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どうやら夫が不倫しているらしい

 夫が不倫をしているらしい。お相手は、この街一番の美人と名高い妙齢の貴婦人なんだとか。

 情報源は噂好きのご近所の奥様方。夫と成婚したばかりの頃、在らぬ噂を吹聴されたので、正直言って彼女たちの話に信ぴょう性はあまりない。

 それでも、目撃者もいるというのだから、夫が不倫しているというのは確かなんだろう。


「メルさん、あまり気になさらないでね」

「ええ、こればかりは仕方のないことですもの」

「殿方の性なんでしょうね。でもまさか、ご結婚なされてから半年で、とは思いませんでしたけれど」

「あらやだ。本当のこととはいえ、それではまるでメルさんに夫の心を惹きつける魅力ないと言っているようなものじゃない」

「そうよ。事実とは言え、そんなにはっきり物を言うのは失礼じゃないの。ねぇ、メルさん」


 嫌味というのは、もう少し悪意をオブラートに包む物なんじゃないだろうか。

 くすくすと声を顰めて嗤う彼女たちからは、僕への嘲りや侮蔑があまりにはっきりと透けて見える。

 けれど、それも仕方のないことだ。何せ僕は、凡庸で冴えない風体の貧相な男オメガで、社交界の憧れの的であった夫とは何一つ釣り合いが取れていなかった。僕の生家の財力と権威だけが、夫が僕を娶る唯一にして最大の理由なのだ。

 夫は僕を愛していないし、愛されようと望むことすら烏滸がましい。他の誰に指摘されるよりも、僕自身が1番よく理解していた。だからこそ僕は、あからさまな悪意に気付かぬ程に愚鈍な間抜けを演じ、ほんの少しの反抗心も見せぬようにと己を押し殺す。


「すみません。今夜は夫の帰りが早いんです。名残惜しいですが、そろそろお暇いたします」

「まあ、健気ですのねぇ。メルさんがお迎えになったところで、ご主人は余計に気疲れなさるでしょうに」

「そうねぇ、メルさんは少し、いえ随分と勘が鈍くていらっしゃるから。きっとご主人もメルさんとお話しなさると気苦労が絶えないでしょうね」

「そんなことを言ってはお可哀想よ。それにしても、メルさんはこんなにも献身的ですのに、ご主人は若くお美しい方に懸想してらっしゃるなんて……涙ぐましいことですわ」


 また、くすくすと潜めた嘲笑が僕を取り囲む。

 彼女たちの憂さ晴らしにはもう慣れっ子なので、こうして笑われること自体はあまり気にならない。ただ一つ気掛かりなのは、今こうしている間にも、夫の帰宅時間が近づいているということだった。

 ああ、早くしないと。また夫の機嫌を損ねてしまう。一度不機嫌になると、夫は中々機嫌を直してくれないのだ。

 今夜もまた、ご機嫌取りのために"いつものアレ"をしなければならないのだろうか。僕の無様で滑稽な姿を内心で嘲っているのだろう夫を思うだけで、とても憂鬱な気分になってしまう。

 けれども、どうか一秒でも早く解放してください。とは、行手を阻むようにして僕を囲む彼女たちを前に、口にする勇気など到底なかった。




 結局、僕が屋敷に戻れたのは、夫が帰宅して三十分も経とうかという頃だった。


「遅くなり申し訳ありません。お夕飯はもうお済みですか?」

「……」


 僕の問いかけに対して、夫は一瞥をくれることすらなく無言を貫いた。ああ、やはり機嫌を損ねてしまった。

 寡黙でポーカーフェイスだと評されることの多い夫だが、存外に彼の心情は分かり易かった。というより、僕の前では不機嫌がデフォルトで、言葉にされずとも負の感情が伝わってくるのだ。


「レナード様、あの……」


 名前を呼べば、紫水晶の瞳だけがこちらを向いた。白銀の髪に紫の瞳。いつ見ても、この世ならざる美しさに息を呑んでしまう。身の内から溢れる品格は、いっそ神々しさすら感じさせた。

 こんな人が自分の夫だなんて、どれだけの月日が流れようとも実感が湧いてこない。いっそ、長い間愚かで身の程知らずな夢を見続けている、という方が余程真実味があった。


「なんだ」


 名前を呼んだきり、無言で立ち尽くすばかりの僕に焦れたのか。

 目線と言わず、体の向きをこちらへと向けた夫が、続きを促すように双眸を細めた。

 強い視線に、自然と背筋が伸びる。乾いた喉からは、引き攣れたような情けない声が漏れた。


「あ、あの……お夕飯を、ご一緒に。ま、まだ、お済みでないようでしたら」

「……」


 再び沈黙が降りる。

 夫の眉間に皺が寄り、剣呑な眼差しが僕を射抜いた。

 僕はいつもこうだ。夫を苛立たせるばかりで、何一つ満足にできない。

 夫の無言の圧力に、僕はただ、身を縮こまらせるしかなかった。


「どこへ出掛けていた」


 たっぷりと間を置いて、ようやく夫が口を開いた。僕の質問は華麗にスルーされてしまったが、そんなことを一々悲しんでいたらキリがない。

 僕にできることは、これ以上夫の機嫌を損ねないように、余計なことを口にしないことだけだ。


「婦人会に招待していただいて、皆さんとお茶を……」

「そうか」


 簡素な相槌に、会話が途絶える。

 僕からも夫へ話題を振るべきだろうか。それとも、何も言わずに夫の次の行動を待つべきか……。

 狼狽する僕を見兼ねてか、夫が私室から繋がる寝室の扉へと目を向けた。

 いくら察しの悪い僕にでも、その目線の意味は分かる。何もかも不出来な僕が唯一夫を満足させられること。夫に体を暴かれて初めて知ったことだが、どうやら僕には床の才能があるらしかった。

