SamuKata
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聖女様の聖水のお話

死 それは人類、あるいは生物すべてがいつかたどり着く個体としての終焉の時。 それに対する恐怖は、いつの世もその心に焼き付いた根源的な感情であり、それを回避すべく抗うのもまた必定と言える。 ではもし、限りなく確実な死を一時的にでも免れることができるのなら。 不治の病や致命の怪我などによる迫りくる死を、己が天寿を全うできるまで跳ねのけることができるのなら 人はそれに、どれだけの価値を見出すのだろうか。 伝説に謳われる神の薬。霊薬エリクシール。 万病を癒しあらゆる怪我を治癒するとされる、至高の万能薬。 魔法や呪術といったものが珍しくない世界に於いても、完全な治療などというものは手の届きようもない存在だった。 治癒魔法と言えど結局は自然治癒力を高める程度のもの。病気に対してはさほどの効力は期待できず、瀕死の相手を救ってやることもできない。 だからこそ、それは伝説だった。人には不可能なことを成す、神の薬として。 そんな霊薬エリクシール。人間が自力で成すことのできない事象をただ夢に描いただけのものかと言うと、そうではない。 10年に一度という極めて長いスパンではあるが、それは地上に現れることがあるのだ。 天を貫くほどのまばゆい光の柱と共に、清浄なる透き通った青の霊薬が、神の祝福によって。 その薬を手にした者はどんな重傷でもたちどころに癒え、重病も嘘のように治り…… あるいは健康な者がそれを手にしたならば、3世代は遊んで暮らせるほどの金と引き換えに。 それが神聖なる神の水、霊薬エリクシールなのだ。 だが近年、ある小国で奇妙な噂が立っていた。 この霊薬エリクシールを、生み出すことのできる人間がいると。 『聖女様、儀式のお時間です』 荘厳にして巨大な教会にある祭壇。 そこで今、ある儀式が行われようとしていた。 白髪の少女を数十の祭祀が取り囲み、厳かな雰囲気の中…… 白髪の少女は服の裾をまくり、白い柔肌を剥きだした。 教会で行われる儀式としては似つかわしくない、猥褻に見える行為。 年頃の少女が、幾人もの集団の前で下着も纏わぬ下半身を露にするなどと。 しかしこの行為こそ、ここで行われる儀式の肝であるのだ。 祭祀の1人が、大きく豪奢な盃を手にして少女に歩み寄る。 微かな毛が生えたばかりの、まだ幼い少女の陰裂。少女の脚を開かせ、ぴたりと閉じたそこに器をあてがう。 そして…… 「んっ……」 しゅいっ しゅいいいいいいいぃいいいいーーーーーーー!!!!! なんと、少女はその器めがけて放尿を始めたのだ。 よほど我慢していたのだろうか。小便は甲高い音と共に勢いよく迸り、銀の器に跳ね返ってきらきらと飛沫を散らす。 「はあぁ……」 大きくため息を吐き、安堵に胸を撫で下ろす少女。 ぶるりと身体を震わせて、最後のひとしずくを絞り出すまでおよそ2分近く。少女の排尿としてはかなり長いそれが終わると…… その瞬間、器をめがけて教会ごと包みこむような光が天から降り注いだ。 さながら巨大な柱を突き立てるかのように、黄金の輝きが天上とこの教会とを一つに繋ぐ。 これこそ、この儀式における本懐だった。 少女の放った、大量の小便。それはこの光の中で祝福を受け…… 薄黄色のそれは、青く煌めく神聖なる神の水へと変貌を遂げるのだ。 この青い水こそ、至高の霊薬エリクシールであり…… おしっこを霊薬に変化させたこの少女が、噂の聖女なのである。 ________________ 翌 7:00 「ん……」 教会からほど近く、彼女のために建てられた聖女の館。 幾人もの召使いが侍るこの館で、聖女たる少女は目を覚ました。 眠い目を擦りながら、自室の壁に目をやる。 そこには近隣諸国の王や、富豪たちから寄せられた感謝状がずらりと並んでいた。 (神の祝福も、人間にかかればお金儲けの道具……仕方のないことと理解はしていますが……) 少女の生む、神の祝福たる霊薬。