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The hanged spectre lurking in the countryside


発生日時、場所

20██年7月30日 午後11時頃

██県██郡██村付近の山中



被害者:松河 明日香

    (まつかわ あすか)

年齢:30歳

職業:専業主婦


遺体の特徴

・茶髪、ポニーテール

・白のノースリーブトップス

・ブルーデニムのオーバオール

・靴、靴下等を未着用、裸足の状態



事件発生経緯並びに現場の状況

事件当日の午後5時頃、自宅から被害者が

居なくなっている事に気付いた夫の松河██が

付近を捜索したものの発見に至らず110番通報。

すぐに捜索隊本部が設置され、それから6時間後。

捜索隊に加わっていた松河██が、

現場付近に被害者が履いていたサンダルを発見。

それから間もなく、被害者の遺体も発見された。



当初は自殺と思われていたが、鑑識課による

現場での遺体の検分、並びに司法解剖によって

他殺の可能性が急浮上した。



(中略)



また、現場周辺の██郡██村においては──

(以下黒塗り、空白等により判読不能)


────────────────────






久し振りの休日の朝。

僕のすぐ横で一緒に寝ていた明日香の姿は無く、

部屋の外で彼女が朝ご飯を作っている音がする。



ドアを開くと、朝ご飯の美味しそうな匂いが

一階から漂ってくる。

そのまま階段を降りると、僕を起こしに

キッチンからやって来た明日香と鉢合わせた。



「おはよっ、〇〇君!

朝ご飯作ったから、部屋まで〇〇君を

起こしに行こうと思ってた所だよ!」



「ん……ありがとう」



「ほら早く、顔洗ってきなよ!

朝ご飯が冷めちゃうでしょ」



「ああ……………そうする」





明日香との新婚生活が始まってから1ヶ月。

僕達は新たな人生を過ごす為の住処を、

田舎にある一軒家からスタートする事にした。

『将来、結婚したら自然豊かな田舎で

旦那や子供達と一緒に暮らしたい』という夢を

以前から明日香が語っていたので、

その夢を叶えてあげようと一念発起した。



現在住んでいる家に引っ越すのに、色々と

苦労はあったが何とか今の幸せを手にする事が出来た。

しかし僕はこの家に関して疑問に思う点があった。

まずはこの家の価格。

中古の一軒家ではあったが、同じ地域の物件の相場に

比べておよそ半分くらいの価格で売りに出されていた。

勿論、この胡散臭い物件を購入する事に

僕も明日香も最初から乗り気では無かった。



だが、結婚式の費用やら何やらで

貯蓄を散財していた僕達にとって、

選ぶべき選択肢は殆ど残されていなかった。

何度も話し合った結果、最終的に

ここに引っ越す事を決意したのだった。





そしてもう一つの疑問点。

それは近所の住民が何処か僕達に余所余所しい事。

田舎での生活は都会に比べて人間関係には

苦労する、というが何かおかしい。

彼等が僕達に面と向かって罵倒したり、

陰口を叩かれたりした訳では無いのだが…………。



明日香と一緒に挨拶回りに行った際、

初対面の彼等の口調はまるで…………僕達がすぐに

ここでの暮らしを辞めてすぐに出ていって

しまうかのような、そんな感じの話し方だった。

幸いにも、いつも明るくて優しい僕の妻の性格に

絆されたのかしばらく経つと、彼等は僕達に対して

随分と親切にしてくれるようになった。


…………一部の住人、特にお年寄りの男性が

明日香を厭らしい目で見ている事を除けば、だが。


とはいえ彼等が明日香に手を出そうものなら、

男勝りで気が強い彼女にブチのめされるだろう。

過去に、痴話喧嘩で関節技やら絞め技を

何度も喰らった僕が言うのだから間違いない。





「ごちそうさまでした。

……………やっぱり明日香の料理は美味いな」



「やぁだもうっ、褒めても何にも出ないよ?」



「ああ、いいよ。

……………それよりまだ信じられないな」



「んー?」



「……………まだまだ先の話だけど、

僕も立派な父親になるんだな、って」




「うん………私、子供は沢山欲しいな。

まだ赤ちゃんだった頃にママも亡くなって………。

パパも仕事が忙しくて、子供の頃は

ずっと寂しい思いをしてきたから………。

だからね………〇〇君と私の子供達には、

絶対にそんな思いをさせたくないの」



「そうだね………僕が生きてる限りは、

絶対にそんな事にはさせない。

絶対に…………君も子供も幸せにしてみせるよ」



「アハハッ、照れるな〜。

ってこらっ……………急に抱き着かないでよっ」



僕は明日香を背後から抱き締めると、

後頭部の髪から漂う明日香の甘い香りを嗅ぎながら、

たわわに実った胸を揉みしだく。



「まだ皿洗いやってる途中なのに……………。

ちょっ………んんっ……………おっぱい揉むなっ!

