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スティル0880
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ヒトイヌストーリーズ サクラ号 上

桜井 未来(さくらい みらい)は高校に入ったばかりの15歳。 入学後すぐにバイトを探し始めた。 高校生になったので、それまでしたくても出来なかったバイトが解禁になったのだ。 自分で働いて自分で好きなモノを買える…。 今現在これといって欲しいものがすぐに浮かぶ訳ではないが、今までお金があったらなぁと感じる事は多々あった。 それを欲しい時にパッと買えたらどれ程良いだろうか…。 母子家庭なのであまり母に負担を掛けすぎる訳には行かないと思い、欲しいものがあっても我慢してきた。 仲間内では明るい性格だが、内弁慶で人見知りな未来にとってバイトをするのは大きなハードルだったが、自由に使えるお金が手に入るのはそれ以上に魅力的だった。 クラスメイトの中にも部活には入らず、バイトをするという子が何人もいたので、私もそうしようと思っている。 部活に入っても、新しいユニフォームや練習着その他諸々の道具代でお金がかかるしね。 「うーん…どうしようかなぁ…」 数日前からスマホのバイトアプリでバイトを探しているが、今まで1度もバイトをしたことが無いため、何を基準に選んだら良いのかわからなかった。 早く決めないと人気のバイトから順番に埋まって行ってしまう。 学生が入れるシフトなんてたかが知れているからね…。 今日も寝る寸前までバイトアプリとにらめっこ…。 どんな職業もそうだが、100%理想と一致する職業は無い。 まぁ…私の場合どんなバイトをしたいのかすら決まって無いので、それ以前の問題だけどね…。 明日も学校がある為、早めに寝る。 … 昼休みに学校でクラスメイトと会話をしたが、もう面接を受けたとか、バイト先が決まったという子がほとんどになってきた。 見ていたサイトの求人も、人数が定員に達したのか取り下げられて来ている。 「うぐぐ…どうしよう…」 私だけ面接すら受けていない…。 焦燥に駆られる。 「あれ…工事中だ…」 登校時と下校時は普段は全く同じ道を行き来しているのだが、いつも通る道は大々的に下水道工事をしており、迂回するしかなかった。 ちなみに迂回するルートを通ると10分程遠回りをしなければならない。 まぁ…仕方ないか…。 工事の規模を見るに1日じゃ終わらなさそうだな…。 明日は早めに家を出る必要がありそうだ。 しょうがなく遠回りをする。 あれ…こんな所にこんな大きな建物あったっけ? あー…ずっと工事していた所か…。 でっかい建物だな…。 それは異様な建物だった。 高さはせいぜい3階までしか無いが、横に広い。 建物から繋がって高さ5メートルはあろうかという、白い塀が続いている。 全貌は見えないが1つの区画を囲んでいるんだろう。 刑務所? パッと見そういう印象を受けた。 「ん?」 塀に点々と何かが貼ってある。 飼育スタッフ募集中? 未経験者大歓迎! 雇用形態、パート・アルバイト…。 スタッフ募集中のポスターだった。 飼育スタッフって…何かの動物? 会社名は…これがそうかな? 愛玩動物体験型施設ヒトイヌ広場。 スマホを取り出し、求人サイトやアプリにこの会社が求人を出していないか確認する。 「どこにも載ってない…」 普通に愛玩動物体験型施設やヒトイヌ広場と検索したが、それらしい情報はヒットしなかった。 ここが出来立てだからかな…。 HPとかもこれから作るのかも知れない。 真新しいポスターの為、貼られてからそう日数は経っていないようだ。 雨が直接当たる場所の為、雨が降ったらヨレヨレになっているはずだ。 