聖水エリクシール。 それは当然ながらあらゆる人間にとって羨望の的となり、超が付くほど高額で取引がされているのだ。 特に今は聖女という安定供給ルートがある分、その価格設定も厳密に為されている。 聖女誕生前のように10年に一度という周期での生成では、余りにも珍しすぎて売る側もその価値を理解できていなかった。そのため買い取る側の言い値で取引されることも少なくなかったのだ。 かつてのような3世代は遊んで暮らせるお金など、エリクシールを欲しがる相手によってははした金に過ぎないのだから。 しかし今は違う。売る側も売ることに慣れ、売る相手を選ぶ余裕ができた今では、その取引相手は一国の王やそれに比肩する財力の富豪に限られる。 それが希少価値となり、今ではこのエリクシール一杯に恐ろしいほどの高値が付くこととなったのだ。 その値段のほどは、これ一つで小国の国家予算を賄うことが可能なほどに。 だがこの希少価値こそ、聖女を悩ます大きな問題でもあった。 「…………っ」 ぶるるっ、聖女がその細い体を小さく震わせる。 今の季節は真夏の終わり際。寒さによって震えるのにしては、いささか気温が高すぎる。 (……いけない……っ、昨日からもう、こんなに……) (が、我慢しないと……いけないのに……) 聖女が身体を震わせる理由。それは至極単純な、生理現象の高まり。 昨晩にエリクシールを生成してから、一度も済ませていないそれは夜の間に募り募って、聖女の聖水袋を膨らませていた。 「………………」 ちら、と聖女の目が一か所に向けられる。 それは館の侍女たちが入る、至って普通の汲み取りトイレ。 この中に入って、溜まったものを思い切り…… (…………っ、いけません、いけません……!そんな、だって、そんなことをすれば……!) (国のため、民のため、耐えなくては……!) だが、それは許されない。 今の、国家予算レベルにまで膨れ上がったエリクシールの価値。それはその持つ効果と、希少価値による。 いかにエリクシールが万能薬として超絶な効力を持っていようと、市井に溢れかえっていたならそれに高値をつける者など現れるはずがない。 故に聖女を擁するこの国は、他国に対していくつかの嘘をついていた。 霊薬を生む聖女は、その祈りの力で神の祝福を呼んでいる この国の祭壇で、定められた手順で祈りを捧げなければならない その儀式に立ち入ることは、教会の許可ある者を除いて何人も許されない 聖女の力を以てして、祝福を得られるのは年に一度きり これらの嘘により、市場に出回ることを抑制。その年に一度の機会を逃したくない一部の者にのみ売ることで、その高価値を維持していたのだ。 買い取る側にとっても、一年に一度とはいえそれでいかなる不治の病をもいかなる欠損をも治癒できるのであれば。 どれだけ高額であろうと、王やそれに匹敵する権力の貴族や富豪の命には代えられない。どれだけ金と権力を手にしようと、死への恐怖を乗り越えることなどできはしない。 だからこそ、この滅茶苦茶な商売は成り立っていた。 しかしこれにはひとつの欠点が存在する。 聖水ができるのは年に一度、とは言うがその正体は聖女の小便。 排尿を年に一度しかしないなどと、無茶にも程がある。 では聖女は普段の排尿をどうしているのか? そこに、聖女が普通のトイレを使えない理由があった。 一日に一度、教会裏の洞窟で行われる聖女排尿の儀式。 それは神の祝福を遮断すべく幾重にも張り巡らされた呪術障壁の中で、術を形成する何人もの術者を要して行われる。 その障壁内であれば、聖女のおしっこに対してかかる神の祝福は術式と相殺され、聖女のそれは単なる小便として処理できる。 だがそれが無いところで排尿をすれば、それは聖水の市場への氾濫を招くだろう。 エリクシール生成時に立ち上る巨大な光の柱は、どこからでもそれが生まれたことを他人に知らしめてしまう。 それが1日1回、あるいは日に何度も観測されたとなれば希少価値もあったものではなくなり、価格の崩壊を招くだろう。 