 麗しい愛人を持ちながら、オメガとしての魅力に欠ける僕を毎晩抱くのだから、僕はかなりの床上手なのだと思う。

 長い足を生かして颯爽と寝室へ足を運ぶ夫の後を追いながら、僕の具合の良さは食欲にも勝るのだと感心すらしてしまった。



 嫁入り前に最低限の性知識は身に付けたつもりでいた。けれど、実際にことに及ぶのは夫との初夜が初めて、そこで僕は『百聞は一見にしかず』という言葉の意味を身を以て思い知ることになった。

 それ程までに、付け焼き刃の性知識と実際の性行為とには差異があったのだ。


「おいで」


 寝台へ腰を下ろし、同じように僕の正面へ座った夫へ手を伸ばす。母親が幼子にするような、両腕を広げたいわゆる抱っこのポーズだ。

 こんなこと、普段の僕なら絶対にあり得ない。けれど、これこそが本来の性行為なのだと夫に教えられた。

 経験豊富な夫曰く、妻は夫の苦労を労うために、閨ではとにかく夫を甘やかすものなのだそうだ。


「……」

「ふふ、いい子いい子」


 無言のままに、夫が僕の胸板に飛び込んできた。

 百九十を越す長身の夫に抱きつかれて、衝撃を支えきれずに背後のクッションに背中を預ける格好になる。

 いつものことなので、夫は勝手知ったる様子で僕の背中に腕を回した。大きな身体に抱きすくめられ、頭から足先まですっぽりと夫の体温とフェロモンに包まれる。


「今日もお仕事お疲れ様。いっぱいがんばれてエラいねぇ」

「……」


 よしよしと頭を撫でれば、夫がもっとと強請るようにぐりぐりと頭を押し付けてきた。

 貧相な体の冴えない男に縋りつく逞しい美丈夫。この光景は、側から見たらなんとも珍妙に違いない。


「ふふ……っ」


 思わず笑いをこぼしてしまった。夫が胸板から顔を上げて、上目遣いに僕を見る。

 極ありふれた焦茶色の目をした僕からしてみれば、世界でも稀少な紫の瞳は本当に神秘的で何度見ても吸い込まれそうになってしまう。僕が夫のように容姿に恵まれていたなら、「この世のどんな宝石よりも美しい瞳だ」とキザな口説き文句を口にしていたかもしれない。

 勿論、現実の僕がそんなことを口にできるはずもなく、ひたすらに目を奪われるばかりだ。

 僕とは違う理由なのだろうけど、夫も同じようにじっと僕の目を見つめている。それがなんだか小さな子供のようで、不敬ながら可愛いだなんて思えてしまう。


「どうしたの?」

「……」


 夫がこういう目をする時は、何かを欲している時だ。

 最初のうちは戸惑うばかりだった僕も、何度も体を重ねるうちに察する能力が身に付いた、と思う。


「よしよし、我慢しないでいいんだよ。僕にだけは、甘えん坊さんになっていいんだよ」

「……」


 相変わらず夫は無言を貫いている。

 その代わりのようにして、はむりとシャツの上から僕の乳首を口に含んだ。

 おろしたての白の布地に、じんわりと唾液が滲む。

 布越しにも器用に乳頭を咥えられ、舌先でチロチロと擽られる。毎晩の行為ですっかり敏感になった乳首は、たったそれだけの刺激でピンと芯を持って立ち上がった。


「ン……おっぱい、したいの?」

「……」


 無言のまま、夫はじっと僕の目を見つめた。

 お乳をねだる赤ちゃんのような体勢ではあるものの、紫水晶の瞳にはありありとした情欲が宿っている。

 ぢん……とお腹の奥が熱くなるのを感じながら、表面上は穏やかに微笑んでみせる。

 絹糸のように滑らかな夫の髪に指を通し、手櫛の要領で頭を撫でた。


「よしよし、おっぱいしてあげるから待っててね」

「……」

「ふふ、いい子」


 夫が大人しく乳首から口を離したのを見届けて、焦ったいくらいにゆっくりとボタンに手をかけた。

 第二ボタンまではきっちり留めた状態で、第三ボタンから順に外していく。ちょうど肋骨が見える辺りまでボタンを外して、僅かに開いた前立てを両側に引いた。そうすると、胸板とその頂上で屹立する乳首だけがシャツの間から顔を覗かせる。

 はっきり言って、変態的で滑稽な格好だと思う。けれど、夫はこうして僕に羞恥心を与えることを好んだ。内心で恥ずかしさを感じながら、それを押し殺して夫を甘やかす僕に愉悦を見出す。

 その美貌からは想像もつかないことに、夫は存外変態チックな人だ。

 目に見えて興奮した様子の夫が、我慢できないというように右の乳首に吸い付いた。


「あっ、ン……こら、まだいいよって言ってないでしょ。あ、だめ、んぅ……っ」


 僕の声には耳を貸さず、夫はちゅうちゅうと乳首を吸い上げる。

 乳輪ごと柔くぬるついた口内に咥え込まれ、前歯で乳頭を甘噛みしながら、敏感な窪みを舌先で穿られる。乳首を伸ばすようにして強く吸われる度、ピリピリとした快感が胸から腰骨を伝った。


