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【3-7】「ようこそ、月ノ宮へ!!」

「ゼェ!!ゼェ!!ゼェッ!!……」 オレ(白井弟)はカフェから飛び出した後、一心不乱に走り続ける。 先ほどまでとは打って変わって、今は、聖イネス学園に一秒でも早く帰りたい!みんなに会いたい! そうだ。吹っ切れて完全に分かった。どうしてオレが『フラグメント暴走』の件を解決する事に、ここまでこだわっていたのか。 それは―― 「(嬉しかったんだ)」 姉ちゃんを、実の姉を好きだという気持ち、それは誰にも理解してもらえないと、気持ち悪がられて当然の事だと思っていたのに……それを飛び越えて、触れて、理解してくれて、今もオレの中で支え続けてくれてるのが分かる。 「(だからこそ、ちゃんと伝えないとな!)」 森を抜け、坂を登りきると、教会と共にバラ庭園が広がる。 そこを直進し、見えるのは学園入口に当たる正門、それから―― 「(陽桜莉さんに美弦さん、それと、山ニーナさんだ!)」 理由は分からないが、三人が学園の正門前に集まっているのが見える。オレはブンブンと手を振ると、陽桜莉さんを筆頭に後の二人もオレの存在に気づいてくれた。 『弟くん!(白井くん!)(白井弟!)』 フラフラ汗だくで、呼吸困難に陥りながら、オレは、なんとか三人の目の前に辿り着いた。 心臓はバクバクと荒い鼓動を打ち続け、息を吐く度に視界は点滅し、意識の回路が切れかける。でもそんな事はどうでもいい。今は早くみんなに……。 「ゲホッ…ゼェゼェ……みな…さ…ゲエエェェ」 オレの調子に慌てた様子で、近寄ってくる三人。 「チッ、まずは落ち着け、白井弟」 「深呼吸よ、白井くん。陽桜莉、お水持ってたわよね」 「う、うん! はい、これ!」 陽桜莉さんが取り出したペットボトルを美弦さんが受け取り、中腰のオレに差し出してくれる。 上手くモノが言えない状態なので、コクンと頭を下げてそれを手に取ると、オレは、一気に口の中に流し込んだ。 「白井くん、私達、今からあなたを探しに行こうと思ってたのよ。でも、自分から戻ってきてくれてよかったわ」 「そうなんだよ!弟くん、朝ごはんできてるよーって言う為に迎えに行こうって!それだけで 他に深い意味は……」 「チッ、平原陽桜莉。お前はその辺でやめとけ。それ以上しゃべるとボロが…」 「陽桜莉さん、美弦さん、山ニーナさん!!」 『は、はい(お、おう)』 ペットボトルの中身を飲み干し、一通り回復したオレの急な呼びかけに驚く三人。 その三人にきちんと向き合う形でオレはビシッと姿勢を整えると―― 「オレのフラグメントを! オレの想いを守ってくれて、本当に『ありがとうございました 』!!」 地球全体に響かせるつもりで、精一杯の感謝をこめて、三人に向けて頭を下げた。 これが、オレの答えだ。 ありきたりだし、ただの自己満足なのかもしれない。これが正しいのかも分からない。 でも、オレはこうしたいと思ったし、これがオレの伝えたい全てだった。これを出し切ったのなら、後はどう思われようと構わない。 フラグメントを抜くなり焼くなり好きにされても悔いはない! 「……弟君」 呟くように静かな陽桜莉さんの声。いつもの元気さとは程遠い、何とも言えない反応。その声色に恐る恐る顔を上げると―― 「どういたしまいて、どういたしまして、どういたしましてだよ、弟くん!へっへー、お礼言われちゃった~♪」 キラキラと目を輝かせ、躍るように跳ね上がる陽桜莉さんの姿が映った。それを見た山ニーナさんが、チョップして場を収める。 「チッ、調子にのるな平原陽桜莉。お前は、一方的に負けてただけだろうが」 「そ、そうでした~」 「でも本当嬉しいわ。私達リフレクターの活動って、そんなに褒められる事ないから」 「へ? そ、そうなんですか?」 美弦さんの意外としか言えない言葉に、思わず疑問を口にしてしまう。それに対して美弦さんは、少し寂しそうな瞳をしながら続ける。 「ええ、ほとんどの子はフラグメントを固定化した後、眠っちゃうし、その後に関わる事もあまりないから。中には、全部見たのに根本的に解決してくれない事をよく思わない子もいるわ。」 「……そうだったんですか」 心に触れて、共感できても上手くいかない事もある。 それを、助けた人達に褒められる事もなく無償で続けてきたなんて……想像以上に辛い境遇だったんじゃないか? オレだったら……とても続かない。 そんな事をオレは考え、暗くなってしまうが、その全てを杞憂と言うかのように、美弦さんは明るい笑顔でオレを照らした。 「だから、こうやって直接お礼を言ってもらえるとすごく嬉しい。ありがとうね、白井くん」 「うっ!! ど、どういたしまして……です」 くそ~、お礼を言いに来たのに、そんな10倍、いや100倍返しを超える笑顔で言われたら……立場がないじゃないか! 