「ちょ…あの‼︎ は……早く戻らなくていいんですか…。」
自分の声が思ったより大きく響いて、太陽はびっくりした。
彼女は太陽に体を寄せて少し笑った。
「平気だって。パパッと済ませてあげるから。」
軽い口調。でも、冗談にしては目が真っすぐすぎた。
――太陽の撮影は、年上の女性モデルとの二人きりの水着カットだった。
休憩中にトイレに行こうとスタジオを出ると、後ろから追いかけてきた彼女に廊下で声をかけられた。
「こっちに来て。」なんて言われて、手を握られて。
引かれるままについていった先が、女性用トイレだった。
(え、うそでしょ…?)
太陽は一瞬足を止めかけたけれど――握られた手の力はほんの少し強くて、抵抗する間もなく、気づけば手洗い場の縁に座らされていた。
反対側にある手洗い場の鏡に映る自分は、撮影衣装のボックス型のスクール水着一枚のみ。廊下で脱げたサンダルは、入り口のそばに転がったままだ。
(なにこれ、どういう状況…?)
心臓がドクン、と音を立てる。
顔は胸の中に固定され、動かせるのは両目だけ。しかし、どこに目線を向ければいいのか分からない。
彼女の顔も身体も、全部が変にまぶしかった。
「…腹筋すごい。自分で筋トレしてるの?」
「い、いや…サッカーしてるから、あとダンスとか…それで勝手に付いたっていうか…。」
「太陽くんって、意外とかわいいよね。」
「へ…?」
「前まではやんちゃで生意気で、年相応なお子ちゃまって感じだったけど…最近は少し大人しくなったっていうか、礼儀正しくなった気がする。」
「もがッ…」
胸にホールドされながら、片方の手のひらがそっと太陽の膝に触れる。
ビクッと力が入った。けれど、払いのける勇気は出てこなかった。
「じ……冗談だ…ですよね?」
無理やり口を胸から離し、乾いた声が喉の奥からこぼれた。
「慣れない敬語もかわいいね。私、ずっとファンだったんだ。一緒にお仕事できないかな〜って、ずっと気になっててさ…。」
軽く笑いながら彼女は言った。
太陽はうまく反応できないまま、ただ目を見開いた。
「それで、初めて会ったらお互い水着姿なんだもん。」
彼女は少し肩をすくめて笑う。その表情には、ほんのりとした照れと、どこか冗談とも本気ともつかない雰囲気が混じっていた。
(な、なに言ってるんだこの人?)
太陽は黙ったまま視線をそらした。
言葉の意味は分かった。でも、それをどう受け止めたらいいのか、太陽には分からなかった。
彼女が有名な女優だということは、前から知っていた。
兄の照幸が持っていた週刊誌によく載っていて…というより、今まさに照幸が推しまくっている女優だった。
太陽自身は正直そこまで興味はなかったが、こんなふうに至近距離で向き合うとなると、話は別だ。
太陽の中で、理性とは別の何かが静かに騒ぎ出していた。
頭の中はぐるぐるして、返事が出てこない。なのに、鼓動だけがやたらと早くなる。
年上の女性とこれほどまでに体を密着させるなんて経験は、太陽にとって生まれて初めてのことだった。
「あ…ありがと、ございます…?」
かろうじて口を動かした自分の声は、情けないほどか弱かった。
「ねえ、状況理解してなさ過ぎじゃない?」
「は?」
「エッチなことしたくないの?」
「え……っち……って………え?」
その瞬間、彼女の唇が太陽に触れた。
声を上げようと開いた口に、ゆっくりと舌先が入り込む。
「!」
驚いて声が出そうになったが口を塞がれて、かすれた音が喉の奥で途切れた。
それと同時に、頭の中であの出来事がフラッシュバックする。
兄の友人の拓海に無理やり体を触られ、見せてはいけない部分をおもむろに広げられ、挙げ句の果てには挿入までされた、あの夕方のたまらなく恥ずかしい出来事。
「んっ……………。」
甘く、そして深く飲み込まれるような感触。
言葉の代わりに吐息が絡み合い、互いの熱が胸の奥まで流れ込んでくる。
彼女の舌が誘うように触れてきて、太陽は逃げ場を失い、思わずその動きに応じてしまった。
戸惑いながらも、口内の触れ合いに少しずつ慣れていくと、不思議と心地よさが芽生えていく。
舌が絡むたび、下腹の奥でじわりと熱が広がり、全身がその熱に包まれていくようだった。
「んんっ……っ、はあ!」
思わず声を漏らし、太陽は慌てて唇を離した。視線を落とすと、彼女が水着を片手で脱がそうとしていた。
「良かった。なんだか鈍いから、興味ないのかもって思ってた。」
「ちょ、そこは……。」
「ここ硬くなってるよ?小さくてかわいい。(笑)」
熱を帯びて硬く反り立ったそれは一瞬水着に引っ掛かり、ぷるんと勢いよく飛び出た。
「あ、あ‼︎ちょっと…‼︎やばいって‼︎」
「連れてきた時から膨らんでたよ?本当はドキドキしてたんでしょ。」
「え⁉︎」
「そういう雰囲気だって分かってたんじゃないの?とぼけたフリして興奮してたんだ?」
「…!」
心臓の音が大きく高鳴り、彼女にも聞こえてしまいそうな気がした。
手洗い場の縁に座ったままの太陽と向かい合い、彼女はそっとしゃがみ込む。
