とにかくついてない女の子のお話
Added 2024-07-06 08:32:40 +0000 UTC運が悪い。そういう時は誰しもあるが、その度合いは様々だ。 一度や二度悪いことがあっただけでもそれは運が悪いと言えるし、そういう時というのは立て続けに悪いことが起こるものである。 下り坂で一度転んでしまえば、そのまま転がり落ちていくように。 その人の望まぬ方向に嚙み合ってしまう運命の歯車。 これはそんな不幸の星に魅入られた一人の少女の話である。 ___________________ 7:00 「んん……おふぁよーお母さん……あれ?お母さん?」 都市部からは大きく離れた村落で暮らす、数少ない若者。 生徒数わずか10人足らずという極限の学校に通う少女は、いつものように家族とあいさつを交わして学校に行こうとしていた。 だがそのあいさつを交わす相手が、いつもならいるはずの食卓にいない。どこに行ったのか探すついで、トイレに行こうとするが…… とんてんかん!とんてんかん! 「…………何やってんの、お母さん……」 『ああ美海!ちょっと聞いてよもー……トイレの戸、前から建付け悪かったでしょ?それが今朝完全にイっちゃったみたいでねえ』 「ええ……だからDIYでセルフリフォームなんかしないで業者に頼んだらって言ったじゃん……」 『まあ大丈夫よきっと!お母さん動画でDIYの極意を勉強したから!』 これはだめだ、とあきれ返る少女、美海。 行き当たりばったり過ぎる母に一言言ってやりたい気持ちはあるが、今はそれよりも…… 「てか、私トイレ行きたいんだけど……」 『ごめん、無理!』 「だよねー……」 昨晩から溜まったそれは、我慢できないほどではないが存在感を強めていた。 修理は無理としても、さっさと戸だけ外してほしい。と心の中では思うものの、DIY素人の母にそんな催促なんてしたら何が起こるかわからない。 力づくで扉を引っぺがし、今後しばらく扉なしのトイレになるなんてことも…… (学校まで我慢するしかないかぁ……) 『ごはんとお弁当は置いてあるから、学校で行ってきて!』 仕方なく、美海は一人で朝食を摂って学校へと向かう。 俗に限界集落と呼ばれるこの村で、美海は生まれた時からずっと暮らしていた。 祖母の代から代々家を引き継ぎ、騙し騙し暮らしてはいるがやはりボロ屋はボロ屋。随所にガタが来ているのは隠しようもなく、これまで幾度かご近所の知り合いに頼んで応急修理をしてもらっていた。 しかし昨今、高齢化に伴ってご近所の知り合いもどんどんと数を減らしていて、応急修理をしてくれていた元親方も今は床に臥せ…… それでもこの地を離れたくない母が一念発起して勉強中ではあるが、残念ながら付け焼刃もいいところ。アテにはならない。 学校にしたって歩いていけば軽く40分はかかるような距離感のど田舎で、美海は若くして将来に悩んでいた。 (やっぱそのうち、出てった方がいいのかなあ、ここ……寂しいのは寂しいけど、不便すぎるし……) ぶるっ…… 「……っ」 「まあ……いっか。早く行こ……!」 しかし今はそんな将来の悩みより、目先の悩みを何とかしないといけない。 朝のうちに行きそびれ、身体を震わせるその感覚。早く学校に行って、この悩みを解消しなくては。 こうして美海は、学校までの40分の道のりを歩きだすのだった。 _______________ 8:30 「うー、やっと着いた……慣れてるとはいえ、今の状況でこの距離はきついなあ……」 「……と、早くトイレ……!」 10代少女の健脚で、片道40分。それは地元の母校というにはかなり遠いといって差し支えないだろう。 しかもその40分という数字は平常時の値であり、そこから変動することも当然あり得る。今がまさにその時であり、尿意を耐えながら歩いてきた彼女の所要時間は普段より10分以上も遅れていた。 とはいえ朝の会までにはまだ時間がある。これだけを思って学校に来たと言っても過言ではないそれのために、美海はトイレに向かう。 