そうなれば霊薬ビジネスによって今の立ち位置を手に入れたこの国が崩壊するのは必至だ。 聖女のおしっこひとつで、国が滅ぶ事態を招きかねないのだ。 だからこそ少女は耐える。己の内で湧き上がる、抗い得ない生理的衝動を。 ________________ 9:00 「…………主は仰せられました。我が人に与えしは試練のみならず、善き心にて励めば必ず救いはあると。それこそがかの……」 聖女の一日。それはおおよそ、平均的なシスターのスケジュールに準じている。 というのも特異体質とはいえ、それを知っているのは国内でもごくごく限られた一部の人物のみ。 エリクシール本来の生成法を知る者は、世界にごくわずかしかいないのだ。 それゆえ、それ以外の人間に対する何らかのごまかしは必須。そのためのシスター業だった。 聖女は特別。それはともかくとして、その特別さの所以は祈りにあると内外に思ってもらうために。 聖女の持つ「祈りの力」が他より特別強いからエリクシールができるのだと思わせるために。 聖女には、聖女らしいことをしてもらわなければならないのだ。 そうしたわけで聖女は、見習いシスターや神父たちに講義を行なったりもしていた。 「かつては10年に一度しか生まれなかった霊薬ですが、聖なる力の強い者が、この聖地で、一年で最も神の力高まる時に祈ることでそれより遥か短い期間で顕現するようになりました」 「皆さんがよく祈り、よく励み、いつか祝福に至らんことを願っています」 口々に溢れ出る、もっともらしい弁。それがでたらめでしかないことは、何より本人が一番よく知っている。 うそを口にする度、ずきんと胸が痛む。見習い達の向ける濁りの無い澄んだ尊敬のまなざしが、この上もなくいたたまれない。 それも当然だ。彼女が語る神の祝福、その結晶たる霊薬は、他ならぬ彼女のオシッコなのだから。 ここにいる人間がいくら頑張ろうとそこにたどり着くことはないし、彼ら彼女らの目標とするものは彼女の排泄物なのだ。 それを思う度、恥ずかしいし申し訳なくなってくる。 『はい、これにて聖女エリクシア様からの講義が終わります。次は神父様から……』 聖女エリクシア。特異体質が判明した赤ん坊の時、その悪用を恐れたこの国の人間により保護された少女。 物心つく前から親元を離され、以後教会を自分の家として過ごしてきた筋金入りのシスター。 名前の由来でもある霊薬エリクシールは、その通り彼女の人生そのものでもあった。 だからだろうか。見習いの少年少女たちが真っすぐな目で友達と一緒に励む姿を見ていると、欺く罪悪感とは別に胸が痛む。 (……もし私がこのような体質でなければ、この暮らしもまた違ったものになったのでしょうか。機密の漏洩を恐れ、友も持てないこの暮らしも……) (父の顔も母の顔も知らず、ずっと一人ぼっちの……この暮らしも……) 保護されてから10年少々。まだまだ遊びたい盛りの彼女に、大人の駆け引きはまだ早すぎる。 生まれた時から策謀術数の世界に居た彼女に、親子や友達との結びつきは余りにも眩しく映った。 ここで講義を受ける子ども達も、夕方になれば親が迎えに来るのだろう。食事の際には隣の同期とおしゃべりをしたりするのだろう。 彼女には、迎えに来る親もおしゃべりをする友達もいないのだ。 (……いえ、私は……聖女です。ためらいなど……) そんな寂しさや羨望を振り払い、彼女は聖女としての職務を邁進する。 聖女として在ること。それこそが今の自分の生きる理由であり…… お国と神のため尽くすことこそ、生きがいなのだと言い聞かせるように。 だが、そんな時 ズズ………… 聖女として在ることを決意した彼女を、嘲笑うように ゴゴゴゴゴゴゴ………………!!!! 神のおわす天上とは逆の地底から、特大の試練が沸き出でた。 『な、なんだ!?』 『地震だ、でかいぞ!!』 それはさながら、下から突き上げられるような。 堅牢に作られた教会すら軋み悲鳴を上げるほどの、大きな地震。 とはいえ緊急時の避難場所にもなる教会である。