SamuKata
小梅
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女軍人くすぐり拷問白書(アイシャ編)

 職業病と趣味の半々と言いますか……。

 初めての来日にあたり、事前に情報収集とニュースサイトなどを読みふけっていたところ――

 どうやらこの国では最近、働き改革と声高々にいうものが声高々と叫ばれており――

 部下を呼び捨てにするのはNGやら、休日中に仕事のメールを送りつけることを罰則化とする法案など――

 雇う側、雇われる側、老若男女と、各種方面で色々苛烈な物議が醸し出されているようです。

 しかし、先進国にようやく爪先程度と踏み入れた我々の国……

 なおかつ軍にでもなれば、パワハラなにそれ美味しいの? という……なんとも素敵な旧態依然としたものが絶賛継続中です。

 そういう観点で言えば……わたし……アイシャ・パターニという軍人は、非常に幸せものなのでしょう。

 ……マリア・レミング大尉……わたしが新兵時代からお世話になっている唯一無二な直属の上官――

 美しくかっこよくて、親身溢れる厳しさと優しさがあって、とても切れ者と優秀でありながら……

 男に負けじと肩を並べ張り合う、男社会で仕事ができる女性特有の……ピリピリとしたヒステリックさなども一切なく――

 男を立てながら、それでいて決して舐められず一目と置かれるスマートな立ち回り……

 その絶妙な処世術は、本当にいつも見ていて感嘆とする神業です。

 なんというか男前と美人の良いとこ取り、ハイブリットな……同じ女として本当に憧れる……嘘偽りなく尊信と仕えることができる。

 そんなわたしなどには勿体ない……でも絶対あげられない、素敵すぎる上官です。

 たまにしてくる微妙なジョークだけは、いささか反応に困ってしまいますが……。


 そんな上官ガチャで見事SSRを引き当てた果報者のわたしですが……今回……今だけは――

「そ、それで……くすぐられ……笑いすぎると……なんというか括約筋? みたいな……ところがゆ、緩まってきてしまい……」


 大変罰当たりなのですが――

 マリア大尉の部下……ある任務に選出されたことを心底恨み呪いながら――


「あの……その……もら……しまい……した」


 まるでトマトと、顔中が真っ赤になっていることが容易に想像できてしまう……

 そんな未だ上昇していく頬やオデコの高熱を感じ入りながら、あの日の……部族に捕まり受けた仕打ち……特殊な拷問の体験を……途切れ途切れに吐露と語っています……。

 その中で、色々ありますが……一番腑に落ちないのことが……


「あのぉー、ちょっと聞こえなかったんですけどぉー、もーちょい大きな声で話してくれませんかぁ?」

「もっ……らしてしまいましたぁ!」


 ――ギャハハハハハハハハ!

 ――ちょっとぉ、やめなよ~、かわいそうじゃーん。

 

 わたしのあたふたと狼狽する姿がよほど滑稽なのでしょうか……。

 学生服をだらしなく着崩した男子生徒が茶々を入れ、スマホ片手に持った茶髪の少女が全く心にも思ってなさそうに……ともすれば嘲笑している……形だけな静止を促しています。

 周りの中学生たちも、この二人ほどでないにせよ……どれもかしも皆似たような態度……。

 ……そう、ジュニアハイスクール、中学生たちです。

 うん……もう逆じゃない? 

 プラダの専属モデル顔負けな大尉がこっちで、わたしがプライマリーのキッズたちなのでは!?

 この燦々たる現状を見るに……そう鎮痛と突っ込まざるにはいられません。

 というか、さっきからスマホでこっちパシャパシャ撮ってくるの……本当にやめてほしいです……。


「で……あの……ペニ、ペニスバンド……あっ……ペニスバンドっていうのは……」


 ――知ってるよ~。

 ――ちゃんとうまくできましたぁ~?


 タダでさえこっちは話すことでいっぱいいっぱいなのに……いちいち茶々を入れてくるので、一向に話が進みません。

 担任である若い女の先生も、時折注意勧告をしてくださるのですが……

 どこかシンパシー感じ入るほどの気弱さで、わたし同様全く生徒たちから相手にはされてません。

 二人で一人前どころか、0.1×2のミジンコ戦力で一師団相手に立ち向かうような絶望感です。


 そんな中――

 

「それで……わたしと大尉は……結局、その、あまりのくすぐったに耐え切れず……相手の……いい……なりと……っ」


 30人以上の視線を浴び――

 押しつぶされそうな羞恥心に苛まれ続ける私の中にもう一つ……抗いがたい衝動がお腹の奥底から浮かび上がってきます。

 それをどうにか……膝を小刻みに震わせながらも必死と抑え込み――


「以上です……ご清聴……ありがとう、ございまひた……っ」


 最後の最後で噛みつつも、軍で培った忍耐力でどうにか最後まで耐え忍び……話しきります。

 

「あっ……やってないので……はいっ、はいっ、すみませんっ――通してくださいっ」


 まぁ……期待はしてませんでしたが……本当に色っぽさの欠片もない――

 珍しい小動物に触れるかのような気安さで、LINEなどの交換を迫り聞いてくる男子生徒たちを掻い潜りながら、髪をボサボサにしながらどうにか教室の出口まで脱出します。

 というかあなたたち、まだ成長期なのにみんな身体大きすぎです。


 ――アイシャちゃーん、最後に頭なでなでさせてよ~♡


「…………っ」


 ――だからっ、わたしのほうが年上なんですってば!


 行事悪く机に腰掛ける女子生徒の一言にかっとなり、怒鳴り返したい衝動を必死と抑えながら……いえ、する勇気などもなく――

 下唇を噛みしめながら、私はガヤガヤと騒がしい教室から逃げるよう後にしました。


 もういくら尊信するマリア大尉の頼みであろうとも、こんな想いすることなど、二度とごめんです……。

 

 平謝りしながら追ってきた担任の先生が渡してくれたテッシュで鼻をかみ、目から出るしょっぱい水をぬぐいながら、私は心底そう思いました。





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