SamuKata
nyantaro4545
nyantaro4545

fanbox


書いて頂いたシリーズ「たくみんとはやにゃん」

こんにちは~。

えっと、今回は支援金と私の懐マネー(合計1万円)で小説を書いて頂きました。


今回書いて頂いた方は、切ない系小説が得意な方だそうで、私も今回、1万文字で依頼させて頂きました。


*ショタっ子大好きニャンタロー様*(¥10,000) | スキマ - イラスト依頼・キャラ販売ならSKIMA #SKIMA #コミッション https://skima.jp/item/detail?item_id=269470&sh=5gvyKZG


ミモザのプロフィール | スキマ - イラスト依頼・キャラ販売ならSKIMA #SKIMA #コミッション https://skima.jp/profile?id=249645&sh=CdUAhNF


切なくほろ苦いお話を是非とも読んで頂けると嬉しいです。

こうして書いて頂いたシリーズを続けて行きたいなと思っているので、支援者様が増えてくださると、依頼する文字数も増やすことができるので、余裕のあるとき、ニャンタローに唐揚げ君でも奢ってやるかくらいの軽い気持ちでご支援頂けると嬉しいです。

後日、このお話のエロ挿入絵は支援者様向けに書かせて頂きたいなと思っています。

この作者様は作品のイメージ曲を大事にされており、イメージ曲は「七つの魔剣が支配○る」のEDテーマでお願いしました。

https://youtu.be/uBjwSLKlyAg?feature=shared


////////////



「たくみーん!一緒に帰ろー!」


小学校からの幼馴染、隼人が、放課後の下駄箱で俺をそう呼んだ。


「その呼び方やめろって」


仏頂面でとっさに答えると、


「え、なんで?たくみんだって昔は──…」

「やめろ」


余計なことを言いだしそうになる隼人を睨みつけて、その先を止めた。 確かに昔は俺も、 隼人を〝はやにゃん〟なんて呼んでいた黒歴史な時代があったが、 もうやめた。

いつからだっけなあ。

そうだ確か、隼人と付き合ったときからだろうか──…。

俺と隼人は中学の頃から〝恋人〟という関係になった。


友達同士だったはずなのに、いつからか友達ではない感情が芽生えだして、 なんとなく隼人もそうなのかな、なんて思って告白したら案の定、答えはオーケー。


「俺もなんだ!」なんて、隼人は小さな子供がわくわくするみたいに答えてたけど、両想いだったのに俺はどこかモヤモヤしてしまっていた。


隼人が〝男〟だったから──…。

付き合っていることを気付かれちゃダメだ。そう思った。


「拓海、今日ヒマ?明日のテストやばそうだから教えて!」

「別にいいけど」

「よっしゃー!サンキュー!」


隼人は勉強ができないわけではないけど、ものすごくできるってわけでもなくて。

けど、意外と真面目ではあるから、テスト前はだいたい俺んちで一緒に勉強をしている。


「お邪魔しまーす。あれ、今日はおばさんいないの?」


戸建ての玄関に躊躇なく入って来てはそう聞く。

両親にも付き合っていることは話していないが、もう何度も家に来ているから、隼人はもはや家族みたいな扱いになっている。


「仕事。遅くなるって」

「そっかあ、残念。先週も仕事で会えなかったし……」

「あのなあ。がっかりした顔してんじゃねぇよ。俺がいんだろ」


とっさに出た言葉に、顔がぶわあっと熱くなった。

隼人は目を見開いて、驚きながら満面の笑みを浮かべている。


「……何、今の……!ねえ何!?キュンとした!もっかい言って!」


ゆさゆさと俺の肩を揺さぶってくる隼人。


「……早く勉強するぞ」

「お願いもっかいだけ!ね!?」

「あのなあ、ふざけるんだったら帰れ」


そう言うと、ごめん……と、隼人はすぐにしゅんとした顔をした。