かなりの大地震にも関わらず、内部の被害は一見それほどでもなかったが…… 教会の外で、異変は起きた。 『おい、おい大変だ!今の地震で祈りの洞窟が崩れたぞ!』 『祈りの洞窟と言ったら、聖女様がこの地の力を高めるための祭壇がある……』 『そう!毎晩お祈りを捧げに入っておられるその洞窟だ!!』 「……………………え」 その報告は、聖女にとって余りにも絶望的なものだった。 一部の人間以外には、大地そのものの力を高める祈りの場として認識されている裏の洞窟。しかし本当は黒魔術の術式によって、神の力を遮断するための祭壇であり…… そこでのみ彼女は「オシッコ」をすることができる。 エリクシールではない、一人の人間として当然の排泄物を、普通に吐き出すことができる唯一の場所。 そこが埋もれてしまったら (え、うそ、それじゃあ私、どこでしたら……!?) エリクシールを生成したのは、つい昨日のこと。年に一度と吹聴している以上、昨日の今日で彼女がそれを出すことは許されない。 霊薬をそう頻繁に作ることができるなどと知れたら、そんなものに大金を払う人間など現れるはずはなく…… エリクシールを売って得たお金がなければ単なる小国に過ぎないこの国が、また元の貧乏国家に…… 否、それで済めばいい。これまで他国を欺き続けてきたことで怒った他国がもし攻め込んできたりしたら。 あるいは聖女の体質が余人にばれ、聖女がこの地にいることに何の意味もなくなれば。 良くて誘拐。悪くすれば彼女以外のこの国の住人が皆殺しになるということだって起こりえる。 エリクシールによる完全治癒は、誰だって喉から手が出るほど欲しいだろうから。 そんな未来をもたらさないため、彼女に何ができるだろうか。 (……た、耐えるしか……ないの……ですか……?) 彼女自身の考える通り、できることはもう、それしかなかった。 してもいい準備が整うまで、我慢すること。 聖女である故の特大級の試練が、もたらされた。 _________________ 21:00 それから、聖女エリクシアは聖女としての一日の責務すべてに励んだ。 他者への教育。神に捧ぐ祈り。その他一日に執り行う仕事と、食事と入浴とを終えた自由時間。 いつもの仕事をいつも通りに終えた彼女だが、しかしその表情に安堵はない。 (……やはり、今日一日での復旧は……一体いつになったら……) 服の上からお腹を擦る。一日に渡って募り続けたそれは、たっぷりとした質量を以て聖女を苛む。 ぽっこりと張り詰めた感触を伝えるお腹の水風船。いつもなら裏の洞窟に行き…… (したい……出したい……!洞窟で、しゃーって、ぜんぶ……) お腹の中にある、人間として当然のそれを、思う存分出すことの許される。そんな時間。 それでも彼女に、今の彼女にそれが赦されることはない。 神の祝福を遮る術がない限り、彼女のお腹にあるのは「オシッコ」ではなく、国の行く末すら左右する聖水なのだから。 さて、そんな彼女の欲求を唯一発散し得る洞窟。当然ながらその復旧は知る人ぞ知る急務である。 表向きに喧伝している限りでもその洞窟は、大地そのものの力を高める霊地。教会を運営する側にとっても、そこの復旧は何より優先されるべきことなのだが…… しかし問題は山積していた。なにしろ物理的に崩落していては立ち入ることなどできないし、崩れた土砂を撤去するのは魔法の力を借りたとしても難行だ。 魔法を使ったとして、高威力の魔法攻撃を使えば更なる崩落を招きかねず、低威力のそれは積もった土砂や岩に対してなんの効果ももたらさない。 ただ土砂を吹き飛ばすだけではない、洞窟を「ふたたび使えるようにする」のには案外と繊細な作業が必要で…… それには結局、人が自分の手で行うのが一番手っ取り早いのだ。 そして土砂を撤去してなお、すぐにそこが使えるようになるわけではない。 というのも霊薬を作り出すほどの神のエネルギー。人ならぬモノの力をも遮断しようと思うなら、人の身で神に抗うなら相応の準備が必要となる。 