、そして許諾。ウルは明らかに異常極まりない現状に違和感を抱くことも恥じらいを抱くこともまるでなく、さもそれが当然のことであるように私の頼みに頷き、ふんどしをずらしておちんちんを引っ張り出した。そのはずみで、弾力のある小さな突起が自身の存在を示すようにぷるんと震えてかわいらしい。 「あんま……まじまじと見んなよ」 「恥ずかしいんだ」 「そりゃ……そうだろ」 ウルは親指と人差し指でおちんちんをつまむようにし、くっと皮を引き下げる。皮に包まれていた薄桃色の先っちょが露になり、ぶるりとひとつ身体を震わせたかと思えば、すぐにちろちろと緩い水流が放たれ始め、石壁を静かに濡らしていく。ひそやかな路地裏に、弾けるような水の音が現れる。 「うわあ、結構我慢してたね」 「見りゃ分かんだろ……」 朝起きてから結構時間が経って、ようやく許された一番搾り。 となれば当然その勢いは相当なものになる訳で、透き通った黄金色の水流は、瞬く間に乱暴に叩きつけるような勢いのモノに変わっていった。 「はーっ……」 壁にぶち当たってた飛沫が足元に跳ね返り、広がっていく生ぬるい水たまりが足のひらに伝うのも気にせず、ウルはたいそう気持ちがよさそうに大きく口を開け、熱い息を吐いた。しゃああああっと無遠慮な水音が木霊する中、もうもうと立ち上る湯気と濃い臭気に包まれながら、頬をほてらせ、丸い熊耳をぴこぴこと揺らしてご満悦のようだ。 「きもちいい?」 「おう」 「おちんちん持ってみてもいい?」 「ん……」 ウルが添えていた指先を外したのでフリーになったおちんちんが、水流の勢いでぷるぷると暴れ回っている。私は恐る恐る指を伸ばして、その柔らかくはずむ突起の根元を摘まんでみた。 「う、っ」 指先が触れた瞬間、ウルはぴくんと小さく身体をけいれんさせた。やはり性器なだけあって、他人の接触にはいっそう敏感らしい。こみ上げる痺れを堪えるように、僅かに唇を固く結んで身を震わせるウルの姿を見て、なんだかいけないことをしているような気分になる。いや、ていうか、放尿中の他人の性器をつまむのは、実際いけないことなのだが。 (結構柔らかい。普段は硬くなりかけのしか触ったことないからなあ) 指の腹に、僅かに尿道を伝うおしっこの流れと熱を感じる。実際に体の内側からおちんちんを通っておしっこが放出されているのだ、という事実に謎の感動を覚えて噛みしめていると、水流の勢いが次第に弱くなっていき、絞り出すようにぴゅっと吹き出したのを最後に、長く続いたおしっこが止んだ。足元はすっかり水浸しで、これほどの量のおしっこがウルの膀胱の中に溜め込まれていたのだという事実になんだかちょっと興奮する。 「すっきりした? ちゃんと振らなきゃいけないんだよね……確か、こんな感じで」 「ふーっ、ん、うー……」 根元をつまんだまま、上下に揺するように震わせてやると、おちんちんの先に滲んでいたおしっこの雫が数滴払い飛ばされる。ウルのような男の子がやるおしっこの仕草の中で、この振るというプロセスが一番愛らしくて好きだ。自分のモノをつまんで一心不乱にぷるぷると震わせる様子が、なんだかちょっとコミカルで面白いというか。 「で、皮を戻して……ふんどしのなかに、しまいこむ……よし、オッケー」 「ん、んにっ……」 剝いていた皮をもどしてやると、いつもの蕾のようなずんぐりおちんちんに姿が戻る。剥き上げた姿より、こっちのちんまりとしたおちんちんの形状のほうが可愛らしくて好きなのだけど、噂で聞くには男子というのは皮が常に剥けているほうが男前という風潮があるらしい(らしいというのは、以前にウルに実際のところを聞いたとき、“知らねーよほっとけよ!”となぜか怒られたせいで真相が不明なためである。彼はなぜ怒っていたのだろう)。個人的意見を言わせてもらえば、ぜったい皮に包まれてる方がいい。なぜなら守らなきゃいけない大切な部分、という感じが際立つからだ。 「さ、帰ってご飯食べよっか。ほら、行こ」 「いてっ。け、ケツ叩くなよお」 おちんちんをふんどしの中にしまい込んでやった後、張りのあるまん丸お尻をバチンと一つ叩いて、ウルを先導に裏路地からの脱出を図る。どう考えてもいけないことをしているという事実からはもうとっくに吹っ切れていて、私は食事後に彼にさせたいことのいくつかを思い浮かべては悦に浸り始めるのだった。