その手が太陽の下半身に触れ、指先でゆっくりとなぞっていく。その仕草に自然と視線を引き寄せられてしまい、胸元のふくらみが目に入る——だけど、これ以上見てしまったらいけないような気がして、太陽は慌てて目を逸らした。
「ここ、自分で触ったことある?●年生ならもうやり方覚えてるのかな。」
…ある。夢精もしたし、充宏に相談もしたし、なんなら兄ちゃんの友達に見られながら出した。
問いかけられた太陽は様々な恥ずかしい出来事を思い出し、頭の中でぐるぐると思考した。
彼女は硬くなった太陽のソレを舌先で撫でるように、先の部分からゆっくり舐め始めた。
「あ………。」
くすぐったいような、気持ちいいような初めて味わう感覚に、心も体も追いつけないまま震えていた。
「あぁ、あっ…。」
ビクンと跳ねる脈動は何度も繰り返され、抑えきれないそれが、彼女の唇にも伝わっているのがはっきりと分かった。
カリ裏をなぞられ、亀頭を唇で吸い上げられる。太陽は抗うこともできず、ただただ彼女の動きを薄目で見つめることしかできなかった。
小ぶりなあそこは彼女の口内にすっぽりと収まり、ねっとりとした唾液をまとった舌がその表面をためらいもなくゆっくりと這い、こみ上げる快感に思わず呼吸が浅くなる。
2〜3分経つと、トイレ全体に唾液と透明な汁のいやらしい水音が響き始めた。
「あ、あのっ。」
「………。」
「………でっ…出そう、なんですけど…。」
太陽は小さく訴えるようにつぶやいたが、彼女は応じることなく、動きを一切止めなかった。
手洗い場の縁に座ったまま、腰をずらしてなんとか距離を取ろうとした。けれど、彼女の根元を支える手も、うつむいた頭も微動だにしない。ただ、舌先を巧みに這わせながら、わずかに唇を歪めて笑みを浮かべ、太陽の目をまっすぐ見つめ返していた。
「はっ離せってば。オイっ。出る。出るって。」
いつの間にか、充宏に教え込まれていた丁寧な口調もすっかり抜け落ち、太陽は彼女を引き離そうと必死になっていた。
けれどその懇願もむなしく、次の瞬間、水道の蛇口のように、抑えきれなかった精液が勢いよく噴き上がった。
「っ………!ああっ。」
(びゅ! びゅるるっ ぴゅっ!)
「わっ…。」
なんとか口から離すことはできたが、噴き出した精液は彼女の胸元と、顔にまで跳ね飛んだ。
「っ…ご、ごめん。」
震える声で謝る太陽に、彼女は悪びれた様子もなく、口元をぬぐいながら笑った。
「あはは、沢山出たね。 気持ちよかった…?」
恥ずかしさが一気に押し寄せ、太陽の顔は火がついたように赤く染まった。
ふと視線を落とすと、脱ぎ捨てられた水着が床に落ちているのが目に入った。
その瞬間、自分がずっと裸だったことにようやく気づき、全身が固まる。
見られていた。ずっと。いろんな角度で、こんな近くで。
視線を少し戻すと、さっきまで脈打っていたあそこはゆっくりと硬さを失い始めていた。彼女の舌が這っていたせいか、根元までぬめるように艶を帯びていて、その光景に太陽は思わず顔を背けたくなった。
「水着、早く拭かなきゃ。スタジオに戻ったら怪しまれちゃう。」
彼女は水着に飛んだ精液を指で拭い、そのまま舌先でそっと舐め取った。
自分の出したものを何のためらいもなく口にする彼女の仕草に、太陽の胸は一瞬だけドキッと跳ねた。
けれどその直後、彼女の一言で仕事中だったことを思い出し、さっきまでの熱がまるで嘘のように引いていった。
「も、戻らないと……あ、でも……その、拭かなきゃ……。」
視線のやり場に困ったまま、太陽は手洗い場にかけていた腰をゆっくり起こそうとした。
そのとき。
「な、何してるの……太陽。」
トイレの入り口から、優心と充宏がそろって顔をのぞかせていた。
どちらも撮影を終え、すでに私服に着替えている。
その姿が目に入ったあとに見下ろした自分の裸体は、あまりにも場違いで――
まるで自分だけが、ずっと異質な空気の中に取り残されていたことを突きつけられるようだった。
太陽はその場で動けなくなり、全身から一気に血の気が引いていくのを感じた。
二人は困惑と戸惑い、そして察してしまったような気まずさをそのまま顔に浮かべていた。
太陽は咄嗟にあそこを両手で覆い隠し、再び顔を真っ赤にして必死に叫ぶ。
「や、ちげーから‼︎ なんか、この人が無理やり……っ! 俺、別に、そんな気じゃなくて!」
立ち上がった太陽は床に落ちていた水着を慌てて拾い上げ、背を向けたまま乱暴に足を通した。
「お、お邪魔しました〜…。」
その隙に、先ほどまであれほど余裕のあった彼女は顔を伏せたまま、そそくさと足早にトイレを出ていった。
「あっ、おい、待っ──」
思わず呼び止めた太陽だったが、水着に片足しか通せておらず、振り向いた拍子にバランスを崩す。
次の瞬間──「どてんっ」と鈍い音を立て、尻餅をついた。
痛みとどうしようもない恥ずかしさが一気に押し寄せ、太陽はその場に座り込んだまま固まってしまった。
気まずい沈黙がじわじわと空気を満たしていく。
優心と充宏は何か言おうと口を開きかけては視線を交わし、結局そのまま言葉を飲み込んだ。
目を逸らしたまま立ち尽くす二人の気配が、痛いほど太陽の肌に刺さった。
Charlie
2025-10-16 17:05:02 +0000 UTC