まずは邪教の儀式にも用いられる邪法の触媒……人の血や骨などを用いた陣を敷き、そこに神々への呪詛を数人から十数人の手練れで以て数時間かけてじっくり練り込んで…… その術式を起動するための術者をこれまた20人近く揃えてようやく打ち消すことが可能となる。 丹精込めて作り上げた邪法の術式。それがもしこの崩落によってかき消されていたなら。 その再構築にどれほどの時間がかかることだろう。 「…………だめ、考えていたら気が遠く……」 「主よ……どうか救いを……」 聖女はただただ、祈るしかなかった。 どうか、どうか早く だめになる前に、させてくださいと。 ______________ 翌9:00 そして迎えた、次の日。 新しい日の朝を、エリクシアはほとんど眠ることができないまま迎えていた。 夜の間、時折うつらうつらとうたた寝をするようなことはあった。だがそれよりも深い眠りに入るようなことはなく、疲労の色は濃い。 しかしそうでもしなければ、とても耐えきることはできなかっただろう。 もし彼女が深く寝入り、我慢することをやめた時。その時彼女の体内にあるエリクシールの元は暴発し、この国は終焉を迎えるだろうから。 (だめ……頭が……はたらかない……) 寝不足と、都合二晩に渡って続いた尿意我慢。それによる疲労は著しく、とても仕事ができるような状態ではない。 当然ながら教会も、そして洞窟崩落の報せを聞いた国もこの事実を重く受け止めており、聖女に無理をさせまいと各所に根回しをしてはいるのだが…… それによって楽になるものと言えば、日々の聖務を体調不良の名の下にしなくて済む程度のもの。 彼女が抱える問題の根本を、掃うには至らない。 (お願い…………はやく…………はやく…………) (ださせて……ください……) これまで幾百幾千と繰り返してきた、神への祈り。 その中でも恐らく一番切実に、切羽詰まった祈りを捧げながら、聖女はただ部屋の中で尿意に身もだえる。 しかし、そんな聖女をあざ笑うかのように…… 『……聞きましたか?裏の洞窟のお話……』 『ええ、聞きました。聖女様が祈りを捧げておられた、例の……』 聖女の部屋の前で、侍女たちが雑談に興じる。 その内容は、教会から伝えられた復旧作業の進捗であり…… エリクシアに特大の絶望を叩き込むものだった。 『土砂は撤去できたようですけれど……聖女様のお力を大地に伝える術式が消えてしまっていたのだそうよ。その復旧にはまだ時間がかかるって……』 エリクシアがオシッコをオシッコとして放つための、神の力を相殺する術式。それは想定されうる最悪の状態になっていた。 土砂によって術式を宿した陣が掻き消え、もう一度書き直さなくては使いようがない状態。それはひとえに、ある事実を彼女に突きつける。 まだまだ当分、排尿が赦されることはないのだと。 (う…………そ…………) 『ああ……やっぱり。でも、ある意味ちょうどいいのではありませんか?今は聖女様も調子を崩していらっしゃるし……』 『そうねえ……』 聖女の絶望を知る由もなく、当の本人がこの会話を聞いているなど知る由もなく、侍女たちはこの場を去っていった。 22:00 それからすっかり時が経ち、夜も深まる頃。 侍女たちの用意した滋養食にひと口もつけることなく、聖女はベッドで苦悶の唸りを上げていた。 「あ……ぐ、ゥ……アぁ……あ……」 「お…………ひ、こ……」 「おひ…………こ……」 最後に済ませてから、どれだけ経ったのか。 いかに我慢慣れしている彼女とは言えど、それでも常人の数倍……否、十数倍もの尿意に晒されているのだ。正気ではいられない。 常人が一日に6回程度は用足しをするところ、彼女は一日1回。 最後に済ませたのが2日前の夕方ごろであることを思うと、普通の人間なら軽く13回以上はトイレに行っているだろう。 それを一度も済ませずに耐えるなど、尋常なことではない。 