ひんやりとして湿った空気 続く石壁と暗闇にほのかに香る カビやら苔やらのしっとりとした臭い 暗闇にカラカラと揺れながら 男のカンテラが照らした先の通路には 女冒険者の死体が一つ、転がっている 契約通りである どうやら毒で死んだ様子 各部の損傷の有無を軽く確認したが 外傷も特に無く腐敗も無い 中身がどぼどぼと溢れる心配も とりあえずないので安心だ 首から下げられたタグで 依頼された人物でどうやら 間違いないなと確認し 回収用のベルトを彼女の首と腋に それぞれ通してバックルを 喉と胸元でカチっと留める 自作したキャスター付きの台車を 両足にそれぞれ2箇所づつ装着 前回の回収時にも使用したが やはり増やしてよかった と男は思う 体の用意はできたので カバンのように よいしょと死体を背負い 女の頭部が腰辺りに来るよう ベルトの長さを調整したら 女の首側のベルトを 自分の腰に回しカチっと固定 キュっと女の首が絞まる 問題ない 死体だから カラカラと地面を滑りながら キャスター付きの女の死体を 引きずって歩いている まるで死亡した仲間を棺桶に入れて 引きずっているみたいだ でもアッチは場合によっては 棺桶は3つだから更に大変だろう 石壁と足元のスイッチを 操作して隠し扉が開く 薄暗い部屋の中を 注意しながら死体を運び 作業台の上に どっこいせと転がして ランタンに火を灯す 前回割った瓶の欠片が 床にキラリと光った 「さあ、作業しよう」