本当、気持ちがすぐ顔にでる奴だ。

けど、隼人のそんな、表情がころころ変わるところが俺は好きだ。

純粋で、素直で──…。


「ばか、うそだよ」


ぽん、と隼人の頭を撫でると、途端に眩しい笑顔が俺の目に焼き付いた。

これほどまでに可愛い奴を、俺は未だかつて見たことがない。


「ここが分かんねんだよなー」

「ここは──…」


静かな部屋に、ノートの紙をめくる音と、シャープペンシルをはしらせる音が響く。

ときどき教え合っては、また無言でひたすらノートに書き続ける。


「……あ、そうだ」


突然、隼人が口を開いた。


「今日加藤にさ、お前ら付き合ってんの?って聞かれた」

「……は?」

「いつも一緒にいるとこ見るからって。仲良すぎんだろって」


気付かれてしまったか?と、動揺を隠せない。


「あ!安心して!そんなわけねーだろーってちゃんと言っといたから!」

「……そか」

「ついでに拓海が無類のギャル好きだってこともね!」

「どこ情報だよ」

「あはは!」


隼人はいつもこの調子だ。

いつも笑っていて、楽しそうで。

けど、俺は正直分からなくなるときがある。

隼人が本当は何を思っていて、どう感じているのか。

だって、 男同士ってことを抜きにして普通に考えれば、 自分の恋人が自分の存在を隠そうとしているなんて嫌だと感じないわけがない。

なんなら別れ話に発展するような問題にでもなる。

それなのに隼人は──…。

「なんか腹減ったー。食いもんある?」


……まったく気にしていない。


「……あー、なんかあったかな。ちょっと冷蔵庫見てくるわ」


立ち上がろうとしたとき、隼人に手首を掴まれ阻止された。


「拓海でもいいけど」

「は?」

「へへ、ちょっと休憩〜」


そう言うと隼人は抱きついてきて、その拍子で床の上に倒された。

俺を跨った状態の隼人と、目と目が合って、少し沈黙が流れる。


「……なあ、隼人」

「ん?」

「お前、なんでいつもそんな楽しそうなの?」

「え?」

「楽しそうで、 嬉しそうで──…。 恋人に自分の存在に隠されてんだぞ?そんなん嫌だろフツー」


嫌なら嫌って言ってほしい。

嫌って言われたら、 俺はどうしたらいいのか分からなくなるだろうけど……。

それでも隼人の本当の気持ちが知りたかった。

だから聞いた。

けど、隼人は表情を変えることなく、ただ静かに優しく笑った。


「だって、楽しいから。拓海といると、楽しくて、嬉しいから」

「……」

「それと、嫌じゃないよ?この関係を隠されてるの。むしろスリルがあって燃えるね!」


ふんっと鼻息を出して、ふざけたように言ったあと、

「それに──…」


真剣な目で、隼人が俺を見た。


「知ってるから。拓海が俺のこと、大好きだって」


その言葉に顔が熱くなるのを感じたと同時に、隼人の唇が俺の唇を塞いだ。


「んっ……」

「拓海ってさあ、顔すぐ赤くなるよね」

「……だまれ」

「あと、ここもね」


隼人のあたたかい吐息が、俺の左耳に近付いてくるのを感じた。


「やめっ……」


はふっと耳を噛まれ、 隼人の柔らかくてあたたかい舌が、 俺の耳の中でくちゅくちゅと音を立てて濡らす。


「あっ……んっ……」

「拓海、もう勃ってんの?」

「っるせ……」


膨らんだ俺のモノが、制服のズボンを押し上げている。

その上から隼人が、俺のモノを手で弄り始めた。


「あっ……やめっ……あっ……」

「はあ、はあ……可愛い、拓海……」


息を荒くしながら、もがく俺の目をじっと見つめ続ける隼人。

恥ずかしくて顔を逸らそうとするも、隼人がそれを許さない。


「だめ。ちゃんと俺の目を見て?」


そう言いながらカチャカチャとズボンのベルトを外して、 チャックを下ろし、 隼人にズボンを脱がされた。

もうパンパンに膨れ上がった俺のモノが、ぶるんと激しくあらわになる。