「おひ……っこ…………お……し……っこ……」 (し……たい……だしたい……がまんやめて、ぜんぶ、しゃーって……しゃああ……って……) ああ、どんなに心地が良いだろう このはらわたを押し広げ押しつぶされる相反する痛みも苦しみもすべて掻き消えて ただただ思うさまにほとばしりを放つことができたなら、勢いよく、溜まりに溜まったそれを しゃがんで、下着を脱いで、盛大な音と共に…… 「………………っっ」 (だ、だめ、だめです……!誘惑になど負けては、決して……!) (私は、国を背負う聖女なのだから……!) _______________ 9:00 『聖女様、お加減はいかがですか?』 「…………っ、はい。休んだおかげで、今はもっ、ずいぶんとらグに……っ」 それから、またも一睡もできない夜を過ごしたエリクシア。 見舞いに来た侍女に対して口にした言葉が強がりでしかないことは、誰より自身が一番よくわかっている。 だが、たとえこの身が焼かれても、この国のために。 夜の間に決意を改めた彼女は、二日に渡る寝不足と尿意我慢で疲弊しきった身体に鞭を打って立ち上がった。 震える両脚を、修道服でごまかして。 『それは良うございました。ですがご無理はなさいませんよう。本日の聖務につきましても、猊下よりお休みの許可は賜っておりますので……』 『ですがもしよろしければ、子どもたち主催のお茶会にお顔を出してはいただけませんか?あの子たち、聖女様の具合が悪いと聞いてずっと心配しておりまして……聖女様の御姿を見れば、安心するかと……』 「……っそ、うですね。それは、そのとオりっ、でっ」 だがそんな上辺だけの取り繕いは、長く続くものではなく もう我慢の限界にあるその身体は、会話の最中にも暴走してしまいそうになっていた。 今すぐにでも楽な姿勢をとらなければ、どうなるかわからない。 しかし侍女がいる限りそれはできない。目の前の侍女は、彼女の抱える本当の事情など知るはずがないのだから。 『そうですか!それは良かった。子どもたちも安心することでしょう』 『……そうだ。せっかくですし選りすぐりの健康茶を持ってこさせましょうか。聖女様のお身体にもきっとよく効くことでしょう』 「わ、わかりましたっ、で、ではそのようにッ」 『それでは聖女様、またお昼ごろ伺いますね』 そうして繰り返した、話もろくに聞かないうちの生返事。 仕方がないとはいえ、彼女のしでかしたこれが後に恐ろしい事態を引き起こすこととなる。 _________________ 12:00 そして迎えた正午。太陽が正中に昇る頃。 侍女に連れられて、何が何だかもわからぬまま屋外のテーブルに座らせられたエリクシアの前に立ち並ぶのは…… 『せーじょさまー!これ、お母さんがせーじょさまにってくれたの!』 『あっ、ずるい!私からもこれ、病気に効くって言われてるお茶です、どうぞ!』 「ぇ、あ……」 テーブルを埋め尽くさんばかりのお茶、お茶、お茶 都合20人近くいる同年代から年下の子どもたちが供す、どうも身体に良いらしいお茶の数々。 そんなものを、今にもお腹がはち切れそうな彼女が (な、んで、こんな……) どうしてこうなったのか彼女には理解できていなかった。それも無理はない。 ここに至るまでの経緯を理解できるほど、彼女はもう冷静ではないのだから。 けれどそんな彼女にも、たったひとつだけ…… 『『『『さあ聖女さま、たーんとめしあがれ!』』』』 ただひとつだけ理解できることがある。 それはここにいる子どもたちの無垢な善意を、この笑顔を 「い……ただき、ます……っ」 無碍にすることなど、絶対にしてはいけない。 聖女として、上に立つ者として あるいは、年上のおねえさんとして。 たとえそれが、地獄にその身を投じるごとき行いなのだとしても。 13:00 『それでねそれでね、その時ね……』 「あ、あはは……」 (……お、おし……っこ、でる、おしっこでる、おしっこでるおしっこでるおしっこでるおしっこでるおしっこでるおしっこでる、おしっこでるゥゥゥゥゥッ…………!!!) 子どもたち主催のお茶会もたけなわ。おしゃべりにも熱が入るころ。 その輪の中心たる聖女は、引き攣った笑みを浮かべながら身体を小さく震わせていた。 