一 レースカーテンが、窓から差し込む光を拡散させて、部屋を柔らかく照らしていた。シンプルなシャンデリアの光が加わり、部屋全体が落ち着いた雰囲気を醸している。 中央の応接テーブルでは、真っ白なカップに注がれた紅茶から微かに湯気が立ち上っていて、装飾の少ない皿には、小さなクッキーが並んでいた。 「ありがとう、ミーナ。」 給仕を終えたメイドに、ソファに腰掛けた女性が声をかける。返事はない。ただ、静かにお辞儀をして、ティーセットが載った台車のそばに控えている。アニメキャラクターのフィギュアのような顔の口元は柔らかく微笑んだまま、微動だにしない。薄い水色の髪には純白のヘッドドレスがピンと立っており、紫陽花を模した丸い飾りが両サイドに付いていた。 「相変わらず素晴らしい出来ですね。本当にアニメの世界に入り込んだ気になる。」 対面に座ったスーツ姿の女は、一見すれば奇妙な着ぐるみのメイドを眺めて、感心したように口を開いた。 「ありがとうございます。また出世なされたのですね。」 テーブルの上の名刺に目をやって、女は言った。女の声は落ち着いているのに、まるで少女が面白がっているような響きがあって、来訪者に不思議な感覚を呼び起こした。 「先生のおかげですよ。先生の作られた着ぐるみがなければ、これほど私のイベントが評価されることもなかったでしょうし。」 主人は黙って紅茶を口に運んだ。部屋を静寂が支配した。人形のようなメイドは、全く動いていないようでいて、静かに呼吸するように肩を上下させている。 「今度、テーマパークを設立することになってまして。それで、また先生のお力をお借りできないかと、伺った次第で。」 「なるほど、遊園地の着ぐるみですか。」 「ええ。『アヤカシバトラー』の世界がそのまま飛び出してきたようなパークにしたいんです。常にアヤカシが歩いていて、触れ合えるような。」 「ふむ。だとすると、相当な人件費がかかるでしょうね。交代でどんどんグリーティングしないといけませんし。」 「まさにそこが課題でして‥。キャラクター性もブレないように妥協したくないので演者は限られますし。かといって人間である以上、一日中着ぐるみの中に入っているわけにもいかない。」 カチャリ。カップがソーサーの上に置かれて、綺麗な音を立てた。 「うん。そこで私の出番というわけですね。」 「なんとかできますか?」 「まぁ、演者にはそれなりのものが求められますが、最近開発したものがうまく使えれば。きっとあなたもお好きだと思いますよ。‥ミーナ、例のものをお持ちして。」