「あっ、や、そんな、つよくしちゃぁ……っ、だめ、あっ、あぅ……っ」


 ぢゅっ、ぢゅぱっ、じゅるるっ


 わざとらしく音を立てるのは、僕の羞恥心を煽るためだ。そうされると恥ずかしくて、恥ずかしいともっと気持ちよくなる。

 僕の身体を知り尽くした夫は、巧みな舌使いで僕の理性を崩壊させていく。


「や、あっ、あん、んん……っ、も、おこ、おこるよっ」


 このままでは夫のペースに飲まれてしまう。良き妻であるためにも、僕は快感に負けることなく夫のを甘やかさなくてはならない。

 少し強めの声で咎めれば、ようやく夫が乳首を舐めすするのをやめた。とはいえ、相変わらず右の乳首は夫の口内にあるし、左の乳首にも不埒な手が伸びていた。

 くるくると指先で乳輪をなぞられて、微細な刺激に期待を孕んだ息を吐いてしまう。


「あっ、はう……っ」

「……」

「こらぁ♡ あ、ん、だめ、めっだよ」

「……」

「そんな顔しても、めっだよ。優しくちゅうちゅうするお約束でしょ?  それに、おっぱいしていいよって言ってないでしょ」

「……していいか」

「ん、いいよ」


 「お利口さんできたねぇ」と頭を撫でれば、夫がムッとした様子で性急に乳首への愛撫を再開させた。


「あっ♡ ん、やっ、あ♡ やさしくって、いった、のにぃ♡」


 ぴちゃ、くちゅ……ぢゅっ、ちゅう、ぢゅううっ♡♡ 


「はひっ♡ ひう、うう、ん〜♡ それ、らめ、っ♡♡ あっ、がじがじもやぁ♡ あぅ、さきっぽぺろぺろ、だめぇ♡♡」


 じゅぷ、じゅっ……ちゅぱっ、ちゅぽ、ぢゅっ♡♡ 


「あっ、は♡ はう、ん♡ ちくびぃ、のびちゃう♡ おっきく、なっちゃ、あうっ、あ、ああんっ♡」


 結婚してから半年。初夜以来ほぼ毎日のように夫に愛でられ続けた僕の乳首は、今やペニスと比べてもなんら遜色ないほどの立派な性器となっていた。

 小指の先ほどにぷっくりと肥大した乳首をとろとろの口内で舐られると、僕の口からは堪えようもない嬌声が漏れてしまう。

 まるで乳飲み子がするようにして乳輪ごと吸われると、頭が蕩けてしまいそうなくらいに気持ちいいのだ。

 あまりの快感に、夫の頭を掻き抱くようにして縋りついてしまう。そうすると意図せずして夫に胸を押しつけるような形になってしまい、余計に乳首への愛撫が激しさを増した。

 口に含んでいないほうの乳首も指でこねくり回されて、僕はたまらずにはしたない声を上げてしまう。


「もおっ、やあ♡ あっ、んん〜♡ ひっ、いいっ♡♡ やめ、いっちゃ♡ いっちゃうぅっ♡」


 ぢゅぱっ、ちゅぽちゅぽ、じゅるるっ!♡♡ 


「あっ、なんで、つよく♡♡ いっ♡♡ ひっ、だめ、だめっ♡ ほんとに、イっちゃ♡ あっ、あうぅっ!♡♡ イ゛っ、……っっ! !♡ っは、ひぁ……っ♡」


 びくびくと腰を跳ねさせながら、乳首だけで絶頂してしまった。

 頭がほわほわして全身が甘ったるい快感に支配されていく。

 ああこのまま微睡の中に溶けてしまいたい。欲望に従って瞼がだんだんと落ちていくけれど、そうはさせまいと夫が乳首への愛撫を再開させた。


「やあ♡ もう、おっぱいしちゃだめぇ♡ いったばっか、だからぁ♡ いじめちゃ、だめぇ♡」


 ちゅっ、ぢゅっ……ちゅう、ちゅっ♡ 


「あ♡ 優しくすうの♡ すき♡ きもち、あっ、んん♡」


 夫は本当に、僕の身体の扱いに長けている。僕の弱いところを的確に刺激し、快感の沼に突き落としていく。


「あっ♡ あぅ、ん〜っ♡♡ はう、うう……っ」


 イったばかりで敏感になった乳首をねっとりとしゃぶられ、自分でも気付かぬうちに腰を揺すってしまう。

 夫の頭部を抱きしめるようにして胸に押しつけながら、はしたなくももう片方の乳首に手を伸ばしてしまう。


「はぁ♡ あっ♡ ん……っ♡♡」


 一際強く吸われて、ちゅぽんっと名残惜しげな音を立てて唇が離れていく。

 散々弄り回された乳首は、唾液に濡れてテラテラと光っていた。


「あ……っ♡ んぅ、ン……♡」


 散々苛め抜かれた乳首を労わるように優しく撫でられて、甘ったるい声が鼻から抜けていく。

 反対側にも触って欲しくて胸を突き出すと、夫がふっと笑ったような気がした。

 それも一瞬のことで、肉付きの薄い唇はすぐに巻いた文字になってしまう。


「あっ♡ あぅ……っ♡」


 両方の乳首を指の腹でくにくにと捏ね回され、時折きゅっと摘まれる。


「ん♡ んっ♡ あ、きもち……♡ やさしいの、すきぃ♡」


 恥ずかしいことを声に出すのは気が引ける。けれど、性行為の最中は、抑えることなく素直な気持ちを口にするように言いつけられていた。

 夫の望む通りに振る舞うことで、少しでも夫に喜んで貰えるのならと、僕は素直にその教えに従っている。


「あ♡ あっ♡ はう……っ♡」


 乳首がぢんぢんして痛いくらいに立ち上がったところで、ようやく左の乳首が夫の口に飲み込まれた。

 乳輪にぴったり沿うように咥えられ、ちゅうちゅうと吸い上げられる。


