2024年7月13日(土)から2024年7月28日(日)の2週間あまり、鈴木健也初の個展『LONG LONG HAIR GIRLS』が開催されました。タイトルの通り『髪の長い長い女性たち』をテーマとした展示で、場所は東京・表参道駅の近くにある『ビリケンギャラリー』。古いおもちゃの販売、絵本の出版、独自のソフビキットなどなど幅広い品々を取り扱っているお店で、併設されているギャラリーでは普段から様々な企画展が行われています。
ちなみに現在は『アックス夏祭り 私の好きな名画たち』を開催中です。
さて、『LONG LONG HAIR GIRLS』の方は先日、無事に会期を終えることができました。わざわざ訪れて下さった皆さまに厚く御礼申し上げます。また、諸々の都合により「行きたかったけど行けなかった……!」という方もいるかと思います。今回の記事では会期中に撮影した写真をもとに、個展の様子をできるだけデジタルで再現してみます。残念ながら来られなかった方々にも楽しんでいただくと同時に、展示に訪れて下さった方々にも、再び思い出して懐かしんでいただければ幸いです。
ビリケンギャラリーは、東京の港区・南青山にあります。最寄駅は東京メトロ・表参道駅。B1出口を出てすぐ左にある骨董通りをまっすぐ歩き、途中の交差点を今度は右に曲がった路地にあります。
骨董通りは様々なお店が軒を連ね、平日でも非常に多くの人々で賑わっていますが、そこから一本道を曲がると、うってかわって閑静な住宅街へと入ります。
ビリケンギャラリーがある通りも、そんな静かな場所にあります。
店内で販売されている古いおもちゃの一部が、ショーウィンドウから見えるように展示されています。ドアを開けて、中に入ってみましょう。
『LONG LONG HAIR GIRLS』、入り口にはまず、漫画原稿が飾ってあります。
描いた順に『ジゼルとエステル』『淑女はドレスに着替えない』『蝋燭姫』などの原稿が並びます。複製ではなく、実際の生原稿です。
『おしえて! ギャル子ちゃん』の原稿も飾られています。ギャル子の原稿は特殊で、ペン入れ後のものは耐光性のない画材を使っているため展示が難しく、代わりに下描きを掲載しています。
また近作の短編『ひと殺しメシ』『あのエロい映画なんだっけ?』の原稿も。
この2作品は、どちらもWebで無料で読むことができます。
生原稿の先には、いよいよ今回の展示用に描き下ろされた『髪の長い長い女性たち』
の絵が並びます。さあ、奥に進みましょう。
今回の展示のために描き下ろされた作品は、全部で17枚です。
すべて作家自身の手で額装し、飾られています。
また作品のほか、スケッチブック、影響を受けた本たち、髪の長い長い女性たちの古写真のコレクションなど、展示物は多岐にわたります。
ビリケンギャラリー自体も、古いおもちゃのコレクション・自社で出しているソフビキット・絵本・そして所縁のある作家さんたちの本・グッズなど、常時様々なものを販売しています。
今回の展示ではその二つが合わさったため、かなり特殊で濃密な空間が出来上がったのではないかと思います。この空間が再現されることは、二度とないでしょう。
さて、ひとまわりして、ギャラリーの様子もあらかたわかったので、今度は展示されている絵を、順番に一枚ずつ見ていきましょう。
『入学式』
旧ソビエトの制服をモチーフにした一枚です。旧ソビエトの制服は、いわゆるメイド服によく似ていますが、頭の上にボウと呼ばれるボリュームのある飾りをつけているのと、動きやすさのためにスカートが短いのが大きな違いです。ちなみに制服といっても各家庭でのハンドメイドのため、エプロン/ワンピースの部分も、生徒によってそれぞれデザインが異なります。ソ連崩壊後の現在でも、地域によってはこのタイプの制服が着用されているそうです。
ここから何枚か、この双子たちが登場する作品が続きます。
『初聖体拝領』
初聖体拝領はカトリック信者の通過儀礼で、初めてキリストの身体と血=パンと葡萄酒を分け与えられ、正式な信者になるための儀式です。特に女の子の場合、こうした純白のドレスを身に纏いますが、これが非常に高価で、『一番安いものでも給料半月分』という話もあります。
『VACATION!』
『退屈な入院』
バケーションと入院の様子をそれぞれ描いたものですが、この2枚を上下に並べて展示したため、「海水浴に出掛けたら、両足を骨折して入院する羽目になった」というようにも見えてしまいます。そんな意図はなかったんですが、こういうのも展示の面白いところですね。
さらに進んで、他の絵も見てみましょう。
『リトルサマー』
『観光部族(Ⅱ)』
むかし見たドキュメンタリー番組で、僻地に暮らす部族を取材していました。すっかり文明化していて、普段はTシャツとか着てるんですけど、観光客がやってくると露出の高い『伝統的な衣装』に着替えて、『伝統的な踊り』を披露し、ハンドメイドのお土産物を販売して生計を立てていました。そこから発想した1枚です。
その次は、横長の作品が2枚続きます。
『秘密の信仰』
深い夜に集まった、髪の長い長い少女たち。彼女らには秘密の信仰があるようです。
『二国間会談』
