いつもいつも変なところにまで拘ります。前回の記事でも夕方に公開しないといけないっていうのも、見る側にはあんまり関係ないですし。
でもそういう過剰をなくそうとすると、空回りしてうまく作れなくなるのです。前作にもそういう過剰が色々含まれています。今回はその前作「黄昏」のメイキングです。
ただ、その前に簡単にこれまでの開発の流れを説明します。昔作っていたアニメーションではセルと呼ぶものを重ねるという方法で制作していました。
(昔のアニメーションはすべて手元に残ってなくて、イメージしにくいと思いますがご了承ください……!)
この「セル」は面の縁が交差しないことを前提にすればどんな順序や向きで線を引いても簡単に作ることができて、それをうまく重ねれば、中割りをすることなく原画を繋げることができる……というものでした。
ちぎり絵を動的にしたような感じですね。
この方法では着色も原理上負荷がなく、はみ出した線も面で隠れてくれるメリットがありました。しかし、絵が少しでも複雑になればセルを重ねることが困難になり、多数の「モード」を抱えることになってしまいました。
「モード」とはかなり端折って説明すると、相手にいちいち確認を取らないといけないような操作のことです。
クリックやドラッグ、シフトキーなどを押しながらドラッグするような、運動神経を介する「疑似モード」と「疑似モードに対して関数的に一意に反応するオブジェクト」間では問題になりませんが、その疑似モード数を増やすことで解決することは操作的に限界があります。
(話が専門的ですが、簡単に言うと、モードが多いと創造的に制作しにくいってことです)
そもそもセルというアイディアがとにかく中割りというものをなくすというタスク優先で生まれた産物でしたので、作りやすくするには一から否定して作り直す必要がありました。
まずアニメーション自体を否定し、汎用的な創造のためのモードレスな空間を用意すること……それで生まれたのが「シキシ」というアプリです。
そのため、今のアニメーションのために開発してきたのではなくて、シキシをどう応用するかで遊んでいるのが今の状態になります。
それで、そのモードレスな土台でアニメーションや漫画を作るとはどういうことかを考えて作られたのが、まず「飛べないツバサ」という作品でした。
(追記:作品の公開は終了しました。下の動画はその一部の録画になります)
「飛べないツバサ」はスクロールという疑似モードだけでアニメーションが制作・閲覧でき、漫画とシームレスに繋げることができるというものでしたが、非常に作画がしにくく、作画の補間をすることもできませんでした。また、シキシ内の場所もかなり広く取らなければならず、現時点で作品を共有する方法も厳しいものがあり、一旦この形態での作品作りは停止することになりました。
その次に、しっかりとした品質でアニメーションが作れることを考えた演習的作品が「演習」、停止した作画も可能にしたのが前作の「黄昏」でした。
ここからがこの記事の本題になります。
(これからの説明内に登場する単語や画面は開発段階のものになります。ご了承ください)
簡単に全体のあり方を説明すると、絵や動きのイメージが決まってきた後、線単位で補間する……という流れになります。
最初のイメージボード兼レイアウトです。最初はどす黒い夜で、服も真っ黒でした。ざっくりと描いたもので色々とバランスが悪いです。
仕上がりチェック用の修正版になります。
間違いがないか不安なところは資料をチェックしたりもしますが、大体は頭の中のイメージで構成していて、車種も想像上の架空のものです。
レイアウトには様々な手法がありますが、私は集中的に見るものは望遠、リラックス的に見るのは広角と考えています。後は集中領域の拡大効果と脳内合成でのパースの歪みなど、人間の見た感じで描く方向です。それと縦的構造であること、力場が渦巻き状であることによる生命感などでしょうか。
原画です……が、この原画は参考用で、実際には使いませんでした。本作では原画なしでそのまま動きを構成し直しています。
最初は先入観で髪を揺らしすぎてしまったりしています。
作業全体像です。下側にある粒々はタイムラインです。
ちなみにタイムラインはループするようになっていて、通常のアニメーションとループアニメーションがモードなく好きに作れるようになっています。
ここから清書が進行していきます。
モードをなくすためにシキシにはレイヤーがなく、一枚の絵としてすべてを構成することになっています。
補間方法には大きく分けて「原画から構成する」方法と「その場で組み立てていく」方法があり、今回は後者の方法で作画しました。
他のフレームの線をコピーした状態で線に対して補間コマンドを適用することによってその線同士を補間します。複数本でも同じように機能します。これは短期記憶を使えばモードを減らせるというコピペの発明を応用したものです。
そうして補間した線にはそれぞれにタイムラインがあり、これを調整していくことで動きを整えていきますが、大部分の線では整えなくてもうまくいきます。
このアプリの補間では線の向きを考える必要はなく、スプライン特有の反動もなく、線の形も考慮して補間するようになっています。
交差した線分はすべてのフレームで一括で削除できるため、はみ出たりした線をそれで取り除き、上から影用の線を加えていきます。
影用の線を加え終えた後の状態。この線を綺麗にすれば後は基本的に着色だけです!
着色はほとんど自動で、最初に色を決めてしまえばその後のフレームもすべて同じように着色されていきます。もちろん完璧ではないため、少しずつ修正していきます。
そして、ちょこちょこ調整して完成です……!
いくつか別の制作パターンがあり、まだ細かい説明もできていないのですが、大まかにはこんな感じになります。実際の作業では、前の作業に戻ったり修正したり否定したり……といったものも入り乱れていたりします。
シキシは全操作を保存しているため、メイキングムービーも自動的に作れるはずなのですが、細かい調整で意外と時間がかかったりするものなので、メイキングムービー方式はかなり先になると思います。シキシのアニメーション機能のリリースも当分先の話です。
本編はこれで終わりになります。こんな感じで長文で書けたのは久しぶりでした。ツイッターはこういうのを書く上では狭く、フォロワーのTLに長々と流したりするのも……と考えていましたので、ここで書けてよかったです。
前作では「静」、前々作では「動」を描きました。次回作は「静」と「動」を組み合わせた2カット構成です(……気が変わらなければ!)。
次回作は半分くらいできていて、2〜3週間以内に公開する予定です。なるべく、公開ペースを早めていく方向でいけたらなと思います。内容は「エレガントな感じのアクション」です。お楽しみに!