鯉のぼりをあげよう(お片付け編)
Added 2025-05-05 03:52:05 +0000 UTCテントを片付けた運転手さんが、乗り込んできたのがドアの音でわかった。 「あれ?フラワー着替えないの?」 「時間もったいないから事務所で片付けるそうです!」 「そんなこと言って、つむちゃんのためなんじゃないの?」 「えへへ〜。」 シートベルトを締めて、背もたれに体重を預けると、髪の毛の中で蒸れていた空気がマスクの中に逆流してきた。口に貼られた布は汗や呼吸、果てはこぼれたよだれで濡れてしまってあまり空気を通さないし、後ろの隙間が塞がれてしまう形になったので、しばらくは満足に呼吸できないだろう。エンジンの振動がシートから伝わってきて、ノボリンの中での出来事を否応なく思い出す。シートベルトに汗が染み出した。 「ねえ、フラワー、ノボリンの中大変だったね。」 頷く。 「めっちゃ気持ち良さそうだったよ。イっちゃった?」 咽せそうになる。頰に手を当てて恥ずかしそうなポーズをとる。 「あぁ、可愛すぎるぅ‥。‥続きしよっか。」 事務所までの所要時間を計算する。早速、太ももや胸を這い回りはじめたつむぎちゃんの指がくすぐったくて、うまく頭が回らないが、長くても20分ほどだろう。 「暴れちゃダメだよ。運転手さんにバレちゃう。」 スカートの中に潜り込んだ指先がチロチロと一番敏感なところを撫でまわす。太ももを閉じて抵抗するが、指の動きは止まらない。バックミラー越しにみれば寄り添って座っているようにしか見えないだろう。ただし、私が変な動きをしなければ、だ。最小限の動きでもがいてみるが、逃げ場などないし、気を紛らわすこともできない。 「そうそう、いい子いい子。」 優しく胸を撫でる手は温かい。時折、意地悪な指が、また固くなってしまった先端をツンと弾く。その度に漏れてしまう息に、声が混じらないように必死に堪えた。 さわさわ。かりかり。くりくり。 車の振動すら痺れた体を責め立てた。車庫に到着する頃には、もう何度絶頂を迎えたのか分からなくなっていた。 「えへへ。動くの我慢したままイくの、気持ちいいね、フラワー。脚、ピンってなってるよ?大丈夫?」 悪戯っぽい囁き声が私の思考から逃げ場を奪っていく。 「ほい、到着!二人ともお疲れ様!ノボリンは片付けとくからフラワーの片付けよろしくね。」 ようやく悪魔から解放される気分で車を降りた。一刻も早く着ぐるみを脱いで、シャワーを浴びたい。着ぐるみの内側が恥ずかしいことになっていることを悟られないよう、フラワーの元気いっぱいのキャラを崩すことなく、うんうんと頷いてお辞儀をする。 「ありがとうございまーす!あ、あんまり臭いとか嗅がないでくださいよ?フラワーが中でめっちゃ汗かいちゃったし。」 私は怒ったように軽くぽかぽかとつむぎちゃんの肩を叩く。 「あはは。ほんと仲良いよな。はいはい、とっとと片付けとくから。明日も俺は仕事早いんだから。」 運転手さんは、あくびをしながらノボリンを担いで車庫を後にした。 「じゃ、行こっか、フラワー?」 あと少しだ。あと少しで私に戻れる。 事務所にシャワー室があって本当によかったと思う。脱衣所に着いて、つむぎちゃんの方に後頭部を向ける。まずはマスクの紐を解いてもらわないと。 「フラワーお疲れ様ー。じゃあ、お着替えしようねー。」 あれ?まだ、フラワー扱いなの? 「はい、じゃあ〜チャック開けるね。」 ワンピースのチャックが開いていく。少し胸が楽になった。しかし、本当に開けて欲しいチャックはその先だ。 肩紐をずらして、衣装を下ろすと胸が露わになる。 「うわぁ、汗だくだぁ。はい、つぎスカートね。」 つむぎちゃんがパニエごとスカートをずり下げていく。 「はい。‥なんか、今のフラワーの格好、めっちゃエッチ。」 慌てて胸を隠す。 「ほらほら、恥ずかしがってちゃ進まないよ。じゃあ、自分でスパッツ下ろして。」 もちろん、自分で脱げる。脱げるのだが、まじまじと見られながら、スパッツを下ろすのは恥ずかしい。ちらりとつむぎちゃんの方を見るが、視線を外してくれる様子はなかった。諦めて、スパッツに手をかける。 「うわぁ‥!糸引いちゃってる‥!」 自分では見えないが、多分本当のことだ。散々に弄られたそこは、既に汗以外の粘液でべとべとだった。次第に涼しくなっているはずなのに、全身に火がついたように恥ずかしい。完全に脱いだスパッツを受け取ったつむぎちゃんが目の前で、その粘液を指で掬って見せる。 「ほら、めっちゃ濡れちゃってるじゃん。もう、フラワーは、いけない子だなぁー。」 顔を覆う私の手は、タイツの上から手袋に覆われたままだ。全身を布で包まれているのに、裸にニーハイと手袋とチョーカーだけつけているみたいな恥ずかしい格好で、羞恥心が込み上げて、どこかに隠れたくなる。 「あーあ、ここ、びしょびしょだ。