それにしても愛玩動物体験型施設ヒトイヌ広場って何をするとこなんだろう。 イヌって書いてあるから犬と触れあえる場所なのかな? ドッグカフェの大規模バージョンみたいな。 あぁ…確かにそうかも知れない。 これだけの敷地があれば多くの犬を放し飼いに出来る。 分厚そうな塀は脱走対策と騒音対策だと思えば納得がいく。 これは何かのチャンスかも知れない。 ポスターに表示されていたQRコードを読み取ると、パート・バイト応募フォームというのが出てきた。 個人情報を入力して…バイトに入れる時間は正直に書いた。 これで…送信と。 よし…。 とりあえず応募だけね。 家に帰るために歩いていると着信音が鳴る。 応募フォームの自動返信メッセージかと思ったが、普通に返信が帰って来ていた。 早…。 送ったタイミングが良かったのかな? 送られてきたメールを見る。 差出人:愛玩動物体験型施設ヒトイヌ広場 人事 久山   桜井未来さん、この度はご応募ありがとうございます。 面接を行うのに、都合が良い日にちと時間を教えて下さい。 「えーっと…」 これだけ早く返信が来るとこちらも早く返さねばという気分になる。 車通りの多い場所では無いが、塀にもたれかかって返信を打つ。 向こう1週間の予定の無い日にちと時間を入力し送信する。 「あっ…」 上記の時間でお願いしますとかなんとか、書いて送った方が良かったよね…。 家に到着する寸前に再び返信が来ていた。 ご予定を教えて頂きありがとうございました。 面接ですが今週の土曜日の13時からではいかがでしょうか? 土曜日13時からなら一番良い。 はい、大丈夫です。 よろしくお願いします。 と返信した。 直後に場所の住所と共に地図。 それと持ち物が書かれていた。 えーっと身分証明書と学生証と履歴書と筆記用具…。 服装は学校の制服で良いそうだ。 土曜日の面接に向けて準備を進めた。 何しろ初めての面接だし…。 友人に手伝って貰いながら履歴書を書いた。 面接日が近づくにつれ、面接への不安がつのる。 皆これを経験してるんだよね…。 愛玩動物体験型施設ってどんな場所なんだろう。 面接の直前までネットで調べていたが、めぼしい情報は何も出てこなかった。 ボロが出て恥をかく前に、素直にわからない事はわからないって言おう。 面接場所は家の近所のあの建物。 セーラー服を着て、スクバに必要な物だけを入れ、家を出る。 5分程で到着する。 それでも余裕をもって5分以上前には着いておく。 最後にスマホで時間を確認し、2分前になったのを確認して中に入る。 中は外観の印象よりも明るい感じだった。 あ…人がいる。 受付のような場所に女性が居たため会釈をし近づく。 「こんにちは、面接の桜井さんですね」 「あ、そうです…こんにちは…」 「奥にテーブルとイスがあるからそこで話しましょう」 「は…はい」 誘導されるまま奥の部屋に着いて行く。 「あ、座って良いですよ」 「は…はい、失礼します」 ガタッ… 椅子の横の床にスクールバックを置き、椅子に座る。 「凄い緊張してますね」 「あ…面接とか受けた事無くって…」 「ん、まぁ高校生だったらそれもそうでしょうね…」 「肩の力を抜いて…深呼吸」 「すぅ…はぁ…」 「よし、では改めまして今回面接を担当します施設長の神田です」 「桜井未来です、よろしくお願いします」 「ん、よろしくお願いします」 「では早速書類を…」 「はいっ」 ガサガサ… クリアファイルにまとめて置いた資料を渡す。 「あ、ファイルごとの方が良いですか?」 「いや、大丈夫よ」 「はい…」 神田さんは書類を確認していく。 「…」 「おや、お住まいがかなり近いんですね」 「はい、帰り道にここの外のポスターを見まして」 「なるほど…」 「中学では体操競技部と…ふむふむ」 「うん…大丈夫そうですね」 「?」 「桜井未来さん、貴女を採用します」 「へ…?」 