んっ……………んんっ……………んっ…………」




こちらに振り返った明日香に、

僕は我慢出来ずに口づけを交わす。

しばらくキスを続けていた……………が。

逆に明日香の機嫌を損ねてしまい、彼女は

無理矢理僕の頬を抓って唇を引き離した。



「……………そろそろ辞めようか?」



「あだだだっ………ごめんなさい」



「朝から盛ってる暇があったら、

洗濯物でも干しにいってくれないかな?」



「……………はい」



「ほらっ、しょぼくれないの!

終わったらまだまだやる事あるんだから。

……………返事は?」



「はい」



朝食後の甘い一時はすぐに終わった。

僕は朝食後、明日香と一緒に家事をこなしていく。

しばらく月日が経てば、彼女にばかり

無理をさせる訳にはいかなくなるだろう。

今後の生活における家事については、

出来る事に関しては僕自身でこなす必要がある。



そして通りやる事が終わった僕達は昼食後、

リビングでゆったりとした昼下りを過ごしていた。

一昔前なら面倒くさくてたまらなかった雑用が、

今となっては不思議と嫌な感じがしない。



……………何だか眠たくなってきた。

リビングにあるロッキングチェアに座っていた僕は、

だんだん微睡みの中へ落ちていく。



「……………おーい、〇〇君…………?

ちょっ…………と………………?」



「…………んー…………ん…………………」



イタズラっぽい表情をした明日香が

こちらを覗き込んでいるのが見えたが

とても眠気には耐えられず、僕の意識はすぐに

眠りの世界へと誘われていった。

これが、明日香と交わした最後の会話に

なるとも露知らずに…………。



──────────────────────────



「おーい…………ツンツン。

ダメだ、完全に寝ちゃってるわ」



いくら頬を突付いても、〇〇は一度寝てしまうと

ちょっとやそっとの事では起きようとしない。

仕方なく、明日香はリビングにあるソファーの上で

胡座をかくようにして座り込み、テレビで

再放送されているお笑いの番組を見ていた。




「……………あははっ、ウケる〜っ!

ふふっ、あっははははっ!」



明日香はかなり大きめな声で爆笑しているが、

夫は目を覚ますどころか、ぐうぐうと寝息を

立てて深い眠りについている。



「……………あっ、もうこんな時間!

そろそろ洗濯物とりこみにいかなきゃ!」



爆睡している夫を尻目に、慌ててサンダルを履いて

物干し竿の置いてある庭先に出ていく明日香。

幸い、悪天候や洗濯物に鳥の糞がかけられたりと

いった事も無く、洗濯物を丁寧に折り畳んで

カゴの中にしまっていく。



「……………?」



その時だった。

何か聞こえたような気がした明日香は、

手を止めて辺りをぐるぐると見渡す。

……………だが誰もいない。



「気の所為かな……………?」




「……………ちに……………でぇ………………」



「!?」



洗濯物の入ったカゴを持った明日香が

家の中に入ろうとすると途切れ途切れでは

あるが、誰かの声が聞こえてきた。

ひょっとして、近所の子供のイタズラに

遭っているのだろうか?