「すげえ……キスと耳だけでもうこんなんになってんの……?」


心なしか、隼人の頬も赤くなってきている。


「見ん……なっ……」

「やだ、見る」


その瞬間、隼人が俺のモノを咥えた。


「ああっ……!」


気持ちよさのあまり、 腰が動く。 隼人はそれを抑えながら、 貪るように俺のモノを吸ったり舐めたりしながら、 顔を上下に動かしている。

そんな隼人を見ては、 少し恥ずかしくありながらも、 嬉しい気持ちにもなった。

隼人がこんなにも、 俺を気持ちよくさせようとしてくれている。

求めてくれている──…。


「ああっ……んっ……」

「はあ、はあ、たくみ、きもち?」

「あっあっ……きもち……きもちいっ……」


隼人の動きが速くなる。

それと一緒に俺の快感も最高潮に達してきて──…。


「はあ……だっ……イく……イぃっ……!!」


激しく体を震わせた。


俺のモノから出た精液を、隼人がごくりと飲む。


「そんな汚ねぇもん、飲んでんじゃねぇよ」

「拓海のだから汚くないよ?まあ、ちょっとまずいけど?」


いたずらげに笑う隼人に「ばか」とつぶやく。隼人が今度は自分のズボンを下ろした。

そのとき初めて、隼人のモノも、血管が浮き出るぐらい膨らんでいることに気が付いた。


「お前も、触ってすらいないのにすげえことになってんじゃん」

「当たり前だろ。俺は拓海を見るだけでこうなんの」


そう言って、俺の尻穴に隼人が自分のモノを挿入してきた。


「んんっ……!」

「ぐっ……」


イったばかりだというのに、またすぐに快感が俺を襲った。


「たくみっ……たくみっ……!」


隼人が体を上下させるたびに出す吐息、声、表情。

全てが俺を、快感の海に溺れさせる。


「はやと……はやと……」

「あっ……んあっ……イくっ……!」

ぐっと押し込まれた、 隼人のモノから出たあたたかいものが、 俺の中に流れ込んでいくのが分かった。

はあ、はあと息を切らしながら、まだ挿入したまま隼人が俺を抱きしめた。

どくどくと聞こえる心音──…。

幸せって、こういうことを言うんだって、分かった。




***


「たくみんおはよー!」

「その呼び方やめろって」

「あ!ごめんごめん!」


学校では相変わらずだ。

周りのクラスメイトたちは、俺たちがどういう関係かなんて気付いていない。

そんなある日の休み時間、他のクラスメイトたちを交えて話をしているときだった。 途端に恋愛の話になり出して、俺は動揺をしている自分に気が付いた。

けど、ポーカーフェイスはうまいほうだと思うから、みんなは気付いていないだろう。隼人も多分──…。


「え、どーゆー人がタイプ!?巨乳!?」


気付いていない。


「やっぱおっとりして優しい子が一番だよなー」

「癒し系ね!分かるわー。拓海は?」


話を振られて、心臓が強く動いた。


「……好きな、タイプ……?」

「おう!何?」

「あーえっと、そうだなあ……」


目が泳ぐ。ふいに目が合った隼人は、にやにやと意地悪そうな笑顔で笑っている。

チクショー……。

好きなタイプ、 好きなタイプ──…。

頭の中には隼人の顔しか思い浮かんでこない。


「あ、そういえば俺、隼人から聞いたわ!」

「へ!?き、聞いたって何を……!?」

「拓海が無類のギャル好きだって!」

「……」


心臓の動きが、落ち着いた。

そういやそんなこと言ってたっけ、 隼人。

また隼人を見ると、 相変わらず意地悪そうな笑顔を浮かべながら、 俺に向かってウインクをしてきた。

……チクショー。 ギャルになんかまったく興味はないが、今回は助けられた。


「ま、まあ、うん」

「なるほどね!そんな感じするわ!」


そんな感じしてんのか?俺。


「まーなんだかんだ、顔が可愛い子か一番だよなー!」