「ひぅ♡ ん〜っ♡♡ あっ、りょうほういっしょ♡ きもちいぃ♡♡」


 右の乳首も唾液を塗すように指で捏ねられ、堪らず胸を突き出して感じ入った。

 気持ちいい、もっとして欲しい。

 頭がふわふわして、多幸感に包まれていく。


「あ♡ あっ♡ んう……っ♡ きもちぃ、よぉ♡」


 夫を甘やかすはずが、これでは僕の方が甘やかされている気がする。夜の営みすら満足にできないようでは、僕はいよいよ妻失格だ。

 快感に溺れてしまいそうになる己を奮い立たせ、夫の股間へと手を伸ばした。


「もう、おっきいね」

「っ……」


 そこは既に大きく張り詰めて、窮屈そうに布地を押し上げている。布越しに形をなぞるようにして指を這わせれば、夫が堪えるように息を詰めた。


「ふふ、かわいい」

「っ……メル」

「わかってるよ。1日頑張ったご褒美に、いっぱいよしよししてあげるからね」


 夜着の紐を解き、下履きをくつろげる。ブルンッと飛び出したペニスは硬く張り詰め、火傷しそうなくらいに熱を持っていた。


「ん、おっきいおちんちん、かっこいいね」

「ハ……ッ」


 トロトロと溢れるカウパーの滑りを借りて、両手でちゅこちゅこと逞しい竿を扱く。

 眉根を寄せてじっと僕を見上げる夫に微笑みかければ、ドクンッとペニスが一際大きく脈打った。直後に乳首に甘い痺れが走って、堪らずに声を上げてしまう。


「あっ♡ あ、ん……っ♡ やぁ、僕が、してあげたい、のにぃ♡ あ、だめ♡ ンゥ……っ♡」

「ン……っ」


 再び僕の胸に顔を埋めた夫が、ちゅぱちゅぱと本当にお乳を吸うようにして乳首に吸い付いた。


「あっ♡ ん、それぇ……っ♡ だめなの♡ あぅ、おっぱい、でないよぉ♡」


 イヤイヤと首を振っても夫は許してくれない。

 責められながらだと夫への奉仕が疎かになってしまうから困るのに。乳首の快感に呑まれてしまわないようにと、僕は必死に夫のペニスを扱いた。


「はあっ♡ あぅ、ん♡ きもちい?」


 ちゅっ♡ ぢゅぱっ♡ じゅううぅぅぅっ!♡♡ 


「あっ♡ やあ♡ つよいぃっ♡ あ、あっ♡ ちくび、すっちゃやだぁ♡♡」


 返事の代わりに強く吸いつかれて、キュンキュンと下腹部が波打った。

 僕のペニスから白濁は溢れていない。それでも、甘いオーガズムが全身を満たした。


「ああ……っ、あ♡ も、おっぱいは、おわり♡ ね?  ごほうびに、おちんちんいっぱいよしよししてあげるからぁ♡」


 ぢゅっ!♡ ぢゅるるっ♡ ぢゅぱっ♡ ぢゅううぅぅっ!♡♡ 


「んう〜っ!♡ ごめなさいぃ♡ ちゃんとするからぁっ♡ あっ、だめ、はげしっ♡♡ ひうぅ……っ♡♡」


 夫に奉仕するはずが、いつの間にか僕の方が気持ちよくさせられてしまっている。

 これはいけないことだと分かっているのに、僕はもうすっかりこの倒錯的な行為に溺れてしまっていた。そんな僕に追い打ちをかけるようにして、夫が僕のペニスに触れた。


「や、あっ♡ あぅっ♡」


 夫に比べれば貧相で小振りな僕のペニスは、もうずっと勃起したままだ。

 先走りと白濁の混じった淫液を塗りつけるようにして上下に扱かれて、あっという間に射精寸前まで高められてしまう。


「んひっ!♡ それぇっ♡ だめぇ……っ!♡♡」


 くちゅくちゅくちゅっ♡♡ ぬちぬちっ♡♡ 

 ぢゅぱっ♡ ちゅう♡ ちゅぷ♡ ぢゅぷっ♡♡ 


 乳首とペニスが快感の線で繋がったかのように、身体の中心にビリビリと電流が走る。


「あっ♡ だめ、いっちゃうぅ……っ♡♡」


 夫より先に自分だけが射精してしまうなんて絶対に避けなければならない事態なのに、僕の身体は貪欲に快感を求めてしまう。


「や、やだぁ♡ あ、いくっ♡♡ いっちゃうぅ……っ!♡♡ ひっ♡ ああぁっ♡」


 ぴゅるっ♡ ぷぴゅっ♡♡ ぴゅくく……っ♡♡ 


「んあっ♡ あ、ンウゥ……っ♡」


僕が絶頂するのとほぼ同時に、弄られ過ぎて赤く腫れてしまった乳首から漸く唇を離してくれた。

 唾液に濡れた乳首がぬらぬらと怪しく光っている。その淫猥な光景だけで、お腹の奥からじゅわりと蜜が溢れた。


「はあっ……はっ♡ あぅ、ン……っ♡」


 射精後の脱力感でぼんやりとしていると、それを咎めるように乳首をピンッと弾かれた。


「ひうっ!♡ あ、ごめ、なさ……っ♡ ちゃんと、します、からぁ……♡」


 甘イキも含め、何度も達してしまった僕とは違い、夫はまだ一度も射精していない。

 不満げな夫に許しを乞うべく、ちゅう、と唇を啄んだ。


「んっ♡ ん……っ♡」


 はむはむと拙いキスを繰り返す僕をあやすように、唇が優しく食まれる。

 角度を変えて何度もキスをされ、僅かに開いた隙間を熱い舌が這う。それに応えるように、舌をそっと差し出して夫のそれに重ね合わせた。


「はう……♡ あむ、ン♡ んちゅ……っ♡」


 舌と舌を絡める濃厚なキスに夢中になっていると、不意に下肢に刺激が走った。


