「アスモ、お前も一人立ちの日が来たか…感慨深い」
「アスモちゃん、辛くなったいつでも帰ってきていいのよ」
「父さん、母さん、ぼく、頑張るよ。頑張って、一人前の淫魔になるんだ」
*
「ここが悪魔の根城か…」
まだ日中なのに薄暗く佇む巨大な城。正体不明の鳥かモンスターかが鳴き声をあげ、余計に不気味さを増している。
「大丈夫、アレンくんなら倒せるよ…!」
「そうそう!気負いすぎるな、アレン」
思わず足がすくみそうになるが、仲間の魔法使いルリィと、聖騎士のリリーナが左右に付き、励ましてくれる。
そう、僕、騎士アレンは一人じゃない。ここまで三人で幾多の困難にも立ち向かい、潜り抜けてきた。
今回の依頼は、上級任務である銀クラスの任務だ。最近になって古城に住まうようになった悪魔の討伐。今のところ悪魔に動きはないらしいが、予言の巫女により「早期の討伐を」と告げられ、我々、新進気鋭の銀クラスパーティ「天空の蹄」が受け持つことになった。
まだ最近銀クラスに昇格したばかりの若造だが、実力は折り紙つきだ。高い依頼達成率。容姿端麗なパーティメンバー。将来を期待されている。人々の思いを背負い、今回も順当にクリアできる。そう信じてやまない。
「城の頂上部あたりから、多大な闇の力が漂っています。きっと目星のヤツでしょう。ここからは奴らのテリトリーです。油断せずに進みましょう」
「ええ、リリーナの言うとおりね。慎重に越したことないわ。いつも通り、いつも通りよ。ね、アレン?」
二人の言葉に、剣を深く握る。
「ああ、この剣にかけて。今回もいつも通り、用心深く、油断せず、慎重に進もう。それが勝利への近道だ」
励ますように、言い聞かせるように、言葉をつぐむ。
この先に待つ、勝利を確信して。
*
信じられなかった、この惨状が。
認めたくなかった、この現状が。
こんなはずではなかった。油断なんてしていない。いつも通り、いつも通り慎重だったはずだ。
なのになぜ、魔法使いのルリィは、ぼろ切れのように転がっているのだろうか?
なのになぜ、聖騎士のリリーナは、鎧を破壊され、剣も折れ、息も絶え絶えなのか?
「まだ、だ。まだ、終わらない…!」
それでもリリーナは立ち上がる、
そしてすぐさま、褐色の悪魔による強大な力に吹き飛ばされる。
「やめろ!!もうやめてくれ!!」
傷を負った身体に鞭を入れ、僕は叫んだ。己の剣も粉々に砕け散り、壊れた鎧の隙間からは素肌が覗く。瀕死。その一言が全てを表していた。
「やめろ!!っやめろ!!」
それでも、叫ぶのを止めない。喉が焼けるように痛い。からだの感覚も怪しい。それでも、それでも仲間が助かるのなら………。
「僕がすべての代わりになる!だから、だから!もうやめてくれ!!」
目が霞む。握りしめる拳が痛い。それでも、それでも。
「なんでもする!奴隷にだってなってやる!だから、二人を!ふたりを!たすけ」
「いま、なんでもするって、言ったね?」
「はい!アスモさま!言質とりました!」
褐色の悪魔がふとニヤリと笑うと、どこからかもう一体、赤毛の悪魔が現れた。
僕はこのときこの瞬間、悪い予感しかしなかった。確実に、選択肢を違えた。そう感じた。
「はじめての性奴隷、ゲットですね!アスモさま!」
「う、うん!ボク、精一杯頑張るよっ!」
散々たる現状に似つかわしくない、明るく弾んだ会話。呆気に取られそうになるが、その、え?性奴隷?
「ふ、ふたりには手を出すな!」
焦りながらも大声で威嚇する。
なんて淫魔だ。なんとしても、二人を守らねば…!
「いやいや、なんでもするって、君、言ったよ…ね?」
「言質取ってまーす」
「ああ!なんでもする!っだから、だからふたりには「大丈夫、性奴隷になるのは君だから。ですよねアスモさま?」
「もちろん!」
僕が、性奴隷…?
そして僕の目の前は、真っ暗になった。