7月13日から7月28日まで、表参道のビリケンギャラリーさんにて初個展『LONG LONG HAIR GIRLS』が開催されていました。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。ようやく展示も全日程が終了し、今回の記事ではその展示自体のメイキングを掲載していきたいと思います。
イラスト集『LONG LONG HAIR GIRLS』の方にも、個展へと至る道のりを書いているので重複する部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。イラスト集は今後コミケ・コミティア他、とらのあな・メロンブックス・BOOTHにて取扱予定です。
さて。個展じたいのお話は、昨年の2023年から頂いていたのですが、実際のところ日程が近づきケツに火がつかないと、なかなか実作業には入れないものです。5月26日のコミティア148では、個展のDMを配るのと、ある程度どういう作品が展示されるのかがわかるイラスト集のプレビュー版を出す必要があるため、急遽4枚のイラストを(下描きまで)仕上げました。
酒カス姫(ビアガーデン)
ビアガーデンで大量のお酒を飲んでいるお姫さまです。以前『酖酒姫(酒カス姫)』というバストアップのイラストを描いたのですが、そこから発展させて今度は全身を描きました。その方が髪の長さをよりアピールできるからですが、ドレスの下半身のデザインが全く決まっていなかったので苦労しました。上半身はスラッシュ(切れ込み)が多い、ルネサンス期のデザインですが、下半身はヴィクトリア朝やベルエポックのデザインが入っています。かなりハイブリッドなお姫さまドレスと言えるでしょう。
辛キチ姫(激辛ラーメン)
酒カス姫と対になるキャラクターとしてデザインしたのが、辛キチ姫です。こちらも以前バストアップのイラストを描いていたのですが、下半身のデザインは未定のままでした。同じくヴィクトリア朝あたりのデザインを参考にしつつ、酒カス姫との差別化を目指しました。こういう時、自分の持っている引き出し(資料)の量が問われますね。
二枚ならべるとこんな感じ。うまく対になるイラストとして描いています。
『Papular Beautie』
背中に湿疹のある女性のイラストです。バーンズ・アーカイブという医学写真のコレクションの中に、『Papular Syphilides(丘疹症状)』という1891年に撮影された写真があります。湿疹が背中全体に出ている女性の写真なのですが、それが美しい。彼女の顔は見えないのですが、もし振り返ったらどんな感じなのだろうか……と想像しながら描いた一枚です。ラフの段階では無表情だったのですが、下描きの際に笑顔になりました。
『Chubbily Venus』
こちらはロシアの画家、ボリス・クストーディエフ(1878-1927)が描いた『ロシアのヴィーナス』という絵画が元ネタです。美しい金髪と豊満な肉体の女性がサウナに入っている姿を描いたものですが、とてもいいです。お腹が主役なので、おっぱいのサイズは敢えて控えめにしています。
ここまでの4枚を、5月26日のコミティア148にて頒布したコピー本『LONG LONG HAIR GIRLS preview edition』に収録しました。この時点で個展開催は一ヶ月半後に迫り、出来ているのは描き溜め3枚(ティッツィ2枚とギャル子)、あとは下描き4枚という有様。漫画の原稿なども併せて展示するとはいえ、せめて10枚くらいはないとカッコがつかない。6月からあわてて他の絵の作業を開始します。
『入学式』
ここからは双子シリーズのイラストになります。この双子は以前、チャリティー色紙などにも描いたキャラクターなのですが、気に入っているので今回の個展でも描くことにしました。ちなみに名前はジゼルとエステルです。
『入学式』のイラストでは、旧ソビエトの制服を着ています。何度か旧ソビエトの制服がメイド服に似ていて可愛い! という話を書いていますが、今回はカバンや花などを小道具加えに、入学式の記念写真という設定で描きました。ちなみにソ連崩壊後も地域によってはこのタイプの制服が採用されているので、特に時代が限定されるものではありません。
『リトルサマー』
ベランダで水着姿、というシチュエーションの一枚です。古写真なんかを見ていると、けっこうベランダなどの半屋内で水着になって撮影しているものを見かけます。水着、というと海や川、プールなどの水辺を思い浮かべますが、日照時間の少ない北ユーラシアのあたりでは、特に水辺でなくとも、日光をより浴びるために水着になっていたようです。ただ、このイラストでは『夏が待ちきれずに、もう水着になっている』という設定になっています。