げらげらとクラスメイト達が笑い合うなか、俺はほっとひと息をついた。

笑い声が落ち着くと、誰かが改まったように口を開いた。


「話変わるけど、男同士はさすがにきついよな」


頭の中が真っ白になるような感覚に陥った。


「あー最近多いよな、そういうの」

「俺も無理だわー。男同士はきついかなー」


とっさに口が開く。


「だよな。きついよな」


言って、ハッとした。

俺、何言ってんだ。しかも、隼人の前で──…。

そのあと、また別の話が繰り広げられた。

隼人を見ると、 何も気にしていない様子でクラスメイトたちと話をしている。

馬鹿か、俺は。

気にしないわけがない。

隼人は気にしていないフリをしているだけなんだ。


「隼人……!」


廊下を歩く隼人を呼び止めた。


「どうしたの?拓海。すごい顔してるけど……」

「さっきは悪かった……!」

「?え、なんのこと?」

「男同士が、どうのこうのって……」


そう言うと、隼人は少し考えて、思い出したように「あ〜!」とうなずいた。


「男同士が付き合うのはきついーってやつね!あはは、別に気にしてないよ?」

「んなわけねぇだろ……」

「気にしてないって!あの場の流れに合わせただけでしょ?分ぁかってるってえ!わざわざ謝ってくるなんて、律儀だなぁ、たくみんは!」


明るく振る舞ってくれるけど、俺は自分の言った言葉の罪悪感から逃れられず、何も言えない。

そんな俺の肩を、隼人がぽんと叩いた。


「もぉ〜何!?やめてよ!たくみんって呼ぶなって言ってよ!そういう流れじゃん!?」

「……ほんと、悪かった」

「もういいって〜。 俺そういうの気にしないタイプなんだって!だって、 拓海のあーんな姿もこーんな姿も知ってるしぃ?」

「ばかお前っ……」

「あはは!戻った戻った!いつもの拓海!」


隼人の明るい声と笑顔に、俺はほっと胸を撫で下ろした。

それからも俺と隼人の関係は順調だった。

みんなに言えない関係ではあるけど、 仲良く過ごしていたし、このまま順調にいく。

隼人の側にずっといれる。そう思っていた──…。


──…キーンコーンカーンコーン。


放課後のチャイムが鳴った。

帰り支度をする前にお手洗いに行こうとしたとき、


「天童くん!」


誰かに呼び止められた。

振り向くと、 見覚えのある女子が立っている。 隣のクラスの真鍋だ。

学年一の美女と言われていて、いわば〝マドンナ的存在〟の女子。

けど、 話したことなんてまったくないし、なぜ呼ばれたのか分からない。


「何?」

「話があるんだけど、あとで校舎裏に来てくれない?」

「へ?今じゃだめなの?」

「だめなの」

「……」


めんどくせぇなぁなんて思いながら頭をかいていると、 「待ってるから」と真鍋が走り去っていって、 断ることもできなくなった。

ばっくれるのも気分的に嫌だし──…。

しぶしぶ校舎裏に行くことにした。

校舎裏に行くと、真鍋が先に来ていて、一人で俺を待っていた。

この雰囲気って、もしかして──…。

ふいにそう思った瞬間、真鍋が俺に気付いた。


「天童くん!」

「……おう。で、何?話って」


恐る恐る聞くと、真鍋が恥ずかしそうに俯きながら言った。


「……まぁ、単刀直入に言うと、好き」

「……へ?」

「天童くんのことが好き。……ずっと、好きだったの。……今も」


やっぱり──…。


「え、なんで?俺らそんな話したことないじゃん」

「うん。でも、好きになっちゃったの。一目惚れってやつ」

「……」


答えはもう出ていた。

もちろん、ノー。

俺が好きなのは隼人だけだ。

だけど、どうやって断ったらいいのか分からなくて、黙り込んだ。

出来るだけ傷付けない答えを出してあげたい。

友達から始めよう、とか?いや、友達になるつもりはそもそもない。

ここははっきり興味がないと答えるべきか……?