だが…… 『おや舟木さん。ちょうどよかった、この張り紙を張るのを手伝ってくれないかな?』 「あ、先生……ど、どうかしたんですか?」 『うぅむ、それがねえ……なんと言ったらいいのか』 『この校舎から下水に水を排水するための排水管がね、とうとう完全に詰まってしまったようでね……つまり、全校のトイレが流れなくなってしまったんだよ』 「え……」 『近年のものであればそう簡単に詰まるということはないし、一か所が詰まっただけで全部がだめになるということもないのだがいかんせんここは設計が古く、いろんな排水をすべてひとつの管にまとめてから排水する仕組みになっていたことが主な原因で……やはりあの時かいしゅ……~~~~~………………~~~~~』 美海はその時、我が耳を疑った。 先生がその後も長々話し続けていた内容も、ほとんど聞こえなかった。 学校に行けば大丈夫だと思ったのに。それなのに。 まだ、我慢しなければならないのかと。 「…………っ、先生……その、修理したり……とかは……」 『ふむ、そのことだが……君も知っての通り、統廃合が近いだろう?言ってしまえばこれからすぐ取り壊すであろう校舎の修繕にかけるだけの予算や人員は……』 「そう……ですよね……っ」 『ここでの授業もあと一週間足らずと言ったところだから……すまないけれど、その間は君たちに我慢を強いることになるかもしれないね。……すまないね、最後の最後にこんなことになってしまって』 我慢を強いる。それはまさにその通りで。 美海は、これまで通ってきた学校の最後の最後、たいへんな困難を背負い込むことになってしまった。 最後の一週間。最後の思い出を、悲しい記憶で潰してしまわないために…… (……が、我慢……しなきゃ……!) 悲壮なる決意と共に、美海は先生の手伝いを終えて教室へと戻るのだった。 _________________ 13:00 それから美海は、数々の授業をこなした。 一時限目、二限目まではかろうじてそれを表に出すことなく頑張れた。 三限と四限はかなり危うく、膝をすり合わせたり太ももを激しく擦ったりという動作を隠すことができなかった。 そして、昼休み。 本来なら憩いの時間であるはずのそれも、今の彼女にとってみればまた違ったもので 「……っ、ん……ぅ……」 お弁当を広げて、友達と歓談しながら食事をする。そんなありふれた幸せをも享受できないほど、今の彼女は追い詰められていた。 しかも彼女の運が悪いことに、彼女はこの生徒数10人程度の学校における最高学年。 初等、中等、高等の生徒全てが一つ所に集うこの学校で唯一の高等部に位置する彼女は、いわばこの学校のおねえさん。 とても無様は許されない。 いっそのこと初等部の子たちがしているように、我慢できないから外で、とできたならどんなに楽だったろうか。 見本としての在り方が問われる午後の授業が始まる。 15:00 午後の授業。それは今の彼女にとって、一言で言えば雑音に等しいものだった。 1人だけしかいない高等部の教室で、事実上のマンツーマンで繰り広げられる授業。 とは言ってもやること自体は普通の授業と同じく、教師の話を聞きながら黒板の板書を取るだけ。教師の方も下水の件である程度浮ついているのか、上の空な美海を注意するような真似はこれといって無かった。 もちろん、教師のそれと美海の抱える困難とでは比較にならない差はあるのだが。 教師の注意がないことで、我慢に全神経を注ぐことができたのはいい。しかしやはり、特別我慢慣れしていない彼女にとって10時間超えの我慢は未体験の領域。水分を控えているとはいえ、それを「したい」内なる叫びは時間を重ねるごとに大きくなっていく。 頭の中で響くその叫びが、教師の語る知識の数々を単なる雑音へと替えてしまっていたのだ。 故に美海は、最後の最後で…… 「ごご、ごめんなさいっ!早退しますっ、ごめんなさいぃっ!」 おねえさんであることを辞め、一人の少女として教室を飛び出していった。 帰りの会。