「んあっ!♡ や、おしり、なでなで、だめぇ♡ あ、あんっ!♡♡」

「お尻じゃないだろう」

「あ、うん♡ お、おまんこ♡ メルのお尻は、旦那様専用のおまんこです♡」

「いい子だ」


 ご褒美とばかりにアナルの縁をすりすりと撫でられて、堪らずはしたない声を上げてしまう。


「はうっ♡ あっ、あぅう……っ♡」


 夫によって快感を教え込まれたアナルはすっかり性器として成熟しており、"おまんこ"などと卑猥な呼称されても否定することができない。それどころか、快楽を求めて強請るようにお尻を振ってしまう始末だ。


「んひ、んぅ……っ!♡♡」


 つぷ、と爪先が埋まる感触がしたかと思うと、そのままくぷんっと指先が胎内に入り込んだ。

 男性にしてはしなやかで、けれど僕の指よりもずっと長い夫の手が敏感な粘膜を割り開いていく。肉襞が夫の手に吸い付く感覚に、ゾワゾワと背中がしなった。


「はう、うぅ……っ♡ やっ、まって♡ 昨日、いっぱいしたからぁ♡ 今日は、おまんこ、しないの♡」

「……」

「あっ♡ やだっ♡♡ あうっ♡ おまんこ、しないでぇ♡♡ んん〜っ♡」


 開発され切ったアナルは、ちゅぷちゅぷと簡単に夫の指を飲み込んでいく。

 せめてもの抵抗にくねくねと腰を逸らせば、逞しい腕でがっちりと腰を掴まれて逃げ場を奪われてしまった。


「あ……っ♡ んぅ、うぅ〜っ♡♡」


にゅぷ♡ くぷぷ……っ♡ ぬち、くちゅ……っ♡♡ 


 狭い襞を押し拡げて、にゅぐぐぅ、と夫の指がアナルに侵入していく。

 こりこりとしたくるみ大のしこりまで到達すると、指の腹を添えてちゅこちゅこ♡と優しく愛撫された。時折押し潰すようにして圧をかけられると、ペニスの内側から射精感に似た快感が込み上げてくる。


「あ、んあ♡ だめぇ♡ ぐりぐり、だめですっ♡ やさしく、やさしくして、くださ♡」

「その割には、いやらしい襞が貪欲に吸い付いてくるぞ」

「ちがっ♡ ちがいますぅ♡ ひうぅ……っ!♡ あっ、ひんっ!♡」

「夫婦の営みの最中は素直になれと教えたはずだが?」

「あっ♡ ごめんなしゃ♡ 嘘、ちゅきました♡ してほしいっ、いっぱい、おまんこしてほしいです♡♡ やあっ♡ ちゃんと、言ったのにぃっ♡ 激しくしないでぇっ♡♡ ひおっ♡」


「ふん、下品な顔だな」

「んん゛♡ ごめんなさ、ごめんなざいっ♡♡ ぶしゃいくで、ごめんなざいい゛♡♡ んお゛っ♡ はっ、あ、お゛あ〜っ♡♡」


 ぶちゅぼちゅと空気の抜ける下品な音を立てながら、前立腺をすり潰すような激しい手マンを強いられる。

 とろとろにぬかるんだアナルには夫の太い指が三本挿入されていて、それぞれがばらばらに動いて僕のアナルを犯した。

 快感を逃したくて夫の腕の中で必死に暴れれば、お仕置きとばかりに乳首を舐めしゃぶられた。


「ああん♡ やあっ♡ おっぱいちゅうちゅうしないで♡♡ 伸びちゃう♡ ひっぱっちゃやぁ♡」


ぢゅうっ、じゅるるっ♡ 

にちゅにちゅ♡ じゅぽじゅぽっ♡♡ ぬぢゅっ、ぬぢ……っ♡♡ 


「んん゛う゛♡ おまんことおっぱい、一緒にしちゃだめっ♡♡ もっ、ゆるじて゛♡ ゆるじでぇっ♡♡」


 涙やら鼻水やらで顔をぐちゃぐちゃにして懇願すれば、ようやく夫の手が止まった。

 ちゅぽんっと音を立てて乳首が解放される。唾液に濡れそぼった乳頭が真っ赤に腫れてふるふると震えていた。

 卑猥な様を見ていられずに顔を背ければ、お仕置きとばかりに内部に埋まったままの指でこりゅっと前立腺を潰された。


「あ゛んっ♡ やっ、ちゃんと見ましゅっ♡ ごめんなしゃいっ♡」

「随分とふしだらな身体になったな」

「ううっ……んあっ♡ えっちです♡ メルの体♡ 旦那様に愛されてえっちになりましたぁ♡♡」


 僕を辱めて満足したのか、ちゅぽんっ♡と指が引き抜かれた。


「あん♡ ……っ今日は、もう終わりにしますか?  お疲れでしょうから、一緒にお風呂に入っておやすみしましょう」


 媚びるように夫の顔中にキスしながら、なんとか挿入から逃れようと画策する。

 決して、夫との性行為が嫌なわけではない。ただ、毎晩となると、貧弱な僕の身体では夫の欲望を受け止めきれないのだ。

 手や口でご奉仕するから、これ以上はもう僕の身体を暴かないでほしい。そんな願いも虚しく、ごりっと猛り切ったペニスをアナルに当てがわれた。


「あ……っ♡」

「メル、挿れるぞ」

「ひう♡ っ〜♡ はっ、ふーっ♡ だめ、だめですっ♡」


 にゅるにゅるとアナルにペニスを添わせて、素股のようにして夫のカウパーを塗りつけられる。

 たったそれだけのことで、夫に絶対服従を誓うアナルがひくひくと疼いて、雄を求めるようにちゅうちゅうとペニスに吸い付いた。

 およそ半年間にわたる夫婦性活によって、僕の体は完全に夫の雄々しいペニスに敗北してしまっているのだ。それでも、わずかに残った理性だけが、目の前の雄に屈服せんと僕を奮い立たせた。