『JAPONISM』
外国人の女の子が日本の着物を着てるの可愛い、と思って描いた一枚です。人形は某古書市の図録に掲載されていたものが、こんな表情をしていて可愛かったので、それを参考に描いています。着物に関しては、普段からショッピングモールなどの中にある着物屋さんのパンフレットを貰って帰っているため、こういう時に役立ちます。
『初聖体拝領』
カトリックの儀式である初聖体拝領についても、何度か描いて、解説もしているかと思います。花嫁衣装のような豪奢なコスチュームがとにかく圧巻ですね。あとは、普段はおちゃらけているような少女たちが、まるで別人のように真剣な表情をしている姿、というのが描きたかった一枚です。実際の初聖体拝領の記念写真は、真剣な表情なものもあれば、おちゃらけたものもありますが。
『VACATION!』
水着メインの一枚。いろんな種類の水着をいろんな体型の女の子に着せたかったので、こうなりました。両端のふたりは、実は水玉模様で水着の種類がかぶっちゃっているんですが、そこを差別化するのに工夫しました。下描きの時点でキャラクターや水着のデザインをガッチリと詰めてるいっぽう、手前の波や背景なんかは適当に描いて終わらせています。色塗りのとき、そのせいでめちゃくちゃ苦労することになるのですが……。
『秘密の信仰』
今回の展示の〆(シメ)というか、漫画とかでいうとエピローグになるような一枚として制作したイラスト。髪の長い女の子たちが夜な夜な集まっているという不思議なシチュエーションで、とにかく物量が多く大変なんですが、これを描かないことには展示は終われないと思った。ので、スケジュールがゴリゴリ圧迫されながらも、頑張って下描きをあげました。
『退屈な入院』
これも物量がエグい一枚。双子の入院イラストは描きたい描きたいと思っていたんですが、物量的に大変だし、病院のあれやこれやって描くの難しいしで諦めようと思っていたところ、ギリギリになって【包帯グルグルの両足を重りで吊り上げて入院している資料】を見つけて『これだ!』と思い、参考にして一気に描きあげました。ちなみに一番右奥のぬいぐるみはウィーンのベルヴェデーレ宮殿の庭を守っているスフィンクスで、これはかなりエロいデザインをしています。
『二国間会談』
『酒カス姫』『辛キチ姫』を描いた手前、両者が揃っている絵を一枚は描かないとウソだろう、と思って描くことにしました。『二国間会談』というタイトルがついているものの、一体なにを話しているのやら。これも積み重なった酒類や食事類が物を言う、物量の題材なので頑張るしかないですね。ペン入れして色塗りをする未来の自分、がんばれよ、という気持ちで下描きを描いています。
『観光部族』
下描きの段階ではわかりませんが、黒人で黒髪の女の子です。以前見た、僻地の部族を取材したドキュメンタリーが元ネタです。僻地とはいえども現代、すっかり文明化しており、普段はTシャツとか着て過ごしているんですが、観光客がやってくると露出の多い『伝統的な衣装』に着替えて、見物料と引き換えに『伝統的な踊り』を披露し、ハンドメイドの土産物なんかを売ることで生計を立てていました。また、それとは別に、ナミビアの女性が伝統的衣装と現代の下着を組み合わせて、非常にファッショナブルに着こなしている姿を見たことがあり、そちらも元ネタになっています。下描きは良い感じになりましたが、果たしてこれを黒髪、黒い肌で塗ったときにどうなるのか……。ある意味いちばん不安の残る下描きです。
ともあれ、こうして14枚の下描きが出来上がりました。
この時点で6月17日、すでに個展初日(7月13日)まで1ヶ月を切っています。しかも個展前日までに完成させれば良いというわけではなく、イラスト集を作るためにもっと前に印刷所に入稿しなければいけませんし、他のグッズ制作・設営準備・告知・額縁の注文などなど、やることは山のようにあります。そして買い物、掃除、洗濯、食器洗いといった日々の生活でやらなければいけないことも、個展準備期間だからといって免除されるわけではありません。免除してほしい。
果たして間に合うのか。個展は無事開催されるのか。不安を抱えながらも、やらなければ絶対に終わらないため、とにかく作業を続けていくしかありません。ここからはペン入れの作業になるため、次回の(中編)も、ペン入れ中の写真が中心の記事になります。では、また次回で。
鈴木健也
2024-08-04 08:52:52 +0000 UTCWhititll Rose
2024-07-30 15:17:26 +0000 UTC