その体内には、この一時間で格段に存在感を増した巨大な爆弾にも思える膨らみきった尿意が渦巻いていた。 『聖女さま、やっぱり具合わるい?』 『むりさせちゃったかなあ……』 『聞いたことあるよ、具合が悪いときにはいっぱい寝るのと……あとおしっこ!おしっこするの!』 「………………!?」 耳鳴りさえする尿意の中でも、その言葉だけは その言葉だけは恐ろしくはっきりと聞き取ることができた。 『えー、おしっこって……』 『お母さんが言ってたの。このお茶にはおしっこを出しやすくする力があって、おしっこと一緒に悪いのを出すんだって。だからこれ飲んで、いっぱいおしっこしたら良くなるよ!……じゃなくて、良くなります!たぶん!』 「おし…………っこ…………」 ああ それができたらどんなにいいだろう 目の前に置かれた「健康茶」を前に、くらくらとするエリクシア。 確かに彼女がオシッコをできたなら、たちどころに体調も戻るだろう。 それは当然だ。彼女が具合を悪くしているのは、他でもなくそれが原因なのだから。 『さあ聖女さま!いっぱい飲んでいっぱいおしっこして、早くよくなってね!………………じゃなくて、よくなってください!』 それからも聖女は子どもたちによって、長くお茶を飲まされ続けるのだった。 _______________ 19:00 お茶会を終えて、それからすっかり日も落ちた頃。 「は…………ッ、はぁ…………っ!」 聖女は一人、のろのろと歩いていた。 その向かう先にあるのは、先日崩落した祈りの洞窟…… この世界でただひとつ、彼女が「オシッコ」することを許される場所。 「ぐッ……!?ん、グ、ぁっ!?うぐぅぅぅぁぁ…………っ!!」 人目がないのをいいことに、思いっきり前を押さえつける聖女エリクシア。 誰から見てもわかる尿意我慢のポーズと、そして…… 歩く度だぷん、だぷんと揺れる、超々巨大な丸いおなか ゆったりとした修道服でも隠し切れない、聖女のひみつ。 膨らみ切った膀胱とその恰好が、聖女の抱える窮状を何より鮮明に表していた。 断続的に襲い来る尿意の大波、あるいは大津波。 それが来る度脳を殴られるような激痛に苛まれ、歩くことさえままならなくなりながら、なめくじの這うがごとくに…… それでも着実に着実に、彼女は前へと進んでいた。 それはただひとつの目的がために 19:30 「はあ…………はあっ…………つ……い……?」 「つ、つい、ついたっ、おしっこ、おしっこっ!!!」 やっとのことたどり着いた、裏の洞窟。 彼女が唯一排尿を許されるそこで、彼女は…… そこでさえも許されなくなったことを、しようとしていた。 だがそれを、誰が止められるだろう。 人間として当然の欲求を、生理現象を ただ聖女として生まれてしまったがため抑圧され続けた少女の、たった一度のわがままを、誰が止められるだろう。 『聖女様?どうしてここに……』 「ぁ……」 だが、この試練は最後の最後まで彼女の前に立ちはだかるのだ。 術式の復旧をしていたのだろう。十数人の術者がそこにいたのだ。 彼女がここでしようとしていることの意味を、ここにいる者たちはよく知っている。普段それに携わっている者たちだから当然だ。 そんなのを前に、できるはずなどない。 「…………めん、……っさい……!」 「ご……めん、なさい……!もうむりです……!おしっこしたい……!おしっこ、したいよぉぉ……!!」 けれどもう、本当の本当にもうだめだった。 ぼろぼろと大粒の涙を流しながら発した、人生初のおねだり。オシッコの懇願。 それは見る者に同情の念を抱かせ…… そして同時に、彼女の肉体が本当に限界であることを思い知らせた。 聖女だから特別だとか、神の祝福を受けているから平気だとか、そんなことはない。 ただ口にしないというだけで、聖女も普通の女の子なのだということを。 だがこの場にいる者がそれを知ったところで、彼女のそれが国を滅ぼしかねない物であることもまた事実。