「だめ、ですっ♡ 今日は、えっちしませんっ」

「朝まで指だけで我慢できるのか?」

「あん♡ 手マンもだめです♡ ふううっ♡ ふっ、ふーっ♡ ペニスも指もいりませんっ♡」

「そうか、残念だな」


 これっぽっちも残念じゃなさそうに言って、夫は相変わらずぬこぬこと尻たぶでペニスを扱いている。

 カリ高のペニスがアナルのふちを引っ掻いて、プニュプニュと睾丸を転がしたり、敏感な裏筋をカウパーでびちょびちょに濡らしていく。

 戯れに指先でアナルのふちを広げられて、ちゅぷっ♡と亀頭の先っぽだけを埋めれる。


 ぬちゅ♡ くぷ♡ ぷちゅ……♡ ぬち、ちゅ……っ♡ 


 入れては抜けて、入れては抜けてを何度となく繰り返されて、無意識のうちに僕も腰を揺らしていた。


「はっ、ふ♡ ふーっ♡ んっ、ふーっ♡」

「……嫌ならもう終わりにするか?」

「あっ……♡」

「物足りない、とでも言いたげだな。終わりにしたいと言ったのはどの口だ?」

「っ……ん♡ はう♡ んん♡」

「こら、旦那様のペニスでオナニーするのは無礼だと教えただろう」

「あん♡ ごめんなさいっ♡ 旦那様ペニスでオナニーする悪い雌妻でごめんなさいぃ♡」

「雄失格の情けない腰ヘコだな。ほら、どうしてほしいんだ? きちんとおねだりできたら、お前の望む通りにしてやる」


 僕がどうしてほしいかなんて、全部分かっているくせに。

 もともと滲んでいた生理的な涙と合わさって、ぽろりと熱い雫が頰を伝う。

 とことんまで意地悪な旦那様は、僕のしわくちゃな泣き顔にすら興奮するらしく、どくんと脈打ってペニスがひと回り大きくなった。

 そのことに、ぢんとお腹の奥が熱を持つ。すっかり夫のペニスにメロメロな自分の身体を恨めしく思いながら、僕は遂にはしたないおねだりを口にしていた。


「メルのおまんこに、旦那様のペニス、いれてくださいっ♡ 快楽に弱い雌妻のおまんこを、旦那様ペニスでお仕置きしてください♡ ほかのペニスじゃ満足できない体にしてください♡ んお゛……っ、ひっ♡ あ゛っ♡ きゅ、にいっ♡♡」