考えこんでいると、 目の前に隼人の姿がうつった。

偶然、通りがかったのだろう。

俺を見るやいなや、驚いたような表情を浮かべ、逃げるように走っていっ

た。


「はっ……」

「……え?〝は〟……?」

「ごめん、ちょっと」


真鍋の横を走って、俺は隼人を追いかけた。


「隼人……!」

「拓海……もお〜何してんだよ〜」


俺を見るなり隼人ががっかりしたように言う。


「告白されてたのになんで俺を追いかけんだよ〜」

「なんでって……そんなの決まってんだろ」

「相手は学年のマドンナだぞ?マドンナから告られるなんて、やっぱすげえな拓海は」


少しムッとした。

俺がそのマドンナとやらに告白されてんのに、なんでむかつかないんだよコイツは。

なんで嫌がらねんだよ、コイツは。


「拓海?」

「……あー腹立つ」

「え?」

「俺が好きなのはお前!お前なの!俺が好きなのは!」


思わず大きな声が出た。

告白されて平然としていることにむかついたんだ。

そっちと付き合ってもいいよって、言われてるみたいで。


「お前はどうなんだよ。 真鍋に告白されて、もし俺がオッケーしてたら、お前は気になんねぇのかよ!嫌じゃねぇのかよ……!」


隼人は驚いた表情をしたあと、俺を抱きしめてきた。


「……な、なんだよ」

「いや、嬉しくて」

「え?」

「だって、 付き合ってから拓海、 そんなふうに俺のこと好きなんて言ったことなかったからさ」


言われてみれば、そうだったかもしれない。

付き合っていることを隠すのに必死で、好きという気持ちを隼人に伝えてこなかった。


「拓海、俺のこと大好きじゃん」


にかっと笑う隼人。


「当たり前だろ」


そう答えると、 隼人は少し照れくさそうに、だけど嬉しそうに笑って、 俺たちはそのまま口付けを交わした。俺は、隼人のことが好きだ──…。

改めてそう感じた。


「それじゃあ拓海、また明日な」

「おう、また明日」


隼人を家まで送り、手を振って別れた。

いつもと同じなのに、なぜだろう。どこか違和感がある。

なんていうか、寂しいような、切ないような──…。


「……気のせい、だよな」


一人でつぶやいて、帰り道を歩いた。




***


「それじゃあ拓海、また明日な」

「おう、また明日」


拓海と別れて、俺はソファにどさっと座った。

「でも、好きになっちゃったの。一目惚れってやつ」

今日、 たまたま通りがかった校舎裏で、 拓海が告白されているのを見た。その光景がずっと、頭から離れない。

告白されていたのを見て嫌じゃないのかと、 拓海は聞いてきた。けど俺は、嫌だとかそんなことを感じなかった。

拓海のことは大好きだし、 俺だけを見ていてほしいとも思ってる。けど──…。

女子と付き合ったほうが、拓海は幸せなのかもしれない。

そう思ってしまったんだ。

俺は拓海と付き合えたとき、 嬉しかった。

ずっと好きだったから。

男同士とか、そんなことあんま深く考えてなかったんだ。

けど、拓海はずっと隠したがってた。

それを見て、ああ、俺たちの関係って隠さなくちゃいけない関係なんだって、少し寂しくなったんだ。

それでも構わなかった。

拓海が俺のこと、ちゃんと好きなのは分かってるし、

俺しか知らない拓海の姿もたくさん知ってるから。

でも、真鍋さんと並んでる拓海を見て、思ったんだ。


「……お似合いだったなあ。美男美女って感じ」

「ちょっと何?ひとりごと?」


母さんに声をかけられ、思わずびくっとなった。


「え、いや、なんでもない。……ねえ、母さんはどうして父さんと結婚したの?」

「何よいきなり。でも、そうねえ……。普通だったから?」

「普通……?」

「そう、 普通。 若いときは叶わない恋に燃えたりもしたけど、やっぱり普通が一番魅力的で幸せなことだって気付いたのよ」


普通──…。

側から見たら、 俺と拓海の関係は普通なんだろうか?

俺と拓海が並んで手を繋いでいる光景と、 真鍋さんと手を繋いでいる光景とでは、どちらが普通で、 幸せに見えるのだろう?