一日の最後に10人少々の全校生徒が集まって行う会を待たずして帰った彼女は、たった一つの思いがために駆ける。 (ぉしっこ……、おしっこ……!) かかとを潰し、靴さえもきちんと履かないままで 少女は1人、弾丸を弾くが如くに駆ける。 学校の敷地すぐにある、鬱蒼とした…… 田舎に特有の、裏山へと。 15:15 「あそ、あそこ……っ!しげみ、かくれっ……!」 学校の裏山。そうひと言で言うとかわいげのあるように聞こえるかもしれない。 しかし学校とはそもそも、緊急時において避難先にもなるような場所。特に戦時からあるような古い学校であれば、それは立派な疎開先にもなり得る。 つまり学校とは教育機関であると同時に、一種の緊急用シェルターとも言えるような場所であるのだ。 それも戦時に造られたような所であるなら、それは最早ひとつの拠点だ。それだけに、鬱蒼とした山の傍にあることには理由が生まれる。 山であれば、それも鬱蒼としていればいるほど、逃げ隠れがしやすい。敵兵から襲われた時のことを考えた布陣と言える。 そんな敵兵から隠れることをも想定した裏山。当然ながらそこは、今の美海にとっても最適な場所で。 道と言える道もない、草木生い茂るけものみち。人っ子一人通らないようなここなら、きっと。 「こ、ここなら……、ここなら……!」 山に入って10ちょっと。彼女を追ってくるのでもない限り、とても迷い込んでくるような距離ではない。 周りに人なんかいるわけない。バレるわけなんかない。 必死に自分にそう言い聞かせて、恥ずかしい気持ちをなだめて 美海はがば、と下着を下ろしてしゃがみ込んだ。 「はあ……、はぁっ、はぁっ……!」 だが、それでも。 年頃の女の子として、やっぱり。 やっぱり、外でなんてと。 呼吸がまるで、水から上がった後のように浅く早くなり、顔は今にも火を噴いてしまいそうだ。 きょろきょろと、何度も何度も辺りを見回して、これ以上ないほど耳を澄ませて周囲を警戒する。 今の彼女はいちばん恥ずかしいところを剥きだした格好。こんなところをもし億万が一にも誰かに見られでもしたら死にたくなる。 しかし、いくら彼女の恥ずかしい気持ちが大きくとも、彼女にこの道を選ばせた元凶もまたいや増していて。 恥ずかしさとしたい気持ちとがせめぎ合い、彼女の中の天秤が大いに揺らぎ始めたその時。 ズザザザザザザザッッッッ!!!!! 「ひぃっっっ!!!!?!?」 突然、近くの草木が大きくざわめいたのだ。それはまるで、大きな動物が高速で駆け抜けたかのように。 否、よく耳を凝らすと、聞こえてくる。 ごふー、ごふーと、人より遥かに大きな呼吸の音が。 のし、のしと、人より遥かに重く土を踏みしめる音が。 そしてその音はどんどんとこちらに近づき、茂みの向こうにその姿を現した。 (くっ……!?くく、kkkkkkくく熊ぁ!!?!?うそ、なんで、なんで……っ!?) 曰く、トラックに轢かれても平然とその場を立ち去った 曰く、眉間を銃で撃ちぬいたはずなのに生きていた 身近にいながらにして、百獣の王にも劣らぬ恐怖のエピソードを数多く持つ猛獣、熊。 見ると身体中に葉っぱと枝を纏わりつかせ、顔にはいくつか木の枝が刺さっている。 恐らく先ほどの音を立てた時に付いたのだろうそれらは、恐らくこの熊が斜面を転がり落ちてしまったのだと推測させる。 人間であれば大けがに繋がりかねなくても、熊ならかすり傷。こんなのを相手にもし見つかったりしたら。 ぞわ…… 「ひ……っ!?」 そんな時、彼女の背筋を撫で上げるようにある衝動が。 しゃがんで、その部分を剥きだした彼女に催促をするように、あの感覚が鎌首をもたげる。 早くしろと言わんばかりに、尿意が牙を剥く。 (だ……め、だめっ……!いまは、いまは……!) (においも、おとも、いまはまずい、から……!) 空気を読まず高まったその衝動を、美海は必死に抑え込む。 今の状態でもし、始まってしまえば。 においと音を発生させてしまえば、それは熊を刺激してしまうかもしれない。 