「え…あ…あぁありがとうございます」 え…バイトの採用ってこんな簡単に決まるものなの? 初めてだからわからないけど…。 後から合否の連絡が来るもんだと思ってた…。 「そこで…桜井さんに1つお願いがあるんだけど…」 「はい、何ですか?」 「実は飼育係はもう十分な人数が集まっててね…」 「え?」 「桜井さんにはヒトイヌのサンプルモデルの方をお願いしたいの」 「…?」 ヒトイヌのサンプルモデル? ヒトイヌってなんだろう…。 「最初の募集内容とは変わっちゃうけど…どうかしら?」 取り敢えず了承しておこう。 「あ…大丈夫ですよ」 「ほんとに?ありがとう」 「これが契約書になるので、ココとココに記入をして貰える?」 「はい」 「次はこれね、これはココに…」 何枚かの書類に記入をした。 「うん、これで契約書関連は以上ね」 「それで次はシフトになるんだけど、慣れてない内は身体への負担も大きいから、最初は短めの時間から始めて、徐々に長くして行きましょう」 「はい、ありがとうございます」 「最後に桜井さんの身体の計測をします」 「はい」 「えーと、下着姿になれます?」 「えっ…あ、はい…」 セーラー服を脱ぎ、下着姿になる。 恥ずかしいが我慢する。 メジャーで身体のサイズを細かく測られる。 神田さんは用紙に数値を記入していく。 15分程かかり、身体の計測が終わった。 「ありがとうございます、もうセーラー服を着ちゃって大丈夫ですよ」 「はい」 「では早速明日から研修になりますので」 「はい、よろしくお願いします」 神田さんに送られながら施設を後にする。 「ふぅ…」 こんな簡単にバイトって決まっちゃうんだ…。 決まって良かった…。 家に帰りバイト先が決まったことを母に伝えると喜んでいたし、頑張ってねと言われた。 まずは明日の研修だ。 早く仕事を覚えなきゃ…。 何をするか知らないけど…。 まぁ…明日行けばわかるんだし。 その日は早めに眠りに付いた。 … 「あれ…」 昨日9時迄に来てくださいと言われたので、2時間前から起きておく。 「出勤する時の格好は自由で良いのかな?」 私服で行くか悩んだが、一応セーラー服を着ていく事にした。 施設へ着くと神田さんが迎え入れてくれた。 そしてロッカーが立ち並ぶ更衣室に通される。 「桜井さんこのロッカーを使って」 「はい、ありがとうございます」 「それでは早速ですが裸になって下さい」 「え…は…はい」 これから施設の制服に着替えるのだと思い、セーラー服を脱ぎ下着姿になった。 「あ、全部脱いで下さいね?」 「え、全部?」 「下着も…ですか?」 「はい、下着もローファーも靴下もです」 「は、はい…」 さも当然であるかのように言われる。 下着もローファーも靴下も脱ぎ、ロッカーに入れて行く。 「脱ぎ…ました」 同性の前とは言え恥ずかしい…。 下着まで指定のものを着るのだろうか? 「では、ロッカーを閉じちゃいますね」 カチャ… ピピッ… 「これでロッカーは帰る時間まで開かなくなりました」 「え…」 「桜井さんに着ていただくヒトイヌスーツを持ってきますね」 「は、はい…」 ヒトイヌスーツ? 私は全裸で更衣室に残される。 ガタガタ… ロッカーが開くか試してみたが開かなかった。 少しすると神田さんが茶色い革の塊を抱えて戻ってきた。 「こちらが桜井さんに着ていただくヒトイヌスーツになります」 「?」 ヒトイヌスーツ? 何これ? 「多分丁度良いサイズだと思うんですが」 受け取るとずっしりとしていた。 基本的には柔らかい革で出来ているようだが所々硬い。 「床に広げて下さい」 「はい…」 広げて見ると短い手足に、犬の顔を模した全頭マスクと尻尾が着いていた。 え…え? 何なのコレ? 「背中にジッパーが付いてますので、それを開けて下さい」 「はい…」 うなじの部分に、ジッパーのスライダーが2つあった。 