高校生活も、あと少しで終わりを告げようとしていた。


「大学は別になるけど会いに行ける距離だし、毎日でも大学まで会いに行ってやるよ」


冗談っぽく言う拓海。


「……うん」

「なんだよ、元気ねぇな?」

「全然、普通だよ」

「普通じゃねぇだろ」

「普通だって。……ごめん、先帰る」


拓海にどう接していいのか、 分からない。

今までみたいに、 拓海の顔を見ることができない。

気付いたら俺は、 拓海のことを避けてしまっていた。

声をかけられても必要最低限の返事しかしないし、いつも一緒に歩く帰り道も、 一人で帰るようになった。 そんなある日の帰り道、後ろから走ってやってきた拓海に呼び止められた。


「隼人──…!」


急いできたのか、息を切らしている。


「はあ、はあ……お前なんか、俺のこと避けてない?」

「……別に避けてないけど」

「避けてるって」

「避けてない」

「避けてんだろ」

「……もう無理なんだよ……!!」


初めて拓海の前で叫んだ。

どうしてか分からないけど、何かが爆発したような気がした。

驚いてきょとんとしている拓海に、無性に腹が立った。


「拓海は勝手だよ。好きだって言ってきたくせに、俺と付き合ってること隠したがって」

「……なんだよそれ。気にしないタイプって言ってたじゃねぇかよ」

「そりゃあ、そう言うしかないじゃん……。だって、隠したくないって言ったら、拓海はそうしてくれたの?」

「……」

どうして黙るんだよ、拓海──…。

そう言いたかったけど、もう言わないことにした。

きっと何を言い合っても、俺たちの問題が解決することはない。


「真鍋の告白は断った」

「……」

「俺が好きなのはお前だけだ」

「……違う、違うんだよ、拓海」


そういうことじゃないんだ。

気付いたらぽろぽろと涙が溢れた。

お互い好きって気持ちだけじゃ、だめなんだよ俺たちは。

普通の恋じゃないから──…。


「──…別れよう」


絶対に口にしたくなかった言葉。

全てを振り絞って、出した。


「……」


拓海はまた黙った。


どこか冷静で、まるでこうなることを予想していたみたいだ。


「なあ、久しぶりに二人でどっかでかけようか」

「……え?」

「行こうぜ、明日。学校サボってさ」


いつもとは違う、拓海の優しい笑顔。

別れを決心したような力強さがあった。


「……うん、行こう」


きっと、これが最後なんだと思った。

次の日、学校を休んで拓海と駅前で待ち合わせをした。

制服ではない私服姿の拓海を見るのは久しぶりで、なんだか新鮮だ。


「隼人、どこ行きたい?」

「そうだなあ……あ、映画!」

「映画?」

「うん!見たいやつがあるんだ!」


そう言って電車に乗り、映画館へと向かう。


「なんかデートみたいだね」と言うと、 拓海がそうだなと答えた。 思えばデートなんかしたことないし、もう別れるっていうのに初デートするのもおかしな話だ。

けど、それはそれで面白いのかもしれない。


「これこれ!これが見たかったの!」


俺が指差したホラー映画のポスターに、拓海は顔をひくつかせながら分かったとうなずいた。


映画を見ながら、隣で拓海は「「ヒィッ」と何回も驚いていた。驚いて、俺の腕を掴んだりもしてきた。


「拓海が怖がりだったなんて知らなかったなー」


ランチにパスタを食べながら、拓海をからかってみた。


「うるせえ!別に怖くなかったし!」

「そお?俺の腕めっちゃ掴んできたけど」

「あれはー……その、あれだ。……ぜんっぜん怖くなかったからな……!」


まるで小さな子供みたいな拓海を、可愛いなぁなんて思いながら見つめた。

拓海の新たな一面が見れて嬉しいな──…。

きっとまだまだ知らないことがたくさんあって、 拓海もきっと、 同じで。

けど、もう分かり合えることはなくて。

だからこそ、 俺は今日、拓海との時間を精一杯楽しみたい。

最初で最後の、このデートを──…,

ランチが終わったあと、次は拓海の提案で水族館に行くことにした。


「水族館なんていつぶりだろー!」


わくわくして、 イルカショーやらペンギンやら見に行きたいとはしゃぐ俺に、 拓海は苦笑いしながらも全部付き合ってくれた。


「ったく、子供みたいだな」

「それにしても拓海が水族館チョイスするなんて、なんか意外だな。どうして水族館?」


そう聞くと、拓海は少し照れくさそうに答えた。


「……デートって感じだろ?俺ら、 何気に初デートだし、それっぽいことしたいなーと思ってさ。……って、デートってのも変か」


数千匹もの魚が泳ぐ幻想的な青い空間のなか、沈黙が流れた。


「……変じゃないよ。俺も同じこと思ってた。初デートだなって」

「……そっか」


俺たち二人は、周りにどううつって見えているのだろう?