 僕が言い終わるのを待たずに、どぢゅん! と勢いよくパニスを突き立てられた。

 トロトロにぬかるんだ媚肉が、待ちわびた質量を歓迎するようにうねうねと蠕動して、淫らに雄膣を蠢かせた。


「あっ♡ ひ、あっ♡ あっ♡ やあ゛っ♡」

「ハッ……メル、私を見ろ」

「ん♡ ふに、ん゛♡ ん゛んっ♡ お゛、みで、ましゅっ♡ だんなしゃまっ♡ はへっ♡ ほっ、んお゛っ♡♡」

「メルッ、メルッ」

「お゛ん♡ づよ、づよい゛ぃ♡♡ いぐ♡ すぐ、いぐっ♡♡ ん゛あぁあ゛♡」


 ゴヂュン♡ ゴッヂュン♡♡ ドチュドチュ♡♡ 


 パンパンと肌が激しくぶつかり合う音がする。

 僕の腰骨を跡がつきそうなほど強く掴んで、夫は容赦なく腰を振った。


「お゛っ♡ んお゛っ♡ あ゛〜っ♡ いぐっ♡ いぎまずっ♡♡」


 ばちゅんばちゅんと尻たぶに腰骨を打ちつけられて、どすどすと激しく奥壁を穿たれる。

 長く太く硬いペニスによって前立腺を押し潰されて、ぷしゃぷしゃと潮を噴きながら絶頂した。

 それでも夫のペニスは止まらず、絶頂によって弛緩した奥壁に容赦なく亀頭を叩き込まれた。ぐぽぐぽとひどい音を立てながら、最も敏感な結腸口をエラの張ったカリが嬲る。


「ああ゛っ♡ 赤ちゃんのへやっ♡ 犯しゃないで♡♡ おほっ、ほ♡ あ゛ゔうっ♡」

「こうして子宮を捏ねられるのが好きだろう」

「んあ゛あ゛♡ やあっ♡ あひっ♡ ひゔぅ♡」

「嫌じゃないだろう、メル。素直になりなさい」

「やあ♡ 子宮口っ♡♡ だめなとこお゛♡ はっ、はあっ♡ んぐっ……やあぁ!♡♡ ふかいぃい!♡♡」


 ドヂュンッ! と一際強く腰を打ちつけられて、ぐぽっ♡と結腸に亀頭が潜り込んだ。

 あまりの衝撃に目の前が真っ白になる。僕の意思に反して肉襞がぐねぐねと蠢き、夫のペニスにむしゃぶりついた。


「お゛っ♡ ほ、あ……っ♡ んお゛♡」


 ごちゅっ♡ どちゅっ♡♡ ぬぽっ♡ ぐぼっ♡♡ 


 結腸を犯された衝撃で軽く意識を飛ばした僕のことなどお構いなしに、夫は激しいピストンを再開した。


「やあっ♡ イってう!♡ イってるからぁっ♡♡とまっへえ゛!♡♡」

「はっ、メル……っ」

「んあ゛!♡♡ ひぎっ♡ はへっ♡ お゛ぉ……っ♡♡」

「くっ……」


 どぢゅんっと一際強く腰を打ちつけられて、びゅるるっ♡と熱い飛沫が腸内に叩きつけられた。その刺激で僕もまた絶頂し、ぷしゃあっと潮を噴きながらガクガクと痙攣する。


「ひうっ……♡ ん、ア……っ♡」


 長い射精の間もゆるゆると腰を動かして、一滴残らず僕の胎内に種付けする。

 ギラギラとした獣のような眼光はそのままに、硬度を保ったままのペニスがゆっくりと引き抜かれた。

 ちゅぽんっと亀頭が抜けた途端、栓を失ったアナルからドロリと白濁が流れ出る。


「あ……っ♡ ん……♡」

「メル……」

「ふ、ぁ……っ♡ だんなしゃま……♡」


 覆い被さってきた夫とちゅ、ちゅと唇を啄み合う。優しい口付けにうっとりしていると、再びぐっと熱い昂りを押しつけられた。


「あ……っ♡」


 ぬるついた亀頭がぬるぬると敏感な粘膜を撫で回す。くぷ、くぽ……♡と先端だけを出し入れされて、ゾワゾワとした快感が背筋を痺れさせた。


「はうぅ……♡ ん……っ♡ また、するんですか……?♡」

「ああ。まだ足りない」

「ん……♡ ふぅ、ン♡」


 ちゅむ♡と唇を柔く喰まれて、隙間なくぴったりと唇を重ねられる。


「あふ……っ♡ んっ♡ んん〜っ♡♡」


 ずぷぷぅ……っ♡と再びペニスが挿入される。こちゅん♡と結腸口に当たると、ぬかるみを捏ねるようにゆっくりと腰を回された。


「ん……っ♡ あ、はぅ♡ あっ♡ あっ♡」


 緩やかなピストンに合わせて、ちゅぷちゅぷと舌を吸われる。

 上も下も夫と繋がって、多幸感に頭が蕩けていく。


「んん……♡ ふ、ぁ♡ あん……っ♡」


 受精を待ち侘びる子宮口を小突かれる度、甘い痺れが全身に広がった。


「あぁんっ♡ あふっ♡ はうぅ……っ♡」

「ハ……ッ、締め付けすぎだ」

「ん、あ♡ あっ♡ だんなしゃま♡ きもちい? メルのなか、きもちいいですか……?」

「……ああ」

「ふへ……♡ うれしい、です♡ メルも、きもちぃ、です♡♡」


 何もかも不出来な僕でも、夫を悦ばせることができる。

 そのことが何よりも嬉しくて、へにゃりとだらしない笑みを浮かべて夫に抱きついた。


「あ♡ あっ♡ んお゛っ♡」

「メル……ッ!」

「はひっ♡ だんなしゃまっ♡♡ あ゛〜っ!♡♡」


 ごりゅごりゅっ♡♡ ぐぽっ♡♡ ぬぼっ♡♡ 


 結腸弁で亀頭を扱くように抜き挿しされて、ぷしっぷしっと断続的に潮を噴きながらオーガズムに達した。


「ひ、あ゛〜っ♡♡ いぐ♡ またっ♡ いっぢゃいます……っ!♡♡」

「っ……出す、ぞ」

「んお゛、ひっ♡ はへっ♡ あっ♡ だしてっ、くださ♡ ひっ、あ゛あ……っ!♡♡」


 ドピュッ! ビュルルルッ♡♡♡ ビューーーッッ!♡♡♡ 


「あ゛ーっ♡ ああっ♡ やあ゛、きたっ♡♡ だんなしゃまのせーしっ♡♡ きもぢぃいい♡♡」


 熱い飛沫を注ぎ込まれて、ビクッビクッと両脚が跳ね上がる。

 僕のペニスはゆるく立ち上がったまま、トロトロと愛液を垂れ流すばかりで、雄としての機能は果たせそうになかった。


「はぁ……っ♡ ん……♡」

「メル……早く私の子を孕め」

「ン♡ んむ♡ んぅ……♡」


ちゅっちゅと口付けながら、優しく頭を撫でられる。労わるような仕草に、胸の奥がきゅうぅぅっと締め付けられた。


「旦那様……」

「どうした」

「僕も、旦那様との赤ちゃんがほしいです……」


 夫の逞しい身体にぎゅうとしがみつきながら、1日でも早く彼の妻としての勤めを果たしたいと強く願った。


 ***


 どうやら、僕の夫は不倫をしていないらしい。それどころか、十も年上の地味で冴えない僕にぞっこんで、毎晩足腰立たなくなるまで愛し合っているんだとか。