むしろ今の時点で、人間がいることぐらいは気づかれているだろう。野生の嗅覚ならば当然だ。 そこへさらに刺激するような真似は、絶対にあってはならない。 「は……っ、は、ふっ……!は、ふ……っ!」 指を噛み、秘部を剥きだしたままがたがた震えて、必死に彼女は無害な自分を演出する。 いてもいなくても変わらないような、無音で無臭で無害な自分を。 草一枚隔てた向こうを横切る熊にアピールしながら、その時を待つ。 熊が離れ、安全にこの場を離脱できる、その時を。 それから美海は10分近く熊が去っていくのを待ち、それから下着を上げて茂みを出て…… 人とは出会わずとも猛獣とは出会う山から、こそこそと出ていくのだ。 さすがに熊と遭遇した後ですることなんてできないと、軽くトラウマを抱きながら。 またしても美海は、用を足しそびれるのだった。 ______________ 16:00 不運にも熊と遭遇してしまった美海はそれから山を下り、ひたすら畑の広がる道を自宅に向かって歩いていた。 美海の暮らす集落は非常に閑散としていて、まず美海の通う学校がその端に。 その中間には主に農家が暮らすエリアがあり、そこは農業の都合で畑を挟んで一軒ずつ家がぽつんと建っているような趣だ。 このエリアが一番距離が長く、このだだっ広い畑エリアを越えて初めて民家が並ぶ村落にたどり着くのだが…… 「ん……ふっ、はっ……ぁ、はぁ……ぁっ……!」 いったいいつからしていないのか。昨晩からできていないソレがぢくぢくと下腹部を苛み、まともに歩くことも難しい。 なるべくそれとない風を装っていても、隠し切れず現れる内股の姿勢。時折やってくる波にさらわれて、ついやってしまう我慢のポーズ。 それが少女の歩みを、幾度となく妨害していた。 こんな状態で数キロもある畑エリアを横切らなくてはならないのかと、軽く絶望的な気持ちになっていた折…… 『あら、美海ちゃんじゃない!学校はもうおしまい?』 彼女に声をかけてくる存在があった。 それは幼少期から懇意にしていた、人のいい近所のおばさん。 本当の親戚同然に接してきた、農家の奥さんにして趣味でお茶っ葉の栽培もしているお茶好きのおばさま。 これまでお茶会に誘われたこと数知れず。子どもにも飲みやすい渋みの少ないお茶と、出されるお茶菓子のセンスが光るお茶会はとても楽しいひとときである。 ……その後、トイレに行きたくなるのはご愛敬だが。 しかしそんな人物が、この状況で声をかけてくるということ。それはすなわち…… 「あ……、はい。今はその、帰り……、で……」 『あらそう!ならいつもみたいに、ウチでお茶していく?ちょうどいいお茶が入ったのよー!デトックスって言って、身体の悪いものを出してくれる効果の高いお茶!ダイエットにもいいんだから!』 「い、いぇ……その、今は……」 『だいじょうぶよ!門限までには帰してあげるから、ね?さあさあいらっしゃい!』 「ぁ……う……」 有無を言わさぬ、おばさんのパワフルなお誘い。普段なら嬉しさ半分とまどい半分で受け入れるそれも、今はただ辛いだけで。 一刻も早くトイレに行きたい彼女は、かくして地獄のお茶会に連れ込まれるのだった。 『さあさ、たーんとおあがりなさい!最近暑いからね、水分補給は大事よー!』 お宅へお邪魔するなり、テーブルに並べられる数々のお茶。 暑いからと、水出しで振舞われる健康茶の数々。 数種の葉をおばさん独自の配合でブレンドした、健康作用とおいしさとのバランスが絶妙な一品。ポット一杯分をなぜか全部カップに注ぎ、全部どうぞと言わんばかりに差し出される一面のお茶。 つやつやの、善意100%の笑顔で振舞われるそれを、断ることなどできようはずもなくて。 「ぃ、いただき……ます……!」 美海はひきつった笑顔で、お茶をいただくのだ。 せめて早く茶会を終わらせようと意気込み、一息に飲んだお茶のお代わりを飲んだ端から淹れられて…… お話好きの奥さんの話を聞きながら、お腹がたぷたぷになるほどたくさんのお茶を飲まされるのだった。 