それだけに…… ただ普通にそれを良しとすることも、できなかった。 『……わかりました聖女様。では一つだけ約束をお守り頂けますか?』 『祝福封じの術式は未だ不完全です。範囲も効力も普段の半分以下しか発揮できず、今のまま普通にしていただくことは難しく……』 『今すぐということであれば、範囲をさらに狭めることで効力を高める方法しかありません。その場合、この線より外へ一滴でも零してしまうようなことがあれば……』 「そ、それでいいですっ!それでいいですからはやくっ、はやくっ……」 「はやくおしっこさせてェェェェっっっ!!!」 『……承知しました。それではこちらの容器にお納めください』 「ああ……っ!」 それ故出された交換条件。普段と異なる、不自然な体制での排泄のおねがい。 普通にしゃがんで出すのではなく、がに股で腰を落とした体勢になり…… 出口を垂直に真下へ向けた、少々つらい体勢をとる。 その股下に大きな容器を差し込まれ、そこ目掛けて限界のオシッコを、今 「…………あっ」 ……放とうとした時、聖女の頭がぐわんと揺れる。 それは寝不足の故か、我慢から解き放たれる安心故か、あるいはその両方か 不安定な体勢で頭を揺らした彼女は、そのままぐらりと後ろに向かって倒れ…… どてん。尻餅をつき、むき出しの股間を上に向けた体勢で…… 『……!?聖女様いけまs』 「………………ああ……」 疲れ果てた彼女にこれ以上の我慢などできるはずもなく…… どこか気の抜けた、安堵したような声を出した後 ブッッッッッッッッッッッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッ!!!!!!!!!びゅぢぢぢぢぢぢぢぢぢっっっっっ、びゅっっっっしいいいいぃいいいいいぃいいいーーーーーーーーーーーー!!!!!!! 超高圧のオシッコを、洞窟の天井にブチ当てた。 成人男性3人分程度は高さがある洞窟の天井に当たってなおも有り余るほどのエネルギーで叩きつけられる聖女のオシッコ。それは飛沫を四方八方に撒き散らし…… 『いけないっ!!!』 陣の外にはみ出しかけたそれを、術師たちが風魔法で何とか弾き…… なおも噴射が止まらない爆尿線を、なんと術師の1人が身体で受け止めた。 熱く熱く、男の身体すら打ち貫き弾き飛ばしかねないほどの水圧でぶち当たる聖女のオシッコ。 その高威力に舌を巻く術師をよそに、その放出源である少女は…… 「うゃぁ、はああああぁ…………!」 とろけたような声と顔で、三日ぶりの排泄の快感を貪っていた。 時折びくんと身体を跳ねさせ、気持ち良さで頭をスパークさせながら…… 受け止める術師の服が滅茶苦茶になっても尚止まることのないオシッコを、ずっとずっと出し続けるのだった。 19:40 「……すぅ……すぅ……」 しゅろろろ……しゅるっ、しゅいいぃっ…… 『…………まだ、出てるな……』 『ああ…………』 『……いろいろ、丸出しだな……』 『……ああ…………』 『…………寝てるな…………』 『………………ああ…………』 聖女の我慢限界オシッコ噴射から10分。いたいけな少女の秘裂からは勢いが無いとはいえ止まることなくオシッコが溢れ続けていて…… 解放の気持ち良さに包まれながら、幸せそうに寝入る可憐な聖女が一人、術師たちに囲まれていた。 無防備極まるその恰好は、そうしたことに慣れていない男たちにはやはり刺激的なもので。 『…………すごいもん見たな…………』 『……ああ』 ちょろりと毛が生えたばかりの初々しい陰裂を、そこから流れ出る黄金の流れを その細部、においに至るまで鮮明に脳へと叩き込むのだ。 尚、聖女のオシッコ受け止め係となった術師のぐしょぐしょの服は後に「聖遺物」「聖骸布」などという通称で術師間で取引されることとなり…… 細かく裁断されたそれは聖女の濃厚な香りが楽しめるとして、色々な楽しみ方をされることになるのであった。


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