下のスライダーを下げるとそのまま下まで下がり、上のスライダーを上げると犬を模した全頭マスクの頭頂部まで開いた。 開口部から開くと内側がみえる。 内側には毛布のような白いボア生地になっている。 うわ…。 これを着るんだ…。 でも手足は…。 「膝から入れていって下さい」 「膝から?」 そこで私は気が付いた。 このスーツは腕と脚を折り畳んで着用するんだと。 ヒトイヌってこの事を指してたのね…。 こんなものを着るなんて…。 でも…契約しちゃったんだし…。 一度着てみよう。 正座をして膝を浮かせ、右の膝頭をスーツへ入れる。 腕と脚を納める部分、前足と後ろ足といえば良いのだろうか、その部分は硬い革で出来ていた。 中に何も入ってなくとも形を保っている。 先細りになっている、後ろ足の部分へと入っていく。 ボア生地が肌を撫でる。 なかなか入りにくい。 「仰向けに寝て下さい」 「はい…」 リノリウムの床に寝る。 背中が凄く冷たかった。 両方の膝頭へ後ろ足の部分が被せられ、グッと押し込まれる。 膝頭が後ろ足の底へ着くと同時に、鼠径部もピタッっと圧迫された。 爪先も収まる部分があり、そこに押し込まれた。 起き上がらされ、正座の姿勢に戻される。 腰の前に溜まっていたスーツが広げられた。 「手のひらを肩に当てて下さい」 「はい…」 両方とも言われた通りにすると肘から前足の部分が被せられた。 それから神田さんは私の後ろに周り込み、スーツを引っ張りながら腕を前足に押し込んで行く。 肘が底に着くと、腋や肩周りがピッタリと収まった。 そのまま今度は、うつ伏せに寝かされる。 「う…」 カチャカチャ… 「閉じますね」 「はい…」 ジジッ…ジーッ… 「はっ…はぁ…」 尾てい骨の部分からジッパーが閉められて行く。 お尻もウエストも胸も締め付けられる。 そしてうなじまで閉じられた。 「はふっ…」 「さて、立てるかしら?」 「よいしょ」 「んっ…」 腋を掴まれ肘と膝の四つん這いにされる。 「んんっ…」 ギシッ… 「はぁ…はう…」 「あの…きつい…です」 「そう?サイズ的にはちょっと余裕があるぐらいだと思うけど…」 「新しいスーツだから少し硬いかもね」 「はい、これを咥えて」 裏返されたマスクの口元には、黒いシリコンの塊がありそれを口に咥えさせられる。 「ングッ!?」 マウスピースの様に歯茎もピッタリと覆いながら、口腔を埋め尽くす。 「オゴッ!」 鼻にも左右それぞれ5cm程の黒いチューブが入れられる。 そのままマスクが被され、頭頂部からうなじへのジッパーが閉じられた。 ジーッ… 頭も身体と同様に締め付けられる。 「ンウゥ…」 キツイ…? 目の部分はポツポツと小さな穴が開いていてかろうじて周りがみえる。 「これでも、自力では脱げないでしょう」 「ンッ!ンウ!」 「他の人がイタズラに脱がせたりしないように首輪でロックしましょうね」 首に幅5cm程の赤い首輪が巻かれる。 カチャカチャ… ギシッ… 「ウッ…」 少しだけ首が締まる。 カチャカチャ… カチン… 「ジッパーと首輪の留め具を全部まとめて南京錠で施錠したから、鍵がなければもう誰もスーツを脱がせられないわね」 「ンッ…ング…」 「早くヒトイヌスーツに慣れて貰うために、今日の研修はずっとヒトイヌスーツを着たままだから、そのつもりでいてね」 「ンウー!?」 そんな…。 今日の研修は6時までって言ってたよね? それまで、このままって事? 「ンッ…」 「ホォ…」 「では、その姿に慣れて貰うために少し放置しますね」 「でも、動き回ると危ないので…」 ジャラジャラ… 「鎖で繋いで置きますね」 「ン…」 カチャカチャ… 壁の金具と首輪の金具を2m程の鎖で繋がれた。 「色々と動いてみて下さいね」 「ンオッ?」 「アオッ!?」 