17:30 『でねえ、ウチの旦那ったら最近~~~~~~~~~~』 「ぁ、あはは……」 (と……いれ……っ!いわ、な、いわ、なきゃ……!といれ、いきたいって……!このはなしおわったらいわなきゃ……じゃないとほんとにでちゃうもれちゃうおしっこだからといれいわなきゃいかなきゃといれといれといれ) 『ほんとにもう困_________~~~~~~』 17:35 『______~~~~~~………………っと、あらやだもうこんな時間?たしか門限は7時だったかしら?まだ時間はあるけど……うーん』 (………………!!!はなし、おわっ、おわった!おわっ……!言う!いく!といれっ、おしっこっ!) 「……あっ、あの、おばさん!わたs」 『おい何だァこれ!おいちょっと来とくれよ、おーい!!』 『あらやだ……旦那が何か呼んでるわ。ごめんなさいね美海ちゃん、ちょっと待っててね』 ずっと話しっぱなしだった奥さんのマシンガントークが止み、やっと言い出せるかと思った矢先、それを遮るように家主の太い声が響く。 何事かと見に行った奥さんが次に戻ってきた時、その口から告げられたのは…… 『……ごめんなさいねえ美海ちゃん。どうもうちのトイレが詰まっちゃったみたいでねえ。これから修理しないといけないから……ごめんねえ美海ちゃん、今日はこれでおひらきね』 「ぁ……」 『あ、ところで美海ちゃん、さっき何か……』 「……っ、いぇ、なんでも……ないです……」 トイレが詰まった。その意味するところはひとつ。 またしてもトイレに行けないまま、美海はおばさんの家を後にするのだ。 ひたすら飲んだ健康茶の分、今までの倍はつらくなった尿意を抱えながら。 震える脚で、美海は絶望的な帰路へと踏み出すのだった。 ________________ 18:30 「ぁ……ひゅ、か……ひゅっ……!」 浅く、不規則で、不安定な。 呼吸すら満足にできない状態で、畑の並ぶ道を少女がのろのろと進む。 その少女は極端な前傾姿勢で、内股で、そして…… その両手は、きつくきつく股間を握りしめていた。 誰が見てもわかる、オシッコ我慢のポーズ。幼い子どもがするような、とても高等部がするようなものではないポーズ。 それは一言の言葉もなく、一つの事実を雄弁に物語っていた。 そこまでしなければ、漏れてしまうのだと。 「い゛う゛あああぁっ……!?」 ぶじゅじゅじゅっ、じゅじゅ…… 「あ゛あ、あ……!」 「……っっ、ッグうぅぅぅぅ……!」 ぶるるっ、大きく身体を震わせた後、真っ青な顔を天に向けて、どこか恍惚とした表情を…… した直後、我を取り戻したように歯を食いしばって全力で股間を押さえつける。 もはやほんの少量の放出ですら、我を失いかけるほどに心地いい。我慢から解き放たれて、思う存分…… そんな誘惑を振り切って、美海は震える脚で帰路を進む。 だが、その途中…… 「…………こ、ぉ…………っこ、ぉし………………」 「ぉし……こ…………たい……」 「……………………あ」 そんな時、見つけてしまった。 何もない畑道。遮るものなどないと思っていた、田舎道の端に…… 大型のトラクターが、停まっているのを。 「……ぁ、はあっ……、はあっ……!」 どくん、心臓が高鳴る。あれなら、あれの裏なら、できる。 そんな期待を一瞬でも抱いてしまったら、その裏で、思いっきり全部出す……そんな妄想を一瞬でもしてしまったら。 「ぉ、おしっ……!おしっこ!おしっこ、だせるうぅっ……!」 もう自制など効くわけがない。美海はトラクターの陰に駆け寄り、下着を横にずらして…… 我慢に我慢を重ねたほとばしりを、今。 ぶしゅうぅっ!! がたがたがたんっっっ!ゴガガガガガ!!!! 「………………っっっっっ!?!?!?!?!?」 ……出すことは、できなかった。 出口からそれが噴き出したまさにその瞬間、量にしてほんの数十mlも出さないうち、彼女が隠れ蓑としたトラクターが突然大きな音と共に動き出したから。 あまりの事態に声も出ないほど驚いた美海のオシッコは、そのあまりに引っ込んでしまう。 