 ご近所の奥様方が噂していたことだけど、夫本人の口から聞いたというのだから真実なのだろう。


「メルさんってば、随分とお身体を酷使されていらっしゃるのねぇ」

「腰を悪くしていらっしゃるのは、てっきりお年のせいとばかり……」

「ちょっと、やめなさいよ!  下手なこと言ってレナード様のお耳に届いたらどうするの?」

「そうよ。ヴァンフィールド夫人なんて、レナード様直々に忠告されたそうよ」

「あらやだ、私ったら。ごめんなさいねメルさん、悪気はなかったのよ。だからどうか、ご主人には黙っていてくださいな」


 相変わらず言葉の端々に棘はあるものの、ご近所の奥様方の僕を見る目は、以前までとは百八十度変わった。

 "金に物を言わせて、若く見目麗しい貴公子に嫁いだ年増"。それが今や、"若く見目麗しい貴公子にベタ惚れされている魔性のオメガ"という扱いになっているのだ。

 一体全体、どうしてこんなことになってしまったのか。

 事の発端として思い浮かぶのは、夫の愛人と噂されていた妙齢の貴婦人が僕を訪ねてきたことだ。


「お会いできて光栄ですわ」


 光り輝くブロンドヘアに透き通る青い瞳。正に絵に描いたような完璧な美女を前に、僕はひたすらに恐縮するばかりだった。

 この方が夫の愛人だと言うのなら、納得こそすれ咎めることなどできようはずもない。

 肩身を狭くして縮こまる僕を見兼ねてか、謎の美女ことローズ様が麗しく微笑んだ。


「レナード様から、メル様は本当によく出来た妻だと伺っておりますのよ。レナード様ったら、それはもう嬉しそうにメル様のお話をなさって……私まで微笑ましくなってしまいましたわ」

「え、あ、その……」


 てっきり罵詈雑言を浴びせられるか、もしくは夫と別れてほしいと直談判されるかと思っていた。

 予想に反し好意的なローズ様の言葉に、僕はどう反応していいか分からずに狼狽える。


「あの……」

「はい」

「レナード様とは、その、どういったご関係なのでしょうか?」

「あら、私ったら。そのことについて、メル様にきちんとお詫びしなければと、こうして足を運んだのでしたわ」

「お詫び、ですか……?」

「ええ。実は私、レナード様に愛人のフリをしてほしいと頼まれておりましたの」


「へ……」


 予想外の告白に、頭の中が一瞬で真っ白になってしまった。


「申し訳ありません。メル様がどのようなお気持ちになられるか、考えの至らない行動でしたわ」

「あ、いえ……。その……」

「ですが、レナード様が心からメル様をお慕いしていらっしゃる、というのは紛れもない真実ですわ。ですから、どうかお慈悲のお心をいただきたいのです」

「あっ、僕は全然、怒っているとかではないんです。実際、僕と夫とではあまりにも不釣り合いですし……その、ローズ様のような方なら、夫もきっと幸せになれると思うので……」

「……メル様はお優し過ぎますわ」


 ローズ様が困ったように微笑む。


「レナード様が私に愛人のフリをしてほしいと仰ったのは、メル様に嫉妬してほしかったからなのです」

「し、嫉妬、ですか」

「ええ。レナード様はメル様にご執心でいらっしゃいますから、同じようにメル様からの愛情を感じたいという一心だったようですの」

「え、ええと……」


 つまり、僕からの愛情を疑った夫が、愛人を作ることで僕の本心を知ろうとした……ということだろうか? あの完璧で非の打ち所のない夫が? にわかには信じ難くて首を捻っていると、ローズ様がクスクスと笑みをこぼした。


「レナード様はメル様のことになると、年相応に恋心に翻弄される普通の青年になってしまわれるようですわ」


 あの冷静沈着で僕よりも余程思慮深い夫が、僕に嫉妬してほしくてわざわざ愛人を……?  ローズ様の口振りからして、それは事実なのだろう。

 思いもよらない真実に、なんだか夢を見ているようなふわふわと落ち着かない心地だった。


「私ったら、ついお喋りが過ぎてしまいましたわね」

「あ……いえ!  その、夫のことを知れて良かったです。ありがとうございます」

「いえ、そんな……。私が浅慮なばかりに、ご不快な思いをさせてしまって、本当に申し訳ありませんでしたわ」

「とんでもないです。どうかお気になさらないでください。それに、その……夫がそんな風に僕を想っていてくれただなんて、夢にも思わなかったので」


 もじもじと手遊びをしつつ口をつぐむと、ローズ様が慈愛に満ちた表情で微笑んだ。


「やはりメル様は素晴らしいお方ですわね。レナード様がメル様にゾッコンな理由がよく分かりましたわ」

「ぞ、ゾッコン、ですか」


 意外にも俗な言葉を使うところも含めて、お茶目でチャーミングな方だ。

 もし、ローズ様が恋敵だったなら、僕に勝ち目など一ミリもなかった。改めて、夫とローズ様が愛人関係になくて良かったと安堵した。



 ─ローズ様伝いに夫の真意を知ったのが数日前。それ以来、何かが吹っ切れたかのように、夫は僕に対して熱烈な愛情表現をするようになった。


「メル、今日も変わらずに愛らしいな。このぺちゃんこの鼻など、食べてやりたいくらいだ」

「ん……っ」


 言葉の通り、ぱくんと鼻を咥えられて、思わず開いた口にすかさずキスをされた。

 ちゅ、ちゅ、と啄むような口付けは次第に深さを増していって、あむあむと唇を食むように舌を這わされた。


「ふっ……ん、んぅ……っ」

「メル……」

「んむ、ン……ッ」


 逞しい腕に抱き込まれ、隙間なく体が密着する。

 夫の体温とフェロモンに全身が包まれるこの瞬間、僕はほんの少しだけ、重すぎる夫の愛に怯んでしまいそうになる。

 何もかもが不釣り合いなはずなのに、一体なぜ、夫はこんなにも僕を愛してくれるのか。


「メル……お前は一生、私のモノだ。決して、他の誰にも渡しはしない」


 くっきりと歯形の残る頸を甘噛みされながら、ゾクリと、快感とは別の何かが背筋を這った。


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