……………辺りを何度見てもやはり誰もいない。

そう思った次の瞬間。



「……………こっちにおいでよぉ……………」


「…………………おいでよぉ〜」


「こっちだよぉ〜…………………」


「おいで………………おいでぇ〜……………」



「ひぃっ!!」



明日香のすぐ耳元に、無数の不気味な声。

驚いた拍子に持っていたカゴを落としてしまい、

洗濯物が地面に散らばった。



「おいでぇ~、おいでぇ~おいで〜…………」


「はやく……………こっちだよぉ〜……………」


「おいで〜おいで〜おいで〜おいで〜」



「嫌ぁああぁぁっ!!」



何度も何度も繰り返される悍ましい呼び声に、

悲鳴を上げて耳を塞ぐ明日香。

だがその声は、耳を手の平で塞いでも耳の穴に指を

突っ込んで栓をしても、一切遮断する事が出来ない。

今すぐにでも家の中に駆け込みたいのに、

その場から一歩も足を動かせない。



7月の蒸し暑い真夏日だというのに、

まるで巨大な冷凍庫の中に閉じ込められて

しまったかのような寒気を感じる。

そして繰り返される抑揚のない『何か』の声を

聞いている内にズキズキと酷い頭痛に襲われ、

明日香の意識がだんだんと遠のいていき…………。



「う………いゃ…………う………………ゔっ!!」



耳を塞いでいた両手が力無く摺り落ちると

明日香は短く呻いて俯いたまま、意識を失った。

…………地面に倒れる筈の明日香が、

何故か棒立ちの姿勢で微動だにせず、

全く倒れる様子が無い。



それから数分後。

明日香は突然、意識を取り戻し顔を上げた。

だが…………その両目からは光が消え、

生気の無い虚ろな目をしていた。



「おいでぇ~、おいでぇ~おいで〜…………」


「はやく……………こっちだよぉ〜……………」


「おいでよぉ……………こっちおいで〜………」



不気味な『何か』が呼ぶ声がまた聞こえてくる。

すると、明日香はフラフラとした

覚束ない足取りで何処かに歩いていく。

まるで、その『何か』に意識を乗っ取られ

操られているかのようだ。



サンダルを履いたまま、明日香は自宅の庭先から

近くにある鬱蒼とした雑木林に向かって歩いていく。

やがて、雑木林の中に入っていく明日香が木々に

阻まれて見えなくなり、忽然と姿を消した。




それを見ていたのは、周りで喧しく鳴いている

無数の蝉達だけだった……………。







カサッ……………カサ……………カサッ……………。



日没後も歩き続けておよそ2時間後。

明日香は、夜の暗闇に包まれた

森の奥深くの開けた場所まで来ていた。

そこには、一本の枯れた大木が生えていたが

何故かその周りには草木が殆ど生えていない。

あるのは地面にある枯れ枝や落ち葉だけである。


そして、大木の枝のすぐ下まで

明日香がやって来た次の瞬間。

スルスルと、ひとりでに古びた縄が垂れ下がる。

その先端には、首吊りの輪が結ばれていた。

何の躊躇いも無く明日香が縄を首に通した直後、

ようやく彼女は意識を取り戻した。



「…………はへっ?