『……んあ?……ああ、いけねえ、寝ちまってたか……歳だなあ俺も。さーて、コイツを車庫にしまうとするかあ……』 既に暗くなってきていたからだろうか、あるいは尿意のあまりに確認を怠ったからだろうか。美海は気づかなかったが、実はトラクターには人が乗っていて。 図ったようなタイミングで目を覚ました農家は、そのままトラクターで去っていくのだった。 「……んで、なんで……!」 「……ぉしっこ……」 またしても「できる場所」を奪われた美海は、怒りを露にしながら…… しかしそれでも、できることはもうこれしかない。家まで我慢する。 美海の我慢は、最終局面を迎えていた。 _____________ それから、どれだけ時間が経っただろう。 何度となく漏らしそうになりながら、何度となく心折れてしまいそうになりながら 辺りが真っ暗になっても、それでも彼女は歩き続けた。 そして…… 19:50 「あ……ぁ……!」 「つっ、ついっ、ついたっ、いえ、といれ、おしっこっ!!」 「あぁ、ぁ、だめ、あせっちゃ、でる、ゆっくり、そっと……っ!」 ついに、やっとのこと家に着いた彼女は、古式豊かな引き戸の玄関を開き…… そっと、膀胱を少しも揺らさないようにそっと、何度かのおちびりをひっかけてしまった靴を剥ぎ取っていく。 だが…… ぶしゅじゅじゅじゅじゅうう!! 「ひぎぁっ!?」 じゅじゅっ、じゅ…… 「あっ……グ、いっ、ギ、あ……!」 だが、もう。 それでももう、彼女の我慢の堤防は、もう決壊しかけていて。 玄関に撒き散らされる、とても言い訳のしようがないほど大量のオシッコ。彼女のお腹に溜められた全体量からすればわずかでも、はた目には手遅れなほどにもう始まってしまっている。 だからもう、これしかなかった。 「ああああああああぁぁああああああっっっっっ!!!!!」 じょろじょろと小便をまき散らしながら、片っぽだけ靴を履いたまま廊下を駆け、トイレへとまっしぐら。 『……ん?ああ美海じゃない。門限過ぎるときには連絡しなさいって言』 「どっ、どい、どいてえええええぇぇっ!!!!!でる、でるウゥゥウウゥゥ!!!!!!」 『ちょ、待っ!まだドアのしゅうr』 廊下に背を向けて、未だにトイレのドアと向き合っていた母。現状など知る由もない母を乱暴に突き飛ばし…… しゃがむ間もなく下着をずらし、彼女のオシッコは始まった。 ぶっっっっっっしゅうううううぅうううううぅうううううーーーーーーーーーーー!!!!!!!!びじゅぢぢぢぢぢぢっっっ、ばぢぢぢぢぢぢぢぢっっっ!!! 「はあっ、はあっ……、んはっ……はあっ……!」 「……っ!?あっ、あ、はみ出……!しゃがま……!」 びしゅぅいいいいいいぃいいいいいいいーーーーーー!!!!!!びちちちちちちちっっ!!!! 「う゛あああぁ……しゃがんれも、はみれひぇ……」 ばちゃちゃちゃちゃちゃ!!!!びしゅううううぅうぅううううーーーーーー!!!! 「あ゛ぁぁ…………もう……いいや……おしっこ……きもちぃ……」 やっと、思う存分出すことのできた美海のオシッコ。 ほとんど一日に渡って熟成され続けたそれは、日常では想像もつかないほどの爆裂的な勢いで迸り…… 立ったまま始まったそれはほぼ一直線に壁を直撃し、それに気づいた美海が体勢を変えてなお便座を軽々と飛び越えて…… トイレの床を泡立つ金色の液体に浸して、その支配領域を一面に広げていく。 その照準が無事に便座へ収まるくらい、暴れ狂う水流が落ち着くまでには2分近くもかかり、その頃にはトイレを埋め尽くす水溜まりが廊下にまで進出するほどにまで広がっていた。 「ああぁ、はああああぁ……」 『……あんた、どんだけ出すのよ……』 一日かけてもとうとうドアの完全修理は叶わず、慰め的にカーテンを張っただけのトイレ。ドアのないそこからはほとんど素通しでオシッコが流れ出し…… ドアがないせいで防音も叶わず、家中に恥ずかしい音を響かせて美海はその後もオシッコをし続けるのだった。