基本的に自分という人間は散歩をしたい方である。
どこかに出かけることも好きだし、旅行もできることならたくさんしたい。
全く知らない土地に行くのも楽しいし、その為に乗り物で移動するのも面白い。
ただ、色々な事情が重なってしまうことが多すぎて、本来のそういった喜びは隠されてしまうことが大半だ。
もっと自由な体であればと幾度思ったか分からないが、結果的に独りきりで行動するよりも、他者がいた方がまだ楽しみ易いので人と出かけることの方が多い。
閑話休題。
いつも通っている病院の電車の行き先に「多摩湖」があるのだが、名前を目にしただけで実際に足を運んだことは一度も無かった。
いつか帰り際に突発的に立ち寄ることをしたいと思い続け、ついに秋が過ぎ去ろうというところに来てしまったので、夕暮れのタイミングで思い切って行くことにした。
いきなりこんなことを言うのも躊躇われるが、駅の周りに何もない。
バリアフリーなどガン無視の長い階段のみが現れ、上った先はトンネルと西武園遊園地のどこだか分からない一画。
アトラクションの一部が見え隠れする柵だが、ここは時間が違えば入り口か何かになるのだろうか。
ちなみにメインエントランスは左方向へとあるが、ちょっと歩いても関係者用駐車場らしきものが現れるだけでメインエントランスとやらはどうやって行けばいいのか分からなかった。
地図を頼りに坂を下る。
駅を降りた瞬間に強く感じる濡れた土、木々、葉の香りはこの公園のせいだろう。
そして写真の木々の生え方で分かる通り、坂の起伏が激しいので至る所に階段が存在する。
開けた山にでも入ったような気持ちで、運動不足の体にムチ打ちながら坂をひたすら上ると、独特な形状の東屋が見える。
これを登っている最中の動画も撮ったが聞き苦しい呼吸が入っていたのでカットした、大きな鼻息を一切漏らさずに登れるなら登ってみて欲しいものである。
東屋を通り過ぎると直ぐに多摩湖が見える。
電車の窓から見える夕暮れも非常に美しく、もう少し早く到着すればよりきれいな写真になったと思う。
つくづく夕暮れの時間帯を選んで正解だと感じる風景だった。
様々な鳥や虫の鳴き声が静かに響き渡ってずっと眺めていられる。
ここは天気が良ければ富士山だけでなく様々な山々が見られるスポットらしく、通りすがりの人らがこの時の雲の存在をぼやいていた。
自分一人に限らず、多摩湖をまたがる遊歩道の手すりにもたれながら、色んな人がただじっと立ち尽くしていた。
なかにはわざわざカメラを用意して、この夕陽の時間を撮影している人もいたり、自転車でやって来る人もいるようだった。
橋の中腹まで歩くと小休憩のできるベンチがあるので、そこに腰掛けながら湖のちゃぷちゃぷとしたさざ波を聞いたりすると、頭の中のあらゆる思考が融けて消えてゆく。
湖の反対側には東村山市の雑多な光景が見える。
上空をさえぎるものが何もなく、ここまで坂が急こう配だと自分が高い場所にいるのが感じられて、上を見ながら歩くとやや足がすくんだ。
多摩湖線の電車が街並みを駆けてゆく。
距離も近いので動画内の電車の音は大き目、見ごたえも十分だった。
(関係ないけど手前の岩、シミュラクラ現象で若干おじさんの顔に見えるのでちょっと怖い)
空が、赫灼とした夕陽の景色から、夕闇に向かって藍色に変化していく。
たかが携帯のカメラ機能では感じた色合いをそのまま再現することが出来ず、言葉で補完するにしても情報量がもっと欲しいと感じる。
日が暮れるにつれて気温も下がって来たので、完全に夜の帳が下りてしまう前に帰ることにした。
西武園遊園地のアトラクションが煌々としてとても綺麗に見える。
この遊歩道とは反対の方向に見晴らしの丘という場所があるらしく、いつか、人と一緒に西武園遊園地に行きつつそちらも見に行けたらと思う。
帰りの多摩湖駅。
長い階段を下りた先に見えるのがこれだけなので、冒頭で記述した何も無いは決して言いすぎではない。
さて、そのまま多摩湖線で元の駅に戻るでも良かったのだが、どうせなら乗ったことのない電車で帰りたいので山口線に乗ることにした。
本数が無いので、今回夕陽を見る決め手になった、澤村伊智さんの「予言の島」を読みながら待つ。
この人の小説はジャンルはホラーなのだが、自分が一番心惹かれロマンを感じる土着系の話を好んで書くように感じる。
そこのオカルトに対する好奇心的な部分を、メタ的な視点で掘り下げている本作はオススメしたい小説のひとつ。
電車を待っていると想像以上に古いタイプの車体が滑り込んできた。
椅子も体が沈み込むタイプだったり、窓の開き方や、実際に電車が走っている時のプチアトラクション感が古さを際立たせている。
ホームに対して低い位置に椅子がある感じとか、車体が引っ張られるように走る感覚とかがアトラクション感を増幅している気がする。
最後に西武球場前駅の改札。
ここも立ち寄ったのは初めてだったがやたらと広くて驚いた、一体どれだけの人がここを通り過ぎるのか想像に難くない。
こうして普段の路線に繋がる駅に乗り換え、自宅へ帰ったのだが、やはり突発的にどこかに出かけるのは面白い。
一人で出かけることに対する不安感というのは、自分の場合は自助努力でどうにもならない理由も含め、これから先も一生付きまとうことになるので、なるべくは人と出かけたい気持ちがある。
しかし毎回誰かを誘ってその相手がいないと実行できない気持ちが続けば、フラストレーションが溜まる一方なので、出来ない事に目を向けるよりもこうした小さい衝動を楽しむことが大事なのだと感じる。
あとはこういう場に載せるという発想が無かったので、いつかnoteなどにもアップしたい。
今年出かけた場所についてもその内この文体で書けたらいいな、と思うが、予定は未定なので、できそうだったら。
ここまで目を通していただけたなら幸いです。