一度スーツから出して貰おうと声を出したが、その声は意味のある言葉にはなら無かった。 ガチャ… バタン… そう言って神田さんは更衣室を出ていってしまった。 「ンウ…」 ギシッ… 「グゥゥッ…」 ジャラジャラ… 正座の姿勢になり、なんとか脱げないか力を込めてみる。 しかし、革が多少軋むだけだ。 「ングゥッ…」 身体を捻ったり、腕をバタつかせてみてもスーツが緩むことは無かった。 「ハァ…ンハァ…」 それにこのスーツ…。 股間が空いてる? 股間だけ何も覆われている感じがしないのだ。 とてもスースーするのだ。 マスクのマズル部分で見えにくいが、身体を丸めて股間を覗き込むとやはりソコは何にも覆われていなかった。 これって…普通なの? 覆い忘れてない? 女性にとって一番隠したい部分が丸出しになっている。 肘と膝の四つん這いになり、歩いてみる。 ジャラジャラ… 鎖を引きずってなんとか歩く。 ゆっくりだがなんとか歩く事が出来た。 だが、それ以上の事は出来なさそうだ。 鎖の許す範囲で歩いてみる。 「ハァ…ハァ…」 慣れない姿勢での行動なのでとても疲れる。 「ウゥ…」 ポタッ… 「ン…!」 しっかりとシリコンを咥え直す。 しっかり咥え、穴を閉じておかないとよだれが垂れてしまうのだ。 よだれが垂れて床を汚すし、口も乾いてしまう。 「アゥ…」 よだれを拭うことも出来ない…。 四つん這いで…股間は丸出し…。 なんて惨めななんだろう。 今後…この格好でバイトをするのかな…。 多分と言うか絶対そうだよね…。 これがヒトイヌ…。 こんな格好をさせられるなんて知らなかったけど、私は了承し契約もしてしまったんだ…。 頑張るしかない…。 歩く練習をするがすぐに疲れて歩みが止まる。 「ハァ…ハァ…ング…」 リノリウムのベージュ色の床を見つめる。 所々、よだれが垂れている。 喉も乾いたし、体力もかなり消耗した。 「ウゥ…」 自由に動く事も出来ず、ただ這いつくばる事しか許されない。 キツイ… 四つん這いの状態から、肘と横に、膝を後ろに広げ、お腹と胸を床に着ける。 「ハァ…ンン…」 私は床に突っ伏した。 そのままうつらうつらし始める。 スーツは意外と心地よい…。 毛布のような柔らかなボア生地で全身を包まれている感覚。 ガチャ… 「ンア…」 マスクの穴から神田さんが部屋に入ってきたのが見えたので、身体を起こし四つん這いになる。 「喉が乾いていると思うので、これを飲んで下さい」 「ンウ…」 目の前に水が並々注がれたペット用のボウルが置かれた。 喉が乾いていたのでマスクのマズル部分を水に付け、水を吸い込む。 「ング…ング…ング…ハァ…」 「次は広場へ行きましょうね」 カチャカチャ… ジャラジャラ… 壁の金具から鎖をはずした。 そのまま鎖を引かれると、首輪が引っ張られ歩かざるをえなくなる。 「ンン…」 一生懸命四つ足を動かし、着いていく。 そして廊下から建物の外へと連れていかれる。 低い視線ながら辺りを見回す。 凄い…広い…。 あの塀の内側はこんな風になっていたのか。 目の前には緑溢れる庭園が広がっていた。 茶色いレンガの道を歩かされる。 ジャラジャラ… ギシッ… ギシッ… 人間の歩くスピードでは歩けずヨチヨチ歩きになる。 「ンフゥ…ンフゥ…」 口はシリコンのマウスピースを咥えているので、チューブを介して鼻で呼吸する。 土の匂い、草の匂いがダイレクトに入ってきて、鼻腔に充満する。 懐かしい…どこか幼少期の記憶を呼び覚ますような匂い。 歩いていると頭を上げることが難しく、目の前の地面だけを視線に納める。 更に歩かされてから、神田さんはフレームが鋳鉄製で座面と背もたれが木で出来ているベンチに座った。 私はその目の前にいく。 「ハァ…ンハァ…」 神田さんが顔を近付けてくる。 「お座りは出来る?」 「ンッ」 「そうそう」 私は地面に正座をした。 