友達?学生?それとも──…。


「綺麗だなあ」

「……うん。綺麗だね」


この綺麗な景色を見ながら、なんにも考えず手をつなぐことができたら。

肩を抱き寄せながら微笑み合えたら、どれだけ幸せなんだろう。

俺たちがそうできる世界線は、なかったのかな?

今すぐにでも手を握れる距離に拓海はいるのに、なぜだろう。

すごく近くて、すごく遠い。

ゆらゆらと自由に泳ぐ魚たちが、少し羨ましくなった。

俺と拓海が魚だったら、何も気にせず恋をすることができたのかな?


「俺、生まれ変わったら魚になりたいな」

「あはは、なんだよいきなり」

「なんとなく。そう思ってさ」

「ふうん。……じゃあ俺も、生まれ変わったら魚になるよ」


そしたらここで待ち合わせな、と言う拓海に、俺はふっと笑った。


「そろそろ帰るか」

「……うん」


水族館を出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。


「もうこんな時間になるんだ。全然分からなかった……」

「だな。あっというまに時間が過ぎたわ。あっち、少し座るか」


そう言って拓海が指したのは、海が見える公園。

その手前にあるベンチに、二人で腰かけた。


「今日はありがとうな、付き合ってくれて」

「ううん、こちらこそ。すごく楽しかった」


海の水面にうつる夜景がゆらゆらと揺れている。

拓海は何も言わず、ただ静かに水面を見つめている。

だから俺も、同じように水面を見つめた。

会話はない。ただ静かに時間が流れているだけだ。

けど、ものすごく心地がいいのはきっと、隣に拓海がいるから──…。


友達のままだったら。

好きっていう気持ちを隠して友達のままでいたら、別れが来ることもなかったのだろうか。


そんなことを思ったりもした。けど──…。

「好きになってよかった」


拓海が言った。


「俺、隼人を好きになってよかった。好きって伝えてよかった」

「拓海……」

「お前と全部の感情を感じることができた。 友情も恋も。 楽しいとか嬉しいとか、 苦しさとか切なさとか、そういう感情?お前と一緒に感じることができて、俺は幸せだった」


ふいに拓海を見る。

拓海の目からは涙が溢れていた。

別れがもうすぐそこまで来ているのだと感じた。


「拓海が泣くの、初めて見た」

「こう見えて意外と涙もろいんだよ」

「えー?そうなのー?」

「なんだよ悪いかよ」

「うん、悪い」

「んだよそれ」

久しぶりに二人で笑い合った。

それから色々な話をした。

初めて出会った小学生のときの話──…。

お互い、いつから好きになったかとか。

そしたら偶然にも同じ時期で好きになっていたことを知って、運命みたいだね、なんて笑い合った。

大学で何をしたいかとか、大学を卒業して何になりたいかとか、色々な話をした。

何か大きな夢があるわけではないけれど、笑顔で過ごしていけたらいいね、なんて。


「こんなに話したの、初めてだね」


俺が言うと、拓海は「そうだな」と笑った。


「俺たちいつも一緒にいたのに、今日、初めてなことばっかだったな」

「あはは、たしかに。変だね。もう、最後なのに」

「……だな」


沈黙をかき消すように、海風がさあっと吹く。


「……幸せだったよ。俺も」

「……そか。よかった。じゃあ俺たち、幸せだったんだな」

「うん。俺たち、幸せだったね」


あまりにも難しい恋だった。

叶わない恋だったけど、これはきっと、運命の恋だったんだと思う。

駅での別れ際、拓海は笑顔で俺に手を振った。


「また明日、学校で」


俺も同じように手を振った。


「うん。明日、学校で」


それぞれの道を、歩いていこう

書いて頂いたシリーズ「たくみんとはやにゃん」 書いて頂いたシリーズ「たくみんとはやにゃん」

More Creators