……………ここ……………何処なの?」



「私………何でこんな事やって……ぐげぇ!!」



「ゔ………くっ…………………ぐぅ…………………!」



気が付いた時には、既に遅かった。

再び、縄が獲物を捉えた蛇のように勝手に動き出し

そのまま明日香の首を絞め上げる。



首が締まり、口から唾を飛ばしながら

苦しそうに呻く明日香。

慌てて縄を首から外そうとしたが、

結び目が固く、深々と首筋に食い込んだ縄は

何をやっても外れそうにない。



パニックに陥った明日香は、

爪を立ててガリガリと首筋を掻き毟り始めた。

引っ掻かれる度、皮膚から血が滲んで

痛々しい傷跡が幾つもついていく。



「いや゛…………あ゛………………あ゛ゔっ!!」



「ぐぇ! げほげぇほっ!!」



爪先立ちになって必死に悶えている間にも、

明日香の身体はどんどん上に引っ張られていく。

履いているウッドソールのフラットサンダルが、

今にも足先から脱げそうになっている。




「あ゛ぁぅ……………ぐげぇ!!」



「あぐっ!! げぉお゛ォォ!! 」



縄を引っ張っている超常的な力が更に強くなり、

勢い良く首を吊るされていく明日香。

地面からおよそ1メートル離れた地点まで

爪先が浮かび上がると、喉を押し潰された

明日香が醜い呻き声を上げながら勢い良く両足を

バタつかせ始め、履いていたフラットサンダルが

両方の爪先から遠くへ飛んでいった。




明日香は爪先を開いたり折り曲げたりと

激しくバタ足しながら、空中で艶めかしい

死のダンスを踊っている。



「………や゛ら…………はひゅ…………へへぇ!!」



明日香がいくら助けを呼んでも、

愛する夫は助けに来ない。



それもその筈。

この時、夫は近所を駆けずり回って明日香の

行方を探していて、彼の通報を受けた警察や

消防、山岳救助隊が村に集まり、ようやく

話し合いの末に捜索隊が組まれた所だった。




「がひゅ…………ぐぎぇ!!」




「(助け…………て…………〇〇…………く…………ん、

いや………死にたくないよ!! 怖いよ!!)」




首を吊るされ続けて、ジワジワと

死が近付いている最中、必死に心の中で

夫に助けを求め続ける明日香。




だが突然、両腕は首筋に爪を立てたまま、

両足はピーンと伸ばして爪先を折り曲げて

硬直させた状態で全身をガクンガクン、と

激しく痙攣させはじめた。



「ん゛ぶ………ぶっ…………がふっ!」



綺麗な肌をしていた顔は鬱血して赤黒くなり、

パンパンに浮腫んで醜く歪んでいた。

涙、鼻水、ねっとりとした粘着質な涎を垂らして

顔中がベタベタに汚れていく。

そして、デニムのオーバーオール越しからも

分かるくらいに豊満な乳房が、痙攣する度に

ブルンブルンと激しく揺れ動く。



「(い………や…………死にたく………な………、

手が………動かせない…………なん………で!?)」



「(ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!

やめて!! 殺さないで!!

死にたくない死にたくない死にたくない!!