「桜井さん、ヒトイヌになってみた感想はどうかしら?」 「ンオ…オンッ…」 「まぁ…今は喋れないから、後で教えてね」 「ンッ…」 「ヒトイヌスーツは不自由だし、恥ずかしいでしょう?」 「ンムゥ…」 「でも、包まれてる部分は安心感があったり、ちょっと楽しい感じはしないかしら」 「ンー…」 神田さんに頭を撫でられる。 高校生にもなって頭を撫でられる事なんて久しぶりだったので、くすぐったい気持ちになる。 スーツを介して撫でられているのに鮮明に感触が伝わってくる。 「桜井さん、ヒトイヌの体験には様々な意味があるの」 「単純な所からだとヒトイヌスーツの拘束感ね、体験者の体型になるべく合うヒトイヌスーツを探してそれを着て貰うの」 「身体にフィットするヒトイヌスーツの感触は拘束されていながら、心地好く感じるはず」 「ンッ…」 心地の良い拘束ね…。 「また物理的には隠され、包まれているけれど、物理的に隠され、包まれている事で精神を開放できる事もあるのよ」 「ハァ…」 「桜井さんには、このヒトイヌ体験を受けるのにしり込みしている女の子達に、一歩踏み出す勇気を与えて欲しいの」 「ンン…」 そうか…大切なんだな…この仕事も…。 この格好でいることに意味があるんだ…。 「ンッ…」 頷いて意思を伝える。 「ありがとう、桜井さん」 そう言われ、再び頭を撫でられる。 「少しは休めたかしら?」 「次はこっちよ」 ジャラジャラ… 鎖を引かれ、強制的に歩かされる。 レンガが敷き詰められた道から、原っぱを歩かされる。 レンガの道を歩くより土で汚れるが、それも想定内の様だ。 原っぱを歩き回らされていると段々と尿意が増してきた。 「ンア…ンン…」 ヤバい…漏れちゃう…。 しかし言葉では伝えられない。 「オァ…ンン…」 立ち止まり、モジモジしていると神田さんが気付く。 「あら、お小水?」 「ンム!」 「その場で後ろ足を広げて、なるべくスーツへ付かないようにしたら、しちゃって良いわよ」 「アゥ!?」 ここでするの? そんな…でも、するしか無いのか…。 しても良いと言われたので、そこでする…。 「ンアァ…ハァ…」 チョロチョロチョロ… 「大きな方も出せるなら出しちゃって良いのよ?」 「ン…」 小に続き大もする。 「ンン…」 プスッ…ポトッ…ポトッ… 「ムハァ…」 出しちゃった…。 こんな所にこんな格好で…。 「今の桜井さんはヒトイヌなんだから、この土があるところだったらどこにでもして良いのよ」 「ンッ…」 「その為に股間の部分が空いてる訳だしね…」 「出したモノは後で片付けるから、少し移動しましょう…」 「ンア…」 鎖を引かれ、建物の方へ移動させられる。 「お尻を拭いてあげるわね」 「ンッ…ンアッ…」 トイレットペーパーでお尻を拭いて貰う。 前の湿り気も拭って貰った。 「どこで出しても良いけれど、すぐには拭けない事もあるから、そこは覚えて置いてね」 「ンウ…」 「これからヒトイヌとして仕事をしていくなら下の毛を剃る必要がありそうね」 「ンッ?」 「そろそろお昼休憩にしましょう」 「!」 「あ、でも桜井さんはヒトイヌのままよ」 「ンーッ!?」 そんな!? 「ヒトイヌ用のエサを準備するから待っててね」 「アゥ…」 コトッ… コトッ… 私の目の前に置かれたのは、銀色のペット皿。 左の皿には水が、右の皿には乳白色の見るからにドロッとした液体が入っている。 「どうぞ、食べて良いわよ」 前足を横に広げ、頭を下げるとなんとか犬を模した全頭マスクの鼻先がドロッとした液体に届く。 「ズズッ…ズズッ…ングッ」 ドロドロの液体をそのまま飲み込む。 「ング…ング…」 ほんのり甘い…。 それだけで味は良くわからない。 お腹が空いているのは事実なので、食べる…。 食べたらまた恥ずかしい思いをして排泄をしなければならないが、仕方ない…。 