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第1章 第七話

『それでも世界は回っている -OZ-』第1章「目覚めの草原」 第七話 ⸻ 第七話「忘れる前に、君の肌を覚えたい」 ⸻ 火はすっかり弱くなっていた。 外は静かで、風の音もやわらかい。 小さな石の家の中、トカゲ獣人の彼と、ぼくは隣り合って横になっていた。 最初は少し離れていたはずなのに── 気づいたら、彼の腕がぼくの背中にまわっていた。 「ごめん。寒くない?」 彼の声は低くて静かだった。 体温は人間より少し低いけど、肌は乾いていてしっとりしている。 「……ううん、大丈夫」 ぼくは小さくこたえた。 その瞬間、彼の手がぼくの腰にそっと触れた。 毛並みをなぞるように、やさしく、ゆっくりと。 「君の毛、本当にやわらかいんだね。さっきからずっと触ってたいくらい」 「……そんなこと言われるの、初めて」 「ふふ……そう?」 指が、背中を伝って、肩まで登ってくる。 ちょっとくすぐったくて、でも、気持ちいい。 「……変なとこ、触らないでよ?」 「触ってないよ。触りたいけど……今のうちに覚えておかないと、明日には忘れちゃうから」 耳元でささやかれて、びくっとした。 言葉の端が震えてる。 ──ほんとは、忘れたくなんかないんだ。 「……じゃあさ」 ぼくは、うつ伏せのまま振り返らずに言った。 「今だけ……ちゃんと、ぼくを感じて」 手が止まる。 沈黙。 でも、そのあとそっと、彼の体温が背中にぴたりと重なった。 軽く抱きすくめられる。 体がぴくりと反応する。 何かが始まるような、でも始まりきらないような── それでも、肌が触れて、鼓動が重なる。 「ドロシー……ありがとう」 「ん……」 耳を噛まれたわけでも、キスされたわけでもない。 でも、温かくて、恥ずかしくて、どこか嬉しくて。 「……もう少しだけ、このままでいさせて」 ぼくは返事をせずに、彼の胸にしっぽをからめた。 朝が来ることが、少しだけ怖かった。


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