ヤダヤダやめてっ!! やめてぇ!!)」



明日香がいくら心の中で騒いでも、

既に長時間首を吊るされ続けた彼女に

待っているのは確実に『死』だけだった。



「(いや………や……め………し……にたくな)」


「ン………げぐぉう………こ…………げぅ!!」




………………パタッ。




明日香が奇怪な断末魔を上げた直後、

指先が血塗れになった両手が脱力して、

だらしなく太腿の辺りまで垂れ下がった。

全身をブルブルと痙攣させながら失禁して、

生温かい小便を垂れ流す明日香。

デニム生地に覆われた股間から、

ツーンとしたアンモニア臭のする湯気が漂う。



「(や……………し……にた……くな………、

たすけ………て………〇〇………く……………)」


「(〇…………〇…………………く……………)」



最期の瞬間まで、夫を呼び続けていた

心の声もやがて混濁した意識に掻き消されていく。



「ひゅおぅぅーっ……………………………」



やがて肺に僅かに残っていた空気を

溜め息のように吐き出した明日香は

カクン、と頭を俯かせて動かなくなる。



そのまま……………静かに息を引き取った。



ピクッ……………ピクッ……………ピクッ……………。



全身の微かな死後痙攣が収まると、

やがて滲み出た小便が爪先から地面に

黄色い雫となってポタポタと滴っていく。

蒸し暑い日に必死でバタついていたせいで

足の裏は真っ赤に蒸れ、小便で黄色く汚れていた。




ギィィ……………ギシッ……………ギィィィ……………。




明日香の首吊り死体は縄を軋ませながら、

風もないのにひとりでに揺れ動き続けていた………。




─────────────────────

───────



………………僕が目を覚ました時には

テレビは点けっぱなしで、

明日香はリビングから姿を消していた。




「明日香? どうしたんだー?」




大声で呼んでみたが、返事が無い。

嫌な予感が僕の頭の中を過ぎったが、

念の為に寝室や物置、屋根裏部屋と、

家の中の部屋という部屋を探し回った。



しかし、彼女の姿は無かった。

家の中から外に探しに行こうとすると、

明日香がいつも履いていたサンダルが

下駄箱から消えている事に気付いた。




「明日香っ………何処行ったんだ!?」




庭先に出て見る。

あるのは、地面に散乱した洗濯物と

横倒しになった洗濯カゴだけだった。




「明日香…………クソっ………何があったんだ!?」




それからは大変だった。

自宅を飛び出し、血眼になって探し回ったが

見つからず、近所の家を片っ端から訪ねて

妻を見ませんでしたか、と聞いて回ったが

誰一人として知っている者はいなかった。



こうなってしまった以上、警察や消防と

いった所に通報するしか手段は無かった。

そこからは、かなり大変だった記憶がある。

警察官に色々と疑われて根掘り葉掘り

事情聴取を受けたり、何十人もの捜索隊が

近所に集まってきて大騒ぎになった。




そして………肝心の僕はというと。

捜索隊に加わり、夜の闇に包まれた山の中で

ただひたすら妻の名前を呼んでいた。



当初は加わる事に反対されたが、

僕の鬼気迫る態度に押されたのか

捜索本部からの指示は絶対に従う事、勝手な行動はしない

という条件で何とか仲間に入れてもらえた。




明かりは借り物のフラッシュライトだけ。

大勢の捜索隊を複数のグループに分け、

土地勘に詳しい地元の人と一緒に

捜し回っていたので遭難の心配は無かったが、

それでもやはり気味が悪い。



何の手掛かりも見つからないまま、

時間だけが過ぎていく。

………何となく地面を照らしたその時。



「………………これは!?」



間違いない。

このウッドソールとこの装飾。

明日香が愛用していたサンダルだ。

もう一足も、すぐ近くに落ちていた。



辺りをよく見ると近くの急な斜面の上の方、

十数メートル先に月明かりが差し込み

一本の大木が生えた開けた場所があった。



………明日香はあの場所にいる。

そんな気がしてならなかった僕は

何を血迷ったのか、グループを離れて

一気にそこへと駆け出した。




ガサガサと草木を掻き分け、猛スピードで

離れていく僕にすぐ気付いた同行者達が

背後から大声でよびとめるが、

何故か足を止める事が出来なかった。



息も絶え絶え、ようやく登りきったその先。

………………明日香は大木の側にいた。





「明日香………何処に行ってたんだよ!

本当に心配したんだから…………………」



……………返事が無い。

この時の僕は最悪の結末を迎えたという事実を

受け入れられないまま、明日香の元に駆け寄った。




「明日香……………ねぇ聞いてる?

そんな所にぶら下がってないで、

こっちに降りてきてくれよ……………っ!?」




両手を伸ばして明日香の足の甲に触れてみる。

……………氷のように冷たい。

カチコチに固まっている足の指の関節、

血の気が引いた青白い皮膚に、爪先や足の裏に

付着したアンモニア臭のする液体。




「……………あす………………か?」




………………嘘だ。

こんなの悪い冗談に決まってる。

自分がどれだけ心配したと思ってるんだ。

いくら冗談やイタズラだろうとやっていい事と

悪い事くらいの区別もつかないのか。




「おい明日香っ!!

僕をからかっているのか!!」



「………………明日………香………っ!?」



「嫌だ……………やめてくれ………………!

こんなの………………あんまりだ………!!

明日香っ、明日香ぁぁああああぁぁぁっ!!」




頭上を見上げた僕の目に飛び込んで来たのは…………………。





………………凄まじい形相を浮かべたまま、

既に息絶えた明日香の首吊り死体だった。

口からは異様に長く飛び出た紫色の舌。

白目を剥き、充血してどろっと濁った生気の無い眼球。

そして縄が食い込んだ首筋には、

無数の引っ掻き傷の跡が残されていた。



……………明日香は死んだ。

それも深い山奥に一人ぼっちで

助けが来ないまま、最期の瞬間まで

苦しみ続けて……………死んでいった。




「明日香ぁ……………明日香ぁ!!」





背後からやって来た同行者に引き離されるまで僕はただひたすら、首吊り死体となった明日香の足元で慟哭していた……………。





─────────────────────────





「……………お客様、ついてますね〜。

こちらの物件は今、非常にお買い得でして………」



「へー、チョーいいじゃーん!!

ねーねー買ってよ□□ー!!」



「はぁー!? いやいや嘘だろ!?

絶対に一桁ぐらい間違ってんだろ!?」



「いえいえ、決して誤表記ではありませんよ。

それにこの物件は自然豊かな山々に囲まれた

とても素晴らしい場所でして、既に買いたいと

いう方が何人も……………」



「……………そっか、早いもん勝ちかー」




「ほらほら、早く決めちゃいなよ〜!!

ただでさえ、ウチら貧乏なんだから……」



「わーったわーったって………」




松河明日香が不審死を遂げてから半年後。

残された夫は既に家を引き払い、

逃げるように行方を眩ませた。



そして、空き家となったこの物件は

再び不動産に売りに出され、

今まさに何も知らない2人のカップルが

この物件を購入しようとしていた…………。



The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside The hanged spectre lurking in the countryside

Comments

ありがとうございます。 fanboxで初投稿の小説の被害者が人妻なのはあんまりウケが悪いんじゃないかな、と思いながら執筆してましたが………そう言って頂けると嬉しいです。

esudafu

首吊り+着衣失禁だけでもすばらしいのに、 被害者のお姉さんがモロタイプです。 今後も楽しみにしています。

SITH

ご支援ありがとうございます。 お絵描きについてはまだまだ精進が足りませんが、そう言っていただけると励みになります。

esudafu

あなたの描いたイラストはとても素敵です。もっと見るのが楽しみです

Justice

ありがとうございます。 今作は初投稿のテストも兼ねた単発の小説ですが、今後はシリーズ物の小説を一話ずつ投稿していく予定です。

esudafu

最高です! 次回も楽しみです!

ライクライク


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