二人のお姫さまが、国家を背負った重要な会談をしているようなのですが、机の上には激辛ジャンクフードと、酒類が山積み。いったい何を話しているのでしょうか。
さらにその隣には、小品と、ヌード作品が。
『JAPONISM』
『Holy Tits』
『Chubbily Venus』
ぽっちゃりした女の子を描きたくて描いた一枚です。髪の毛と陰毛との描写が、それぞれ異なるのもポイントですね。
ここでギャラリーは一旦行き止まりとなり、角をはさんで次の壁面に向かいます。
『観光部族(Ⅰ)』
さきほどの、半裸で売り子をしていた女性と同一人物です。彼女は普段は、こうした伝統衣装と最新ファッションを合わせた着こなしの自撮りをSNSに投稿しています。
『辛キチ姫』
激辛ラーメン屋で激辛ラーメンを頼んでいる、辛いもの大好きのお姫様です。キャプションにも書いたんですが、お姫さまには『変な人』が多いイメージがあります。物語の推進力としての役割を期待されるからでしょうか。
『Papular Beautie』
湿疹のある女性の背中を、美しく描きたいと思って描きました。バーンズアーカイブにある1891年の医療写真『Papular Syphilides(丘疹症状)』が発想の元になっています。
こちらの壁の中心には、今回の展示のキービジュアルにもなっている、ティッツィ・モルガネの絵が飾られています。
『SAINT TITTY』
『酒カス姫』
ビアガーデンで飲んだくれているお姫さまです。やはり同じく『お姫様には変な人が多い』というイメージが根底にありますね。
右奥のレジを挟んで、次の壁面に向かいます。
こちらは複製原画のサンプルです。
近年、高品質なジークレー印刷による複製原画が、個人でもかなり手軽に発注できるようになったので、今回の展示では展示作品のうち10点の複製原画を、数量限定で受注販売しました。顔料インクで印刷されているため、非常に発色・質感が良い出来になっています。
『Majorette Galko』
「Majorette」とは「女性の鼓手長」という意味です。鼓手長はドラムメジャーとも呼ばれ、楽隊でバトンを振る指揮者を指します。Majoretteはその独特の衣装が魅力ですが、同名のミニカー会社があるため、画像検索してもミニカーばかり出てきます。
『ティッツィ・モルガネ』
こちらは参考出品した、非販売品のティッツィ・モルガネの色紙です。ただの趣味で描いたものを、趣味で額装して、普段は仕事机の横に飾っています。
描き下ろしの作品のほか今回は、影響を受けた、あるいは単に好きな本たちを並べた『作家の本棚』というコーナーを作りました。また普段から練習のために描き続けているスケッチブックの一部も置き、自由に手に取って読めるようにしておきました。
『ギャル&ピース』という番組を見ながらスケッチしたもの。
こちらは『モルフォ人体デッサン』の模写。
実際、このコーナーが一番好評で、多くの方が『スケッチブックが良かった』と仰っていました。作者本人としては、練習で描いたものが作品よりも褒められるのは複雑な心境です。ただ自分がこうした展示を観に行った時って、やっぱり作家さんのスケッチブックがあると超おもしろいと思っちゃうので、これは仕方のないことですね。
隣のガラスケースには、個人的なコレクションである『髪の長い長い女性たち』の古写真を並べました。
上段の小さいカードが『CDV(カルト・ド・ヴィジット)』といい、ヴィクトリア朝の時代に流行したものです。中段真ん中には、髪の白いアルビノの女性の古写真があります。下段にはアメリカで最も髪の長い女性のプレスフォト(報道写真)や、日本の大島・八丈島の長髪婦人の絵葉書、髪の長い長い女性を撮り続けた写真家スタン・シャトルワースの作品などがあります。
洋の東西を問わず、長く伸ばした女性の髪の毛というのはひとつのステイタスであり、多くの人々がその美しさを写真に残そうとしています。
自分の描いた絵やそのグッズなんかも遠い将来に、こういう趣向の人々のコレクションに加えてもらえると嬉しいんですが。
さて。今回の展示では物販もいろいろなグッズを作りました。展示当初はこんな感じで、販売物の棚がちょっとスカスカだったんですが……
展示後半には作品集やポストカード等が入荷され、ずいぶん賑やかになりました。
おすすめは『〜聖湯〜』こと、バラの香りのする、リラックスバスソルト。
また会期終了直前には、ミニ作品を4点追加しました。
個人的に美術館や博物館の展示を観に行く時って、物販もすっごい楽しみなんですよね。展示にまつわる何かしら気の利いたグッズがあると大変嬉しい。ので、自分の個展でも、いろいろ楽しいグッズが並ぶ感じになるよう心がけました。
なお、今回の個展で展示した描き下ろし17枚の絵を全て収録した同人イラスト集『LONG LONG HAIR GIRLS』が、とらのあな・メロンブックス・BOOTHの各ショップにて、委託販売中です。
よろしくお願いいたします。
さて、同人誌の宣伝も済んだところで、そろそろお別れの時間です。下の写真は展示最終日である7月28日の、展示終了直前の時間に撮影したものです。
本当に、最後の最後の写真です。
では、さようなら。
いつか、またの機会に。