それがヒトイヌというものなのだろう。 ドロッとした液体を全て飲み、水を飲むと神田さんがマスクの口元を拭いてくれた。 「今から40分はゆっくりしていて良いです、それから研修の続きを行いますので」 「ウゥ…」 ガチャ… バタン… 水の入った皿を残して、神田さんは部屋から出ていってしまった。 私は1人…いや…今は1匹か…。 更衣室に取り残された。 ゆっくりしてと言ってもヒトイヌのまま…。 外へ出ようにも、ドアノブは遥か頭上。 更衣室の隅の方で、前足は横に後ろ足を後ろに投げ出しうつ伏せになる。 あぁ…こうすると多少肩が楽だ…。 多少楽というだけで楽な姿勢では無いので、どうにも休まらない。 ボーッとしていると午後の研修が始まった。 午後も午前と同じようにヒトイヌ広場を引き回される。 時々休憩を挟みながら。 研修が終わり更衣室へ戻ってくる。 「ハァ…ンハァ…」 ジャラジャラ… 「初日からちょっとハード過ぎたかしら…」 カチャカチャ… 「お疲れ様でした」 そういうと首輪の南京錠が外された。 スルッ… ジジーッ… 続いて首輪も外され、全頭マスクのジッパーが開かれた。 そして全頭マスクを脱がして貰う。 ガポッ… 「ぷあっ…はぁ…んぐ…」 「正座をして」 「ん…あい…」 ジーッ… うなじからお尻までジッパーが下げられた。 「はぁ…」 身体を締め付けていた圧力が下がる…。 前足の部分に腕がしっかりはまりこんでしまっている為、引っ張って貰って脱ぐ。 後ろ足も引っ張って貰って脱ぐ…。 「はぁ…あぁ…」 こうして約9時間ぶりにヒトイヌスーツから開放された。 「疲れたわよね…桜井さんお疲れ様」 「あ…はい…」 そういって神田さんはバスタオルを掛けてくれた。 「シャワー浴びて行きます?」 「あ…はい」 … シャー… 「はぁ…」 締め付けられていた全身に血流が回る。 「あー…」 シャワーが気持ち良い。 ヒトイヌ状態きつかったなあ…。 身体の所々に圧迫されて付いた跡が残っている。 「…」 今後あれを着て…いくのか…。 難しい業務内容は一切無い。 ただ体力的にきつく、恥ずかしい。 慣れるのかな? シャワールームから出て、身体と髪を拭く。 バスタオルを巻いて更衣室へ移動する。 このロッカーだよね…。 カチャ… ロッカーの扉を引っ張ると普通に空いた。 着てきた下着と制服を着る。 更衣室を出て受付の方へ行くと、神田さんが待っていた。 「あ、桜井さん身体は大丈夫?」 「はい、疲れてはいますが…今のところ大丈夫そうです」 「今日はいきなりハード過ぎたわね…」 「はい…まぁ…」 「帰ったら改めてしっかり入浴して休んでね」 「はい」 「そうだ、ヒトイヌになった感想はどうだったかしら?」 「えっと…」 「あ、遠慮無く言っちゃって良いのよ」 「あ…はい、ヒトイヌスーツはとても窮屈だし、キツいし恥ずかしかったです」 「うん」 「でも神田さんが言ったようになんだか面白い感じや包まれて心地よい感じがしました」 「そう、キツかったり恥ずかしいだけじゃないってわかったかな?」 「はい…まぁ…」 「うん、感想ありがとう、今日はもう終わりになります」 「はい、失礼します…次は水曜日に?」 「はい、水曜日に待ってますね」 そうして私は帰路に着いた。 その日は身体になんとも無かったが、翌日は全身筋肉痛だった。 水曜日にもなると筋肉痛はほとんど無くなっていた。 またスーツに詰め込まれ、歩行訓練。 水曜日は5時から9時までの4時間ヒトイヌ状態だった。 日曜日の半分以下の時間だったし、動きに慣れて来たのか、バイトが終わった後も滅茶苦茶キツイという、感じでは無かった。  … 「ヒトイヌストーリーズ サクラ号 中」に続く


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