予期せぬあべこべな状況に戸惑い、頭をかくオレに、三人はほほえむ。 「じゃあ、弟くんも帰ってきた事だし、みんなでご飯食べよう!」 「チッ、全く人騒がせな野郎だ。お前のせいで私達も朝飯食うの遅れるんだ。もう急にいなくなるなよ」 そう言って、正門をくぐる陽桜莉さんと山ニーナさん。 そんな二人の前に先回りし、美弦さんは、『ガシッ』と両の手で抱え込むように捕まえた。 「こーら、二人共。私達も白井君に言うことが、まだあるでしょう」 「あっ、そっか!へへ……遅くなっちゃったんだけどね」 「ひ、ひゃい、お姉さま……顔が、お顔が近……あっ」 そんなやり取りの後、三人は、まだ校門の外にいるオレに視線を向ける、と。 「せーの」と勢いをつけ―― 「ようこそ!月ノ宮へ!!」 と、暗い夜空に道を示す満月のような優しさで『歓迎』してくれた。 その光景に気づかされる。 「(そうか、この人達は初めから……オレを受け入れてくれてたんだな)」 男だからと無下に扱うわけでもなく、この言葉も『心配いらないよ』と『もう仲間だよ』と心から伝えたくて、真剣に考えてくれた結果なのだろう。 勝手に思い込んで、『詰んだ』だの『フラグメントを抜かれる』と決めつけてた自分が恥ずかしい。 「(だったらオレも……)」 リフレクターやフラグメント、コモンの扉、その全てを受け入れた上でこの道を進む!今日が、ここからが、本当のスタートだ! 「よろしく!月ノ宮!!」 そう強く決意表明を果たし、オレは『校門』の中へ一歩を踏みだ―― 「あら、白井さん帰ってらしたんですか。」 ――す直前で、オレの足を止める者が三人の背後から顔を出した。その人物は言わずとながら。 「み、水崎……」 「全く、何があったのか分かりませんが、首輪にリードでもつけとかないとジッとできないのですか、あなたは。でも、これでようやく朝食が食べられますね。お姉ちゃん達も早く『いただきます』しましょう」 そう言って、両の手をパンと合わせ、合掌のポーズを取る水崎。 となると当然、首輪が、ギュッと締まるわけで……。 「水崎、チクショーー!……アーメン」 チョーカーの効力により酸素供給を完全に失ったオレは、苦しみと共にバタっと前に倒れた。 その結果、オレの頭部は、門の内側に見事に入っており……。 こうしてオレは、地べたにキスをする形で、最初の一歩を踏み出した。 姉ちゃん、全てを受け入れた上で言わせていただきます。 月ノ宮はやっぱり魔境です!!(泣) コモンの扉が開くまで、あと39枚。 ===================================================== かくして、白井弟は歓迎され、また自身も現実を受け入れて、はじめの一歩(?)を踏み出しました。 ギャルゲの男主人公ポジションなのに、本当カッコよくいきませんね~、弟くんは。 ヒナちゃんは綺麗な一歩を踏み出せたのにね。 かなり遅い歓迎でしたが、一日目は状況説明、二日目はフラグメント暴走でドタバタしてたので、仕方ないですね。 ちなみに第三章の終わりでこのタイトル名にした理由は、ブルリフR大好きっ子なら分かっていただけると思います。本編も三話だぞ☆ さて、この第三章のお話は『一般人がリフレクターに返せるものがあるか?』というテーマで進めさせていただいたわけですが、伝わったかな?(汗) お姉様が言っていたように『ブルリフR』では、フラグメント固定化された一般人は眠ってしまうため中々感謝される事はありません。 七夕回では、『想いを守ろう』としてる『ブルー組』は、一般人から邪魔するなと言われてしまうし、詩ちゃんは固定化してもリスカ繰り返すし、水崎を固定化した際にも偽善者扱いされてしまうしで、いい事してるはずなのに「かなりキツイ境遇だよな……」と思いながら視聴してました。 むしろ、想いを抜いていた『ルージュ組』が感謝されてたし、『リフレクターは想いを抜いて心を軽くしてくれる存在』とひそかに認識されてるのは、ブルー組にとっては辛いものだったと思います。 原種がいなくなった二周目は、『願いが叶う』という報酬もないので無償もいいところですし。 覚えてる限り、お礼言ったのは、みゃこちんぐらいなモノだったかな? なので一般人視点である『白井弟』に一つの答えを示してもらいました。「お礼が言われたくてやってる事じゃない」のは分かってるんですけど、言われるとやっぱ嬉しいものですよね。 『リフレクターは誰かの想いを守る、その誰かはリフレクターの心を満たす』 そういう関係性は、ブルリフR本編では踏み込んでいなかったので、ここで描写させてもらった次第です。 私は、こういうモノが描けるのが『ブルーリフレクション』という作品の強みだと思ってます。 次は三章の後日談、モモてんてーの方もスッキリさせに行きましょう。いい予感が全くしねぇ……

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