もう、仕方ないなぁ、お掃除しようねー。」 もう抵抗する気力もない。つむぎちゃんはタオルを持ってきて、何やら弄っていた。その手に握られたタオルに、いくつかの結び目ができたのをみて、はたと気づく。 「はい、ごしごししましょうねー。」 慌てて股を閉じるが、もう遅かった。つむぎちゃんは、股間に通ったタオルを前後に引っ張り、擦りはじめた。ぬるぬるになったそこを結び目が通るたびに、ますます濡れていく。あまりの気持ち良さと、あまりの暑さとあまりの息苦しさに意識が飛びそうだ。 「ほらぁ、逃げちゃったら掃除にならないでしょ。ノボリンの中で散々気持ちよくなってたでしょ?」 バレてたんだ。思いつく抗議の言葉も気持ち良さにかき消されていく。 「はい、膝立ちになって。」 もはや言われるがままだ。つむぎちゃんが満足するまでは、責苦から逃れることはできない。つむぎちゃんが悦ぶようにフラワーを演じないと、いつ脱がせてもらえるか分からない。 「はい、捕まえた。」 つむぎちゃんは、向かい側に同じく膝立ちになって、倒錯的な格好の魔法少女を抱きしめた。 「はあぁ、先輩の臭いすご‥。くっさぁ‥最高‥。」 急に私のことに触れられて別種の恥ずかしさが溢れる。慌ててつむぎちゃんの腕を振り解こうとするが、無駄な抵抗に終わった。 「ほら、暴れないの。先輩はまだフラワーなんスからねー。大人しく嗅がせてください。」 そう言って私の身体に顔を埋めて深呼吸している。つむぎちゃんの呼気がタイツの中で私の汗と混じり合う。 「フラワー、最後は一緒に気持ちよくなろ?」 腰と腰が密着する。私の股間から伸びたタオルを、つむぎちゃんも同じように挟み込んだ。そして私の腕をつむぎちゃんの後ろに回して、つむぎちゃんは私の後ろに腕を回した。股間に力が掛かってタオルが引っ張られたのが分かる。快感から逃れようとした身体はつむぎちゃんに抱き止められる。首がつむぎちゃんの大きな胸に挟まれる。マスクの隙間からほんの少し、つむぎちゃんの汗の臭いが入り込んできた。必死に吸い込む空気に混じるつむぎちゃんの頑張った臭いが媚薬のように私の体をさらに熱くした。 「ほら、フラワーもタオル引っ張って。んっ!そう。もう一回。上手だよー。一緒にゴシゴシしようね。」 まるで体の洗い方を教わっている幼い子どものようで、全身を支配する快感が一層背徳的なものに思えた。 「ふふっ、びくびくしてる、可愛い。んんっ。ごしごし、ごしごし。」 2人で引っ張り合うタオルが、だんだんとリズム良くスムーズに2人の間を行き来する。つむぎちゃんの息もかなり荒くなってきた。結び目が私からこぼれた快感を吸い取って、つむぎちゃんの気持ちいいところに届けてくれる。帰ってくる結び目には、つむぎちゃんの愛がたっぷり染み込んでいて、私をまた撫であげる。静かな空間に荒い呼吸の音が響いていた。 「はぁ、はぁ、はああ。あぁん!もう、だめ。ノボリンの中で、こんなに気持ちいいことしてたんだね、フラワー。あん!フラワー、今度は一緒にイこ?大丈夫?」 必死に頷く。大丈夫も何も、私の方はとっくに限界を超えて、何度も何度もイっているのだ。演技で誤魔化してきたが、強く刺激されたら、いつでも、何度でも絶頂してしまう。 一際強く抱きしめられると同時に、タオルが強く食い込んだ。脊髄に電撃が走って、目の前で火花が散る。苦しいのに息ができない。幾度も全身を駆け巡った快感が爆発する。私の肋骨に巻き付いた腕が、最後に残った空気を肺から押し出した。私の腕の中では柔らかくて熱い生き物が、釣り上げられた魚のようにビクビクと痙攣していた。 放心状態のまま、しばらく抱き合っていたと思う。顔中にこびりついた汗が次から次へと流れていく。ふと後頭部に指が触れる感触があった。 「気持ち良かったね、フラワー。そろそろ変身終わろうね。」 固定用の紐が解けると、すこし寂しさが胸に込み上げる。 「はい。これで外せますよ。」 私は黙って首を突き出す。 「えへへ。すっかり甘えん坊さんですね、先輩。はい、外しますね。」 きつくハマっていたマスクを少しずつずらして脱がせてもらう。マスクはきつくて外すときも少し痛い。その僅かな痛みすらもつむぎちゃんがくれたものだと思うと、ちょっと愛おしく感じた。 「‥お疲れ様っス。」 後輩が戻ってきた。新鮮な空気で深呼吸する。ようやく役から解放されて、どっと疲れが押し寄せた。顔を拭く気力も残っていない。ふぅ、吐息をついて目を閉じてすぐに、唇に柔らかい感触が触れた。少し汗の臭いがする。力を抜くと、熱くてぬめりを帯びた肉が口の中に滑り込んでくる。乾いた喉をつむぎちゃんの唾液が潤していく。もっと欲しくなって舌を絡ませると、つむぎちゃんの鼻から漏れた吐息が顔を撫でた。 今年も夏は暑くなるらしい。きっと過酷な現場も多くなるだろう。すこし、少しだけ楽しみなのは、つむぎちゃんには内緒だ。